昭和鉄道高校の教頭植松先生の田舎は、伊豆七島の新島である。船が
着く本村から車で
20分位の若郷と言う所だ。 もう随分前の夏休みに
遊びに行った。
新島の夏は暑かった。若郷の小さな港で釣りをした。
色とりどりの
ベラや、小判のように金色に輝く小アジや、掌に載るほどの石鯛の小魚
がサビキにどんどんかかる。水面を覗くとかかっても到底あがらないよ
うな大きなウマズラハギがゆらゆらと泳ぐ。
夕食で植松先生が包丁をふるった半身で一切れ分の小アジの刺し身は
旨かった。あまりに味が良いので参ったと言うので、アジと言う名前が
付いて漢字の鯵と言う字が出来たそうだ。
帰りの日も快晴だった。船を待つ間、青い空と
空を映した海と 港の
堤防に座ってまぶしそうに
視線を向ける 真っ黒に日焼けした女の子。
そして新島の夏の思い出は一枚の絵になった。
(1994年7月)