ロボットダンジョンSRC制作秘話

『ロボットダンジョンSRC』の制作秘話をまとめたものです。


 はじめに

第1章:ある日、SRCと出会った。
第2章:誕生『ロボットダンジョンSRC』
(ここまで)

第3章:大きな反響が私を及ぼす
第4章:『プラス』生まれる
第6章:もう限界だと思った。
第7章:その後の私。『たいせん』とともに。

あとがき


 はじめに

 「ロボダンのコラムはいつ完成するのですか?」

 久しぶりにアンケートを行ったところ、私宛てにこのような質問が届いた。「あっ、そう言えば」と思った。ロボダン制作の裏話は長らく書こうとは思っていたものの、コラム集にコンテンツだけを載せてずっと放置している状況だった。むしろ今にして待っていた人がいるのが驚きだった。
 しかし、今まで手をつけなかったのは理由がある。まず、私が非常に行き当たりばったりの飽きっぽい性格なので、他にやりたいことが次々と出てきてしまい、過去の作品に対してちゃんと向かい合うという気がなかなか起きないということだ。私が最も楽しいと感じる時間は何かを創造しているときであり、出来上がってしまったものには私はまるで喜びを感じられない。絵を描くときでもそうだが、一旦描きあがってサイトにアップロードした瞬間、どうでも良くなってしまうのだ。
 もうひとつの理由は、書きたいことがたくさんありすぎて、文章の構成をまとめることが難しかったからだ。頭の中で考えたことに、私の物を書くという能力が追いつけなかった。その結果、だらだらと先延ばしになる状態に陥っていたのである。
 しかし、そんな私もその後いっぱしの学校を卒業し、また仕事(というほどでもないが)や自身のブログで文章を書いたりして、だんだんと書く作業に慣れていった。今ならばコラムを完成させることができるかもしれない。
 ロボダンを制作してからもうすぐ10年になろうかというところだ。記憶が風化してしまった部分もあるだろうが、何とか掘り下げて完成を目指したいと思う。

 しかし、全部書き上げる頃にはそれこそ本が一冊出版できてしまうかもしれない。もしも発売したら、あなたは買っていただけますか?

第1章:ある日、SRCと出会った。

・「ナオヒラ」とSRC。

 初めてSRCを知ったのは、確か私が高校生くらいの時期だったかのように思う。インターネット上でスパロボツクールのようなものがあると知り、好奇心で検索してみたのが始まりだ。当時の私はまだネットの知識が乏しく、まずSRCを起動させるだけでもとても難しいことだった。本体付属のサンプルシナリオが動いて、音楽が鳴ったときなどは、それだけで感動してしまった。
 初めて遊んだシナリオは『運命交響曲クロスシンフォニー』だったと思う。ロボット物では『2軍戦隊奮闘記』だ。どちらもSRCを代表するシナリオであり、私の意識に大きな影響を与えたと感じる。
 ただし、そのときの私はもっぱらプレイ専門で、自分でシナリオを作ろうなどとは全く思わなかった。というか、まだプログラムというものがさっぱりわからなかったので、作りようがなかったのだ。
 しかし、そんな私でも「SRCのデータ」に関しては何とか理解することができた。またこれには同時に非常に強い興味を抱いた。特に数々の版権キャラクターをSRCの配布データとして作る活動を行っている「GSC」の存在は大きかったように思う。昔からスパロボの攻略本を開いては、ロボット同士の装甲値を比べてニヤニヤしているような変態であったため、この活動は私の目にとても楽しく写った。そして私も討議掲示板に(生意気にも)口を挟むようになり、また自分で制作したデータを掲示するようになっていった。これがハンドルネーム「ナオヒラ」の、初めてのSRC活動との関わりだった。

・契機

 GSCでデータを制作する傍らで嵌ったシナリオがある。かの有名な『軟弱ダンジョン』シリーズだ。毎回異なるステージで、様々なキャラクターが登場して一同に戦いを行うこのジャンルは、私の趣向にピタリと一致した。同時に私はここで初めて無限ダンジョンというジャンルを知ることになった。
 ただし、私はこのシナリオに感銘を受けて直ちにロボダンを制作したわけではない。むしろ「何てすごいシナリオなのだろう」とただただ感服してしまっていた。一度興味本位でソースコードを除いてみたことがあったが、案の定、私にはわけがわからなかった。おそらく自分と最も縁遠いシナリオに違いないと、この時は思っていたのだが。
 その後も、GSCでデータを作ったりアイコンを制作したりと変わらない活動の日々が続くことになった。このまま行くと、私がシナリオを手がけることなど一生なさそうだ。「きっとSRCのデータ屋さんとしてほのぼの活動していくのだろう」と思っていた。そう、「あのシナリオ」と出会うまでは…。

・運命を変えたシナリオ?

 そんな中、とあるダンジョンシナリオが公開された。『エインフェリア育成計画』というダンジョンシナリオだ。「何それ?」と思う方がほとんどだろう。私も果たして元ネタが何なのかよくわからない。確か武装した女の子が無限のダンジョンに潜って、自分のステータスを強化していくシナリオだったように思う。当時無限ダンジョンに嵌っていた私は、何となく興味本位でシナリオをダウンロードして遊んでみたのだ。
 正直に言って…、私にはあまり面白いものではなかった(作者さん申し訳ありません)。出てくるキャラクターが全くわからないし、完成度もあまり高くなく、おそらくすぐにやめてしまうだろうと考えていた。

 「しかも遊んでいる途中でエラーが出たぞー!どうなっとるんじゃーっ!」

 というわけで、ここで投げ出してしまおうかとも考えたが、この時の私はそうはしなかった。エラーの文章を見たところ、バグの原因はシナリオ内のコードのちょっとしたミスのようだった。自分でコードを書き直せば簡単に直せそうだ。そう思いシナリオの内部をメモ帳機能で開いてみたところ、私は驚くべき事実に遭遇した!
 「何だこれは!?あまりにも簡単すぎる!」
 そのシナリオの中には『軟弱ダンジョン』のような難しいプログラムが全く入っていなかった。ほとんどのコードが非常に簡潔に、私の理解できる範囲で記されていたのだ。

 その時、私の脳天にサンダーブレークが直撃した!

 バラバラになっていたパズルのピースがひとつにまとまるように、無限ダンジョンがどういう仕組みで動いているのか、頭の中で完全に理解ができたのだ。「わかる、わかるぞ!これなら私でもシナリオが作れる!無限ダンジョンが作れるぞ!」
 これが全ての始まりだった。もしあの時『エインフェリア育成計画』を見つけなかったら、またはそのシナリオのプログラムがとても難しかったら、そしてエラーが出なかったら、私がロボダンを作ることはおそらくなかっただろう。事情は少々複雑だったかもしれないが、結果的にはこれが私にとっての運命の一作となったのだ。


第2章:誕生『ロボットダンジョンSRC』

・構想を練る

 まずはどのようなジャンルのダンジョンにするかを考えなければならない。SRCのシナリオには大きく分けると2つのジャンルがある。ロボットに乗って戦う『スーパーロボット大戦』のような巨大ロボットものか、または人間同士が戦う『ファイヤーエムブレム』のような等身大ものだ。
 等身大のダンジョンでは『軟弱ダンジョン』という大手のシナリオがある。すでにあるものをわざわざ作る意味がないし、仮に作っても素人の付け焼刃では太刀打ちできないだろう。では、巨大ロボットの無限ダンジョンというのはどうだろうか。これにはほとんど前例がなさそうなのでライバルがいない。それに作ってみて面白そうだ。というわけでロボットもので行くことに決めた。

・実験

 早速実験的にとりあえず動くものを作ってみることにした。無限ダンジョンの仕組みについては解説すると長くなってしまうので割愛するが、最も重要な点は、ランダムな敵が、ランダムな位置に出現するということだ。そこで、まず私はGSCの配布データからスパロボの常連とも言えるメンバーのデータフォルダのほんの数種類を適当に引っこ抜き、シナリオに読み込んだ。そしてひとつのマップにランダムに敵を配置し、主要な味方を用意した後に、実際に出撃させて戦わせてみた。

 こ、これは…やばい。
 「めちゃくちゃ面白ええええっ!!!」

 私は興奮が爆発した。この時の衝撃は今でも忘れることができない。こうして私の初めての本格的なシナリオ作りがスタートした。味方ロボットが10機、敵のロボットが20機、戦闘マップがわずか1枚だけという、とても小さな始まりだった。

・制作開始

 ゲームを作るために必要になるものは主に3つだ。キャラクターのデータ、ストーリー、そしてゲームを動かすプログラムだ。今回作るジャンルは無限ダンジョンなので、ストーリーは気にしなくてもよい。となると必要なのはデータとプログラムとなる。順に解説をしていこうと思う。

 まずはキャラクターデータについて。初めにシナリオに出すロボットを決めなければならない。とりあえず私は『スーパーロボット大戦』シリーズに登場するロボットを片っ端から入れてみることにした。スパロボの攻略本を熟読していたという話をしたように、当時の私はこのシリーズをよく遊んでいたので、どういったロボが登場するのかは大体私の頭の中にインプットされていた。だから私には作品のタイトルを見ただけで、どのロボットを出せば良いのかはすぐに見当がついた。あとは実際にそれらの主役ロボットや敵ロボットを、キャラクターとして追加すれば良い。たまたま私が「スパ厨」であったことが功を奏した結果になった。
 そして始まったのが、自シナリオへのデータのコピー、ペースト作業だった。各作品データのパイロットデータ、ユニットデータ、メッセージデータ、アニメーションなどを、ひとつずつ抜き出していってはテキストに貼り付けるのだ。これがまた凄まじい分量だった。
どれくらいの量だったかと言うと、朝方から夕方までぶっ通しでコピペ作業を続けても全然終わりが見えないという有様で、この作業だけで一日が終わってしまうということもざらにあった。よくもそこまで体力と精神力が持ったものだと思うが、当時の私には今作ろうとしているものがどんなに凄いものになるかと考え、常にアドレナリンが全開の状態だったので、全く苦には感じなかった。とにかく、早くシナリオとして動かしてみたかったのだ。

 次にプログラムについて。これは大きな課題だった。データの貼り付け作業は、根気さえあれば誰にでも必ず終わらせることができる。しかしプログラムに関しては作り方がわからないとどうしようもない。私は自作データのテスト用に『風来のシレン共通モンスターテスト』というダンジョンもどきのシナリオを制作したことがあり、キャラクターをマップ上に出撃させて戦わせることくらいならば可能だった。しかし難しいインクルードを組むとなると、やり方がさっぱりでお手上げの状態だった。
 そこで始めたのが「他シナリオの研究」だった。特に有効だったのが他のシナリオのソースコードを見ることだ。自分がやりたいと思っていることは、大抵他のシナリオでも行っている。シナリオを遊んでいて必要だと思われるシチュエーションに遭遇したら、中身を確認し、どうやって動かしているのかを自分なりに考えた。どうしてもわからない部分は、あまり褒められる方法ではないが、インクルードをそのまま流用し、自分がわかる言葉にひとつずつ置き換えていった。私のシナリオの中を覗くと、妙な言い回しの日本語が数多く書かれているが、これはそうしていかなければ自分でも何をしているのか理解できなかったからだ。
 しかし、どうしても自作しなければいけないインクルードもある。SRCのヘルプに書いてあることは当時の私にはさっぱりで、何が書いてあるのかでさえよくわからなかった(今でもそうだが)。やりたいことを手帳に書いていったが、ああでもないこうでもないと、あちこちに線を引っ張って繋げたり、小学生レベルの計算式を書きまくったりしているうちに、ノートは真っ黒になってしまった。私は自分の頭が理系向きの構造をしていると感じることがあるが、本分は文系に属している人間なのだ。
 そんな悶々とした日々の中、ついに私はあることに気が付いた。変数、関数、条件式の意味するところが理解できたのだ。そう、全てのインクルードは「変数」と「関数」と「条件式」で出来ていた!

 「わかったわ!ATフィールドの意味!」

 これはエヴァンゲリオンのアスカが言ったセリフだが、私の感覚もこれに近いものがあった。普段からプログラムを勉強している方々には実に当たり前のことかもしれないが、私にはその根底がわかっていなかった。だからインクルードが作れなかったのだ。
 話が少々脱線するが、SRCのヘルプファイルはその点に関して若干不親切だと思う。「〜を〜するために」という方法だけを知ってもだめなのだ。もっと基本的な部分を先に勉強しておかないと一般人にプログラムなんて作れませぬわ。
 これに気が付いてからは制作が実にスムーズに進行した。どんなに難しいインクルードでも変数と関数と条件式の組み合わせで必ず作ることができる。多少効率が悪くて遠回りな作り方になったとしても、最終的に仕様の通りに動いてくれれば問題はないのだ。こうして私のシナリオは徐々に完成へと近づいていった。

・問題発覚!?

 さて、ある程度キャラクターの追加も終わった。主要なインクルードも組めた。いよいよ実際に動かしてみるテスト段階の突入となった。とりあえず、敵と戦いながら仲間を集めて攻略していくことを繰り返す一連の動作はできているようだった。あとは全ての仲間がちゃんと動くか、また難易度が調整されているかを実際にチェックするだけだ。こうしてしばらくはシナリオを淡々と進めていくことになった。
 しかし、テストプレイが始まったのも束の間、いきなり大きな問題にぶち当たってしまった。

 「味方の強さにバラつきがありすぎる!」

 ロボット基準の配布データは、等身大基準と比べるとキャラクターの強さの格差が非常に激しかったのだ。例えば、マジンガーZとガンバスターではそもそもの強さが違いすぎて、もはや一緒に戦うといった感じではない。コンバトラー・Vは5人分のSPが使え、それだけで大幅なアドバンテージだ。νガンダムは運動性が高すぎて敵の攻撃が全く当たらず、フィンファンネルで全てのザコ敵を一撃で落とすことができてしまった。私はここに来て、何故今まで巨大ロボットの無限ダンジョンが作られなかったのかがわかった気がした。そこに広がっていたものは、強い者だけが使われ、弱者はお役御免という、強さこそが全てという弱肉強食の戦場だったのだ…。


・解決策

 まずどうしてこのような問題が発生するのかを考えてみた。それはいきなり最強クラスの機体で味方を参戦させているからに他ならない。それならば、こちらも本家スパロボのように最初は弱いユニットで仲間になって、難易度を見計らって後で強い機体と取り替えればよい。また昔の『軟弱ダンジョン』シリーズでも、強すぎる味方に対して途中で強化イベントを組んで対応していたことがあった。素直にこれに従うことにした。イベントの名前は、私は安直なネーミングが好きなので、主に「Upgrade」コマンドでユニットを取り替えることから「アップグレード」と名付けることにした。
 また大人数であることが問題になったコンバトラー・Vのようなユニットに対しても、良いアイデアが浮かんだ。複数のパイロットが乗り込むユニットは、大抵は合体するロボットであることに気が付いたのだ。それなら、最初はみんな分離機の状態で出てきて、全てが揃った時に始めて合体機として戦えるようにしてはどうかと考えた。パイロットが多ければそれだけ強いユニットであると言えるので、この分離機を集める手間の分がバランス調整の助けになると思った。こうしてロボダンの2大特色とも言える「アップグレード」「合体イベント」が誕生したのだった。

・その他細かい仕様

 全ての結果には理由がある。つまりロボダンの中でそうなっているものには、それなりの理由があるということだ。例えば以下のような仕様がある。
 ボスキャラは必ずしも倒す必要はなく、途中で撤退するようにした。ロボット基準では戦艦のような高いHPを備えたボスキャラが多く、序盤では倒すことが困難であること、また削りの作業でプレイヤーがだれてしまうことを防ぐのが目的だ。
 また本作では敵がスペシャルパワーを使ってくる仕様になっている。スパロボでは敵がSPを使うことがないので、やや異質な設定だったかもしれない。しかし私は日頃から攻略本に目を通していて、敵のパイロットにもきちんと精神コマンドが設定されているにも関わらず、本家でこれが活かされないことを逆に残念に思っていた。だから自分のシナリオでは敵のSPもちゃんと効果を発揮してもらおうと考えたのだ。ただしパイロットがSP「ド根性」や「復活」を持つ場合は別のSPに置き換えた。もちろんバランス調整のためだ。
 アイテムショップには、主に「味方が必ず出現するアイテム」と「特定のスペシャルパワーが発動できるアイテム」の2つを用意した。これも軟弱シリーズから発想を得ている。特にSPが使えるアイテムはボス狩りにも有効にはたらき、難易度の緩和に繋がるとも思えた(もっとも、Ver1の時点では強化パーツに装備する形式だったのでやや扱いにくかったが)。
 味方の数が多くなりすぎる問題には、「ユニット倉庫」というシステムを設け、手持ちのユニット数を減らすことができるようにして解決を図った。「ロボットを格納する」という考え方はシナリオがロボット基準だったからこそできたことだ。これはなかなか上手いアイデアだと思った。
 シナリオではキャラクターを仲間にする方法として「ダメージを与えてから説得する」という形式を採用した。これは『軟弱ダンジョン』との差別化を図りたかったからだ。それに等身大のジャンルとは違い、壊れたロボットがその場で再生するのは違和感が強いという理由もある。また「せっかく説得をするのだから、キャラクターにも何か喋らせよう」と思い立ち、セリフも作成することにした。このアイデアを閃いたのはまさにシナリオリリースの直前で、おそらく一番最後に作ったプログラムだったように思う。後で気が付いたことだが、これは『第1次スーパーロボット大戦』のオマージュにもなっていた。
 その他にも、テストプレイを行っていて「こうだったら面白いかも」というアイデアを思いつけば、すぐに実現に向けて考え、プログラムを追加していった。ロボダンの中身は複雑でよくわからないという意見をもらったことがあるが、要はこの小さなアイデア集が積み重なってとんでもないことになっているのだ。ロボダンという一本の竹にインクルードという短冊をつるし、あまりに短冊が多くなった結果、竹がどこにあるのか見えなくなっているのがロボダンなのだ。

・魔のリスタート

 リスタートコマンドについてもここで解説しておこうと思う。リスタートは同じステージを初めからやり直せるというシステムだ。私のシナリオでこれを使うとマップや敵の配置、出現する味方まで、全て入れ替わりが起こってしまう。
 このコマンドはSRC本体に備わっている仕様なので、シナリオの側でどうこうできるものではない。ただし、独自に対策を施すことは可能だ。現に『軟弱ダンジョン』シリーズでは、リスタートの対策が備わっていて、途中からでしかやり直せなくなっている。
 しかし、私はあえてこの仕様をそのまま残しておくことにした。なぜならデバッグをするのに便利だったからだ。ゲームを遊んでいて何か不具合が見つかったとき、その場でコードを書き換えてリスタートすれば、すぐに確認ができる。もうひとつは、これが別の面白さに結びつくかもしれないと考えたからだ。欲しい味方を登場させたいとき、合体機を揃えたいとき、ユーザーのほうでリセットができる機能があれば、ゲーム性の幅が広がると思った。ただし勘違いしないでいただきたいのは、私は「リスタートを前提としたシナリオ作り」は行っていないということだ。目指すところはリスタートなどしなくてもストレスなく順当な難易度で楽しめるシナリオであり、逆にこれが茶飯事になるようなら難易度が高すぎると思う。この考えは今も一貫して変わっていない。


・シナリオ公開

 全てのアップグレードイベントと合体イベントを作り終えた頃には、シナリオはかなり洗練されたものになっていた。もうそろそろ公開に向けての準備が必要になりそうだ。
 まずはシナリオのタイトルを考える(実はまだ考えていなかった)。前にも言った通り、私は安直な名前が好きだ。また、印象を持たせるために、プレイヤーにとってわかりやすく面白そうな名前でなければならない。そこで私は「ロボット」と「無限ダンジョン」そして「SRC」という単語を繋ぎ合わせ、『ロボットダンジョンSRC』というシナリオ名を考え付いた。今考えても実に単純だが、それまでに類似したシナリオが無かったために、これだけでも十分なインパクトを持たせられると考えた。
 この時の私は自分のホームページを持っていなかったため、シナリオの公開にはまずページ作りから始めなければならなかった。またも高いハードルだったが、これにはGSCが親切にもHP作りの手引きを行っていたので、そこまでの苦労はなかった。とは言え難しいことなど何も出来ないので、用意したのは「シナリオ置き場」と称した、ただの真っ白いページに、白黒の掲示板が置かれていて、シナリオがアップロードされているだけ、というシンプル極まりないものだった。

 ───時は2006年の1月。
 味方数は100体前後。30Fまでの難易度保証限定。アイコンなし。白いページにリンクが1つ。
 私は『ロボットダンジョンSRC』のVer1を公開した───


───つづく。

文責:ナオヒラ



戻る
シナリオの配布ページへ
ホームページのトップへ