茫漠たる 4月 下旬 編
4月21日(金) 生徒の密かなたくらみ
怒濤の一週間最終日。どの担任にも疲労の色は隠せない。私もとりあえず倒れず生き抜き
ました(笑)今日もまだまだ色々ありました。まずひとつは球技大会のメンバー決め。うちの学校は
5月の1、2日に球技大会があります。全員参加するものなのですが、そのメンバー決めが
今週中というわけで、自分のクラスの現代文の授業を使って決めました(このところ歯科健診とかで
何度かつぶれているので、テスト前試験範囲が終わらなくてやばいかも(^^;))当然うちのクラスは
女子クラスですから、メンバーは全て女子種目に参加。サッカーとバスケ、それぞれ2チームずつ。
グラウンドやコートの関係上こういう割り振りで行うらしい。さてこういうのって、とかく揉めがち
なものだが、果たしてうまく決まるか?体育委員はうまくまとめられるか?....と心配して
いたら、何事もなくすんなり決まってしまった。全然揉めない。あれ?って感じ。前回のクラスの
係決めもそうだが(この時は私が席を外した休み時間の10分のうちに決まっていた!(笑))この
女子クラス、こういう決めごとは、なんかあっさり決まる。全然揉めない。以前に持っていた
クラスなんかは「俺はサッカーに出たい!」とか「バスケは絶対嫌だ!」だの「保健委員なんて
やりたくない!」とかで、なかなか決まらなくて苦労した思い出がある。だからあまりのあっさり
決まりに拍子抜け。じゃ、すぐ授業をやろうかと思いきや...わかりましたよ、なぜあっさり
決まったか。奴らに思惑があったのです(笑)
それは...席替えでした。何人かからは席替えしたいと言われていたのですが、どうやら
クラスみんなで密談し、早くメンバーを決めて、残りの時間で席替えをしようという魂胆だった
のです。今は出席番号順に単純に並んでいるだけで、私的には全然不都合はないのですが、
やはり友達同士で近くになりたいということで、席替えコールが起こってきたのです。でも
彼女らが希望しているのは、単純にただ席替えをするというわけではなく、自由に決めさせてという
もの...。うーむ。そうなると話は別。今まで長い教員生活、自由に席を決めさせて、良かった
試しはほとんどなし。お喋りが多くなって授業中うるさくなったとか、そんなことが何度もあった
のです。さてどうしたものか...。ちなみに以前担任を持っていたクラスでは1年間席替え
しませんでした。初めのうちはしつこく言ってきたのですが、そのうち諦めたのか(^^;)全然言って
来なくなりました。でも本人たちも別にたいして不都合はないと解ったみたいでしたけど...。
さて今回はどうしましょう...。とりあえず今日の時点では保留としておき、逃げてきました(笑)
そして放課後、もうひとつ就職者ガイダンスがありました。これは7月にある会社訪問に向けて
今後のスケジュールの連絡や求人票の見方の指導とか、そういうことをやりました。うちのクラスも
約15人も就職希望。この不況のさなか絶望的ではありますが、何とかならないものかと、
生徒以上に、進路指導部の先生の説明を聞き入ってしまいました。みんな真剣な中にも、現状の
厳しさを知り、かなり意気消沈した感じ。まだまだスタートラインに立ったばかり。これからが
本当の勝負ですよ。お互い頑張りましょう。
4月24日(月) 担任のつれづれ
この週末はへたっていました。まだまだ疲れが抜けきれない。しかしそれでも月曜日はやって
くる(泣)
さて本日は6時間目に委員会の時間があったぐらいで、特にたいしたことはなし。委員会というのは
文化委員会とか美化委員会とかの係になった、各クラスの代表がそれぞれ集まり、委員長やら
仕事の分担をする時間でした。この委員会制度も学校によってかなり違いがある。学校によっては
生徒が自主的に集まり、自分たちで積極的に活動しているところもあるが(ほとんど部活動に
近い形で)うちの学校の場合、とりあえず何かやらなきゃいけないときだけ、指示があり、集まって
なんかする、という形。例えば大掃除があるから、健康診断があるから、保健委員はその補助と
して手伝えとか文化祭があるから文化委員は仕切れとか...。だから委員会活動は全然活発では
ない。自主的というより、各行事のお手伝い係としてやっているのが現状。それも年に数回程度。
だから生徒も自分が何委員会だったかなんてすぐ忘れてしまう。もちろん担任すらも(笑)そのため
今日の集まりも、誰が何委員かを確認するのに一苦労。まっ、そういう感じでも担任は
務まってます(笑)
さてそれとは別に、今日のアマゾネス・クラスの状況(笑)いつもと変わらず。でも担任は
相変わらず気遣い(笑)例えば明日、尿検査があるため、容器を配布したのだが、以前なら
「いいかーっ、お前たち忘れるなよー。明日の朝、一番搾りだからなー!途中で犬のおしっこ
取ってきてもばれるぞー!」(笑)という感じでやっていました。でも女子クラスでそんな馬鹿な
物言いをすると途端にひかれてしまうので、ごく普通に「忘れないように。」はぁー、疲れますね。
そう言えば、うちのクラスのとある生徒が学校へ来る途中、変なオヤジに声をかけられ
「遊ばないー?」と言われたそうな。そろそろそういう時期ですかね。特に女子クラスとしては
気をつけるようにと言いましたけど。ほいほい付いていかないようにと。で、その生徒に「いくつ
ぐらいでどんなやつだった?」と聞くと「先生ぐらいのオヤジだった。」だって、ほっとけ!
4月25日(火) 働きたくない人たち
放課後に2つの仕事があった。ひとつは自転車点検、通称チャリ検。自転車通学の多い本校では
生徒の交通安全を考え、時々実施している。盗難防止のための鍵の点検。安全のための
ブレーキ・ライトの確認。防犯のために登録番号やステッカーのチェック等々。こういうひとつ
ひとつのことが大事なんですね。でも本音を言えばちょっと面倒臭いけど(^^;)
そしてその後、就職希望者による求人票閲覧。これは前回の就職者ガイダンスで説明された
求人票の見方を元に、今度は個人個人で昨年度来た求人票を具体的に見て、どこがよさそうか
あらかじめ目星をつけておくというもの。7月1日に急に来た求人票を見て、たった5日間ぐらいで
すぐ決めて、すわ会社訪問!というのも、なかなか酷なもの。だからあらかじめ、やり方や段取りに
慣れておく意味も込めて、こういう作業をやるのだ。しかしである。うちのクラスの子たちは...
すぐ飽きてしまう。自分のことなのに...。「先生、全然わかんないよ。就業地って何?」とか
「職種の現業って何?」などなど解らないことばかりで、みんな音を上げていた。確かにそういう
基本的なことが、実は初めての経験なので戸惑うことも多いのだ。「先生ーっ、福利厚生って何?」
こういうことをいちいち教えていくのも本当に大変。そして何とか見つけだした自分の好みの
会社の求人票から自分のメモへ、基本給・休日・試験内容・勤務地等々抜き出すという作業を
やったのだ。でもまともに求人票も読めなくて、みんな半分投げやりというか戦意喪失..。
まだまだ、戦いはこれからなのにね。でもこうやって毎年挫けて就職戦線から離脱し、
プータローとかフリーターへ転職(?)するものも多い。これはこれでけっこう困ったものなのだ。
「どうだ。好みの会社見つかったか?」
「もう、先生、全然わかんないよ。こんなに就職って大変なの?」
「そうだよ。みんなこうして就職していくんだよ。」
「これならバイトの方がずっと楽だよ。」
「じゃあ、一生バイトしていくつもりか?」
「うーん、それもねぇ...。」
「だろっ?なら頑張って探すしかないだろ。世の中そんなに甘いもんじゃないんだから。」
「はぁーっ.....そうだ!先生!あたし、永久就職するからいいわ!」
「・・・・・」
4月26日(水) 無駄口をたたく人たち(人たちシリーズ2)
最近どうも体調がよろしくない。単に年のせいだとか、慣れない女子クラスの担任でストレスが
たまっているとか、そういうのが複合的に合わさってヘロヘロになっているのだが、そういう
虚弱教員のために本日、健康診断がサクッとあった。レントゲンと心電図と血液検査。それも
授業の合間を見計らって。というより生徒の検診の合間を縫って。日頃不健康な生活をしていると
自負している私としては(笑)ちょっと気が引けるけど、やっぱり自分の身体は大事ですからね。
で、まずレントゲンだったんだけど、これって毎年毎年やっていて大丈夫なんだろうか、という
素朴な疑問。被爆量が蓄積されるってことはないのかなあ。ちょっと不安。そして次に心電図。
教員の検査時間は、わずか30分ほどしかないので、1時間目の授業が終わって、速攻走って
きたから心臓バクバク。こんなんで波形が崩れないのだろうか(^^;)と思いつつ、検診車へ。
上半身裸になり、足首と心臓あたりに吸盤の付いた電線をつけられる。そして1分ほど寝ていると
もう終わり。あっけないほど。まっ、昨年もやっているので別にどうということはないけど..。
ところが隣で同時に心電図を受けていたT先生が、やたらびびっていて笑ってしまった。
やる前からとても不安げで
「O−TEACHER、これは別に害はないよね?」
「検診ですからあったら大変でしょう。」
「そうだよね。そうだよね。大丈夫だよね。」
「去年もやりましたでしょ?」
「そうでしたっけ。でもこれって電気が通るんでしょ?感電死するなんてことは...」
「さぁ、聞いたことないですね。でも絶対大丈夫でしょう。」
「うーん、そうだよね。そうだよね。」
教員なんて可愛いもんです(笑)そしてその後採血。相変わらず血管の見えにくい私は三度も
刺されました。何度も血管を探し針されている間に、何人もの先生たちが傍らで終わっていくのを
横目で見ていました。そこで気づいたこと。教員ってしょうがないなぁということ(笑)必ず
何か看護婦さんに軽口をたたいていく。
「俺は酒飲みだからアルコール混じってかもしれねぇぞ。ガハハハ。」
「あの人は太ってますから、3本ぐらい抜いてやって下さい。ハハハハ。」
「私の血ってなんか濁ってないですか?」
「やっぱり俺は血の気が多いから、注射器に出がいいねぇ。」
「看護婦さんって独身なの?」
本当にしょうがないですね(笑)えっ?O−TEACHER、お前も何か軽口を言ったんじゃ
ないかって?ご明察(笑)もちろん言いましたよ。血管が見つからず、何度も刺し直して謝る
若い看護婦さんに向かって一言。
「ごめんなさい、何度も刺してしまって痛かったでしょう?」
「いえ、大丈夫ですよ。看護婦さんのその笑顔の方が、僕の心を刺し抜いたけど。」(爆)
4月27日(木) 自分自身を見つめ直す人たち(人たちシリーズ3)
うちのクラスの子たちは、私の顔を見れば「席替え、席替え!」と話しかける。私の名前は
「席替え」ではない!O−TEACHERだ!うーむ、どうしよう。席替えするか?でもやっぱり
まだ色々問題もあるし...。そ・こ・で!席替え問題を含め(それほどのことか?と思われる
かもしれませんが、生徒にとっては重要問題なのです)やはりここは私のクラス経営方針について
今一度ビシッと言っておかねばと思い、5限目のLHRで熱く語ってしまった!(珍しく)
まずは席替えに関してから。今すぐにはするつもりがないということ。それは新しい教科の先生
たちも、顔と名前が覚え切れていないし、年度当初は事務的な手続きが多く、それをお互いに
こなすさいに、出席番号順が良いということ(担任の都合だけでなくもちろん生徒にとっても)
別に席替えをしないわけではなくて、そのあり方についても問題提起した。生徒の方としては
友達同士好きなように席を決めたかったらしいので、それが果たして良いことかどうか。
もちろん仲の良い人同士は良いかもしれないが、そうすると疎外される人が出ないとも
限らない。また仲の良いものだけのグループ化が進み、クラス全体としての和が出来にくくなる
懸念もある。そして何よりも問題だと思ったのが、自分たちだけが要求して、何の義務も
果たそうとしないことだった。クラスのこともきちんとやらない。出欠状況も改善されない。
それで席だけ自由にさせて!?それって虫が良すぎない?世の中そんな理屈通らないよ。何かを
望むならそれなりのことをしないと。それぐらい高校生ならわきまえて欲しい。言うだけで
なんでも思い通りになるほど世間は甘くない。やるとしても今のままではちょっと...。
一人一人考えてみて下さい。たかが席替えだけど、これも一つの個人の意識の問題だから。
でもみんな真剣に聞いてくれました。伝わったかどうかはわからないけど、とりあえず今日は
席替えできないことはわかったでしょ(笑)そしてその余勢を駆って畳み込むように、「自分を
見直す」つながりで、個人個人の評定計算をさせた。先日来の二者面談で感じたのだが、生徒は
あまりに自分の現状を把握していない。進路の話をしても「専門学校へ推薦で行きたい。」
「じゃあ、2年生までのトータルで、成績の平均はどのくらい?」と聞いても、みんな
わかっていない。自分の現在の成績の平均も知らないで、どのレベルの学校へ進学できるか
なんて、決められるわけがない!ということがよーくわかったので、一人一人の2年次までの
各教科の成績表を作り、それを手渡して、手順に従って計算させた。みんな四苦八苦しながらも
超真剣。なんとか計算して自分の評定(5段階の成績)を出す。それがどのレベルなのか、
A(5.0〜4.3)、B(4.2〜3.5)、C(3.4〜2.7)、D(2.6〜1.9)、E(1.8以下)に照らし
合わせて自分の状況を確認した。大学推薦なら3.5〜4.0は欲しい。専門学校推薦なら3.0が目安
等々。ということは、各進路先に提出する成績は3年の1学期までがほとんどだから、1学期に
どのくらい頑張って成績を上げればいいのかが見えてくる。こういう自己分析があまりに
足りなすぎたのだ。目の色が変わって真剣そのもの。こうでなくっちゃあねぇ、とご満悦の
担任に、とある生徒が一言。
「先生、フリーターってどれくらいの評定が必要なの?」
4月28日(金) 乙女心と身体測定
本日午前中使って身体測定。以前はスポーツテストと抱き合わせてやっていたのだが、うちの
学校の場合、スポーツテストは体育の授業中に実施しているため、純粋に身体測定のみ。身長や
体重、座高、聴力、視力を測定する。この手の身体測定にはみなさんも色々思い出がある
だろうし、色々な思いが交錯する行事でもある。少しでも身長を高く見せようと髪型を
気にしたり、思いっ切り身体をつっぱらかしたり(笑)また体重を少しでも軽く見せようと
前日から食事を抜いたり(特に女子)また以前はあったのだが(現在はない)女子の胸囲測定に
男子が興味津々だったり(笑)とまぁ、色々悲喜こもごもなわけです。
で、今日はどうだったかというと、まぁ、特に大過なし(^^;)朝の連絡ではやり方や順番などを
指示の他に、さばを読まないようにと指示(笑)特に女子の場合、体重計測で、測定している先生に
向かって「先生、少しまけて。」と懇願して時間がかかる場合が多いので。でもさすがに3年生
ともなると堂々としたもので「ははーっ、2キロも太っちゃった。きゃははは。」てなもんです。
で、一通り測定が終わり、最後LHRで、そのデータを使いローレル指数とか理想体重と
どれほどの差があるかなどを計算させた。この時ばかりはみんな真剣。今まで楽しげに話して
いたのに、計算し終わると途端に表情が曇るものも...。そしてその後、健康に関する話
(養護の先生からの資料のプリントを使って)過激なダイエットのこととか糖分の摂りすぎの
話とか、免許を取るために必要な視力の話とかをする。でも先ほどのローレル指数(目安と
なる太りすぎ・痩せすぎの指数)が気になって全然話が耳に入らない様子。でも以前に比べて
太りすぎを気にするというよりは、ガリガリの細い足をした痩せすぎの子の方が気にしている
感じ。うーむ、痩せすぎても気にするのね。
「先生、この数値見るとあたしダメだ。」
「そんなにすごかったのか?あまり太っているように見えないけど。」
「でも数字ではすごいんだもん。」
「それよりも体脂肪の方が重要だからな。どれどれ、数値を見せて見ろ。150を超えて
いなければ心配しなくても....。」
「そんなもんじゃないよ先生。だって2800とか出てるんだもん!」
「・・・・だから、そこはかけ算するんじゃなくて割るんだろ...。」