磊落たる 9月 上旬 編



9月1日(金) ブルーな気分・ブラウンな憂鬱

        とうとう来てしまいました2学期。仕方ない仕事ですから、またまた高校教師の憂鬱が始まり
        ます。さて本日は当然のことながら始業式...といきたいところなんですが、うちの学校は
        その前に中清掃。もう学校の掟にどっぷりと浸かってしまっていると、何の疑問も感じないけど
        この「中清掃」って言葉、とっても変ですよね。学期末とかにある50分の掃除を「大清掃」
        ふだんの15分の清掃を、ただ「清掃」でもって30分ぐらいやる、大清掃でもなく普通の
        清掃でもない中くらいな清掃を「中清掃」何か笑っちゃいますね。中くらいというより、本日の
        うちのクラスの掃除振りを見ていたら中途半端清掃、略して中清掃ですけどね。

        しかしそれにしても久々の生徒との対面に唖然。2学期が始まってブルーな気分なのに、それを
        飛び越してブラウンな気分。えっ?何がかって?髪の毛の色ですよ(笑)って笑い事じゃない
        ぐらい。クラスのうち、1/3ぐらいが、髪の毛が茶色くなっている。中にはほとんど金髪の
        やつもいる(怒)夏休み中に遊びまくった名残だろうが、それにしてもあまりにひどい。
        そりゃあ、夏休み中だから、茶色にしようが金髪にしようが好きにしていいけど、今日から
        2学期で学校ですよ。けじめをつけてきちっと元に戻して切り替えてくれないと...。朝から
        ため息混じりでがっかりしてしまった。怒る気力もなし。でもこのままでいいわけないから
        学年主任及び担任の私より、いちおう校則でもまだ決まっているわけだし、きちんと元に戻す
        ように厳重注意!疲れます。年々こういうけじめのなさが目立つような気がします。ブラウンな
        憂鬱でした。

        そしてその後、席替えやら二者面談の指示やら、就職組への入社試験についての連絡やらと
        初日からトップギアに入りっぱなし。この分ではすぐオーバーヒートしそう。そして明日には
        またまたPTA理事会で、PTA新聞の作業があるから、その段取りと...もう泣きそう。
        あーあ、精神的にも暑さにもへばっている私でした。


9月2日(土) 終わりなき土曜日

        本日は課題テスト。夏休みの宿題の成果を試すために、国語と英語の試験が40分2限あり
        その後に3年生だけ服装頭髪検査。しかし...本日はその裏でPTA理事会があったため
        朝のSHRへ行ったきり、全然クラスの方へ行っていないので様子は分からず。それでも昨日
        多少言ったせいか、朝見たら少し髪の毛の色が直っていた。でもまだしぶとく直していない
        ものもいる(怒)

        さて私の方はPTAの方へ。今学期もまたまたPTA新聞を出すのだが、その広報関係の
        お母さん方の集まれる日が、今日を含めてたった2回しかない。それではとうてい全8ページの
        新聞が出来るわけはない。ということで実は昨日遅くまで残って、レイアウトなどを4時間
        かけてやっていたのだ。だから今日の会合では、こんなもんでどうですか?と承認をもらいつつ
        2回の会合で出来るように段取りをつけていたのだ。ところが!今朝来てみると机上に
        ファックス...。広報部長のMさんから。『8/6に集まり、以下のようにだいたい
        決めておきました。明日の会合では役割分担から始めたいと思います。』....絶句!
        ならもっと早く連絡してくれよ!多分8/6の父兄だけの集まりは、おばちゃまがたの
        井戸端会議で、その後連絡もなかったから、なにも決まらなかっただろうと思って、わざわざ
        昨日4時間もかけて段取りしていたのに...(泣)ということで本日の会合で、また一から
        スタートしました...。その後色々打ち合わせがあり、午後も残って色々作業をし、何とか
        分担も決まり、やってもらえそうなところまでいきました。

        そして午後遅くなってからが、やっと私の本来の仕事。まずは課題テストの採点。夏休み明けで
        生徒も全然乗っていないから、国語の試験は、オール漢字。読み書き、送り仮名、対義語など
        一見簡単そうで実は意外と出来ない問題でした。さていざ採点ですが、これがなかなか進まない。
        夏休みボケしているのは生徒だけではなく、こっちもそう。この程度の問題なら、集中すれば
        2時間ぐらいで終わるところが、何度もミスしてなかなか進まない。結局集中力のなさが
        災いして3時間以上かかってしまった。

        そして月曜日からは二者面談(生徒と私)があるので、その段取り。そして何よりも授業が
        始まるので教材研究。ふーっ、土曜日だっていうのに、いつ帰れることやら。


9月4日(月) この日記は夏休み、全然更新していなかったのに...(笑)

        高校3年の夏休みともなると、小学生みたいに宿題とかいうのはほとんどない(多分)まぁ、
        学校によっては、大学向け夏期講習やら予備校やらで、それどころではなかったり、うちみたいに
        就職活動が盛んなところも、宿題なんか出している暇もない。それでもただ遊ばせておくのも
        因業なので(笑)とりあえず、課題テストの出題範囲の漢字ぐらいやっておけという指示を出して
        おいた。それと英語のプリントが出たくらいで、はっきり言って宿題としては超楽、真面目に
        やれば3日で終わるぐらいのものだった。元々こちらも形式的に出しているようなところもあり
        生徒もその辺は見事な嗅覚でわかっているので、提出率悪し。

        ところがである。こちらも実は形式的になっているのだが、「夏休みを終えて」という400字
        程度の作文と、夏休み中の予定表、これらもいちおう夏休み前に配って、2学期当初回収する
        ことになっている。でも実際には、これこそあまり意味がないもので、以前は40人中6人ぐらい
        しか出さなかった。こちらも熱心に回収する気もないので、あまり口うるさく提出を迫らなかった。
        なら、止めればいいと思う無駄なことのひとつ(笑)

        それがである。うちのクラス、けっこうこれの提出状況がいいんですよ。なぜかみんなよく
        出してくる。2年までの担任の指導の賜物か、はたまた建前上、ちゃんと出すようにと言ったせいか
        全然予期していないほどの数の多さにちょっとびっくり。それでこの夏休みの予定表というのは
        一行で、その日のコメントを書く程度なのだが、これがやはり女子の勤勉さなのか、よく書いている。
        その日のバイトの予定、友達と遊びに行ったこと等々。みんな意外とよく書き込んである。
        おかげで夏休み何をして過ごしていたか、よーくわかるのだ。こういうまめさというか、熱心さは
        女子高生特有のものだろうか?そういえば彼女たちの手帳には、色々スケジュールがカラフルに
        書き込まれているもんなー。だいたい夏休みの日記なんて、夏休み最終日にてきとーに
        つじつま合わせで、やってもいないスイカ割りとか書いたりしたものだけど(実話(笑))これを
        みると、意外にみんなぼちぼち書いているのね。ちょっと偉いと思ってしまいました。でも勉強した
        とはほとんど書いていないところはご愛敬か(笑)

夏休みの予定表


9月5日(火) 二者面談もつらいのよ

        実は今、うちの学校、3限授業中。毎年この時期、5日間ほど午前中授業で終わるのだ。まるで
        小学校の低学年みたいに(笑)昔からこの日記を読んでいて、なおかつ記憶の良い方なら覚えて
        いるかもしれないが、実は今、二者面談&中学校訪問期間なのだ。授業が終わった午後に、
        担任は、夏休みですっかり変わってしまった生徒と進路や生活に対しての面談、副担任たちは
        中学校を回って来年度の受験生集めのための挨拶回り。昨年まで2年間副担任でしたから、
        昨年一昨年の、この時期の日記を見ると、中学校訪問の裏話が載ってたりする。でも今年は
        担任なので生徒と面談。特に3年生なので、進路最終決定に関して話したりしているのだ。

        でも就職組は当然のごとく、ほぼ済んでしまったので、十把一からげで、入社試験の連絡をまとめて
        して、それで済ましてしまった。問題はその他。プー太郎グループは、二者面談といっても、勝手に
        すっぽかすヤツもいて、昨日あたりはキレそうになったが、でも考えてみれば、もう始めからプーと
        決まっているので、今更話すこともあまりないし、せいぜい髪の毛の色とか遅刻が相変わらず
        減らないと、お小言を言うぐらいで終わり。そして何よりもメインは、大学組と専門学校組。これらの
        ほとんどが推薦で行く予定なので、その出願期間というのがどこも10/1から中旬にかけて。
        だからもうすぐにでも志望校を決定して、願書を取り寄せて、推薦書を書いて...と、時間がない
        のだ。だから生徒にも、夏休み中に学校見学を2、3校して、できれば願書やパンフレットをもらって
        きて、親とよく相談して、どこを受けるかきちんと決めて、この二者面談の時に言うように指示を
        出しておいたのだ。

        ところが...である(出た!いつものパターン(笑))やっぱりいるんですよ、全然決めてない
        ヤツが。何度も書くけど、10/1願書提出。ということは9月下旬に願書清書、推薦書作成。
        ということは願書取り寄せるのは9月中旬まで。だからどこを受けるかというのは、もうすでに
        決まっていないと、逆算してもギリギリなわけです。そのことは口を酸っぱくして言っていたのに
        この期に及んで「まだ決めていない...。」なんて言うヤツがいるわけです。一般受験なら
        それでもまだいいけど、うちみたいに学力が低い学校は推薦じゃないと、なかなか志望校合格は
        難しい。だから早め早めの、大学・専門学校の青田刈りレースに乗っていかないと難しいのです。
        それなのに、うだうだ決めかねている...。それだけならまだしも、「夏休み中遊んじゃって、
        学校見学も行っていないから、全然わかんなーい!」などと言うヤツまでいる始末(泣)こっちは
        怒り心頭ですよ。こういうヤツに限って「先生、この学校にするー!推薦書提出、明日までだから
        急いで書いてー、お願ーい。」とか言ってくる。やれやれです。

        でも最近こういう自分の進路をきちんと決められない生徒って増えているんですよね。なまじ
        少子化で大学や専門学校へ入るのも楽になったおかげで、かえって選択肢が増えて決められ
        ない...。良い時代になったのか悪い時代になったのか...。

          「じゃあ、どこも見学していないのか?」
          「うん、だってどこ見てきていいかわかんないんだもん。」
          「だから前に話したとおり、学力的に見合って、通える範囲で、自分のやりたい勉強ができる
           専門学校を2、3校見て来いって言っただろう?」
          「だってやりたい事ってぇ、トリマーとかぁ、美容師とかぁ、幼稚園の先生もいいなぁ、
           あと、コンピューターとかできるとすごくない?」
          「・・・・それじゃあ全然バラバラだろう。もっときちんと絞らないと、学校選びも
           できないだろう?」
          「だってぇ...」
          「お前は将来どうやって生きていきたいんだ?」
          「うーん、遊んで暮らしたい〜」
          「・・・・・」


9月6日(水) 専門学校の誘惑

        昨日に引き続きまだまだ二者面談。一昔前に比べて専門学校希望がとても増えた。以前は
        専門学校といえば、大学行くほど頭はない、でもまだ就職したくない...という中途半端な
        生徒が行く、そういう傾向が強かった。しかし近年の不況で、大学行っても職がない、なら
        専門学校で資格を取った方が後々有利、そう考えて積極的に専門学校へ進む者も多くなってきた。
        二者面談をやっても、そういう気持ちで希望する子も何人かいる。実際そういう子たちは、
        昨日の子とは違い(笑)しっかりと夏休み中に学校見学へ行って、パンフレットをもらってきて
        色々準備しているのだ。しかし中には、全然聞いたこともないような学校とか、所在地がどこだか
        わからないようなものもけっこうあり、生徒には、もらってきた入学案内やパンフレットを
        実際に学校へ持ってきて見せてくれるように指示している。

        そして今日の空き時間にそれらのパンフレットを隅から隅まで読み込んだ。いやー、こりゃあ
        すごい...。まさかここまでやっているとは...。大学側との生徒の取り合いですから
        生徒が集まらなければまさに死活問題。だから少しでも専門学校へ入ってもらうために、あの手
        この手の力の入れよう。パンフレットも豪華で、内容も目を引きやすい。楽しげな
        専門学校ライフを強烈PR。こういう華やかさに騙されちゃうんだろうなぁ...このパンフレット
        お金かかってんだろうなぁ...そんなことばっかり考えちゃいました。まぁ、パンフレットの
        華やかさはさておいて、要は入学案内書の方。もう今時入学願書がただで付いてくるなんて
        当たり前(昔はわざわざ願書ってお金出して買ったような記憶が...)それどころかその願書の
        書き方もえらく簡略化していて、すごいところは名前と学校名と印鑑だけでOKみたいなものも
        ある。推薦書も担任のサインひとつで良いようなものも...。要はいかに入ってもらうかが大事、
        いちいち面倒臭いのは受験生に嫌われる、すべてシンプルに。中にはホームページで申し込みが
        でき、願書発送すら必要ないところも。そして出願基準もないところも多い。例えば成績はだいたい
        5段階で2.7以上なんて書いてあるところも少なくなった。成績不問!もちろん合格発表は
        提出日より3日以内...つまり出願した時点で合格、早い者勝ち。そして極めつけはお友達を
        紹介していただくと入学金30%オフ。しかもそのお友達と同じクラスにしてあげます...。
        すごすぎる...。もう専門学校はここまでやるかという感じ。なんでもありなのね。それじゃあ
        専門学校でいいやっていうやつも多くなりますよね。


9月7日(木) O−TEACHER、びっくりする

        本日は1時間授業の後、その後体育館で体育祭の予行練習。本当は明日だったのですが、
        天候不良グランド不良のため、火曜日に順延。私も招集の係で当日は忙しそう...。

        でも今日のネタはそんなことではない。今朝SHRやったときに、いつも絶対に休みも遅刻もしない
        M奈美の姿がない。あれ?珍しいこともあるものだ、なんて思っていたら、他の子たちが「Mちゃん、
        警察に行っているよ。」とのこと?何?警察っう?何をやらかしたんだ!?変なことやるタイプじゃ
        ないのに...と驚いていると、1限目の終わりに来る。すかさず捕まえて事情を問いただすと
        交通事故に遭って、それで警察に行っていたとのこと。良かったぁ、変なことではなくて(笑)
        えっ?でも交通事故って...よくよく聞いてみて驚いた。事故に遭ったのは月曜日の夜、バイト
        帰りに自転車で横断歩道を渡っていたら、いきなり車が突っ込んできたとのこと。月曜日?だって
        昨日も二者面談やったのに何にも言ってなかったじゃない。「えっ?お母さんから電話ありません
        でした?先生はてっきり知っているものだと思って。」聞いてないよー!そうと知っていたら進路の
        面談どころじゃないでしょう。で、よくよく話を聞いてみるとこれがまたひどい。相手は飲酒運転で
        信号無視。自転車にぶつかりそのまま数メートル飛ばされて気を失ったとのこと。救急車で搬送
        されてすぐ病院へ。幸い軽い打撲程度で済んだからいいようなものの、一歩間違えば...。怖っ。
        それで今日警察に行き、詳しい様子を聞かれて遅れたとのこと。おいおい、昨日も普通に来ていた
        し、担任なのに、そんな大変なこと始めて聞いたよ。でも本当に無事で良かった。大事な生徒を
        亡くすところだったなんて縁起でもない。でもM奈美は、ちょっと天然入ってますから(笑)逆に
        パニックにならなくてすんだ様子。でも事故の状況を聞けば聞くほど、九死に一生スペシャル
        みたいな感じ。やれやれ。どっと疲れてしまいました。

           「でもね、先生。警察の人が言ってたけど『あと1秒ずれて早く横断歩道に入っていたら
            死んでいたかも。』って言っていたよ。」
           「本当かよー!でも良かったなぁ、たいしたことなくて。」
           「うん、本当に良かったですよ、トロくて。
           「・・・・・」


9月8日(金) それって、何やる科?

        放課後文化祭の打ち合わせ。きちんとした企画書提出が来週なのだ。しかしこの時期、
        本当に忙しい。一年の中でも多分ベスト3に入る忙しさなのだ。それは同時進行で仕上げなければ
        ならない仕事が沢山あるからだ。まず担任として二者面談、入社試験の指導、専門学校の
        調査書作り、推薦書書き。そして体育祭の準備、文化祭の企画書・係分担・予算書提出。それに
        加え国語科教員として漢字検定準備、小論文指導、当然教材研究(笑)。そして総務部として
        PTA新聞のための原稿書き、行事写真撮影、20周年記念の表彰状発注...。それらが全て
        ここ2週間程度で完了させなければならない。もう死にかけて死体どころか、くさった死体
        レベル(ドラクエネタ)誰か助けてって感じ。

        本日はまだ半日のため、午後は事務仕事に当てる。文化祭の企画書を生徒と打ち合わせるため
        こちらも事前のリサーチ。その他小論文の添削35人分等々。でも何よりも大変だったのは
        うちのクラスのO海の進路相談。彼女は大学進学希望なのだが、全然志望校が決まらなくて
        困っているのだ。それで放課後私のところに来て、志望校選びを手伝ったのだ。しかしこれが
        また大変。だってわがまま娘なんだもん!実は本人、引っ越し予定があり、近隣の大学ではなく
        引っ越し先から通える大学が第一条件なのだ。これだけで情報量が不足してしまう。地元の
        大学なら、これでも高校教員歴15年近くなりますから、色々と事情通なのですが、地元で
        ないとなると...。というかレベルとか学部の特色とかがいまいちわかりづらいのです。
        おまけに女子大は嫌だ、4年生大学が良い、自宅から通えるところ、自分の学力で入れる
        ところ(当たり前!)、推薦の倍率が高くなくて試験が簡単なところ...おいおい、
        リクエストが多すぎ!そんなところがあればみんな入ってるって!でも最近の大学はこんなに
        わがまま言っても意外と入れちゃう感じですけどね。

        でも一番困ったのが、学部を決めていないこと。自分が何を学びたいか、明確な希望がない
        のだ。理系は不得意だから文系。でも何学部が良いか分からない。これが一番のネック。
        本来そこから始まらなきゃいけないのにね。でも最近の大学の学部って、昔なら文学部国文学科、
        経済学部経済学科って単純だったけど、今時は文化情報科とか比較コミュニケーション科とか
        社会心理学科とか、分かるような分からないような学科が多くて、これでは生徒も迷いますよね。
        で、そういう学科に限って、パンフレットなどを取り寄せて見てみると、総合学科というか
        なんでも学科というか、一般教養の固まりみたいだったりする。うーむ、難しい。学校選びにも
        本当に苦労しますよ。で、結局何の結論も出ずにためいきばかりで、生徒と受験雑誌をめくる
        面談でした。やれやれ。

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