豹変する 9月 下旬 編
9月20日(月) 体調管理をちゃんとしよう
国語準備室でのほほんとしていると、「失礼しまーす。J先生いらっしゃい
ますか?」と生徒が一人訪ねてきた。またか...。本日、もう4人目である。
何がかって?早退希望者なのです。J先生も頭を抱え気味。もう学級崩壊寸前。
(これって流行語?)このところやけに早退したいと言ってくる生徒が多いのだ。
まぁ、体調が悪くてどうしても授業を受けられないとか、通院のためとかいう
のは別にしょうがない。でもこのところの生徒は堪え性がなくて、すぐ
「だるい」「たるい」というだけで早退させてくれと言ってくるやつが多い。
その理由も、暑くてバテ気味とか、寝不足で気持ち悪くなったとか、夏休みの
夜更かし朝寝坊という生活のリズムが崩れたままで、おまけにこのところ
寒暖の差が激しくて、ただでさえ体調が狂いやすいのに、夜中まで遊んでいるとか
バイトの疲れがたまっているとか、ほとんど理由になっていない。一人前の
大人なら体調管理も責任を持って欲しい。そんなわけで遅刻・早退がこのところ
やけに多いのだ。
J先生「何で早退したいんだ?」
生徒A「頭が痛くて...へへへへっ。」
J先生「大丈夫そうじゃないか。もう少し頑張りなさい。」
生徒A「いや、先生、マジ痛いっすよ。全然無理、だめだめ。」
J先生「このところ遅刻も多いなぁ。夜遅くまで遊んでいるから、体調を
崩すんだよ。もっと規則的な生活をしなさい。だからちょっとした
ことで頭が痛いとか、だるいとかなるんだよ。」
生徒A「はーい、気をつけまーす。」
・・・・・・・・・・・
「J先生、今日、早退多いですねぇ。もう4人目じゃないですか。」
「そうなんだよ。もういい加減にしてくれって感じだよ。欠席も合わせると
うちのクラス、午後は20人学級になっちゃうよ。」
「大変ですね。」
「こっちの方が早退したいくらいに体調が悪いのに。もう寝不足気味でさぁ。」
「授業の準備とかでですか?」
「いやー、インターネットで色々な画像をダウンロードしていると、ついつい
夜更かししちゃってさぁ、へへへへっ。」
教員にも体調管理が必要なようで...
9月21日(火) 遠回しな表現
日本語は難しい。今、2年生の国語で「『食』の言葉」という教材をやっているが
その中で「腐る」という表現を「傷む」とか「汗をかく」とか「舌さす」という
遠回しな表現があると教えた。最近の高校生はストレートな物言いが多く、その場の
雰囲気とか、相手の感情お構いなしの放言とかが多いので、婉曲的な表現の大切さを
教えたのだ。
さて、うちの学校ももうすぐ文化祭。私が副担任をやっているひとつのクラスは、
飲食店をやることになった。そうなると食品衛生上、様々な安全管理がなされる。
そのひとつとして検便をクラス全員やらなければならないのだ。外部からお客さんが
来る以上、衛生面を考えて当然のこと。ここ数年、O−157騒ぎで特にうるさく
なり、学校によっては飲食店の出店は禁止しているところも多いと聞く。そこで
検便なのだが、朝のSHRで回収して保健所に持っていくことになっているのだが、
この時の説明が難しい。「おーい、うんこ持ってきた者はこのビニール袋に
入れろーっ!」なんてやったら、朝からとても不愉快な気分になる。特に女子なんかは
とても冷たい視線で見てしまう。そこで考えた。日本語的な遠回しな表現、婉曲表現で
言えばいいのだ。「衛生検査の検体を集めるぞーっ!」なんじゃそりゃ?へっ?てな
顔をしている。生徒にはこういう遠回しな表現は通じないのだ。うーん、日本語って
難しい。するとそこですかさず、お調子者のS君が一言、
「わかった!先生、今朝の『一番搾り』を出せってことでしょ?」
もちろんこの日、S君は女子から口を利いてもらえなかった(笑)
9月22日(水) アップデートしましょう
情報処理室で仕事をしていたら、英語科のM先生が来た。一枚のMOディスクを
持ってきてくれたのだ。はて?何か...何かエロ画像を頼んでいたっけ?(笑)
実は以前、雑談の折りに出た、アップデート・モジュールを持ってきてくれたのだ。
とある会社のワープロソフトが、他社の表計算ソフトと合わせて使うと、ある
動作によって文字化けしたり、一部不具合が出ると話したことがあったのだ。
それを覚えていてくれて、その修正プログラムをわざわざ持ってきてくれたのだ。
ありがとうござまーーす。うちの学校で使っているそのワープロソフトは、まさに
出た直後に買ったものだから、まさにVer1.0、いろいろとバグがあったらしい。
早速インストールしてみた。まだ試してみていないが、これでとりあえずOK。
見た目は変わらないが、こういうこまめなバージョンアップというか、
アップデート・モジュールって、気持ちよく使うには欠かせない作業の一つだなぁ..
と、のんきに構えていて、さて他のパソコンも...と思っていたら、あれ?
わざわざ何でMOディスクに入っているの?なんて考えていて、再度確認したら
びっくり!なんとこのアップデート・モジュールのプログラム24.5MBもある。
これじゃあ、やっぱりMOじゃなきゃねぇ、と感嘆していたらふと気がついた。
『うちの学校でMOドライヴがついているパソコンは2台しかない...。』
そう、せっかくの修正プログラムも他のパソコンには入れられない...かといって
フロッピィに分割するっていうのも、あまりに手間がかかるし、とてもじゃないが
やっていられない。善意のプログラムもたった2台で役目を終えた。っていうか
すでに解凍してあるプログラムなわけで、再度圧縮してフロッピィに入れ直さな
ければ...
「もう先生勘弁してよ、ふたつもやらきゃいけないなんて。」
「そんなこと言ったってお前が悪いんだろ、課題を3つもため込んで
いたんだから。」
「でもO−TEACHER、作文2つに漢字100問プリントなんて
きつすぎるよ。作文はまだしも漢字100問なんて、答え丸写しでも
しなきゃできませんよ。いちいち辞書を引きながらやっていたら
1週間はかかっちゃうよ。だって先生、俺の漢字力知っているでしょ?
小学校レベルから進んでいないんだから。」
「そうか、お前も初期バクか、お前にも高校漢字のアップデート・モジュールが
インストールできたらなぁ...」
「?」
9月24日(金) サクラ散る
ご贔屓筋というものがある。客商売をやっていれば、当然上得意なお客というものが
不可欠なものであって、そういうお客がいっぱいいれば商売繁盛は間違いなし。
この先生という稼業も客商売と似たところがある。商売=授業とすると、お客=生徒と
いうことで、いかに客をその気にさせるか=授業に目を向けさせるかと言うことになる。
もちろん口八丁手八丁、お客の気を引くために声を大きくしたり、黒板に絵を描いたり、
時には商売(授業)と関係ない話をしたり...色々工夫をしているのだ。その中で
よくある物売りの手法に「サクラ」というものがある。売り手とグルになって場を
盛り上げ、まわりをその気にさせるというあれだ。サクラというか、盛り上げ係というか
そういうやつがいると一気に授業が盛り上がり、みんな上得意客となっていくのだ。
「おい、S、ちょっといいか。」
「何ですか、O−TEACHER?」
「最近、D組、何かいまいち授業中、静かすぎないか?」
「そうですねぇ。」
「意見を求めても、誰も何にも言わないんだよな、最近。」
「みんなおとなしいですからね、うちのクラスは。」
「そこでよ、次の授業、俺がこういう話をするから、お前、どんどん発言して
くれよ。そうすると盛り上がってみんなどんどん発言するようになるからさ。」
「えーーっ、僕がですか?無理ですよ。」
「いや、大丈夫、俺が『×××』って質問するから、お前は『△△△!』って言って
くれればクラス中大爆笑で受けるから。なっ、頼むぞ、授業を盛り上げるために
一役買ってくれ。」
「はぁ、わかりましたけど...でもO−TEACHER、それは...」
「いいから、いいから、なっ、頼んだぞ。」
というわけでサクラを仕込んで授業に臨んだのだ。そしていよいよD組の授業。
相変わらず質問しても誰も無反応。よし、ここで勝負だ!
「よーし、じゃあ、ここで質問するけど、今、説明した『×××』って、どういう
意味だ?誰かわかるやつはいるか?誰もいないのか?よーし、じゃあ、誰かに
答えてもらおう。誰にしようかな...じゃあ、S、答えてくれ。」
「はっ、はい!?」(よし、うまいぞ、S。)
「『×××』ってどういう意味だ?」
「あのー、そのー...」(なかなかやるな、S。みんな注目しているぞ。これで
大受け間違いなしだ。一気に授業が盛り上がるぞ!)
「あのー、そのー...」(引っ張るなー、S、もういいぞ!)
「あのー、O−TEACHER、ちょっといいですか?」
「ん?何だ?」
「あのー、とっても言いにくいんですけど、その質問もそうなんですけど、ここの
部分、もう先週の授業でとっくにやりましたけど...」
「へっ?」
見事にサクラ散る。でもクラスは大爆笑でしたけど(笑) なら、早く言えって(恥)
9月27日(月) 5分は大きい?少ない?
今週末の文化祭のため、本日から放課後に準備するということで、45分短縮授業と
なった。これは嬉しい。普段は50分授業だが、わずか5分でも短いととっても
楽なのだ。自分ではわかっているつもりでも、ついつい忘れて授業をやっていると
キンコーン、カンコーン・・・もう終わりだ!という感じで、一日がとても短く
感じられる。あー、うれしいかな、45分授業。そういえば夏休み明けの3限授業でも
同じことを言っていたような気が(笑)
さて、そういうわけで放課後は文化祭準備に当てられているわけだが、なかなか
準備が進んでいない。うちの学校の場合、毎年そうなのだが、どちらかというと
前日あたりの一気の盛り上がりで仕上げてしまう...というと聞こえはいいが
みんな、なかなかやらないで、最後に帳尻合わせ程度に中途半端にやるというパターン。
いまひとつ盛り上がりに欠ける。それでも以前と比べるとだいぶ文化祭ぽくなって
きたが、他校と比べるといまひとつ。どうも独創性に欠ける。これも偏差値の差?
それでもやっているクラスは買い出しやら段ボール集めに奔走し始めた。
気をつけないと「先生、買い出しに行くから車出して!」とか言われる。
身を隠さねば...(笑)
「あっ!O−TEACHER、今暇ですか?暇ですよね?」
「なっ、なっ、何だ!?いや、今、忙しいぞ、とーっても忙しいぞっ。」
「そんなー、今、暇そうにプラプラしていたじゃないですか。先生、
文化祭のことなんですけど...」
「いや、無理無理。今からやらなければならない仕事があるんだ。」
「そうじゃなくてー、45分授業のことなんですけどー。」
「うん?何だ?」
「できれば50分授業にして欲しいんですよねー。」
「そんなの嫌だーっ!...じゃなくて何でだ?せっかく文化祭の準備のための
短縮授業なのに。」
「いや、50分に戻してもらって、O−TEACHERの授業もらって
クラスで文化祭の準備した方が、よりいっぱいできると思って。」
文化祭近くなると、こんなふうに授業どころではなくなってしまうのです。まっ、
45分授業より、まるまる準備の方が授業をやらない分、楽だったりして(笑)
9月28日(火) ある意味でのギャップ
朝の打ち合わせが終わった後、学年主任のS先生に「O−TEACHER、悪いんだけど
放課後の会議に出てくれない?」と頼まれた。放課後は文化祭の準備で担任は忙しそうだし、
暇そうなのは私みたいな副担任(笑)ついつい気楽に引き受けたのが運の尽き。その会議と
いうのが、カウンセラーと教育相談係及び学年主任の合同会議だったのだ。うちの学校では
生徒の不登校や色々な悩みを解決するために、県下でも珍しく心理専門のカウンセラーが週一回
来校しているのだ。そのカウンセラーと月一回、学年主任たちが生徒に関する情報交換をする
会議だったのだ。私は二学年主任の代打の代打(笑)ということでまったく場違いな人だった
のだ。
会議は3時からの予定だったが、1年生で色々問題があって学年会議が延び、また文化祭の
準備のため一部の先生が遅れ、結局始まったのが30分遅れ。この時点でもう私はちょっと
へろへろになっていたのだ。そして会議が始まると、いきなり各学年主任から、2学期に入って
欠席が多くなったり悩みを抱えていそうな生徒について報告してくれとのこと。えっ?俺?
だって今年は2学年所属といっても2クラスしか教えていないし、この学年初めてだから、
ほとんど知らない...全く役不足。でも他の先生の助けを借りながら何とか現状報告。これで
よりへろへろ。
そして会議で色々な事例報告がなされ、カウンセラー(とある大学の心理学部の教授で60歳
ぐらい?)から、より積極的なカウンセリングの活用と、カウンセリングを受けやすくするための
学校側の対応の仕方について要望が出された。しかし色々話してみると、カウンセラーと現場の
我々との温度差を感じた。確かにカウンセリングは有効な手段だが、うちの生徒の場合、
カウンセラーが言うような、ただ聞き手に回る、話すことによって自分で解決する方法を見つけだす、
そのために授業を公欠にしてカウンセリングを受けやすくする、それを広くアピールする等々、
かなり現実的には難しいことを求められているように感じた。うちの生徒の場合、なかなか自分
からカウンセリングを受けようと自ら足を運ぶことはしないし、かといって強制的にするものでは
ないし。また自分の気持ちをきちんと人に語れる子も少ないし、また自分が今、どういう
環境や感情になっているのかを把握できない子も多いのだ。というよりそういう子だから
悩みを抱えて不登校に陥ったりしている。またカウンセリングを受けやすい環境を整えることは
大事だと思うが、なんでもOK、何でも公欠になってしまったら、それこそ我も我もと授業を
サボる口実になってまさに学級崩壊してしまう危険性だってある。カウンセラーの先生は笑って
いたが、うちの学校の場合、まだまだそのレベルなのだ。話せば話すほど、敢えて失礼な
表現をするが、現場と学者の意識の違いを感じた。もう少しお互いに、より良いシステムが
できないだろうか、そんなことを考えた会議でした。
9月29日(水) 回り道した一日
今頃になって忘れていた仕事が出てきた。9月の2日にあった課題テストの集計だ。
いちおう学年の成績係ということなので、集計してクラス順位や学年順位を出すことに
なっている...しかしこの課題テストというのがいまいち曖昧な位置付けなのだ。
どこが監督というか音頭をとっているのか決まっていなくて、ただ惰性で続いて
いるのだ。夏休み明けのまだ授業をやりたくない、教師と生徒の利害が一致したもの
なのだ。しかしその扱いがはっきりしていない。教務部が主導をとるのか教科なのか
学年なのか...だから私も知らんぷりして何もやっていなかったのだ。忙しくてそれ
どころではない。やらなくていいものなら優先順位が高い仕事が山ほどあるので..
結局やってくれと頼まれたのでやることになった。まぁ、国数英の3科目だから
たいしたことないし、さっと入力してパパッと打ち出すか、とたかをくくっていたのだ。
いつも使っているDOS版の(かなり年季もの)市販の成績処理ソフトで、いつも通り
入力していった。そしていざ出力しようとすると「システムエラー…910」の表示!
何だーっ!どうした!なぜ動かん!そんなプログラム番号が出てもわからん!色々
調べてももちろんわからないし、再起動を何度かけても駄目。フロッピィにスキャンを
かけてみると、ある部分のクラスタが破損しているとのこと。ということは
物理的エラー?絶望的...泣く泣く、そのソフトのマスターのフロッピィを持って
きて、一度だけしかいけないはずだけど、今回は仕方なく再度コピー...ところが
これがまた同じところでバグる!マスターフロッピィをチェックしてみると、なんと
こいつも壊れている!そりゃあ、あんな埃だらけのところに、むき出しで投げ出して
あればさもありなん。
いよいよ仕方がないので、しょうがなくEXCELで表を作って、名前をコピーし、
点数を再入力し何とか頑張ったのです(偉い!O−TEACHER!)久々に表計算
なんぞを使ったので、すっかり関数を忘れている。合計とかは良かったが、途中から
なまじ色々関数を思い出してしまったので、「えーっと、これはここからここまでの
合計をSUMで出して、それを同じ部分のCOUNTで数を数えたもので割って、
それだと小数点以下がどどーっと出るからROUNDで大きくくくって...」などど
独り言を言っていると、脇で聞いていたI先生が一言。「O−TEACHER、それって
難しく言っているけど、結局平均を出すんでしょ?ならAVERAGEで
一発じゃないの?」「....」ごもっとも。今日一日だいぶ回り道してしまいました(泣)
9月30日(木) 痩せる先生達
今日は一日使って文化祭準備。はっきり言って担任はグロッキー状態。今時の
高校生は意外と創造性に乏しい。特にうちの生徒の場合、文化祭で何かを作り
出そうとしたとき、なかなか独創的なものが出てこない。必ず何かの真似で
あったり、例えばあるクラスが風船を使ってきれいな装飾をすると、全クラス
右へならえとばかり、風船装飾になる。それでもまだ拙いながらも自分たちで
考え出せるところは良い。今まで指示されたとおりにしか動いてこなかった
現代高校生たちは、先生、もしくはリーダーがいないとまるで仕事が進まない
のだ。言われた通りには出来る。でも自分から発想して、工夫してやるという
力が余りに弱すぎるのだ。だから今日も準備しているクラスを回っていったが
何もせずぼーっとしている生徒も多い。聞いてみると「何していいかわから
ない。」とか「先生、どうしたらいいですか?」と逆に聞いてくる生徒まで
いる始末。この創造性のなさはけっこう危機的だ。何か指示しても、ハサミが
ない、段ボールがない、のりがない、と言うばかりで、自分たちで集めて
こようとか、買い出しに行くとか、そういうのも先生が用意してくれると
思っている。これでは先生は疲れるばかり。指示をして段取りをつけて、本当に
疲れる。様々なクラスを見ていると、リーダーがいるクラスは、先生なしでも
そこそこ出来ている。しかしそうでないクラスは...大変そう。頭の良い
学校では文化祭なんて、生徒が自主運営して、自分たちで色々工夫して作り
上げていくものなのかも知れないが、うちみたいな底辺校は、教員の疲労が
最高潮に達する行事でもあるのだ。文化祭用に栄養ドリンクを支給することも
考えては(笑)ちなみに私もちょこちょこ色々なクラスのお手伝いをして回り
ました。以下、準備風景のスナップ。

