詩の散歩道 

 

風は何処から来るのか 

微かに葉を揺るがせ 明るい光を浴びて

大きな大きな 力を持ちつつも

それをすっかりほどき 消えさせ


幼く ひ弱く 

喩へそれについては判断に 

大きな誤りがあったとしても 

少なくとも 未だに、全く 自分の偉力を知らずに

また省ることもなく 過ごして来たかのような


表出するとしても 在るか無しかに

それで精精であるかのように

微かに微かに 吹く風は 
(三輪孝光) 2005.2



そらのおなべ

パパ おしえてよ

きたの そらに ならんでる

ななつの ほしの ソースパン

あの ぴかぴかの ソースパン

あれは だれの おなべなの

だれが おりょうり するのだろ


ぼうや こっそり おしえようか

あれは そらにすんでいる

つよい りょうしの オリオンと

ひげ もじゃもじゃの ヘラクレスが

みんなの ねむる まよなかに

かりの えものを にる なべさ


だから ごらん

いまは からっぽ ソースパン

きゅうーん きゅうーん

きたかぜが みがいてる


(神沢利子) 2004.12



いちょう


いちょうのきは あがりやさん

なつになったら おおぎのような

はっぱがいっぱい かぜをおこして

あおいでいる


いちょうのきは しんぼうづよい

ふゆになったら はだかになって

へいきのへいざ

ゆきがふっても だまっている

(有馬 敲) 2003.11

  
さんぽ

さんぽしてるの だれかしら?

きつねと たぬきの ふたりです


かげぼーしみたら わかります

せーのびしてるの だれかしら?


おつきさんなら しってます

どちらが ほんとに おおきいか

(岸田衿子) 2003.10

 
せみ

丘の上で

せみがうたっている


そのうたのひとふしを

口ぶえで まねしてみたら

夕立ちが さっとひとふり

それでも でみのうたは

日 いちにちと おとろえて


さびしい秋が

やってきた

平野威馬雄) 2003.9

 
トマトとメロン

トマトにねぇ いくら肥料やったてさ メロンにはならねんだなあ

トマトとね メロンをね いくら比べたって しょうがねんだなあ

トマトより メロンのほうが高級だ なんて思っているのは 人間だけだね

それもね 欲のふかい人間だけだな

トマトもね メロンもね 当事者同士は 比べも競争もしてねんだな

トマトはトマトのいのちを 精一杯生きているだけ

メロンはメロンのいのちを いのちいっぱいに 生きているだけ


トマトもメロンも それぞれに 自分のいのちを百点満点に生きているんだよ

トマトとメロンをね 二つ並べて比べたり

競争させたりしているのは そろばん片手の人間だけ

当事者にしてみればいいめいわくのこと

「メロンになれ メロンになれ カッコいいメロンになれ!!

金のいっぱいできるメロンになれ!!」

と 尻ひっぱたかれて ノイローゼになったり やけのやんぱちで

暴れたりしているトマトが いっぱいいるんじゃないかなあ

(相田みつを) 2003.8 / BBSより

 
わらい

それはきれいなばらいろで、

けしつぶよりかちいさくて、

こぼれて土に落ちたとき、

ぱっと花火がはじけるように、

おおきな花がひらくのよ。


もしもなみだがこぼれるように、

こんなわらいがこぼれたら、

どんなに、どんなに、きれいでしょう。

(金子みすゞ) 2003.8

 
そら

そらが あんなに あおいのは

うみが うつっているからか

ほしが すむ くにだからか

そらの しずく ひとつぶ

すってんころりん ほうほけきょと

ぼくの てに おちて こい

(まどみちお) 2003.7

 
あじさい

あじさい あじさい あめのよる

まいまいつぶろは きましたか


まいまいつぶろは チチンプイ

まほうが じょうずと ききました


それとも それとも けさのにじ

うっとり うっとり みましたか


あじさい あじさい いつのまに

しずくを はらって にじのいろ

(武鹿悦子) 2003.6

 
たけのこ

もっこ もっこ おはよう

たけのこぼうや

うまれたばかりの

たけのこぼうや

えりかきあわせて

おそらを見れば

まだまだねむたい くもりぞら

(工藤直子) 2003.5

 
「なきなきソング」 こざるいさむ

どうにも かなしいな

ためいき たっぷりだ


はなのおくが つんつん

むねのひろばが きゅん


きたぞきたぞ はじまるぞ

なみだひとつぶ ぽちり

しくしく しくしく しくしく


なんだか うつむくね

いじいじ いじけるよ


のどのおくが ひくひく

かおがゆがんで くしゃ


きたぞきたぞ はじまるぞ

あらしみたいな なきごえ

わんわん わんわん わーん


たっぷりないたら

なんだかすっきり さっぱりだい!

(工藤直子) 2003.5 / 日記より