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69B122 森本 豊 名古屋市電下之一色線は中川区「尾頭橋」から港区「築地口」までの約22kmの単 線(一部複線)区間で、その沿線は市電と言うよりは、むしろ地方の小鉄道とでも 言った方が良いような感じであった。 近年、名古屋市交通局の赤字路線の一つとして惜しくも廃止されてしまったが、 その長い歴史と、沿線の面白さは長くファンの心にとどまることだろう。 さて、私はこの線の廃止される半年程前(1968年8月)に乗ってみたのだが、そ の時の様子を記してみたいと思う。 「尾頭橋」でバスを降り乗降場へ向かう。乗降場とは言っても普通の市電のよう にホームなどはなく、道路の上に白ペンキで書いただけのものである。狭い道路に 車が多い為だが、乗客は電車が来るまで歩道の上にたむろして待っていなくてはな らない。 電車が来た。2ドアーの1650である。ワンマン化の為に運転台には押しボタンや スイッチ、ランプ類が並んで、この旧型の電車を多少近代的に見せている。ダイヤ 表を見ると停車場名の横に×印のついているのが目立つ。交換場所なのだろう。 さて出発。この辺りはまだ石やアスファルト敷きの普通の市電の感じだが、単線 の為に所々に交換所がある。 しばらく進んで「長良本町」を過ぎ、ここで90°の急カーブを折れると専用軌条 に入る。 線路は草むし、道床はくずれ、路盤との区別も定かではない。急カーブの為、や たらにガードレールが付いている。併用線のところではホームはすべてペンキ書き か又は停車場名を書いた看板だけのものであったが、ここではちゃんとホームがつ いている。ついていると言っても背は低く長さも一輌がやっと納まる位である。 専用線へ入ってしばらく行くと国鉄西臨港線と60°位で平面クロスする。見通し が良いので信号類はどちらにも何もついていない。 この辺りの沿線はだだっ広い田んぼの真ん中か、こみ合った家々の軒をかすめて 通るかのどちらかで、全くはっきりしている。 しばらく進んで庄内川の堤防にぐっと近づいた所で左に折れると「下之一色」で ある。 ここには車庫があって、この線の全ての車輌はここに集まる。洗車台なども備え てある。ここで乗務員交代。 「下之一色」を出発した電車は国道一号線の下をくぐり、しばらくは堤防に添っ てウネウネと進む。 6区間位過ぎた所で名四国道をオーバークロスする。この線唯一のオーバークロ スはかなりの急勾配である。ブリッジは近代的な感じのスルーガーダー。軽く制動 を当てて勾配を下る。 しばらく行って左へ急カーブ、民家の裏庭の塀の間をすり抜けると西稲永線との 合流点「稲永町」である。ここからまた併用軌条に戻り、線も複線となる。「稲永 町」を出て先程の西臨港線ともう一度クロスする。 また少し行くと川を渡るが、この部分だけ道路と離れて専用軌条になっている。 そして東臨港線の名古屋港西埠頭ヤードを下に見るともう築地口である。 下之一色線 全停留場(下之一色−築地口間は築地線) 尾頭橋、八幡西通、五女子、二女子、長良橋、長良本町、松葉、小本、荒子、中郷、 法花、下之一色、東起町五丁目、明徳橋、惟信高校前、弁天裏、多賀良浦、西ノ割、 大宮司、稲永町、一州町、大手橋、築三町、築地口 (1970年発行 南山大学鉄道研究会機関紙「れいるうえい」掲載記事を一部改訂) |