Sweetweddingdays7

 「・・・ああ!?何やて?」
 月曜日の朝。
 何だか太陽が黄色く見えるような気がするリビングで食後のコーヒーを啜りながら、有栖は素っ頓狂な声を上げていた。
「おいおい、急性の難聴か?それとも年で耳が遠くなったとか?」
「ふざけんな!君がいきなりおかしな事を言うからやろう!」
「別におかしな事でもないだろう?週末婚にこだわるのをやめるって言っただけだ」
「・・・・・どういう意味やねん」
「そのままだ。週末にこだわるからお互い意識するし、慣れすぎるとイレギュラーな時におかしくなる。これからは、もちろん週末はベースにはするが来られる時には来る。そうすりゃ以前からクレームの付いていた誰かさんの身体の負担も違うだろうし、浮気の防止にもなる」
「!だから!いいかげんその浮気の発想から離れろ!それに負担になるのは、一度が一度やないからやろう!」
 どうして朝っぱらからこんな事を言わなければならないのか。大体、今日がこんな辛いのは、あの風呂場での後、更に寝室に連れ込まれての第二弾があったからだ。 お陰で昨日は軽かった身体が泥のように重い。
「別に来たから絶対にしなくちゃいけないってわけでもないし・・」
 ああ、本当に口が腐る。
「ほぉ、それで、間を空けてその気になった時にまとめてすると。まぁもっとも本当に嫌ならその気にならなけゃいい訳だしな。それにたまにはなんでしないのかなんて誘われるのも楽しいかもしれないし」
「!!!!火村!」
 これのどこが“嫁”なのか。
「せいぜい頑張ってくれよ。ダーリン♪」
「!!ふざけるな!」
 ヒラヒラと手を振って鞄を持って玄関に行く火村の背中を見つめながら、有栖はふと自分の頭の中に何かが引っかかったのを感じた。
 何なのか。
 何となく、今の台詞に関係するような気がするのはただの気のせいなのか。
 僅かな沈黙。
「じゃあな」
 聞こえてきた声。
 開いて、閉じたドアの音。
 その瞬間
『ほんまに嫉妬深いダーリンを持つと苦労するなぁ』
 不意に昨夜の小夜子の声が頭の中に甦った。
 ザーッと蒼くなる顔。
「!!火村!君、朝井さんに何言うたんや!!待て、この、戻ってこいぃぃぃ!!」


 
 Sweet Wedding Days。
 甘い甘い新婚生活には、ちょっぴり辛いスパイスもある。
 だがしかし、こんなスパイスは欲しくない。絶対に、絶対に欲しくないのだ。


 
「・・・今度会う時、どんな顔して会ったらええねん」
 多分、きっと、絶対に小夜子は気付いているだろう。
 しかも別れ際、うろ覚えではあるが別れ際「埋め合わせは火村センセと一緒に」と言われた気がする。
(なんや他にもやばいような事言われた気もするねんけど・・・)
 とにもかくにも、あの自称“嫁”には今度来た時にははっきりと言わなければならないと有栖は思った。
 他人におかしな事を言うんじゃない。
 もっとも自分自身がそれと分かるような言動をとっている事には有栖が気付く事はなかった。
 ベランダの向こうは青い空。
 それに昨日とは違う色の溜め息を落として、有栖は温くなったコーヒーを飲み干した。

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はいお疲れ様でした。
このシリーズは実はまだあるのでそのうちボツボツアップしていきます♪

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