Platonicじゃいられない 4

「平気か?」
「・・・・平気に見えますか?」
「見えへんな」
「・・大当りです」
 いわゆる所のピロートーク。
 キャビンを銜えた江神さんの横顔をチラリと盗み見て僕は胸の中で溜め息を漏らした。
 脳裏をよぎるつい先ほどの真新しい記憶。
“・・あ・あぁ・・や・・江神さ・・っ・!”
 痛いだの、出来ないだの、散々騒いで泣いて、到底自分の声とは思えない声を上げながら抱き締めてくるその背
中にしがみついた。
(・・・恥ずかしすぎるわ・・・)
 怒涛のような初体験。
 囁く声も、触れた指も、口付けも、まだ何もかもがリアルで生々しくて。
「・・そう言えばあれはどういう意味や?」
 短くなったキャビンを灰皿に押しつけて江神さんはゆっくりとこちらを振り向いた。
「あれって?」
「信長たちには泊まっていけでアリスには時間やて」
 ・・・・そう言えばそんな事を口走ったかもしれない。
「・・もう忘れて下さい」
「生憎記憶力はええ方なんや」
 にっこりと笑った顔が何故か妙に嘘寒い。思わず引き吊った頬。何か江神さんは大きな大きな勘違いをしている
のではないだろうか?僅かな沈黙。勿論白旗を掲げたのは僕だった。
「・・・・この前信長さんたちがここに来て泊まったって聞いて・・・」
 僕の言葉に江神さんは一瞬だけ眉を寄せて思い出した様に小さくうなづいた。
「なのに僕にはすぐにそろそろ時間やて言うから・・」
(ああ・・これってやっぱりやきもちを焼きましたって告白になるんやろうなぁ)
 顔が赤くなるのを自覚して僕は耐え切れずに視線を逸らした。その横で微かに笑う気配がする。
「アリスも好きな時に泊まっていったらええよ」
 あの時それが出来た位ならこんなに悩みませんでした。
「今度から泊まって行くか?」
 ひどく優しい穏やかな声。
(それはもしかして毎回こーいう事になるって事なんやろか・・)
 確かに押し切ってもらった方が楽だといったのは僕だけど・・でも・・・。
 思わず黙り込んでしまった僕に次の瞬間江神さんが耐え切れないと言う様に吹き出した。
 そして・・・。
「安心してええよ。アリスの嫌がる事はせぇへんから」
「−−−−−−−!!」
 クスクスと笑い声が耳に響く。
 ポンポンとあやす様に背中を叩く大きな手。
「・・・江神さんて・・・やっぱりずるい」
 赤い顔で恨めしそうにそう呟いた僕に江神さんは「何の事や?」と又笑う。

 その後・・・「そろそろ時間やぞ」の言葉が「泊まって行くやろ?」の確認の言葉になったのは言うまでもない
事だった。

Fin



はい終了。お疲れさまでしたー。如何でしたでしょう?皆様が「あー背中かゆいー・・」とでも思っていただければしてやったり(笑)です。
ちなみにこれでもまだ足りないわー。というお嬢様の為のショートショートがありまして。
そちらは後日裏にでもアップします(;^^)ヘ..