■八戒の謎

●隻眼の謎


1億2000万人の八戒ファンの皆さんがつっこんだ八戒の右目の謎を解明しましょう。八戒は子供の頃から目が悪く、近眼歴は既にベテランです。とはいえ百眼魔王の城に乗り込む際、眼鏡なしで初めて入る薄暗い城を妖怪を殺しまくりつつ驀進し無事地下牢に到達していますから、裸眼でも0.2はあったと思われます。近眼の人間は暗闇になると視力の落ち込みが半端ではないのです。その時の花喃のセリフ「その右目…」は注目に値します。なんと八戒は右目をばっさりやられているようです。誰しもが八戒の義眼はこの時の傷のためだと思ったでしょう。まさか腸を引きずりながら悟浄に拾われた八戒の目が傷も残さず一旦完治するとは、誰も予想だにしなかったでしょう。隻眼は八戒を構成する美味しい要素です。名も知れぬ妖怪にいつの間にかつぶされてましたで済ますのはあまりにも勿体ないことに気がついた先生が、突如路線変更して自分でえぐったことにしたのです。大ゴマ見開きで見せ場がとれて、八戒の肝っ玉の太さも表現できて、まさに一石二鳥です。なんて考えるのはあまりにひねくれています。先生をなんだと思ってるんですか失礼な。真相はこうです。元々目が悪かった上に怪我をして、更に眼球ごと右目を失った八戒。こういった弱り目に祟り目な人を世の中ではなんと呼ぶでしょう。運のない人。そう、八戒はカードの流れが読めるだけのツキのない人です。自分の努力や身体能力に関係なく何度もそこばかりを痛める、という箇所は多かれ少なかれ誰にでもあります。おそらく風がふけば右目にゴミが入りコンタクトを入れれば右目ばかりずれて、結膜炎になるのもものもらいになるのも花粉に反応するのもいたずらっ子に輪ゴムをあてられるのも眼圧測定で再検査が出るのも右目ばかりだったのです。あの場で咄嗟に右目からえぐってしまった八戒の心理は、このような切ない現実に裏打ちされています。理不尽な運命に如何に立ち向かうかを、このエピソードを通して最遊記は我々に語りかけているのです。


口は災いの元っていいますよねえ?