■三蔵の謎
●巡る人々の謎
唐突ですが三蔵は人生楽しいのでしょうか。世の中は馬鹿ばっかり。生きることは悪あがき。足手まといは必要ない。ですが彼は生きています。世の中には何かしら三蔵にとっての光があるのです。悟空に太陽があるように、我々に最遊記があるように。どこをとっても普通でない荒唐無稽な言動の端々からなんらかの行動基準を見つけだしてみましょう。そうでないと安心して彼についていけません。頼んだ覚えはねーな。まあそう言わずに。三蔵にとって文句なしにアリなのは、彼が認めた唯一の三蔵・先代三蔵法師様の存在です。何かにつけて先代を思い出し、先代を懐かしみ、先代を夢に見る三蔵。やはりそこには愛があったのでしょう。恐ろしいことに三蔵からなんの見返りも要求されずにモノをもらってしまった度胸のいい御方・六道もありです。幼少の頃とはいえ彼は三蔵の笑顔を見ているのです。既にこの時点で人生の元がとれてしまったと思えば涙涙の六道エピにも心穏やかに向かい合えます。先代と同じ笑顔キャラという共通点がある八戒はどうでしょう。「おまえは俺を裏切らない」と言ってみたら「ずるい人ですね」と返されれば普通はひきますが、三蔵はまんざらでもないようなのでアリでいいでしょう。いまみっつよっつ微妙なのは悟浄です。最遊記中最も多く殺すぞと脅され漫画でなければとうに死んでる男です。孫悟空は当然アリです。結論としてはこうです。彼は自分のことが好きな人が好きです。人に好かれたぶんだけ愛情を返す奇特な方です。悟空の素直な愛情表現には(端から見れば)わっかりやすい愛情表現で返します。八戒の、言葉は辛辣だが愛情に裏打ちされた心遣いには、遠回しにですがきっちり応えます。悟浄に「クソはげ」と言われたら「ゴキブリ野郎」と返します。自分を諭してくれた先代にはその教えを胸に抱いて生きることで返します。邪魔をしてくださった方はぶち殺します。彼の言動は「目には目を」のハムラビ法典一点に集約されているのです。彼の中では常にプラスマイナスがゼロになるように計算とそれにともなう行動がなされています。セックスの時も自分ひとりでイくことはありません。いかされたら、いかせ返さなければ彼の気がすまないはずです。考えようによってはこれほど律儀な方もいませんが、いつ返すかは三蔵の気分次第ですのでタイミングによっては迷惑千万なこともあるでしょう。もう寝るからいいと言ってもたたき起こされて返されるかも。あははは、困った人ですね。結局悟浄がありなのかなしなのかは謎のままです。
■何語喋ってんだてめえは。