「もう来んな!」
悟浄が叩きつけた掌の勢いでテーブルの上のメニューと箸立てが跳ね上がり、ついでに八戒がつまんでいた素揚げのナスが元いた場所に落下した。
「…え?」
「聞こえねぇのか。金いらねえからとっとと出てけ」
20センチの距離で睨まれ続けてようやく、八戒は事の重大さを理解した。
しまった。…しまった。
「…すいません、僕…」
八戒が言い終わる前に横から飛んで出てきた店長が手にした鍋で赤い頭をぶん殴り、思わず目を瞑った八戒の前でさらに首根っこをひっつかまえて割り箸が散らばった床に引き倒した。
「いっ…た!」
「このクソガキが一店員の分際でお客に何てこと言いやがる!」
「だってこいつが!」
更に首締めがはいった。容赦ないオヤジだ。
「こいつ、だ!?客に向かってこいつとは何だ今すぐ手ぇついてあやまれ!すぐ!」
閉店直前の中華料理屋。各停しか止まらない小さな私鉄駅のそばの小さな商店街の小さな店。季節は冬。店内にいる客は八戒ひとりだったが、例え客で満員だったとしても八戒は同じことを言い、悟浄は同じように怒鳴り、店長は悟浄をぶん殴ったに違いない。八戒はできうる最速で上着と鞄を掴んで立ち上がった。
「僕が悪かったんです。悟浄が怒って当然です」
「あんたが何言ったとしてもこっちは客商売であんたは客なんだからこの野郎が悪ぃに決まってんだよ!次にあんたが来る時にはきれいさっぱり追い出しとくから、また来…」
「来ます」
八戒は口上を遮った。
「来ますから追い出さないでください」
悟浄がこっちを見た。
数時間後、八戒はこの台詞を力いっぱい大後悔することになる。
追い出してもらえばよかった。永久に。
自宅と最寄り駅の丁度中間にあるこの店は、頑なに平凡であることにこだわったかのように見事なほど特徴がない。特に安くも高くも美味くも不味くも綺麗でも不潔でもない。八戒が1週間に一度の割合で会社帰りにふらりと寄る理由は、地元でただ1軒、深夜0時まで営業している店だからだ。視界が霞むほどくたびれきって改札をぬけ、踏切を超え、街灯もまばらな暗い商店街のシャッターの前を通り抜け、黄ばんだこの店のネオンがついているのを見るとほっとする。自分以外にまだ労働を強いられている人間がいることへの安堵感だったのかもしれないが、それほど日常的に八戒は疲れていた。まだ20代半ばの若さで、既に八戒の肩に何十人という社員の生活すべてがかかっている。
その夜いつものように角を曲がった八戒は、人影が暖簾を下ろしているのを見て思わず立ち止まった。まだ11時半。
「もう閉めるんですか?」
暖簾片手に振り返ったのが悟浄だった。冬だというのにTシャツの袖をぐるぐる巻き上げた長靴姿はスーツの八戒には大学生か何かに見えて、一瞬敬語を使うのも躊躇われた。
「あー悪い。冬時間で閉店30分繰り上げなんだわ」
ふゆじかん。聞き慣れない言葉だ。
「そうですか。今年から?」
悟浄はちょっと首を傾げた。
「去年はどうだったか知んねーけど」
新しいバイトか。
八戒は深々と溜息をついた。それならそうと駅に貼り紙でもしといてくれ。また踏切の反対側まで引き返してコンビニに行かなければ晩抜きだ。よほど不満そうだったのか、悟浄は「ちょっと待って」とガラス戸を引いて店に入り、すぐ出てきた。
「一品もんでよけりゃ食ってく?」
愛想がいいでも悪いでもない淡々としたその調子で、八戒はたちまち後悔した。自分がいなければ彼はもう仕事じまいができるのだ。客に長居されて苛つく気持ちはよく分かる。
「でも…迷惑じゃ」
「15分で食ってくれりゃいーぜ」
八戒は恐縮しつつも小さく「お邪魔します」と呟いて店に入った。悟浄が拳で壁のスイッチをガンと押し、半分おとしていた店内の照明が一斉に点灯した。
自分ひとりのために電気代ガス代がどれだけ余計に。単価も安いこの店じゃ人件費も出ない。学生の時給って今いくらだ?深夜だから900円?1000円か?もっと?
「やっぱりいいです!」
「ここまで来てそりゃねーだろ」
呆れた口調に頬が熱くなった。ホテルまで連いてきてヤらせねーはねーだろ。と同じ口調だ。言われたことはないが。
「お客が何遠慮してんの。常連さんでしょあんた。サービスしねーと」
店長は片づけを全部悟浄に任せて引き上げた後らしく、店にはふたりきり。気まずさを察して悟浄がカウンターの中から炒め物の盛大な音の合間にぽつぽつ話しかけてくれる。たいしたことじゃない。明日は雪になるかもとか、もうすぐ定食のメニューが増えるとか、駅前の道路を拡張するらしいとか、そういうこと。
適当に相槌をうってる間に中華丼が出てきた。
美味しい。
「…あったまりますね、冬はやっぱりこういうのが」
「美味い?」
店員に美味いかと真顔で聞かれることなど早々ないので、八戒は一瞬面食らった。
「…美味しいですよ」
「いいぜ、不味かったら不味いって言って。ばしっと」
不味かったとしてもこの状況で不味いなんて言えるか。
「美味しいです、ほんとに。…何ですか?」
悟浄はいきなり笑った。笑顔などという可愛いものではない、八戒が呆れるほど盛大に噴きだした。
「厨房で全行程やったの今日が初めてなんだわ俺。つか中華丼作ったの初めて。やればできるんだな〜偉いぞ俺」
偉いもんか。
「…なんです、貴方まだ修行の身ですか」
「だから遠慮すんなって言ったんじゃん。悪い、実験台にして。金いんねえよ」
「そんなわけには」
「いーからいーから練習だから。はい食ったらさくさく帰る」
悟浄は両手を乱暴にエプロンで拭うと、八戒を店外へ押し出した。
「いやでもほんとに美味しかったし、わざわざ作ってもらってそれじゃ」
「あとで腹痛くなった時の治療費」
足りるか。振り返って抗議しようとした鼻先で戸が閉まり、ガラスの向こうで明かりが落ちた。
その晩八戒は布団の中で手を当てた腹に全神経を集中していたが、生憎何の問題もなく悟浄の中華丼は消化されて胃から消えてしまった。
「…同い年!?」
「生憎と」
八戒が店に寄る時は大概客は一人か二人。近所の客ばかりだから、店長と町内会がどうしたとかどこで葬式が出るとかいうローカルな話題で盛り上がっている。
「若く見えますねえ」
「あんたは老けて見えるな」
隣の椅子に置いていた書類鞄を、悟浄はテーブルの下の棚にぽんと移した。
「汚れるぜ」
悟浄は基本的には厨房にいて、夕食時の客がひくと接客にもかり出される。顔を出すたびに悟浄が握っているものが皮むき機から包丁になりフライパンから中華鍋に出世していくのを見るともなしに見ていた。
悟浄の指には日によって位置は変わるが常に絆創膏。大学生だと思ってるうちは微笑ましかったが、同い年と知った今は何となく痛々しい。別に成人男子が中華料理屋のバイトやってたって何の問題もないが、料理人を志すなら普通もっと若いうちから修行するもんじゃないのか。よく知らないが。
「定食、まだできますか」
「炒飯にしろ」
「しろ?」
「炒飯なら俺が作る」
なんと炒飯を任せられるまでに出世したのか。
「じゃあ炒飯」
悟浄が嬉しそうに厨房に戻るのを、八戒はおしぼりで手を拭きながら複雑な気分で見送った。今日の定食は麻婆茄子だったのに。日替わりの中でも一番の好物なのに。まあいいけど。
勢いよく火の手があがり、飯粒が焙られるいい音が響いた。
…まあいい。
閉店後に通ると、店の前でポリバケツ洗浄中の悟浄にばったり会う時がある。そういう時はお互いに「おつかれさん」と言い合って、他に話題が何もないのでポツポツと天気の話をして、別れる。
早めに寄った時は悟浄との会話はない。フロアはこれまた高校生のように見える女の子の担当で、悟浄は皿をカウンター越しに女の子に手渡しながら「しーちゃん、これ3卓」と元の名前がなんだか分からない愛称で呼ぶ声だけを聞いて店を出る。
しーちゃん。志織とか。祥子とか。静とか。
悟浄とは何度目かの来店で自己紹介しあったが、まだ名前で呼ばれたことはない。まあいいけど。
八戒は面倒なクレームを何とか捌くと、一番奥の自分の席に戻って書類を捲りだした。八戒の会社はいわば下請け不動産で、新卒で某会社に就職し1年後に独立した。1年だ。1年で人を集めて経営にはしった八戒を周囲は血相を変えて止めたし、銀行も止めたし、前社長は止めた後に罵詈雑言を浴びせ文字通り蹴り出した。でもこれは予定していたことだ。八戒は自分の性格も要領も頭の程度もよくわきまえていた。誰かの下で働くには向いてない。だから学生の頃から実地で勉強し経験値を上げ無茶苦茶にバイトして金も貯めた。
そういう性格だから、決して自分を過小評価はしない。この若さで会社を立ち上げ順調に毎日こなしている自分を自分でも誇りに思ったし、他人に誉められて当然だと思っていた。社長だというと誰もが感嘆する。
悟浄だけだ、「へえ」で済ませたのは。
「へぇ」
「…へえって」
「よく分かんねぇけど忙しそうだな」
まったく興味なさ気に流されて腹を立てる自分に腹が立つ。こっちが自分のこと喋ってんだからそっちも少しぐらい喋ったらどうだ。
別に新米料理人と不動産会社の社長を比べて後者が立派だとは言わないが、いや自分ではそう思ってるんだろう。思ってたんだろう。悟浄に凄いとか偉いとか誉められたところで出るのは中華丼だ。だけど。
カウンターの奥の悟浄の動作はだんだん余裕たっぷりになってきて、ぎこちなかった手際は今や流れるようだ。音も変わった。まるで何かの歌のよう。最初はノリがきいていた硬いエプロンが、汗やら水やら湯気やら油やら食材の色やらを吸い込んで何度も洗われ、しっくり馴染んできた。中華料理には腕力がいる。中華鍋を片手で振るのは男といえど至難の業で、悟浄がそれをこなす瞬間、腕にさっと血管が浮いて見えるのが、料理を皿に移したあと無造作に汗を拭うのが、淡々とデスクワークをこなす自分と余りに対照的なのが、少し、ほんの少し悔しくて。
「しーちゃーん、6卓!」
何がしーちゃんだ。
…何がしーちゃんだって何だ。
しーちゃんがいなくなって、閉店ギリギリでもなく店長もまだ店にいる時間、悟浄がちょっと暇になる一番いいタイミングで来店するために、八戒は午後10時37分の各停に乗ることを日々の目標においた。
「八戒」
「…ああ、びっくりした。名前で呼ばれたの初めてですね」
悟浄が怪訝そうな顔をしたので、八戒は慌てて特に飲みたくもない水を飲んだ。
「ここ最近、毎日来るな」
「何か不都合が」
「毎日中華で飽きねえの。いっつも疲れた顔してっしさあ、俺が言うのも余計なお世話だけど、ゆっくり食えるの晩だけなら、もっとこう色んなもん食ったほうが健康にいいんじゃねえか?」
「健康」
「そんな単語初めて聞いたって顔してねーで。うちメニューもそんな多くねえし。ほら、えーと、魚とか食えよたまには。都内なら店いっぱいあんだろ」
「ここで出してくださいよ」
「醤油ラーメンのダシにしか使ってねえよ」
八戒はもう頼み尽くしたメニューをパタンと閉じた。
「じゃあ醤油ラーメン」
「じゃなくて」
「じゃあ八宝菜。イカ多めで」
悟浄は軽く溜息をついた。
「分かった、俺が悪かった。何食いたい」
悟浄が麻婆茄子定食を作るべく厨房に戻っていくのを見ながら、八戒はまた水を飲んだ。今度は喉が渇いていた。
もう来ないほうがいいかもしれない。
悟浄へのこの訳の分からない苛立ちを本人にぶつける前に。
ところがその日は常連客もさっさとひけて、店長は奥に引っ込んで帳簿をつけ始め、悟浄が定食を運んできた時には店内は蛍光灯に白く照らされて異様なほど静まりかえっていた。
何か喋りたい。何でもいい。
「悟浄」
「ん?」
悟浄は調味料を補充しながらテーブルをゆっくり回っている。
「なんでこの仕事してるんですか」
「あんたは?」
またこれだ。
「…僕が聞いてるんです」
「秘密」
ああ、だからやめとけって言ったのに。と自分につっこんだがもう止まらない。
「そんなに僕と話したくないんですか」
悟浄は胡椒の大瓶を片手にぐるりと振り返った。
「…どしたの、おまえ」
「別にどうも」
「話してるじゃん、ちゃんと。何、なんかやな事でもあったか?仕事のこととか」
「興味ないくせに」
ああ嫌になる。どこの世界に行きつけの店の店員にこんないちゃもんつける客がいる。
「どうしたよ、ほんとに。聞くだけなら聞けるぜ」
「聞くだけならいいです」
悟浄は八戒の隣のテーブルに凭れて、マジマジと八戒を見た。満員電車にもネクタイにも年末調整にも公庫積み立てにも接待にも縁のない男。全然別の世界に住んでる男だ。
なのに何で。だから余計。
「確かに仕事も年末で大騒ぎだし金融機関が今こんな状況だから不動産業も大変ですけど色々と。新しくいれた社員がいきなり社内恋愛やらかしてもうどうしようかと。ちっさな会社なのに出身大学で一人前に派閥できるわ社長はOB贔屓してるとか喚くアホはいるわ系列会社に収賄容疑かかってて関係ないのに泥水かぶる羽目になるわ手がけたマンションに幽霊がでるとかいう噂がたって中継入るわ」
「ふーん…」
「貴方みたいに料理作って客に出してその場で料金もらう単純な職人仕事してたら分かんないでしょうけどね。僕みたいに何を作るでもなく右から左へ数字流すような仕事の意味も意義も分かんないでしょうけど。僕だってよく分からないですよ。別に達成感があるわけでもない末端の仕事ですよ。でも貴方みたいに練習すればうまくなるわけでもないんです。僕がそのためにどれだけ長い間」
八戒は3分ほど深く考えもせず茄子に向かって喋り続けた。
悟浄は黙って聞いていた。そして、テーブルを叩いた。
「もう来んな!」
本気の証拠に、今まで見たことないほど燃えたぎった目がまっすぐ八戒に飛んできた。
「おまえ何様。仕事が辛ぇのはお互い様だよ。おまえ、分かんの。自営業の厳しさ知ってんの。冬場の早朝仕込みの辛さ知ってんのか。この時期青物仕入れにどれぐれえ手間かけるか知ってんのか。このご時世商店街の生き残りがどんだけつれえか知ってんのか。調理師免許とるのにどれぐらいかかるか今まで何本指油に突っこんで何本指先削いで何人の地上げ屋と戦ったか知ってんのか。んな想像力もねえ選民意識に学歴コンプレックス振りかざすようなちっせぇ人間のやる仕事になんざ興味ねえな」
八戒が店をでた後、なんと悟浄が50メートルほど追ってきた。
「悪かった!」
ぼんやり振り返ると、悟浄は頭を下げた。
「ごめん。言い過ぎた」
「…いえ」
喉がつまる。
「店長に言われたからとかじゃなくて、自分の仕事もちゃんとできねえくせに訳わかんねえこと言って、ごめん本当に。おまえがお客だってことも忘れて」
もっと忘れて欲しかった。
「…貴方の仕事は美味しいもの作ることじゃないんですか。ちゃんと…美味しいですよ」
自分でも口調がふわふわ浮いているのが分かった。体のどこかに力を入れたら泣きそうだ。
「店を気持ちよく出てってもらうのが仕事だろ。んなの分かってたのに、も、ほんとにごめん。ほんとーにごめん。ごめんなさい」
「…僕が悪かったんです、貴方にあたって」
悟浄はようやく頭を上げた。
「…呑める?」
「え?」
「お互い朝はえーし、一杯だけ。魚うまいとこ。ちょっと離れてるけどバイクあるから。どう」
「…店は」
「平気。言ってきた」
悟浄が店の裏に停めたバイクを引き出して戻ってくる間に、八戒は慌ててコートの袖で瞼を擦った。
ずっと悟浄を店の外で見たかった。
隣駅のはずれの小さな居酒屋のカウンターで、悟浄はこっちが聞く前に、こまめに酒を注いでくれながら、ポツポツと自分のことを話した。高校を出てバイトでひととおり職種を経験してからどこかに就職しようと思っていたと。
「それで料理人に向いてると思ったんですか」
「いーや全然。ちょっとかっこいいなーとは思ったけど。レバニラ一丁〜とかいうの」
悟浄が煙草を吸うのも初めて知った。ハイライト。なんというか、似合う。私服は真っ黒で、赤い髪によく映える。なんてことないセーターとジーンズなのに、並ばれると自分の一張羅のスーツが野暮に思えて、八戒はなんとなく身動ぎした。
「厨房なんか居酒屋でちろっとやったくらいでよ。それがまあ貴方どうした訳か、あの店継がなきゃいけなくなって慌てて修行を」
思わず熱燗を噴きだした。
「継……え!?え、店長ってまさか貴方のお父さん!?」
「…え〜似てるかぁ?」
悟浄は心底嫌そうに眉を顰めた。
「もうすぐ義理の父親になるけど」
ちょっと待て。…ちょっと待て。息、が。
「しーちゃ……志帆。いんだろ時々店出てる。あの娘もらうのに店継ぐのが条件だから、まあそういう人生もありかと。やってみたらおもしれーし、ほらおまえも誉めてくれるし」
こんな匂いなんだ。こんな声だったんだ。こんなに笑うんだ。
知らなかった。
知らなかったのに、知らないで、よくもまあ、ここまで好きに。
「…あの娘、まだ高校生じゃ…」
「何でもかんでも若く見積もんなよジジくせえなぁもう。女子大生だぜあれでも。再来年卒業」
「…そうなんですか」
…なーんだ。なら、もっと早く。
「だからあんたが追い出すなっつってくれて助かった。今おやじさんの試用期間中だから叩き出されたら家も職も女も一気になくなるとこだった、もうほんっとやばかった。あーなんか最初っから世話になりっぱなし。おまえ細いのに結構ぺろっと食うんで嬉しくってさあ。おまえ用に定食でも増やすか。どうどう。嬉しい?八戒定食」
「…悟浄」
「俺の奢りだから何でも食えよ。酒もう一本いれる?あ、仕事まずいか。朝何時から?9時とか?8時とか?社長だから多少融通きくんじゃねえの?そういうもんでもねえのか」
…もっと早く言ってくださいよ。
そしたら。
「八戒?……どした?」
そしたら。
悟浄の傷だらけの指が、髪に触れる。
まいったな。
明日からどこで晩ご飯食べよう。
fin
◆BACK