土工計画

土工計画は、機械土工の施工計画のことです。 そして、施工計画の立案は、計画者が頭の中で施工の展開をイメージして組み立てていくものです。

土工計画作成のプロセスを概説しますと、図面・仕様書等の設計図書から工事概要を把握した後、概ね図-1のような流れで土工計画を立案していきます。

まず、原地形図と造成計画図から土量計算を行い、土量分布を把握し、最適な土量配分計画を作成します。
この作業は、運土形態によって方法が異なります。 「線土工」・「面土工」・「塊土工」とあるそれぞれの運土形態に適した土量計算法と土量配分法を用います。

土量配分が決定しますと、搬土経路を設定して、土質別の搬土距離を求め、これを工種とします。

次に、これらの工種に組合せ機械を選定し、それぞれの機械能力計算を行い、工種別の必要延べ台数を求めます。
この機種選定の際には、特に地形(勾配、運搬距離等)と土質の適性を考えます。

続けて、機械を工種別工程表に割付けて展開し、連動する機種別集計表を睨みながら、山積み/山崩しによる平準化を図って、機械投入計画を完成させます。

最後に機械経費等を積算し、見積書や実効予算書を仕上げます。

土工計画の手順
図-1 土工計画の手順


土量配分計画

運土形態:
土工事は運土形態から「線土工」・「面土工」・「塊土工」に分類できます。
道路・鉄道・堤防工事のような線状の運土工は線土工、宅地造成や敷地造成の多くは面状の運土工となります。
また、フィルダム工事の原石山・コア山・ダム堤体のように塊状の分布となる運土形態は塊土工(マッシブな土工)に分類できます。
それぞれの運土形態には、各々に適した土量計算法と土量配分法があります。

土量計算:
土量計算には、線土工では線状の土量を捉えやすい平均断面法、面土工では面状の土量把握に適したメッシュ法(柱状法)、塊土工の採石計画や堤体盛立計画では施工進行が高さ方向なので、標高別の土量把握が便利な等高線法が適しています。

図-2は、平均断面法と柱状法の違いを概念的に模式図で示しています。 図-3は等高線法の計算法を示したものです。


土量計算法
図-2 土量計算法

等高線法(コンター法)
図-3 等高線法
土量の変化率:
土砂は地山の状態から掘削するとほぐした状態(ルーズ状態)となり体積が増加します。
運搬はルーズ状態で、盛場で締固めると体積が減ります(図-4)。
変化率は土質によって異なりますが、参考に国土交通省とNEXCOで用いられている土質別の標準値を表-1に示します。

土工機械の作業能力を算定する際には、この変化率を用いて土量換算を行います。

土量の変化率
図-4 土量の変化

表-1 土の変化率(標準値)
土量の変化率(国土交通省・NEXCO)

土量配分法:

<線土工>
道路工事等の線土工では、マスカーブ(土積図)を利用すると簡便で合理的な土量配分計画を作成できます。

線土工の土量配分では、まず、横断方向の切盛を行い、残りの過不足の土量を図-5のように縦断方向へ運搬すると考えます。 つまり、横断図において[切土量−盛土量]が+ならば、余った土量を縦断方向の近くの不足箇所に運び、マイナスで不足ならば近傍の余剰土を運んで来ます。

このような土量配分を山谷毎に土量集計して、配分の試行錯誤を繰り返すのでは非常に煩雑となりますが、累加土量曲線(マスカーブ)を用いて図式的に解くと合理的に配分できます。

マスカーブは土量のバランス区間を示しています。 従って、土量のバランスを示す平衡線を上下させるだけで、切盛のバランス区間を自在に変更でき、客土や捨土の調整区間の設定が容易に行えます。

表-3は、マスカーブを求めるための計算表です。 平均断面法による土量計算から累加土量を求めています。 この累加土量をグラフにプロットするとマスカーブとなります。
マスカーブには地山補正と盛土補正があり、表-3は地山補正の例です。
土質が2種類以上ある場合は、盛土補正が便利です。

詳細 → 土量配分計画 pdf.543kB

マスカーブ(土積図)
図-5 マスカーブ

表-3 累加土量計算
累加土量計算表


<面土工>
次に面土工の土量配分ですが、2次元的な拡がりをもつ運土形態ではマスカーブ手法が利用できません。
面土工ではメッシュ法による土量計算を行い、計算結果を平面的な土量分布図(図-7)に示します。
土量計算のメッシュ間隔は20mが一般的ですが、運土の作業単位としては小さいので、メッシュ土量をまとめたブロック単位(60m位)で計算します。 ブロック内の切盛はマスカーブ手法の横断面内(横方向土量)での切盛と同様にブルワークと考え、ブロックのサイズは60m位が適当となります。 そして、ブロック内の差引き土量である過不足土をブロック間で運搬すると考えます。


さて、このブロック間運搬を如何に最適配分するか?
こういう最適化問題には線形計画法(LP)が利用できます。


線形計画法とは、ある制約条件のもとである量を最大若しくは最小にする数理計画法です。 即ち、実行計画の作成のための最適化手法の一つであり、目的関数、制約条件がともに一次式で表されるものです。 線形計画法の中でも制約条件式の変数が±1で記述されている場合には、特に輸送型線形計画法と呼ばれています。

図-6は隣り合う切盛箇所からどのように土量を配分すれば、総仕事量(m3・m)を最小化できるか?
このような土量配分の最適化問題を輸送問題といい、線形計画法で最適化でき、図-7のようなm×n個のブロック間の運土の総仕事量Wd(m3・m)の最小化を図ります。

Vij:各ブロックの土量、Dij:各ブロック間距離


輸送問題
図-6 輸送問題

土量分布図
図-7 土量分布図

土量配分計画図(運土矢線図)
図-8 土量配分図 (運土矢線図)

図-8は、最適土量配分計画を表した運土矢線図です。 矢線は切土重心から盛土重心を結んだ最短直線運搬距離を示しています。
経路上に障害がある場合は、設定により迂回を考慮した最適化も行えます。 この機能を利用して、線形計画法による土量配分計画を2段階で行うことができます。 即ち、一次解として最短直線距離による最適土量配分を求め、これを基に地形や勾配・障害を考慮した搬土経路を設定して、再度、線形計画法による最適土量配分が行えます。


塊土工等で、グリズリ等を通して材料別に配分する場合は、材料の流れを材料フロー図として表します。


詳細 → 土量配分計画 pdf.543kB


工事用運搬道路:

搬土機械のサイクルタイムは、工事用運搬道路によってほぼ決定します。 従って、運搬道路の巧拙が工事の死命を決すると云ってもよいほどです。
線土工において搬土径路はほぼ確定的ですが、面土工や塊土工では線形設定が重要となります。 運搬道路の線形設定は、土量配分計画を基に土取場と盛場の空間的位置関係から地形、設計速度を勘案して縦断勾配、曲率、視距に配慮して計画します。 また、工事用道路の幅員は、運搬車両の全幅の3.5倍以上が安全上必要とされています。


詳細 → 工事用道路の設計と安全(pdf.781kB)、 走路計画(pdf.277kB)

工事用運搬道路の幅員
図-9 工事用運搬道路

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