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新しく会社法が成立し、平成18年5月1日に施行されました。大幅な変更で株式会社の設立が容易になる反面、有限会社の設立はできません。そして既存の有限会社も新会社法・整備法のもとで「特例有限会社」として法律上は自動的に株式会社になりますが、何の手続もしなければ従来通り有限会社の呼称のまま実務面では今までと何ら変るところはありません。
ところで、全国には会社が平成16年末314万社あり、その約60.1%が有限会社、株式会社は約36.5%、合名・合資会社が3.4%で、圧倒的に有限会社が多数です。そうした事実において有限会社のままでいくのか、あるいは株式会社に変更するのが良いのかそのメリット・デメリット、もし変更するなら具体的にどうした手続や費用が発生するのかについてポイントをお伝えします。
株式会社への変更書類作成・料金
●有限会社のままだとどうなる
●株式会社に変更するとどうなる
●株式会社への変更手続は?
●さてどうする?メリット・デメリット
●有限会社のままだとどうなる
会社名は「有限会社○○」ですが、法的には「非公開かつ取締役会非設置の株式会社」となり、社員は株主、持分は株式、出資1口は1株とみなされ、職権で自動的に登記事項が変更されますが、役員の任期は制限がなく、決算書類の公告義務もない等、実質的にはなんら変化がありません。
ただし、次の点には注意が必要です。
@組織再編はできなくなる。
吸収合併存続会社、吸収分割存続会社、株式交換、株式移転、組織変更ができなくなります。つまり特例有限会社は組織再編で発展させることは期待されていないと言えます。
A定款の変更手続はする必要がある。
法的には株式会社となるわけで、現在の定款は変更しておかないと混乱が生じます。定款変更は株主総会の特別決議を経ます。通常は登記をする必要はありませんが、議決権の数、利益の配当、残余財産の分配で別段の定めをしていると登記もしなければならず、怠ると100万円以内の過料が課せられます。
B取締役会、会計参与は設置できない。
新会社法では、非公開中小会社は監査役に代えて、会計士・税理士等の専門家を会計参与として設置できますが特例有限会社ではできません。
C社債や種類株式の発行が可能になる(一部制限付)。
法的には株式会社になる為これらが可能となります。ただし、譲渡自由な株式や株主間での株式譲渡を制限する株式は発行できません。
●株式会社に変更するとどうなる
資本金、役員の数、株式の非株主への譲渡制限等はそのままでも構いませんが、変更点は以下のとおりです。なお、特例有限会社特有の制限は無くなります。
@商号は株式会社を使う(定款変更・登記必要)
A役員の任期は最大10年となる(定期的に変更登記が生じる)
B決算公告義務が生じる
●株式会社への変更手続は?
新会社法・整備法施行後は「商号変更による通常の株式会社への移行」という特別の手続ができました。定款変更による商号変更・株式会社設立登記・有限会社解散の登記を行います。通常の株式会社の新設の手続と違ってあくまで特別の変更手続ということでかなり簡略で、登録免許税など経費も大幅に安くできます。登記関連費用だけなら6万円で済みます。資本金・役員数等も変更しなくて構いません。したがって、特別な事情が無ければ株式会社に移行することをお勧めします。
なお、資本金変更、取締役増、代表取締役・監査役・取締役会設置を行うなら、上記の特別手続だけでは駄目で、追加の手続が必要となります。
以前の組織変更の要件
<必要手続・書類>
@定款変更の為の株主総会招集
A株主総会議事録作成
B新しい定款: 商号だけでなく役員任期、株式数、株式譲渡、株主総会決議要件、役員要件、決算・配当のこと等も最低限決めておかなければなりません。
C株式会社設立登記申請:総会議事録、定款、別紙(OCR用紙等)を添付、登録免許税3万円*
D有限会社解散登記申請: 別紙(OCR用紙)、登録免許税3万円
E印鑑届け(印鑑証明書添付)、印鑑カード交付申請
F関係官公署への届け出: 商号変更により、税務署・府県税事務所、市町村役場、社会保険事務所、公共職業安定所、労働基準監督署、許認可の監督官庁への届け出。その他、会社名義の自動車,不動産等も名義変更。
※取締役の増員,取締役会・代表取締役・監査役の設置、会計参与、種類株式の発行など伴う場合は、定款の内容、登記手続,添付書類など異なり,追加の手続が生じます。
※設立登記の登録免許税は、資本金や増資の場合の額により増える場合があります。
●さてどうする?メリット・デメリット
メリット・デメリットは裏表があり、見方によっては逆になります。一般的な有限会社が株式会社になった場合を想定して考えてみます。
@取締役の任期が無期限から最大10年になる。
デメリットは定期的に更新手続が必要となります。しかし、無期限の役員の解任は困難ですが、任期制になると不都合のある役員を任期切れに合わせて解任することは容易で、経営の活性化につながると思われます。
A決算公告義務が生じる。
現在の株式会社でもほとんど公告している所はないかもしれませんが、今後はこの義務は強化されるかもしれません。公告掲載の費用は官報でも5万円〜10万円ですが、インターネットのホームページでも構いません。ホームページは自社開設でなく、他人のページに掲載することも可能です。但し、調査機関による掲載の確認調査があり、調査費用が発生します。いずれにしろ、会計参与を設けて決算書を公告するなら、金融機関や取引先にも更に信頼度は増します。
B商号変更による影響
一部に「将来有限会社は歴史のある証拠の会社」になると言われています。しかし、一般の人にとっては新会社法の知識がないのが普通で、有限会社は規模も小さく閉鎖的な会社だという認識が普通で、やはり株式会社のほうが信頼感があります。
特定の取引先だけを相手にそれこそ長い間「有限会社○○」として浸透しており、今後もそのまま伝統を守って行くというような場合は敢えて株式会社にする必要はないでしょうが、一般不特定の人を相手にするならやはり株式会社ではないでしょうか。
以上、かいつまんで説明しましたが、詳しいことはお問合せください。
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