暖候期予報資料(2017年)を読む
(2017.03.15 掲載)


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 2017年3月13日,気象庁から夏の予報のための資料が配信されました。
 Tokyo Climate Center の Website に掲載されている数値予報資料(予想天気図)を見ながら,資料の特徴やどのような点に着目するのかまとめてみました。

 なお,資料は以下の URL から取得しました。

http://ds.data.jma.go.jp/tcc/tcc/products/model/map/4mE/map1/zpcmap.php
http://ds.data.jma.go.jp/tcc/tcc/products/model/map/7mE/map1/pztmap.php


◆予測資料の特徴
(1)海面水温(図の左上に SST と表記されています)
 赤道域は全域で正偏差で,東経150度以東では0.5℃を上回り,南米大陸沿岸には1.0℃を超えて海域も見られます。西部太平洋赤道域でも正偏差ですが,中部太平洋赤道域や東部太平洋赤道域の正偏差が大きくなるようであればエルニーニョになりそうな分布です。

(2)熱帯域の降水量(RAIN)
 海面水温は中部太平洋域や東部太平洋域で正偏差ですが,降水量は平年を下回る予想になっており,西部太平洋域で平年を上回る予想となっています。西部太平洋域の海面水温も正偏差であることによるものと思います(海面水温そのものは西部のほうが高い)。インドネシア周辺など,南半球で正偏差が目立ちます。

(3)200hPa速度ポテンシャル(CHI200)
 熱帯域の降水量の空間分布に対応し,インドネシアから日付変更線にかけ平年より発散が大きく,インド洋で収束が大きくなっています。

(4)850流線関数(PSI850),200hPa流線関数(PSI200)
 850流線関数は,インドネシアからインド半島,アラビア海にかけ高気圧性偏差であるほか,太平洋の熱帯域では低気圧性偏差となっています。日本列島南岸に高気圧性偏差が見られ,太平洋高気圧の張り出しは平年程度でしょうか。
 200hPa流線関数は,北半球では低気圧性偏差となっており,チベット高気圧の張り出しは強くないことを示唆しています。南半球の対流活動活発域に対応して,オーストラリア大陸北東部からフィジー,フランス領ポリネシアといったところで低気圧性偏差(南半球ですので高気圧が強いことを示します)となっています。

(5)北半球500hPa高度
 赤道域の海面水温が正偏差とエルニーニョ時のような分布となっているおり,大気が海水で温められ,北半球全体で高度が上っています。この点を考えると,偏差パターンがあまり情報をもたらしてくれません。等高度線も見ることにします。
 5880m線からは亜熱帯高気圧がしっかりしていそうですが,上述のとおり,海面水温で温められています。200hPa流線函数では,北半球全体が低気圧性(循環)偏差であることから,チベット高気圧の張り出しが強くなく,5880mの高度線の印象ほど安定した夏空,暑さにはならない可能性があります。
 5700m,5640mは東シベリアで分流しています。この分流が著しいと,オホーツク海高気圧の出現など日本付近に冷気をもたらします。

(6)北半球海面気圧
 日本海からオホーツク海にかけ負偏差となっています。オホーツク海高気圧より,弱いながら前線帯,低気圧の通過が懸念されます。
 太平洋高気圧は平年より少しだけ強そうですが,500hPa高度のところに記したように,夏空が安定しない可能性があります。
 台湾付近の負偏差は,複数のメンバーが熱帯擾乱を予想しているのでしょう。

(7)北半球850hPa温度
 全国的に0.5〜1.0℃平年を上回る予想です。気温ガイダンスの説明変数には,たぶんこの日本付近の850hPa温度が用いられていると思います。海面水温分布の影響で北半球全体が上昇している点をどの程度考慮するか,悩ましいとところです。


◆まとめ(留意したい点)
(1)海面水温
 エルニーニョ時のような分布が予想されています。エルニーニョ監視速報(2017/03/10)では
・エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態が続いている。
・春から夏にかけてエルニーニョ現象が発生する可能性もある(40%)が、平常の状態が続く可能性の方がより高い(60%)。
と発表されており,中部太平洋赤道域が正偏差となる時期や程度により,大気への影響が変わってきます。
 ちなみに,概ねエルニーニョ発生後6か月程度たつと北半球が高温となるといわれています。

(2)850流線関数,200hPa流線関数
 海面水温分布の影響で,500hPa高度,850hPa温度,海面気圧が過度の正偏差になっている可能性があります。流線関数偏差は平年に比べ高気圧性循環か低気圧性循環かを示します。この流線関数偏差にも注目し,太平洋高気圧の張り出しの強さなどを判断することになります。
 なお,全国的に暑かった,2013年6〜8月の3か月平均の天気図類を見ると,暑いときの循環場の特徴がよくわかると思います。気象庁の websiteで確認してください。
(http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/db/diag/db_hist_3mon.html)

(3)熱帯の対流活動
 熱帯の対流活動の影響は
・(3か月を平均して)ベンガル湾からフィリピン付近で対流活動が活発であると,sub tropical jet が北上し,日本付近は高気圧に覆われるようになる。
・盛夏期(概ね7月後半から9月前半)には,フィリピン付近の対流活動が活発であると日本付近の高気圧が強まる。
・赤道季節内振動(Madden Julian Oscillation:MJO)により赤道域での対流活動の活発な時と不活発な時がある。活発な時期には高気圧が強められる。梅雨明けに関連することがある。
といったところが知られています。
 3か月平均は予測可能性も大きいですが,2点目,3点目の時間スケールの小さな現象のずっと先の予測は困難で,3か月平均から類推することになります。また,MJOなど対流活動と密接に関わる熱帯の循環の実況監視が欠かせません。


◆季節予報や予報資料を理解する上での参考資料
(1)季節予報作業指針
 気象業務支援センターから 平成24年度季節予報研修テキスト として発売
 季節予報や対象とする現象,注目する現象について丁寧に解説されている。

(2)季節予報の基礎 講義ノート(2007年版)
 かつて気象庁内の研修で配布された講義ノート。
 2.何が予報できるのか? は,季節予報にはごく当たり前のことながら,余り記述されることのない基本的なことが書かれている。
●利用上の注意
 5.気象庁の行っている長期予報・季節予報 は現在では改められているので省いてある。予報資料についても同様。
 平年値が1971-2000年と現行の1981-2010年と異なる(傾向的には変わらないが,数値は異なる)。

(3)気象予報士ハンドブック 第5編第5章 気候・天候の監視
 季節予報で注目する現象について簡潔に解説している。






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