暖候期予報資料(2020年)を読む
(2020.02.11 掲載)


※※※※※ ご 注 意 ※※※※※

このページは Google Chrome で動作を確認しております。
(Internet explorer ご使用の方は文字サイズを中にしてご利用ください)


 このページは利用者の責任において利用してください。障害・損害に関していっさい責任は負いません。
 また,無断引用,転載かたくお断りします。


 一番下の Nabex のロゴをクリックすると元のページに戻ります。





 2020年2月10日に,暖候期予報(夏の予報)の資料が公開されました 。

 暖候期予報資料について,気づいた点を記します。

 資料は Tokyo Climete Center の web site から取得しました。その他,エルニーニョ監視速報,海洋,大気の状況について気象庁の web site を参考にしました。

◇(熱帯の)海面水温
 海面水温に注目するのは,大気より変動がゆっくりで,ずっと先の大気の予報への重要なシグナルになるからです。
 現在,エルニーニョ(現象)もラニーニャ(現象)も発生しておらず,この夏もこのような状態の可能性が大きいと,2020年2月10日のエルニーニョ監視速報は述べています。
 予報資料の 6〜8月の海面水温は,150゚W以東で0.5℃以下の負偏差域となっており,150゚W以西では正偏差で,120〜150゚Eでは0.5℃以上の海域も見られます。
 インド洋では全域で正偏差となっているほか,北太平洋の海面水温が平年より高いことが目立ちます。

◇降水量
 モデルの降水量はおおむね海面水温にと同様のパターンになる傾向にあるように思いますが,今回の資料では,海面水温が平年より高いニューギニア付近で降水量の負偏差域がみられます。その南北で降水量は正偏差となっています。ニューギニア付近の海面水温は南北でより偏差が大きいように見え,このわずかな温度差のため,ニューギニアの南北で対流が活発,ニューギニアでは不活発となってしまったのでしょうか。
 また,フィリピン付近は太平洋側,南シナ海側ともに降水量が少なくなっています。その北,東シナ海では多く予測されています。さらには,日本列島付近も平年を上回る予想となっています。ただし,中緯度帯の降水量の予測成績は良くありませんが。
 海面水温が正偏差のインド洋も,全域で降水量は偏差は小さいものの平年より多いと予測されています。

◇200hPa速度ポテンシャル,200hPa流線関数,850hPa流線関数
200hPa速度ポテンシャル:発散の中心位置はフィリピン付近と平年とあまり変わらないですが,太平洋西部で発散は平年より弱く,(降水量が平年より多く予測されている)インド洋で強く予測されています。
200hPa流線関数:北半球のほとんど全域で低気圧性偏差となっています。サブジェットは例年より南(北上しない)ことを示唆しています。降水量が正偏差,速度ポテンシャルでも発散偏差のインド半島やベンガル湾は高気圧性偏差であってもよいと思うのですが。
850hPa流線関数:北太平洋は広く高気圧性偏差ですが,南シナ海から日本列島の南海上にかけて偏差が大きく,太平洋高気圧は日本列島に張り出すのではなく,西へのびることを示唆しています。

◇北半球500hpa高度天気図,地上天気図
北半球500hpa高度:北半球全体で500hpa高度が平年より高く予測されています。2018年の秋ころから,熱帯域の海面水温が平年より高い状況が続いており,この夏も東部太平洋赤道域で弱い負偏差となるものの,赤道域全体では平年より高く,大気を過熱するのかもしれません。
 日本付近の5880mの等高度線は西に延び,日本列島ではなく夏南西諸島で暑いパターンです。
 大陸沿岸からオホーツク海にかけては,分流はあるものの,尾根も北へ大きく張り出してはいません。
地上天気図:北日本では負偏差で,平年より低気圧等の影響を示唆しています。オホーツク海付近も負偏差ですので,オホーツク海高気圧が持続するというわけではなさそうです。等圧線の走向も西や北西に延びておらず,太平洋高気圧の日本付近への張り出しは強くありません。例年より曇りや雨の日が多いのでしょうか。

◇まとめ
(1)赤道域の海面水温は150゚W以西では正偏差で,120〜150゚Eでは0.5℃以上の海域もありますが,対流活動活は,ニューギニア付近やフィリピンの東西で不活発で,日本付近への太平洋高気圧の張り出しはあまり期待できないパターンです。
(2)200hPa速度ポテンシャル・偏差,200hPa,850hPa流線関数偏差 サブジェットの北上,太平洋高気圧の日本列島付近への張り出しが期待できません。曇りや雨が例年より多いような不順な天候がイメージされます。
(3)500hPa高度偏差は,北半球全体が正偏差で,全体的に高度が高いことを予測しています。気温の高いことを示唆しますが,5880mの等高度線は西へ延びており,南西諸島で暑くなるイメージです。
(4)地上天気図では,北日本では負偏差で,オホーツク海高気圧が持続することはなさそうですが,低気圧等の影響がありそう。太平洋高気圧の日本列島付近への張り出しは弱くなっています。
(5)予測成績は熱帯がよく,中高緯度は熱帯より悪い。

 個人的には200hPa流線関数偏差と500hPa高度偏差がうまく理解・解釈できません。
 気象庁が2月25日に発表する暖候期予報を注目したいと思います。


◆季節予報や予報資料を理解する上での参考資料
(1)季節予報作業指針
 気象業務支援センターから 平成24年度季節予報研修テキスト として発売
 季節予報や対象とする現象,注目する現象について丁寧に解説されている。

(2)季節予報の基礎 講義ノート(2007年版)
 かつて気象庁内の研修で配布された講義ノート。
 2.何が予報できるのか? は,季節予報にはごく当たり前のことながら,余り記述されることのない基本的なことが書かれている。
●利用上の注意
 5.気象庁の行っている長期予報・季節予報 は現在では改められているので省いてある。予報資料についても同様。
 平年値が1971-2000年と現行の1981-2010年と異なる(傾向的には変わらないが,数値は異なる)。

(3)気象予報士ハンドブック 第5編第5章 気候・天候の監視
 季節予報で注目する現象について簡潔に解説している。






end-title