暖候期予報資料(2021年)を読む
(2021.02.14 掲載)


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 2021年2月10日に,暖候期予報(夏の予報)の資料が公開されました 。

 暖候期予報資料について,気づいた点を記します。

 資料は Tokyo Climete Center および Sunny Spot の web siteから取得しました。その他,エルニーニョ監視速報,海洋,大気の状況について気象庁の web site を参考にしました。

◇(熱帯の)海面水温
 海面水温に注目するのは,大気より変動がゆっくりで,ずっと先の大気の予報への重要なシグナルになるからです。
 赤道に沿った表層水温および偏差の深度-経度断面(気象庁ホームページの 各種データ・資料 > 地球環境・気候 > エルニーニョ/ラニーニャ現象 > エルニーニョ/ラニーニャ現象に関するデータ の 全球および太平洋熱帯域の海況 https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/clmrep/)をみると,西部太平洋の海水温の高い状況がわかります。エルニーニョ監視速報では,このような西部の正偏差域が次第に東進し,この夏は,エルニーニョ(現象),ラニーニャ(現象)は発生していない,平年に近い状況と述べています。
 予報資料の 6〜8月の海面水温は,インド洋から太平洋赤道域全体で平年を上回り,120゚Wで1.0℃以上の正偏差となっています。対流活動がどこで活発になるか,が夏の天候にかかわってきます。
 また,北太平洋の海面水温が平年より高いことが目立ちますが,このことが大気にどのように影響するのか,あるいは,大気の影響で高いのか,うまく理解できません。

◇降水量
 ベンガル湾などインド半島付近やニューギニア付近からその北西で正偏差となっています。また,南インド洋で正偏差と降水量が多くなっています。インド洋の海面水温は全域で平年を上回っており,南半球に+0.5℃以上の海域が少しあることが影響しているのでしょうか。
 また,予測成績は良くありませんが,日本列島付近も平年を上回る予想となっています。

◇200hPa速度ポテンシャル,200hPa流線関数,850hPa流線関数
200hPa速度ポテンシャル:発散の中心位置はフィリピン付近と平年とあまり変わりませんが,(降水量が平年より多く予測されている)ニューギニア付近で発散が平年より強く予測されています。さらには南インド洋からオーストラリア大陸で強く予測されています。南インド洋などで降水量が平年を上回ると予測されていることに関連しているのでしょう。対流活動の活発な領域がもう少し北であると日本列島は暑い夏となるのですが。
200hPa流線関数:上空発散が南半球で強いことから,北半球の低緯度では低気圧性循環偏差となっています。中緯度では高気圧性循環偏差であることから,ジェットがあまり北上しないことや,西風が弱いことが想定されます。
850hPa流線関数:北太平洋は広く高気圧性循環偏差です。南シナ海や流線関数の日本列島付近や南シナ海への傾度が大きいわけではなく,太平洋高気圧の日本付近や西への張り出しは強いものではなさそうです。

◇北半球500hpa高度天気図,850hPa温度天気図,地上天気図
北半球500hpa高度:北半球全体で500hpa高度が平年より高く予測されています。
 5880mの等高度線を見ると,あまり日本列島付近へは盛り上がっていません。日本の南海上では走向が西南西から東北東となっており,全体的に高度は高いものの,あまり日本列島付近へは盛り上がっていません。偏差のイメージほどの高気圧の張り出しの強いイメージがわきません。日本列島付近で降水量が平年を上回っていることも,5880mの等高度線に沿った西南西からの流れをイメージさせます。
  正の高偏差確率では西日本から南西諸島では75%以上ですが,日本の東海上では75%の等値線が大きく南になっており,やはり,高気圧が日本列島付近に張り出すイメージではありません。また,沿海州からオホーツク海の一部で75%以上というのも,分流やオホーツク海高気圧をイメージさせます。
850hPa温度天気図: 日本列島から北で偏差が0.5℃以上で,南岸から南西諸島にかけては偏差が小さくなっています。全体的に正偏差ですが,等温線を見ると,9℃線や12℃線が日本の東で南に下がっています。夏暑いときはおおむね東西でこのように南下しないように思います。
地上天気図:日本列島付近は平年よりわずかに気圧が高く予測されています。高気圧の日本列島付近への張り出しは平年程度で,強い印象にありません。また,南西諸島のほうへ張り出しているわけでもありません。
 オホーツク海付近や三日本列島の東海上の等圧線は,それぞれオホーツク海高気圧や梅雨前線に対応するものですが,平年図でも見られるもので,平年より強い,明瞭という印象にはありません。

◇まとめ
(1)赤道域の海面水温は,ラニーニャ現象が終わり,150゚W以東では正偏差と予測されています。エルニーニョ監視速報は,エルニーニョ現象発生の可能性は小さいと述べています。対流活動は,ニューギニア付近や南インド洋で活発と,平年より南で活発と予測されています。
(2)200hPa速度ポテンシャル・偏差,200hPa,850hPa流線関数偏差 ジェットが弱いと予測され,太平洋高気圧の日本列島付近への張り出しは平年を少し上回る程度といったイメージです。平年を上回る降水も予測されており,曇りや雨の日が多いイメージもあります。
(3)500hPa高度偏差は,北半球全体が正偏差で,全体的に高度が高いことを予測しています。気温の高いことを示唆しますが,5880mの等高度線の走向は西南西から東北東と,日本列島付近に張り出すというより南西流が入りそうなイメージです。
(4)地上天気図では,北日本では負偏差で,オホーツク海高気圧が持続することはなさそうですが,低気圧等の影響がありそう。太平洋高気圧の日本列島付近への張り出しは弱くなっています。
(5)予測成績は熱帯がよく,中高緯度は熱帯より悪くなります。

 個人的には500hPa高度が高く予想されているものの,500hPa高度予想図や地上予想図からは,ちょっと曇や雨が多い夏のイメージを持ちます。降水量のガイダンスでは西日本太平洋側で多い確率が大きくなっているほかは少ないあるいは平年並の確率が大きくなっているので,その可能性は小さいのかもしれませんが。
 2月25日に気象庁から発表される暖候期予報を注目したいと思います。


◆季節予報や予報資料を理解する上での参考資料
(1)季節予報作業指針
 気象業務支援センターから 平成24年度季節予報研修テキスト として発売
 季節予報や対象とする現象,注目する現象について丁寧に解説されている。

(2)季節予報の基礎 講義ノート(2007年版)
 かつて気象庁内の研修で配布された講義ノート。
 2.何が予報できるのか? は,季節予報にはごく当たり前のことながら,余り記述されることのない基本的なことが書かれている。
●利用上の注意
 5.気象庁の行っている長期予報・季節予報 は現在では改められているので省いてある。予報資料についても同様。
 平年値が1971-2000年と現行の1981-2010年と異なる(傾向的には変わらないが,数値は異なる)。

(3)気象予報士ハンドブック 第5編第5章 気候・天候の監視
 季節予報で注目する現象について簡潔に解説している。






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