寒候期予報資料(2021年)を読む
(2020.09.17 掲載)


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寒候期予報資料(2021年)を読む

 2020−21年の寒候期予報資料が 9月3日に公開されていました。かつては10日すぎだったと思うのですが,電子計算機が高層化されたことによるのでしょうか, 3日に公開されていました。
 私なりの資料の解釈,注目点を整理してみました。

 予報資料は,
  Tokyo Climate Center
http://ds.data.jma.go.jp/tcc/tcc/products/model/index.html
  Sunny spot
https://www.sunny-spot.net/
から取得しました。


1.熱帯域の海面水温
 9月10日に発表されたエルニーニョ監視速報では,
・ラニーニャ現象が発生したとみられる。
・冬にかけてラニーニャ現象が続く可能性が高い(70 %)
と予測されています。
 8月の月平均海面水温平年差では,東部赤道太平洋域では負偏差で,寒候期予報資料の予想図では,170゚W〜140゚W付近や100゚W以東で1℃を超える負偏差となっています。西部太平洋熱帯域は,全域で正偏差で,130゚E〜150゚E付近で1℃以上の大きな正偏差となっています。
 2020年12月〜2011年2月の予想では,150゚W〜110゚W付近で1℃を超える負偏差となっています。西部は140゚E以西で1℃以上の正偏差となっています。

2.熱帯域の降水量(対流活動)
 赤道域では,120゚E以東で降水量が平年を下回り,ニューギニアから日付変更線付近で明瞭です。その南北で正偏差(多雨)となっており,これはラニーニャ現象時に見られるパターンです。また,インド洋の東部で正偏差となっています。

3.200hPa速度ポテンシャル,850hPa,200hPa流線関数
 インド洋の東部の多雨,ニューギニア付近の少雨で,200hPa速度ポテンシャルは,インド洋で発散偏差,西部太平洋で収束偏差となっています。
 850hPa流線関数の偏差は,130゚Eあたりを境に,西で低気圧性偏差,東で高気圧性偏差となっています(南半球は逆の偏差)。
 200hPa流線関数の偏差は,130゚Eあたりを境に,西で高気圧性偏差,東で高気圧性偏差となっています(南半球は逆の偏差)。
 この,東西,南北にに対照的な偏差パターンは,中心となる経度が西に偏ってはいますが,ラニーニャ時の特徴的なパターンです。赤道域の降水量が,120゚E以東で負偏差であることで,流線関数偏差のゼロ線が西に偏ったと思います。

4.北半球500hPa高度
 北半球ほぼ全体が正偏差ですが,日本列島付近や50゚N以北では高偏差確率が50%未満で,大きな正偏差のメンバーは少ないことを示しています。日本の東海上から太平洋,北米大陸沿岸にかけては,正偏差も大きく,また,高偏差確率も50%以上で,30゚N〜40゚Nの太平洋では75%以上となっており,この領域,日本の東での正偏差の可能性は大きく,日本列島付近に寒気が入りにくいことを示唆しています。

5.海面気圧,850hPa温度
 バイカル湖付近で負偏差,ベーリング海で正偏差と,日本列島付近は寒気の入りにくいパターンです。ベーリング海で正偏差が大きいことから,等圧線の走向が,日本列島付近で南北になっており,寒気は西日本に入るパターンです。
 850hPa温度は,日本列島付近は正偏差で,北海道や日本列島の東海上では 1℃以上の正偏差となっています。

6.まとめ(注目点)
 ラニーニャ現象ながら,赤道域の海面水温の負偏差域や,降水量の負偏差域が西部太平洋域にまでひろがっています。正負の境がどのあたりになるのか,により循環が変わってきます。今後の海面水温や海水温に注目です。
 海面気圧の予想図では西に寒気の入るパターンですが,大陸も負偏差で,気温のガイダンスは,
北日本 高温の確率が最大
東日本 あまり差がないが高温の確率が最大
西日本 あまり差はないが低温の確率が最大
沖縄・奄美 高温の確率が最大
となっており,
北日本 東方海上高度
東日本 東方海上高度,NINO.3の海面水温,フィリピン付近の対流活動
西日本 フィリピン付近の対流活動,NINO.3の海面水温,帯状平均高度
沖縄・奄美 沖縄近海の海面水温,帯状平均高度
といった説明因子によるのかなと思っています。これら説明因子,とくに(予想が変わるかもしれない),フィリピン付近の対流活動,沖縄近海の海面水温に注目したいと思います。


◆季節予報や予報資料を理解する上での参考資料
(1)季節予報作業指針
 気象業務支援センターから 平成24年度季節予報研修テキスト として発売
 季節予報や対象とする現象,注目する現象について丁寧に解説されている。

(2)季節予報の基礎 講義ノート(2007年版)
 かつて気象庁内の研修で配布された講義ノート。
 2.何が予報できるのか? は,季節予報にはごく当たり前のことながら,余り記述されることのない基本的なことが書かれている。
●利用上の注意
 5.気象庁の行っている長期予報・季節予報 は現在では改められているので省いてある。予報資料についても同様。
 平年値が1971-2000年と現行の1981-2010年と異なる(傾向的には変わらないが,数値は異なる)。





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