寒候期予報資料(2022年)を読む
(2021.09.15 掲載)


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寒候期予報資料(2022年)を読む

 2021−22年の寒候期予報資料が 9月13日に公開されていました。
 私なりの資料の解釈,注目点を整理してみました。

 予報資料は,
  Tokyo Climate Center
http://ds.data.jma.go.jp/tcc/tcc/products/model/index.html
  Sunny spot
https://www.sunny-spot.net/
から取得しました。


1.熱帯域の海面水温
 9月10日に発表されたエルニーニョ監視速報では,
・エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態
・冬にかけてエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平 常の状態が続く可能性が高い(70 %)
と解析・予測されています。
 8月の月平均海面水温平年差では,170゚E付近を境に,西で正偏差,東で負偏差となっており,140゚W〜120゚Wでは 1℃を超える負偏差域も見られます。160゚E以西では 0.5℃以上の正偏差となっています。ラニーニャ現象が終息したものの,ラニーニャ時のような偏差パターンとなっています。
 2021年12月〜2012年2月の予想では,150゚E以東で不変で,150゚W〜100゚W付近では 1℃を超える負偏差となっています。西部は130゚E以西で 0.5℃以上の正偏差となっています。8月の実況と同様にラニーニャ時のような偏差パターンとなっています。
 ラニーニャ現象が続く可能性が高い≠ニ予測されていた,昨シーズンの予測と,偏差は小さいですが,パターンはよく似ています。

2.熱帯域の降水量(対流活動)
 赤道域では,120゚E以東で降水量が平年を下回り,ニューギニアから日付変更線付近で明瞭です。インド洋から120゚E付近では平年を少し上回っています。海面水温の偏差パターンがラニーニャ現象時の偏差を少し小さくしたようパターンであることから,降水量の分布もラニーニャ現象時に現れやすい偏差パターンとなっています。

3.200hPa速度ポテンシャル,850hPa,200hPa流線関数
 ボルネオ島付近で多雨,ニューギニア以東の少雨であることから,200hPa速度ポテンシャルは,ボルネオ島付近で発散偏差,西部太平洋で収束偏差となっています。
 850hPa流線関数の偏差は,130゚Eあたりを境に,西で低気圧性偏差,東で高気圧性偏差となっています(南半球は逆の偏差)。
 200hPa流線関数の偏差は,130゚Eあたりを境に,西で高気圧性偏差,東で高気圧性偏差となっています(南半球は逆の偏差)。東西方向と赤道を挟んで南北に高・低気圧性偏差のペアが見られ,ラニーニャ現象時に見られるパターンとなっています。昨年のラニーニャ現象を予測していた資料と比較すると傾度が小さくなっています。
 赤道付近の海面水温の負偏差域,降水量の負偏差域が130゚E付近と西に延びていることから,中心となる経度が西に偏ってはいます。赤道に沿った海水温の深度−経度断面図を見ると,海面水温の負偏差域はもう少し東になることも考えられます。

4.北半球500hPa高度
 北半球ほぼ全体が正偏差ですが,渤海湾から日本列島付近にかけて負偏差域となっています。日本列島付近への寒気の流入を示唆していますが,負の高偏差確率は25%未満であること,沖縄高度,極東中緯度高度などのアンサンブルメンバーの予測値のばらつきが大きいこと,バイカル湖付近の正の高偏差確率も25%未満であることなど,平均すれば負偏差ではあるものの,予測の確からしさは小さいと思います。

5.海面気圧,850hPa温度
 バイカル湖付近では負偏差域,正偏差域が交り,高気圧は平年程度,ベーリング海は正偏差,等圧線の走向が,日本列島付近で南北になっており,寒気は西日本に入るパターンです。昨シーズンと同様の予測パターンですが,傾度は昨年の予測より少し大きく思います。
 850hPa温度は,北日本では正偏差,東日本から南西諸島では負偏差となっています。

6.まとめ(注目点)
 ラニーニャ現象は終息したものの,赤道域の海面水温や降水量,流線関数偏差など,ラニーニャ現象時の偏差パターンとなっています。今後の海面水温や海水温の変動により,降水量,循環が変わってきますので,海面水温や海水温の変動に注目です。
 気温のガイダンスは,
北日本 平年(気候的出現率)と大きく変わらない
東日本 低温の確率が少し小さい
西日本 平年並の確率が少し大きい
沖縄・奄美 高温の確率が大きい
となっており,沖縄・奄美をのぞき,大きな確率値はありません。
 沖縄・奄美では,沖縄近海の海面水温,帯状平均高度が説明変数に用いられています。
 沖縄近海の海面水温は,台風などの影響で,7,8月と平年を下回りましたが,予測では冬には平年を上回っています。
 また,帯状平均高度は,アンサンブルメンバーのばらつきは大きいもの,多くのメンバーが正偏差となっています。
 このようなことが寄与していると思います。


◆季節予報や予報資料を理解する上での参考資料
(1)季節予報作業指針
 気象業務支援センターから 平成24年度季節予報研修テキスト として発売
 季節予報や対象とする現象,注目する現象について丁寧に解説されている。

(2)季節予報の基礎 講義ノート(2007年版)
 かつて気象庁内の研修で配布された講義ノート。
 2.何が予報できるのか? は,季節予報にはごく当たり前のことながら,余り記述されることのない基本的なことが書かれている。
●利用上の注意
 5.気象庁の行っている長期予報・季節予報 は現在では改められているので省いてある。予報資料についても同様。
 平年値が1971-2000年と現行の1981-2010年と異なる(傾向的には変わらないが,数値は異なる)。





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