寒候期予報資料(2023年)を読む
(2022.09.18 掲載)


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寒候期予報資料(2023年)を読む

 気がついたら,2022−23年の寒候期予報資料が公開され,寒候期予報の発表も近づいていました。
 いつものように,私なりの資料の解釈,注目点を整理してみました。

 予報資料は,
  Tokyo Climate Center
https://ds.data.jma.go.jp/tcc/tcc/products/model/index.html
  Sunny spot
https://www.sunny-spot.net/
から取得しました。


1.熱帯域の海面水温
 9月9日に発表されたエルニーニョ監視速報では,
・ラニーニャ現象が続いている
・今後、冬にかけてラニーニャ現象が続く可能性が高い(70%)
と解析・予測されています。
 8月の月平均海面水温平年差では,エルニーニョ監視海域(5゚N〜5゚S,150゚W〜90゚W)で負偏差ですが,負偏差域は西に広がり,150゚E近くまでに達しています。その分,正偏差域が狭くなっています。
 海面水温に対応するように,対流活動(の平年差)も150゚E付近を境に東西でコントラストが明瞭になっています。
 2022年12月〜2023年2月の予想でも,8月の偏差パターンとなっており,8月よりさらに西の130゚E,ニューギニア島付近まで負偏差となっています。

2.熱帯域の降水量(対流活動)
 赤道域では,120゚E以東で降水量が平年を下回り,ニューギニア島から日付変更線付近で明瞭です。インド洋から120゚E付近では平年を少し上回っています。海面水温の偏差パターンがラニーニャ現象時の偏差を少し小さくしたようパターンであることから,降水量の分布もラニーニャ現象時に現れやすい偏差パターンとなっています。

3.200hPa速度ポテンシャル,200hPa,850hPa流線関数
 200hPa速度ポテンシャルは,降水量の正偏差域が狭い,負偏差域が広いことから,発散偏差域は120゚Eを中心に東は150゚E付近,西は80゚E付近となっています。非発散偏差域は,150゚E付近から東に広がっています。
 200hPa流線関数の偏差は,北半球では170゚E以東で低気圧性循環偏差,西で高気圧性循環偏差,南半球ではその逆と,東西,南北に循環偏差のペアが明瞭で,ラニーニャ現象時の典型的なパターンとなっています。
 850hPa流線関数の偏差も,東西,南北に循環偏差のペアが見られ,ラニーニャ現象時のパターンですが,降水量の負偏差域がかなり西にまで延びていることから,140゚E付近にまで高気圧性循環偏差域となっています。
 監視海域よりかなり西まで海面水温が負偏差であり,ラニーニャ時の循環にこのことの影響が加わっている,そんな印象を持ちました。
 赤道に沿った海水温の深度−経度断面図を見ると,水深100〜200mでは正偏差域が日付変更線付近まで明瞭で,海面水温の正偏差域がもう少し東へ広がることも考えられなくもありません。
 この夏,季節内振動の東進が150゚Eあたりで不明瞭になるといったことが見られましたが,海面水温の負偏差域が西まで延びていることが要因のひとつかもしれません。

4.北半球500hPa高度
 高緯度で正偏差,低緯度で負偏差で,中緯度では日本列島付近が負偏差となっています。
 ラニーニャ時には低緯度では負偏差になる傾向があるので,その反映と見てよいでしょう。
 太平洋の30゚N帯に正の高偏差確率の大きな領域が見られます。これまでの統計解析では,40〜50゚N帯に有意な正偏差域がありますが,ちょっと位置が異なります。
 大陸の正の高偏差確率の大きな領域は,統計解析では(ラニーニャとの)有意な関係のない領域です。
 日本列島付近は北陸,日本海を中心の負偏差で,寒気が入ることが見込まれます。

5.海面気圧,850hPa温度
 海面気圧は,日本列島付近は負偏差で,偏差の中心は北日本,カムチャツカ半島付近も正偏差で,低気圧の発達する位置はかなり東といった印象です。中国大陸50゚N帯も負偏差で,高気圧は強くない予想です。
 南西諸島から九州では正偏差と予想され,1016hPaの等値線は日本列島の南に延びており,大陸の高気圧が移動性となって日本列島の南を通る,といったイメージを抱かせます。
 850hPa温度は,日本列島付近から南西諸島で負偏差,北海道では正偏差と,西日本に寒気が南下するようなイメージです。

6.まとめ(注目点)
 ・ラニーニャ現象が続くこと
 ・低緯度の循環はラニーニャ現象時に見られるの特徴を示していること
 ・500hPa高度場で日本列島付近は負偏差と予想され,負の高偏差確率の大きな領域もあること
から,日本列島付近に寒気の南下が想定されます。
 850hPa温度場からは西日本や南西諸島に寒気が南下しそうですが,海面気圧からは,移動性高気圧にささえられるような等圧線で,寒気の南下は東日本や東北地方のようにも見えます。
 中緯度の予測(もともと難しい)が今後どのように変わっていくかに注目したいと思います。


◆季節予報や予報資料を理解する上での参考資料
(1)季節予報作業指針
 気象業務支援センターから 平成24年度季節予報研修テキスト として発売
 季節予報や対象とする現象,注目する現象について丁寧に解説されている。

(2)季節予報の基礎 講義ノート(2007年版)
 かつて気象庁内の研修で配布された講義ノート。
 2.何が予報できるのか? は,季節予報にはごく当たり前のことながら,余り記述されることのない基本的なことが書かれている。
●利用上の注意
 5.気象庁の行っている長期予報・季節予報 は現在では改められているので省いてある。予報資料についても同様。
 平年値が1971-2000年と現行の1981-2010年と異なる(傾向的には変わらないが,数値は異なる)。





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