第1回 俺にコンピューターは必要ない
今から7〜8年前初めてコンピューターなるものにふれる。
その頃初めてふれたのはPC9801Raというコンピューターだった。
この名前に懐かしがる人も多いだろうが、当時の彼にはワープロと
コンピューターの違いはわからなかった。
仕事で使うことになったのだが、一番のネックはキーボードだった。
未だに入力は不得意だが、どの初心者も通る「書いた方が早い」試練が待ち受けていた。
とにかく「あ」と打つのに30秒探し、一文打つのに10分。
彼はとても嫌気がさしていた。こんなのは人差し指の運動としか思えなかった。
自分には向いていないと思い、そして3ヶ月もコンピューターから遠ざかった。
そんなある日、ある日一人男が放課後に熱心にコンピューターに向かい、
マウスを動かしていた。(このマウスもよく机が足りなくなり腕を伸ばしきったものだ)
ふと見ると「上海」というゲームをやっていた。ためしにやらせてもらうと
これがまた面白い。彼ははまった。そう猿のように。
これで彼のコンピューターに対するアレルギーは少し収まったのである。
しかしこれは不幸の第一歩だとは彼は気づかなかったのである。
第1回完
第2回 手書きの方が速いって...
さてその後の彼だが、とある上司から「この配布用文書を明日までにワープロで打つように。」と
いう命令を受ける。A4の用紙で約3枚。これを彼のカルタ取りキーボード打ちではいつ終わるのか?
すかさず「手書きじゃだめですか?」「おまえの字で手書きなんて読めん!」
かくて彼の苦しい戦いが始まった。「来年度行事予定..、と、ら、ら、『ら』がねぇー
このキーボード不良品じゃねえか..『ら、ら、ら...』とっ...」
途中何度切れそうになっただろうか、1字探すのに約1分。間違って変換してもその直し方もよくわからない。
途中苦労して打った5行ほど(約20分)を間違って消したときは、部屋中に響きわたる咆吼をあげたのは
言うまでもない。そして約5時間かけて作った文書がプリンターから出てきたときの感動は
それを体験した人でないとわからないだろう。嬉しくてみんなに見せて回ったのだった。
そして次の日、印刷された文書が人々に配られ、誤変換30カ所以上という前代未聞の
指摘を受けることは、このとき彼はまだ知らない。
第2回 完
第3回 初めは凝るのよ
そんな彼もやっとキーボードにも慣れてきた。何とかワープロソフトが少しずつ扱えるようになってきた。
しかしそれはブラインドタッチという見果てぬ夢物語ではなく、どの字がどのあたりにあるか
経験的に予想できるようになっただけのことである。でも圧倒的に時間の短縮にはなった。
かくして嬉しい彼は何でもかんでもワープロで打ち始めた。その当時はワープロの文書というのは
全体の2割程度。だからワープロができるということは一つのステータスであったのだった。
そんな彼にも向上心が出てきた。「もう少しこの字をこっちに寄せたいなぁ。」「これに線を引きたいなあ。」
もちろん彼はそんな機能を使いこなせない。そこで彼の師匠のS先生に聞く。はじめのうちは
優しく教えてくれたS先生もそのしつこさにいい加減切れかかり、「俺はおまえの家庭教師じゃない。」と
ひとこと言い、それでも根が優しいS先生は彼に一冊の本を手渡した。それは「一太郎dashマニュアル」
だった。そこには彼の知らないような機能が山ほど載っていた。(現在もほとんど使いこなせてないが...)
その中でとりわけ彼が注目したのは、文字修飾の項目だった。「えーっと、何々、太字、斜め文字、
強調、倍角、白抜き...んーっ、色々できるじゃん!」そしてその後彼の作った公文書はやたらと
飾り文字の多い、そしてとても読みにくい、彼だけが自己満足した文書であることは言うまでもない。
第3回 完
第4回 しょせん合計と平均くらいか?
さていよいよ表計算である。もちろん自分で電卓を使った方が早いと言うことはわかっていた。
「でも電脳教師を目指すなら、やっぱ表計算でしょ。」と心に誓い、Lotus1-2-3に手を出してし
まった。でもはじめは数字を入力するだけなので超簡単だった。楽勝〜と思っていたのだが、こ
れでは何の意味もない。そして師匠にどう使うのかお伺いを立てた。すると関数なるものを入れ
るとのたまう。「@SUM って打って、その後に範囲を指定するんだよ。」「@って何?」「
@っていうのは、これから関数を入力するって言うしるしだよ。」「ふーん、じゃSUMって?」
「それは合計っていう意味。」「じゃこの後のA1..A13って何?」「だから合計する範囲
だって!」「違うよ。俺はこの35点から82点までをたしたいんだよ。」「だからその部分は
セルのA1からA13のまででしょ!」「セルって?」「さっき説明したじゃん!」となかなか
進まない。まあよくも我慢強く教えてくれたものだ。本当にパソコンのインストラクターという
人は偉い。私なんかちょっとできるようになってから、知り合いに何度説明してもパソコンとワ
ープロの違いがわかってもらえなくて、本当に難渋したことがある。(でも今考えると説明が悪
かったような気がするが...)どうも教員ということで頭から入るきらいがある。@とは何か
?なぜ範囲の間には..と2つ点を打つのか?そんなことはどうでもいい、とりあえずやってみ
る、できればいい。これが表計算から学んだことだった。しかし数字を変えるだけで合計や平均
が瞬時に変わるなんて信じられなかった。本当にあっているかどうか電卓で答え合わせまでして
しまった。今まで成績一覧表という生徒の成績をつける大きな表があるのだが、いつも縦合計と
横合計が一致しなくて、再計算を果てしなく電卓で繰り返していたのだった。それがロータスを
使うと一瞬のうちにできる!おおコンピューターよ、何とすばらしき文明の利器!そして私のや
った失敗は、生徒の平均点が3点ほど低いというので、自分の持っているえんま帳に、一人ずつ
3点を足して、その点数をいちいち入力し直したのである。あー無駄な馬鹿。この後合計平均は
間違えなくなったが、入力ミスがいかに多いかと言うことを痛感したのであった。(やっぱりミ
スするのは人間様の方なのね)
第4回 完
第5回 これが噂のエロゲーかぁ
とりあえず先生としては、ワープロと表計算ができれば問題ないわけで(でも字が綺麗で、電卓が
できればコンピューターなんていらないか?)これでも立派に電脳先生として重宝される。でもこ
れもまた大変。ちょっとできるようになると、色々仕事を頼まれる。自分がワープロ打てないから
って、「悪いけどこれうっといて」なんて言われることが増えてきた。上の先生に言われると断る
こともできず、「なんでてめぇーの仕事を俺がやるんだよ...ぶつぶつぶつ」と言いながらやる
はめになる。そういう人に限って「もう少しこれ右に寄せてくれないかなぁ...ここはもう少し
字を大きくして...ここは色つけてよ。」なんてどんどん注文を付けてくる。てめーで直せ!こ
のタコ!....と思うけど仕方がなく「ハイ、わかりました。」と言ってしまう宮仕えの悲しさ
「ところでO−TEACHER、こんなもん借りたんだけどこれってできるの?」と見せられた箱
おおっ!これが噂に聞くエロゲームではないか!ビデオの普及に寄与し、インターネットの発展を
促進し、コンピューターを一躍メジャーにした魔法のソフト!「貸してくれるんですか?」「うん
俺わかんねぇからいいよ。」おお!なんていい人だ!いつでもワープロくらい打たせてもらいます。
さてとマニュアルは...ふむふむ..このAディスクを入れて、DOSコマンドでドライブを指
定し、A>INSTALLと入力し、次にデータセーブ用のフロッビィをフォーマットしておき、
バッチファイルがうんたらかんたら、コンフィグシス?...だめだ全然わからん!どうすればい
いんだ! 当時はフロッピィベースの、それも延々10枚くらいインストールするゲームが主流
だったので、はっきり言って何が書いてあるのか、まるで宇宙語みたいでお手上げだったのだ。
そこでまたまた師匠登場。「えーっこんなのやりたいの?でもいいのかなぁこんなゲーム学校のコ
ンピューターに入れちゃって...」「頼む。少しでもコンピューターのことを覚えたいんだ!」
「どうも嘘臭いなぁ、でもまぁいいや。これはね、DOSコマンドって言って...」いやースケ
ベの一心岩をも通す。スケベの一心DOSコマンドも覚える。やりたい一心でCOPYの仕方や、
カレントディレクトリィとかLHAを使っての解凍とか、何となく覚えてしまった。(ちなみにこ
の頃覚えたFDISKとかのDOSコマンドは、Windows95になってフリーズし、泣く泣
くハードディスクのフォーマットしたときなどに、とっても役に立っている。シクシク)
そしてやっとインストールし終わり、ゲーム開始。こっこっこれが噂のエロゲーかぁ。日本が世界
に誇るアニメの神髄...と、なんだこれアニメのくせに生意気にもモザイクがかかってるじゃん
なんでだよーこんなに苦労したのに全然見えないじゃないかー!どうしてだー! と怒っていると
「O−TEACHR、忙しそうですねぇ、何やっているんですか、どれどれ」
「あっ、教頭先生!」
第5回 完
第6回 違法コピーはやめましょう
第7回 コンピューターを買おう!
第8回 WINDOWSなんて大嫌い
第9回 Windows3.1の悪夢
互換性のないため、家では全く仕事の出来なくなった彼はつぶやいた。「Windowsなんて嫌いだ!」
でも彼はMacに改宗することはなかった(笑)しかしそれにしても学校での仕事は何ら支障なく
ワープロ・表計算と有効に使っているくせに、自宅ではソリティア専用機。「このままではいけない!
このコンピューターを使ってやらねば本当に部屋のインテリアとなってしまう。何か良い利用方法が
ないものか?」と思案していたその矢先、「そうだ!このコンピューターしかできないことがある!
CD−ROMを使うのだ!」そう、当時はCD−ROMの付いているコンピューターは珍しかった。
(ほんの4年ぐらい前なのに(泣))この頃はやっとCD−ROM付きのコンピューターが出始め
だったのだ。そこで彼は音楽CDをかけてみた。「すっ、すごい!パソコンで音楽が聴ける!何て
素晴らしいコンピューターなんだ!これでCDをかけながら仕事が出来る。感涙。」でも考えてみると
こんなちゃちなスピーカーで聴いても仕方がないが...。しかしここで初めてこのパソコンを買って
光明が見えた気がした。そこで彼はCDをかけつつ、一○郎を立ち上げた。『よし、これで仕事効率が
あがるぞ。』と意気込んでいたが...ちょっと文章を打つとやたら変換が遅い。ひとつの言葉を
変換するのに5秒ぐらいかかる。『なんじゃこりゃ?全然使いものにならん!』そして挙げ句の果て
にはお約束の、悪魔のメッセージ「不正な処理をしましたので強制終了します」未だかつて人様に
後ろ指を指され「不正をした」と罵倒されたことのない彼は激怒した。「なんだこのやろー!」と
怒りつつ、とうとうどこを押しても画面が動かなくなった。これがフリーズとは知らない彼は、
とうとう決意して電源ボタンを押すが、切れない...そしてプラグを抜くという初心者にありがちな
暴挙に出たが、幸運にも壊れなかった(初心者の人はやめましょう(笑))
後で師匠に聞くとあっさり「メモリ不足じゃないの?」と言われる。「メモリ?なんじゃそりゃ?
劇団四季の『Cats』の歌か?」と親父ボケをかますが、この後メモリ増設に踏み切るとは、
こののちのネタとして取っておこう(笑)
「そうそう、O−TEACHER、CD−ROM付きのパソコンならこれあげるよ。サンプルで
もらったんだけど、誰も使えるパソコン持っていないから。」ちょっと優越感を感じつつも、よく
見てみると、テレビでもやっている「車窓から」みたいな代物で、列車から見える綺麗な外国の風景の
ビデオをデジタル化したものだった。『そうか!CD−ROMは映像もいけるのか!』そして早速
家に帰って試してみた。そして彼はまた愕然とした。コマがとびとびになるのだ。ある風景が映ると
カク、として次の風景に飛ぶ。全然流れるような「車窓」ではない。まるでコマ送りのような、
というかスライドっていうか、ゆっくりしたパラパラ漫画のようだった。『なんだ?不良品か?
やっぱりサンプル版はダメだな。』と彼はつぶやいていた。その時彼はCD−ROMのパッケージの
裏に「このCD−ROMは倍速以上で・・・」の但し書きがあることを知らなかった。彼は1倍速
CD−ROMは「のろい」のだ。これが本当のWindows3.1ののろい...。