退廃の 11月 中旬 編
11月11日(水)
先生が落ちこぼれる時
昨日に引き続き本日もコンピューター研修の出張。昨日習ったEXCELの続き。昨日笑って
しまったおじさんは何故か今日来てなかった。残念。今日の講座内容はややレベルアップしていて
ピボットテーブルやら簡単なマクロやら、最後にはVisual Basicを使ったりと結構勉強になった。
以前にも書いたが、今年の夏休み、あるコンピューターの専門学校に、自己研修でEXCELやら
その他色々習っていたので、意外とスムーズに理解ができた。やはりコンピューターは何度も
繰り返しやると、慣れて身につくものだと実感した。実際EXCELの関数なんかも、たかが
合計や平均だって、学期に2回(中間テストと期末テストの時)だけじゃそう簡単に覚えられ
ませんよ。習うより慣れろですね。
さてそんな感じで高度なことをやっていたのだが、私と背中合わせに座っていた、とある年輩の
女性の先生がいた。この人はほとんど初心者らしく、昨日やった簡単な表作成でも四苦八苦して
いて、何度もインストラクターの助けを借りていた。私も席が近くだったので時々「これはどう
やるの?」と聞かれ、何度か教えてあげていた。ところが今日はマクロやらVisual Basicやらで
かなり高度な手順を踏むようになってきた。初めのうちは私やインストラクターの人に何度も
聞いていたが、私もちゃんと聞いてないと分からなくなりそうなので、途中からあまり相手に
できなくなってしまった。インストラクターの人も一人だけ遅れているこの女の先生にあまり
関わっているわけにも行かず、どんどん進み始めた。するとある瞬間からピタッと質問しなく
なってしまった。しばらくしてふっとそのおばさん先生を見ると、全く何もしていないのだ。
マクロ操作とは関係ない、昨日までやっていた、ただの合計とか平均の関数をただいじっている
のだ。講義についていくことを放棄したようだった。またしばらくして見てみると、今度は
コンピューターとは全く関係ない、自分の仕事をやり始めていた。(どうやら授業のプリント
らしい)このおばさん先生は全く落ちこぼれてしまったのだ。他の人たちがマクロの入力を
しているのを後目に、自分の世界に入ってしまったのだ。アシスタントのインストラクターが
見かねて「どこが分かりませんでしたか?お手伝いしますよ。」と優しく声をかけてきたが、
「いや、いいです。いいです。」と断っている。それでも「分からなくなったところから、
もう一度やりましょう。」と再度話しかけても「いや、私はいいですから。」と頑なに断って
しまった。おばさんはもう自分の限界を感じていたようだった。その後一度もコンピューターを
さわらなかった。
今、これほど情報教育の必要性が叫ばれている中で、コンピューターを教えられる先生って何人
いるんだろう?先生達の中にもいやいやというか、仕方なくやらざるを得ない人も多い。
できる人も多いけど、今回のおばさん先生のように、ついていけない人も確実にいる。
落ちこぼれていくのは生徒だけではない。先生にもいるのだ。何かとっても寂しい気がした。
11月12日(木)
そういうのと一緒かなぁ
昨日書いた、コンピューター研修で落ちこぼれた女の先生の話。色々考えることがあった。自分も
コンピューターに触り始めた時、分からなくて本当に何度もつまづいた。それでも生来の厚顔無恥な
性格と図々しさから、何度も同じことを聞いては少しずつ覚えていった。初心者にとって『こんな
ことを聞いたら恥ずかしい。』とか『同じことを何度も聞くのは悪い。』という思いがある。必然、
自分で何とかしようとして、余計分からなくなって自滅する。コンピューター嫌いになる典型的な
パターンだ。そうならないためにはいかに周りに親切な人がいるかだ。どんなくだらない質問をしても
優しく教えてくれる人。何度同じ質問をしても嫌がらず教えてくれる人。こんな人が周りにいたから
こそ、今の自分があるのだと実感した。(ありがとう!S先生!)そういう人が周りにいないと不幸だ。
いくら簡単になったとはいえ、やっぱり機械。そう簡単には行かない。そういうコンピュータ嫌いの人を
作らないためにも、自分も聞かれたら嫌がらずに教えてあげようと心に誓うO−TEACHERでした。
そこで今日授業中その話をした。うちの学校は底辺校と呼ばれるような学校だから、生徒もみんな
ある意味では中学校時代に落ちこぼれた経験を持つ子が多い。勉強がわからず、授業について
いけなくなり昨日の話のおばさん先生のように、頑なに自分の殻を作ってきた子もたくさんいる。
そんな話をしていると、とある生徒が、
「わかるよ、そのおばさんの話。俺も中学校時代、勉強についていけなくなって辛かったもん。」
「そうそう。みんながわかっているのに自分だけわからないのって恥ずかしいよ。」
「わからなくて聞くと『そんな簡単なこともわからないの?』って顔されると頭に来るよ!」
と落ちこぼれ体験談披露大会になってしまった。でもやっぱりみんなそうなんだなぁと妙に納得して
聞いていた。ところがある男子がひとこと言った。
「そう、俺も落ちこぼれたんだよ。他の奴はみーんな、5面までクリアできるのに俺だけできなくて
あのゲームのせいで俺は落ちこぼれたんだ!」
11月13日(金)
人事異動希望票の話
とうとうこの時期が来た。そう待望の人事異動の話が出る時期!一般の人には解りづらいかも
知れないが、先生たちの転勤というのはちょっと変わったシステムになっている。一応希望票を
出すのだが、これがいろいろ恣意的な動きをするのだ。サラリーマンと違って、転勤拒否もある程度
可能なのだ。学校というところは自治色が強いところなので、校長や教育委員会(?)による勝手な
人事異動に対して反抗的なのだ。まぁよく考えると人事のことに対して公然と刃向かうというのも
考えれば、お上に使えるものとしておかしい気もするのだが、そういう雰囲気がある。だから不当な
人事というか、(単なる自分の希望通り行かなかったという不満であることも多いのだが)そういう
ことにうるさい。なぜこんなに人事について一般の先生たちが色々言うかというと、公平な人事と
いうのがほとんどなされていなかったからだ。いい学校の先生は転勤してもまたいい学校、大変な
学校にいた人はまた大変な学校と、一度それぞれのレールに乗ってしまえば、そういう勤務校が続く
ことが多かったのだ。当然大変な学校ばかりいた先生はずーっと大変な学校が続くことになる。
不平不満が出るのも当然。だから人事について喧しいのだ。しかし近年それも大分是正されてきた。
進学校から底辺校へ、底辺校から進学校へという人事も大分行われてきた。
そこで私なのだが、底辺校を渡り歩いて2校目である。普通1つの学校に最大長くても10年まで
しかいられない。3年たてば年季が明けて転勤解禁となる。私ももう5年目。そろそろ転勤できない
かなぁ。そんな願いを込めて転勤希望票にも力がこもって、かなり太い字になってしまった。
11月14日(土)
パソコンで遊ぼう(すごいのねん開放講座パート4)
というわけで今日も第2土曜日で休みなのですが、ボランティアでまたまた開放講座のお手伝いです。
(詳しくは
以前の日記
を参照してください。)実は1回用事があってさぼっているのですが、
前回はワープロの一太郎で、書式設定や印刷をやったとのこと。それを受けて今回は文字装飾の巻。
センタリング、右寄せ、文字倍角、斜体等々...皆さん四苦八苦。まぁ初心者にとっては難しいか?
手を挙げて困っている人のところへ行くのだが、質問を聞いていると結構初歩的なところでつまづいて
いる。「ここの間が空いているんですがどうすればいいんですか?」「そこはBS(バックスペース)か
DELETE(デリート)でスペースを消してください。」とか「ここに英語を打ちたいんですけど
ひらがなに変換してしまって..」「そこはf9を押して無変換にしてください。半角変換はf8です。」
と、ほとんど第1回目の講座と同じことを教えている。やっぱり2週間に一回じゃ忘れるわな。
ワープロだけは継続が大切です。どんなくだらない日記でも毎日打ってれば自然と慣れるもの(^^;)>
そんなわけで後半はまた私が講師を担当しました。予定では罫線の練習まで行く予定でしたが、かなり
煮詰まっていたので、O−TEACHERの「パソコンで遊ぼう」講座をやりました。実はこれかなり
前から考えていました。実際自分の周りでもこのところ急にパソコンをやり始めた人が多い。
ところがけっこう挫折している人が多いのだ。やはり難しくて途中で投げてしまう人が多いのだ。
この間も書いたが、パソコン嫌いにならないためには、優しく教えてくれる身近な人と、もうひとつ、
「パソコンで遊ぶ」ということを知らないからだ!ぜひ初心者の人にパソコンって楽しいってことを
知ってほしいと思っていた。だから今回の講義、だいぶ前から温めていたのだ。といっても単なる
ソフトの紹介だけど...まずパソコンというのはワープロだけではないことを説明。(実際この
講座ではワープロ中心なもので受講者はそう思い込んでいる人も多い。)そこで色々なソフトのデモを
やった。まず表計算ソフト(EXCEL)でできる簡単な家計簿。そして幼児用学習ソフト(サンリオの
ソフト)そしてゲームの楽しさを伝えるためにHOVERと柿木将棋のデモ。そして実用ソフトとして
駅すぱーと(電車の運賃経路が早分かりするソフト)や地図ソフトや筆まめ(はがきソフト)等々。
これがとっても好評。パソコンで色々できるんだと皆さん実感。(最後には幾らで売ってるのと聞かれた。
業者の方、紹介料ください(^^;))皆さんとても興味を持ってくれて、中には「やっぱり買おうかしら」と
いう人もいた。(景気回復の一助?)実は自分のパソコンの付属ソフトやら人から借りたソフトなど
1ヶ月以上も前から用意していたのだ。ただ時間がなくてホームページの紹介や翻訳ソフトまでは紹介し
きれなかった。ちょっと嬉しかった。
そのあと、学校のコンピューター室に入っている総合ソフトの「School World」で、お互いに疑似的に
電子メールのやりとり。これがとっても大好評。たかが席が隣同士の人だけど、メールのやりとりをして
一気に盛り上がった。みんなで送受信の嵐。そしてその後掲示板を使って書き込み合戦。これも喜んで
やっていただきました。帰り際に「今日は楽しかったわ。」「私もEメールやってみたくなりました。」
と言われ自分的にも大満足。これで少しはコンピューターアレルギーにならないかな?そんな自己満足に
浸っている私に、一緒にやっていたH先生が一言。
「いやー、O−TEACHER、良かったよー。あれぐらい普段の授業でも準備しているの?」
ギク!!
11月16日(月)
情報は早い
いつもいい加減な授業をやっている私であるので、当然無駄話が多い。まぁ人生の先輩からの
メッセージというよりは、自分の高校時代の失敗談や他の先生の日常の様子などを、ぐだぐだ
よく話す。今日も途中時間が余ったので、昔自分がやった高校時代のある恥ずかしい話をした。
意外と受けてみんなよく笑っていた。図に乗って続けて面白い話を3つ4つした。(失敗談には
事欠かないもんで...)授業も和みその後も割とスムーズにいった。それに気をよくした私は
『よし1時間目の4組ではとっても受けたから、次の2時間目も5組でこのネタ話してやろう。』と
考えていた。そして2時間目の5組のクラスへ。授業も煮詰まってきたところでいよいよ伝家の宝刀
面白い話をし始めたところ、「O−TEACHER、その話知ってる!」「えっ?話したっけ?」
「ううん、さっき4組の人が来て、その話みんなに話してったよ。」オイオイ!勝手にネタを使うなよ。
著作権の侵害だ!仕方なくさっき4組で話した他のネタを話した。やれやれ。たった10分の休み時間の
間に話が伝わっているなんて、生徒の情報網恐るべし。そして4時間目の6組に至っては4つも話した
ネタ全てが伝わっていた。「その話も聞いた。」「その話も聞いたよー」「それも知ってる。」
おいおい全部伝わっているのかよ。おかげで話すことがなく本当に困ってしまった。
「いやーS先生、こんな事があったんですよ。・・・(中略)・・・生徒の情報網って早いですよね。」
「ホントだよね。ところでO−TEACHER、昨日の日曜日、M駅のショッピングセンターで
買い物してたでしょ?その後本屋に寄って○×という雑誌と△△っていう本買ったでしょ?」
「えーっ!?何で知ってるんですかー?」
「生徒の情報網は早いっていったじゃない。」
11月17日(火)
でも似てない...と思う
こんなこというのも何だが、別に勉強なんかできなくたっていい。何かひとつでも自慢できることが
あれば。(おお!何と偽善的な言葉!)いろいろなクラスで教えていると、色々な生徒がいて楽しい。
またみんなそれぞれ面白い才能を持っていて、素晴らしい可能性を感じさせるときがある。まぁ、
そんなに大仰なことでなくても、勉強以外に思わぬ異能(?)を発揮する奴がいる。例えば普段は
パッとしないのだが、体育祭になるとその俊足を遺憾なく発揮して、クラス対抗リレーで一躍
クラスの女子の黄色い歓声を浴びる奴。文化祭で何かセットを作らせると、手先の器用さでやたら
細かい装飾を作り、担任をうならせる奴。おとなしめの女の子だがカラオケがやたらうまくプロ級の
歌唱力を誇る娘(生徒情報より)勉強以外のところで思わぬ才能を知ることが多く、これも一つの
意外性で、学校生活のアクセントとなる。
そこで私の教えている、あるクラスの女の子のことである。この子はよく遅刻をし、担任を手こずらせて
いるのだが、私は結構仲がよい。そんな彼女は絵がとてもうまく、センスのある絵を描けることを私は
知っていた。そして先日ノート提出をさせた時、国語のノートの裏側に、でっかく似顔絵が描いてあった
のだ、私の。他の生徒に言わせると、特徴をよく捉えていてよく似ていると言う。日頃彼女の独特の
絵のセンスを買っていたのだが、自分の似顔絵となると....俺ってこんな顔?どうも今ひとつ納得が
いかない。嬉しいのだが釈然としない。そこで彼女にノートを再度借りて、デジカメで撮ってきた。
本当に私ってこんな顔なのかなぁ....
ちなみに私は高校時代、色々な先生の物真似をやらせるとピカイチだった。いたでしょ?クラスで
一人ぐらい、そんなヤツ。私はそんなヤツでした。(ちなみに今も授業中他の先生の物真似を時々やり
授業では大爆笑!しかしその先生方にかなり顰蹙の様子...少しだけ反省...ほんと少しだけ..)
11月19日(木)
芸術鑑賞会って...
すいません、一日さぼりました。さてさて今日は楽しい芸術鑑賞会。これもまた独特の行事なんですが
芸術鑑賞会と言って、高校生に様々な芸術を生で体験させようという行事。主に古典芸能(歌舞伎・能・
落語など)、観劇、音楽会(クラシック多し)など、学校によってはクラシックバレエとか、まぁそんな
ものをどこかの体育館や市民会館で見せたりするものです。しかし最近は生徒の数も減って、こういう
お金のかかる行事も減る方向にあり、うちの場合も、近隣の高校と7校合同で企画し、同じ出し物を
4日間続けて組んでもらって学校ごとに半日ずつで見るということになっている。そしてうちの学校は
今日の午前中だったのだ。9時に市民会館に集まり、演劇を見て12時に解散という、まことにもって
おいしい勤務なのだ。(だからこの日記、午後の3時に書いてます。すいません。)ききしかしやはり
今時の高校生、こういう校外行事にはなかなか参加しない。参加率は90%を切っていた様子。みんな
さぼることが多いんですよ。あんまり面白くないだろうということで勝手に自主欠席してしまうのです。
まぁ確かに学校が主催する芸術鑑賞なんてあんまり面白いものではないけど、こういう機会でないと生で
見られないものって結構あるし、実は私こういうの結構好きなもので毎年楽しみにしています。(ちなみに
昔はよく芝居も見に行きました)今年は演劇で「奇蹟の人」例のヘレン・ケラーとアニー・サリバン先生の
やつです。でも今更「WATER〜!」はないでしょうって感じ。案の定いまいちでした。去年の大衆演芸は
良かったなぁ。なかでも落語と(ちなみに落語も大好き)講談、一龍斎なんとか(よく字がわからん)の
怪談話が最高に良かった。よく夏になるとテレビなどで怪談をやる頭がつるつるの人。怪談のセットも
大がかりでこれがすごく怖くて良かった。ああいうのだったらまた見たい。しかし今年の芝居は今ひとつと
言ったところか...終わった後生徒に感想を聞いてみた。
「どうだった、今回のお芝居?」
「椅子が堅くって眠れなかった。」
「ずっと喋っていたからストーリーよくわからなかった。」
「ウォークマン聞いていた。」
「あの人(ヘレン・ケラー)何で喋れないの?」
「何でずっと日本語で台詞言っているのに、最後のとこだけ『WATER!』って言うの?」
やれやれ、なかなか芸術を鑑賞するには程遠い。そして最後にまたもやとどめの一言。
「先生、あの人でしょ!のちに看護婦になって赤十字とか作った人!」
「?...もしかして君の言っているのはナイチンゲールのこと?」