マロンがくれたカメちゃんとの絆

 

 

1999年10月、あこはけいたんと結納を済ませ、1月に結婚式を挙げることになっておりました。

そこであこが結婚して家を出ると家族が一人減ってしまうので、家族を補充しようという事になり(?!)

一番下の 妹も(あこを筆頭に3姉妹なのだ)前前から犬を飼いたがっていた事もあり、

11月に我が家に生後間も無いポメラニアン(オス)がやってきました。

それがマロンです。(毛がやわらかな栗色だった事からマロンと名前がついています。)

 

マロンは妹の犬として飼われており、妹の部屋に軟禁状態になっておりました 笑。

(飼育当初はケージや決まったスペースから出してはいけないのだそうです。)

妹が外出している間、良くママと一緒に餌をあげに行ったり遊んだりと

マロンとは数ヶ月でしたが楽しく過ごしました。

 

そして結婚後も家と実家が近い事から頻繁に遊びに行っていました。

マロンはとても人見知りで、家族以外の者には吠えまくる犬でした。

(家族を守るのにいつも一生懸命でした。)

お散歩が嫌いで、外出すると一目散に家に帰っていくようなそんな犬でした。

 

家族が不思議がっていたのはマロンとあこは正味2ヶ月くらいしか一緒に生活していないのに、

あこには吠えないどころか、車の音であこが来たと認識して出迎えに来るぐらい懐いていた事です。

 

けいたんは実家に行く度に吠えられておりましたが、

1年も経過すると遊んで〜と要求するくらい懐いておりました。

 

そして、2001年の4月。

その日は用事があって実家に行ったのですが、マロンはケージの中にいて大人しい。

あこを見てピョンピョン跳ねてはいるものの、すぐにへたり込んでしまう。

 

ママに「マロン具合が悪いの?!」と聞くと、

前日マロンはパパと晩酌を楽しんでいた側でグッタリとして元気がなく、

(いつもだったらパパが食べているものを「何かくれ〜い」と騒ぐのに)

更に翌日の朝、オレンジ色に近いような尿を出した事から、

心配になって今日の午前中に病院に連れていったそうです。

 

診察の結果、免疫関係の病気らしく、 発見が早かったのでワクチン注射を行い、

先生からも「ワクチンが効いてくるとおもいますので大丈夫ですよ」と言われたそうです。

更にワクチンは2〜3日で効き、そうすれば尿の色も正常な色に戻ってくるとも言われたそうです。

 

ちょうどあこが実家に帰ったのはワクチンを打ってから2日目のことでした。

 

翌日やはり回復の兆しを見せないまま再来院。

グッタリして動けないマロンを見てここ数日間の様子を聞かれたそうですが、

昨日あこと会ったとき、マロンがピョンピョン飛び跳ねていたとママが話したところ、

先生からこの状態でそんな体力は無いはずなのですが・・・と驚かれたそうです。

 

そしてこの時最悪の事態について告げられたそうです。

「ワクチンは通常2〜3日で効いてきます。もしも1週間以内に聞いてこない場合は最悪のケースもありえる事です」

妹が泣きながら電話で教えてくれました。

 

そしてこの時点でまろんのワクチンは3日目でした。

 

日曜日の朝、あまりにも呼吸が辛そうなので動物病院に入院する事にまりました。

酸素を送ると楽そうにしていた為です。

マロンの体力は限界に来ていた為、少しでも体力を温存させてワクチンの効果を高める為です。

マロンに会えるのは退院後になりそうだったのでママが「あこちゃんも呼ぼうか」

と言ったところ、マロンの耳がピクンッと動いて立ち上がろうとしたそうです。

これには先生も本当に驚いたそうです。

 

この時点でマロンには自分で立って歩く体力も残されてはいなかったからです。

 

最悪な事に、この時私達夫婦は実家の近くのホームセンターで買い物をしていて、

あこは家に携帯を忘れていってしまっていました。

ママが連絡をくれたのに、結局連絡がついたのは夕方で、

入院したから大丈夫だからと言われましたが、気が気ではありませんでした。

そして、夜中の3時ごろマロンの容態が急変したから今すぐ来て下さいと先生から電話があり、

妹とパパが急いで病院へかけつけました。

その事を妹が電話で知らせてくれたのですが、

その後すぐに病院へ行った妹が悲鳴を上げて泣きながら電話をくれました。

 

急いでかけつけたにもかかわらず、先生に看取られてマロンは一人で天国へと旅立ったそうです。

マロンの病名は免疫介在性溶血性貧血と言う名の病気でした・・・。

 

電話を持つ手が震え、あまりの出来事に涙も出ません。

とにかく急いで家に行くからと支度をしてけいたんに車を出してもらいました。

 

10分後家につくと、居間の床に妹が灯した沢山のキャンドルのその真中に静かにマロンが横たわっていました。

その姿は本当に眠っているようで、「マロン」と声をかけると起きてきそうなくらいです。

皆でマロンを撫でる度に涙が零れて声になりません。

 

ただ、相当に苦しかったのでしょう・・・歯を食いしばるようにしているその口元がとても痛々しくて・・・。

「最後に出した尿の色が正常に戻ってきていたから本当に今夜一晩持ちこたえたら助かったらしいよ」

とパパが泣きながら教えてくれました。

 

マロンと動物霊園のパンフレットをいくつか下さったそうなので、家から一番近い

祖師谷霊園で火葬とお葬式を済ませる事にして、予約の電話を入れました。

 

そして朝9時からお葬式となったので、一旦お家へ戻る事にしました。

けいたんはお仕事がお休みできないので、

この夜マロンと最後のお別れをするために無理をして来てくれたのです。

 

家に帰り、お布団に入ったもののずっと夢を見ていて、

寝ているんだか起きているんだか分からない状態で8時になりました。

目を覚ましたときに「あれが夢だったら・・・」と願いながら起きたものの、

夜中に着て行った服がそれが夢でない事を物語っていました。

 

何を着ていくか、特に何か考えたわけでも無いのですが、気がついたら全身黒の喪服姿に・・・。

けいたんの朝食とお昼を準備して、

カメちゃんには申し訳無いのですが、チンゲンサイを丸ごとケージ内に置いて出かけました。

 

実家に行くと数時間前には歯を食いしばるようにしていたマロンの表情が和らいでおり、

本当にただ眠っているようでした。

 

パパもお仕事なので、9時には葬斎場に入り、お葬式が始まりました。

本当に人間のお葬式と何ら変わりは無く、お坊さんの読経もあり、

お焼香もしました。

棺桶の中には綺麗な花に囲まれて安らかな寝顔のマロンが横たわっていました。

その姿を見て、家族中、こらえていた涙が溢れつつも最後のお別れをしました。

 

お葬式のスタイルもその地方によってそれぞれ違うものですが、

パパは青森の出身なので、火葬の際に小銭を棺桶に入れる習慣があります。

パパは自分の小銭入れから小銭を出して、

「マロン、これで天国に行く途中にお菓子でも買っていきなさい」

と泣きながら言うので家族皆で号泣。

 

火葬されてしまうともうあのフワフワの毛に触れないんだと、

出棺前の最後のお別れを惜しみつつ、送り出しました。

(火葬後、骨拾いも出きるのですが、骨になった姿を見たくないと家族全員の意見で止めました。)

飼い主の妹はこの日大学から大学生になったばかりで、初めての登校日だったので、

ここでお別れしました。

 

火葬に少々時間がかかるのでその間に霊園の中を案内してもらう。

地下に礼拝室があって、棚が並んだお部屋に、亡くなられたワンちゃんや猫ちゃんがお写真と位牌、

大好きだった玩具などに囲まれて祭られておりました。

 

ここでパパが斎場の方に「カメもいるんですか」と質問していて、

「ええ、数は多くないですけどいらっしゃいますよ」との答えが帰ってきました。

・・・でもカメちゃんは長生きだからね・・・

 

ここで我が家も場所を決めて、(最初、家の庭に埋めようとも話したのですが、

パパが最初の2年はここでと言い出し、確かにお友達も沢山いるしでそこに決めました。)

地下を後にしました。

 

火葬が終わり骨壷が来ました。

「中を確認なさいますか」との言葉に全員が首を横に振る。

ポメラニアンにしては大きかったので小型ではなく中型扱いなんだね、

と泣きながら笑ったりもしました。

納骨が済んで、お会計も済んで、パパも会社なので一足先に帰りました。

あことママと妹は家までの道程をゆっくりと歩いて帰りました。

 

朝は今にも空が泣き出しそうなくらいにどんよりと曇っていたのに、

葬斎場を出ると暖かな日差しが降り注いでおりました。

 

お昼ご飯、一緒に食べる?と聞かれたのですが、食欲も無かったし、カメちゃんが心配なので帰りました。

 

帰りつくと家の中はカーテンも閉まっており、薄暗い。

カーテンを開ける気力も無くソファーに座りこむ。

テーブルの上にはマロンのアルバムがあり、それを一人で泣きながら見る。

 

20分くらい泣いていたでしょうか。

カメちゃんがあこの気配を感じたのかガコガコ言い出しました。

カメちゃんのケージを覗くと、

チンゲンサイ1個で放っておいて、外は晴れている様子なのに遊びに出してもくれない!

とかなり暴れたらしく、ケージ内は鉢植えも倒れているしでめちゃくちゃな状態。

すねて後ろを向いているカメちゃんを抱き上げました。

カメちゃんは最初、そっぽを向いておりましたが、

あこが泣きながら「マロンが天国へ行っちゃったんだよ・・・」とカメちゃんにお話していると、

いつもであれば5秒と抱き上げた手の中には大人しくしていないカメちゃんが

泣いているあこを見てただ事ではないと思ったのかなんなのか、

神妙な面持ちであこのお話を静かに聞いていてくれました。

ぎゅっと抱きしめても腕の中で大人しくしていて、

顔をにゅ〜っと伸ばしてあこの頬に顔をくっ付けてじっとしているのです。

かすかに伝わるカメちゃんの温もりがとてもとても暖かかった・・・。

 

しばらくそんな状態でいましたが、なんとなくこの時カメちゃんと心が通じたような気がしました。

カメちゃんも相当お腹が空いていて、お外で遊びたかったはずなのに、

文句一つ言わず、暴れる事も無く、あこを見つめていてくれました・・・。

このことにどんなに心が救われた事か!

 

「そうだよね泣いていちゃ駄目だよね」とカーテンを開け、

カメちゃんをお風呂にいれて、ケージの掃除をして、

ご飯をあげるとカメちゃんはあこを見つめて食べようとしません。

「大丈夫だよ。もう泣いてないから。食べなさい」と小さな笑顔で促すと、

モソモソと食べ始めましたが、時々食べてはあこを見つめる・・・それを繰り返しておりました。

 

本当にカメちゃんがいてくれて良かった・・・。

心からそう思った瞬間でした。

 

・・・その後も数日間カメちゃんはあこをじっと見つめる日が続き、

カメちゃんなりに何か心配してくれているのかな・・・と胸が打たれる思いでした。

 

カメとでも心は通じ合える

 

マロンとの突然のお別れはとても悲しいものでしたが、

あこはカメちゃんとのかけがえのない絆を手に入れました。

 

本当にそう思った出来事でした。

 

亡くなる1年前のサマーカット直後のお写真(まめしばみたいでしょ。)

マロン・・・天国でまた会う日まで元気でいてね。