ポリッセーナの冒険  ビアンカ・ピッツォルノ 作

 もしかしたら、自分は捨て子かも知れない―私も、子どもの頃、母にひどく叱られた時、一度は思ったことがある様な気がします。この児童書はそんなよくある子どもの空想をヒントにして創作されています。主人公はポリッセーナという女の子で、彼女の空想が衝撃的な事実だとわかり、旅芸人一座に仲間入りして真実の親を探し求めにいくという冒険物語です。舞台は、イタリアで裕福な商人の娘として何不自由なく育てられたちょっと勝気で、あまり可愛くないどちらかと言えばわがままな女の子です。これが男の子だったら『家なき子』のようなお話としてあるいは、女の子でも『小公女』のように可憐で悲劇のヒロインのような物語だとしたら途中で、(読むのを)放り投げていたでしょう。
 一見、よくあるお話で、ジェンダーフリーの匂いもちらつかせながら、破天荒な主人公が幾多の困難に立ち向かっていく姿にハラハラしながら、その展開の起伏に惹きこまれていきます。このお話は謎が次の謎に繋がり、ひとつの謎が、最初からの謎とぐるりと鎖のように繋がっていてそれが最後に明らかにされるという、謂わばミステリアスストーリーとなっています。
 ただ、大人が読むと(もしかしたら・・・)と、先が読めてしまうかも?


 それから、彼女には大切な存在感あふれるもう一人の主人公といっても過言でない友人がいます。ポリッセーナを助けるルクレチアというやはり女の子です。彼女の存在が最後は、どんでん返しのような結果となり、ルクレチアの方が優しく、好感が持てて、ある意味、物語の主人公にふさわしい気もします。でも、優等生でないちょっと生意気なポリッセーナだからこそ、共感して読み進めてくうちにこの物語の魅力を見いだせたような気がします。

(え)

※おまけ
前作に『ラビーニアとおかしな魔法のお話』があります。
こちらは短編ですので、すぐに読めてしまいますが、食前には読まない方がいいでしょう(?)

(え)

 

光をはこぶ娘  O・R・メリング 作

  『光をはこぶ娘』はO・R・メリングの『妖精王の月』から五冊目に当るケルトファンタジーです。
他3冊は『ドルイドの歌』『歌う石』『夏の王』があります。全作共通点は、現代に生きる少女が異界で、成長を遂げて戻ってくるという物語だということ。シリーズでなく、主人公も異なりますが、一連の流れ上にあるため、一冊だけでも楽しめますが前作を読んでからだと尚、楽しめるでしょう。
 父親とふたり、母の故郷アイルランドで暮らしている主人公11歳のダーナの願いは七年前に失踪した母の消息を知ることでした。父親のカナダ転勤が決まり、父の故郷でもあるその地に行くことを嫌い、これを機に、母の失踪の謎を求めに家を出ます。そこで、不思議な森へ迷い込み、母親と自分自身のルーツをさがす少女の異世界への壮大な旅物語です。その中には、現代的な要素の環境問題が織り込めてあったり、失われたものが還ってくるということに絡めて、キリスト教精神も溶け込んでいることに気付かされます。


 そして、「だれでも、内側に《怪物》をかかえている。それを心のさらに奥深いところに追いやれば、そいつはそこにじっとしているままで、その内にわれらは、それを他の人間に投影し、それを殺そうとする。それよりは、そいつと和を結んだほうがいい。怪物と見えるものはみな、本当は愛されることを必要としているものなのだ。」

 ここに鋭い、自己確認から思春期の入り口にある少女の旅を通して大人へと成長していく課題があるような気がします。また、少女は、母が見つかればカナダへ引っ越さずにすむかもしれないという単純で子どもらしい発想からの家出でしたが、最後には、家族の絆と愛を知る少女の健やかさが描かれているだけに、(全作とも中高生以上向きですが)この作品については、読書年齢の高い高学年にも薦めてみたいと思います。


 さて、この後、舞台はカナダに移り、更なる妖精との交流物語が待ち受けているようです。
 また、どんな神話が誕生するのでしょう。

(え)