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ユーロ4達成ディーゼル乗用車実車テスト計画(その3)

Peugeotの排気ガス低減システムについて:

 Automobiles Peugeotの主力ディーゼルエンジンは、この2.0Lモデルでは無いかもしれません。 プジョーのHDiラインナップには、1.4L・1.6L・2.0L・2.2L・2.8Lがあります。 この内1.4L及び1.6Lのモデルは、多くの車種に採用されているからです。 しかながらこの2.0Lモデル、特にHDi136モデルは特別で、現在最も進んだピエゾアクチュエーター式燃料噴射システムが搭載され、同時に最新の技術が盛り込まれています。 HDi136の主な特徴は次の通りです。

1.6回に分けた噴射によりNOxと騒音を低減
  プレインジェクション   2回  燃焼音の減少
  メインインジェクション  2回  NOxの減少
  ポストインジェクション   2回  DPFの効率アップ
  一工程中に6回に分けて噴射しているのは、現在そう多くは無く、デンソー次世代ピエゾ式1800barシステムでも5回でこれ 
  には、後処理装置との関係が有るようです。 この噴射システムは、シーメンス社製コモンレールで、1.6Lモデルは全く同じ
  噴射制御(6回)を行っていますが、ボッシュ社製の通常のソレノイドバルブ式コモンレールを搭載しています。 噴射圧力は
  同じ1600barで、最高出力110PS/24.5Kgmで十分なパワーとトルクを有しており本来ならば排気量が少ない分燃料消費量
  が少ないので、排気ガスレベルも低いはずですが、僅かながら1.6Lの方が上回っています。 この理由はピエゾ式燃料噴
  射によるよりすばやく正確な燃料噴射制御によるものが大きく影響しているようです。

2.EGR
  EGRは最新のCooled EGRでは無く通常の電子制御EGRが使用されています。 より効率を求めればEGRをCooledタイプに
  する事で燃費や排気ガスを改善できるはずです。

3.酸化触媒とDPF
  プジョーの資料によれば日本のイビデン社製DPFにフランス・ローディ
  ア社の酸化セシウムを燃料に添加するシステムと組み合わせ世界最
  高水準までPMの排出量を落しています。 イビデン社製DPFはその 
  効率の良さで認められていますが、 PMを補修したままでは詰まって
  しまう為、走行中にDPF内部で燃やしてし処理します。 通常PMを燃
  焼させるには550℃以上に排気温度を上げる必要があります。 しか
  し、高速走行或いはエンジン回転を上げた時しか働かない為、酸化セ
  シウム添加剤を燃料に定期的に添加して(全て電子化されています。
  )450℃でPMを燃焼できるようにしています。 また、DPFだけでは未
  燃のガスを処理できない為DPFの直前に酸化触媒が取り付けてあり
  膨張行程で噴射される余剰の燃料により排気温度を上げています。

左側がエンジン側で褐色のフランジ左が酸化触媒
フランジ右の大きい方がDPF(HDi136の実車より)



  これを簡単に箇条書きすると、
  ・ 一般のシティーモードでの走行では、排気ガス温度は150℃程度にしかならない。
  ・ そこでメイン燃焼が終わった直後に余剰の燃料を噴射(ポストインジェクション)し排気温度を上昇させる。 +200〜250℃
  ・ DPF直前に酸化触媒を置く事で、未燃のガスが燃焼し、HCやCOを除去しながら排気音を上昇させる。   +100℃
  ・ これで排気ガス温度は450℃以上に上昇する。 それでもDPF単独で燃焼させるには100℃も低い事になる。
  ・ エオリス(酸化セリウム)を少量定期的に燃料に添加することで、PMの燃焼温度を約100℃下げさせる事ができる。
   
 このシステムにより、Euro4の走行モードで0.001g/Kmまで下げる事ができ、同時にCO・HC等を非常に低く抑える事が可能になっています。 (日本の10・15モードや11モードですらこれらの数値は驚異的に低いことが排出ガス試験結果でも明らかになりました。) 有毒なPMを効率良く捕らえ燃焼させる現在最良のシステムと言えます。

今回の試験では、PMは0.001g/Kg以下であったことは賞賛に値するといえます。 他のシステムではこのレベルは達成できません。 同時にCO・NMHCもこれと同じように、規制値の数%にしかならず、プジョーの排気ガス制御システムがいかに優れているかがわかる装置です。
 NOxについては標準的な数値でしかありませんが、EGRはまだクールドEGRではありませんから、ここを改良するとNOxはそれなりに下がると思われます。 

(排気管左奥にのアルミサポートの上にあるのが
エオリスのボトル)
4.大気汚染指定物質について
  この業界や一部の環境に詳しい方でしたら、上記エオリスの使用に関し疑問があるのではないでしょうか? すなわち日本
  の大気汚染物質のリストに酸化セリウムが乗っているからです。 では、何故・どんな理由から酸化セリウムが大気汚染物
  質のリストに上げられるようになったのか? これには、日本の自動車メーカーのディーゼルエンジン排気ガス処理への遅
  れから来る焦りが原因と思われます。 というのは、このセリウムがリストに上げられるようになったのは、ごく最近で排気ガ
  ス清浄装置にセリウムが注目され始めた矢先に、ある日本の自動車メーカーがドイツが同じような規制物質リストにセリウム
  が上げられているのに日本が指定していないのはおかしいのではないかとの指摘でリストに乗せられることになった。 しかも
  この自動車メーカーは、ドイツでは、十分な検討の結果大気汚染指定物質リストからセリウムが除外される事を知っていての
  行動だと言われています。 日本の場合一度リスト上げられた場合、完璧なぐらいのデータ(殆どの場合そんなデータを作るこ
  との方が難しい。)や海外から、特にアメリカからの圧力が無い限り役人はリスク(万が一自分が決めて間違っていた場合のリ
  スク)がある限り絶対に外す事はしないことを良く知っていての行動とも言われています。 その後フランスやドイツ等EU諸国
  ではエオリスは、認可が取れています。 自社開発のNOx触媒の開発遅れから取った行動とは言え、決して誉められる行動
  ではないのですが・・・。
  この添加剤の使用量は、最近のモデルでは1.5L容器入りでなんと12〜20万Km使えることから、将来はPDFに酸化セリウムの
  多孔質皮膜などを形成したものなどが開発され、より少なく或いはなくなる方向にあると思います。

この様な多くの技術が結晶し排気ガス低減がなされています。 勿論排ガス有害物質ゼロが究極のターゲットですが、現在ディーゼルエンジンが抱える有害排気ガス物質としては、ナノメートル級のPMであり、少しでもPMを下げる事が急務である事からすれば、プジョーの排気ガス浄化装置は現在究極のものだとタービュランスでは考えています。 ただし、欠点としては、NOxの排出が比較的多目であること。 フィルターを定期的に清掃する必要があることです。 しかし、日本のメーカーが開発しているNOx触媒等にも寿命の問題がある事を考えれば、欠点とはいえない程度の問題でしょう。 何年目かの車検の時に、整備工場で行ってもらうことですし、現行機車種では、日本の平均走行距離では、清掃まで行かない場合もあるかもしれませんから。

その4: 新長期規制達成への道(その1)へ: