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 悩んでいようと、自己嫌悪感に苛まれていようとも時間は過ぎていく。
 とんでもない夢をみてから5日。
 坂道を転がる勢い・・というのはよく聞く言葉だが、よもやまさか自分がそんな事を経験するようになるとは思ってもみなかった。
 眠りを誘うような低い声の講義を聞きながら、火村はらしくもなく胸の中で溜め息をついた。
 自覚をしてしまえば答えは出てくる。
 つまり自分は有栖川有栖という人間が好きなのだ。しかもそういう意味も含めてだ。
 もっともあの日、あんな会話を聞かなければ自覚はもっと後だっただろう。だがきっと遅かれ早かれ自分は気付いたに違いない。
 自分は確かに有栖に惹かれていて、多分・・・もうずっと前から有栖の事が好きだったのだ。
 有栖と一緒に居ると不思議に気持ちが落ち着き、楽しかった。彼の笑顔を見るとなぜか嬉しかったし、今までにも有栖が他の人間と楽しげに話をしているのを見るとあまり面白い気持ちにはなれなかった。
 そして・・。
『・・・火村ぁ・・!』
 そんな顔を見たこともないのになぜ・・と思うほど、それは情欲を煽る顔だった。
 涙で潤んだ瞳と上気した顔。
 罪悪感と同時にそんな顔を見ている人間がいるのかもしれないという事が何よりも火村の気持ちを苛立たせた。
 勿論あんな夢を見たのは、書庫に居たのが有栖かもしれないというショックからその会話を脚色し、自分にスライドさせたのだとか、このところ例の事で頭が一杯になっていてその手の事をしていなかったので、あまり考えたくはないが欲求不満だったのではないか。または有栖がどんな風にその男に抱かれていたのかというような下世話な思いが深層心理の中にあり、それが夢の中に出てしまったのかもしれない。果てはどこかの男が有栖を抱いているかもしれない事に対して子供じみた独占欲を感じたのだ等々そんな事を考えて、考えて、考えた。
 そうして考えるそばから、それならば本当に自分はあんな事を有栖にしたいと思っていないのか。どうして友人にそんな独占欲を感じるのかと自分自身に問い掛ける声が聞こえてきたのだ。
『あっと驚く真相が待ち構えてるんや』
 そう。あの日からはじまり、いつの間にか隣にいる事が自然になっていた友人。
 それを失う事が嫌なのか。
 改めてそう問いかけた時に答えは出た。
 自分は有栖の一番近くに居たいのだ。
 声をかけられ、笑顔を向けられ、信頼を寄せられていたい。そして・・・。
『冷たかったか?』
『・・・アホ・・も・・ぁ・』
『アリス・・』
 あれが有栖であろうとなかろうと、あの時の男のように自分は火村自身がよく知っている有栖の、彼の身体に触れ、彼の全てを手に入れたいと思っているし、もしも・・・もしもあれが有栖ならば、その男から奪い、自分だけのものにしたいと願っている。
 あの夢は確かに自分自身の欲望だ。
 そしてこれは紛れもない、恋だ。
 自分が『恋』等というものに落ちるとは思ってもいなかったが、大切で、自分のそばに居て欲しくて、その身体も心も全てが欲しいのだと思ったらそれはやっぱり恋なのだろう。
 いつから・・とは言えないが、自分は有栖をこんなにも好きになっていたのだ。
 それがこの5日で火村が導き出した答えだった。
 ただし、答えを出してもそれを具体的にどうすればいいのか・・・。
 やはり有栖が男と付き合っているのとそうでないのとでは、その方法も考えていかなければならないだろう。
 だがもうどちらでも譲るつもりはない。
 自覚は覚悟にも繋がる。
「・・・・・・」
 鳴ったチャイムに「今日はこれまで」という声を聞いて火村は結局何も書かなかったノートを閉じると荷物をまとめた。次の時間はポッカリと空いている。
 有栖は確か講義があった筈だ。
 さてどうしようか。
 少し早めに学食に行き、彼の場所を確保しておいてやるのもいいかもしれない。
 それとも彼が出るだろう法学部の講義に潜り込んでしまうのもいいかもしれない。
 この間まで会ってどうすればいいのか判らないと避けるような事をしていた人間と同じ人間とは思えないな等と自分で自分に突っ込みを入れて火村は教室を出て長い廊下を歩き出した。そうして教授棟の横を通り過ぎようとした途端・・・。
「火村君!」
 呼びとめられて振り返ると、ゼミの安藤教授が立っていた。
「次は講義が入っているかね?」
「・・・・いえ、次は空いていますが」
 火村の答えに安藤はホッとしたような表情を浮かべた。
「すまんが川嶋君が休みでな。この間持ってきてもらった資料を返して、新たに持ってきてもらいたいものがあるんだが頼めんだろうか?」
 川嶋は大澤のところの助手だ。そして恐らくこの間持ってきてもらった資料というのが書庫から持ってきた本の事だろう。結局あの日、火村はもう一度書庫に行ったのだ。
「・・判りました」
 教授自ら頼めるかと言われて「嫌です」と言える学生はまずいない。
 安藤の研究室に寄り、見覚えのある本を受け取り次に借りてこなければならないもののリストを手にして火村は図書館に向かった。
 メモに書かれているものを見ると、どうやら今回も書庫に入らなければならないかもしれない。
 あの日以来どうも書庫は入るのが躊躇われる場所になのだが、これから卒論もあるし、大学院に進む為の試験もある。そんな事は言っていられない。
「・・・・・終わったら食堂で待っているか」
 そうポツリと呟いて火村は辿り着いた図書館のドアを肩で押し開けて返却のカウンターに近づいた。
「あら、火村君凄い量ね。また安藤教授?」
「ええ。返却をお願いします。それからこれを借りたいんですが」
 すでに馴染みになっている司書に安藤のメモを渡すと彼女は「ちょっと待って」と端末で本の保管場所を調べてくれた。やみくもにそのジャンルの棚を探すよりこれが一番手っ取り早い。
「ああ・・・これとこれはSの874のところにあるけど、こっちは書庫の方ね。これは今貸し出し中です」
 メモにサラサラと分類番号の数字を書き込んで彼女はそれを火村に戻した。
「今書庫の方は開いているからそのままどうぞ」
「開いているんですか?」
「ええ。貴方のお友達も一緒よ」
「・・・・・・」
 瞬間頭の中に浮かんだ顔。
 何とも言えない気持ちになりながら火村は最奥にある扉の方に向かって歩き出した。
 有栖が書庫に居る。それはどう言う事なのか。一緒と言うことは他の人間が居ると言うことだ。
 ジワリと湧き上がる嫌な気持ち。一緒に居るのは誰なのか。それはもしかしてこの間の男ではないのか。そして本当に本を探しているだけなのかと、薄暗い思いが広がっていく。
 ドアに貼られた《許可なく立ち入る事を禁止する》の文字。そのドアに手をかけようとした瞬間。
「ほんまに助かったわ!」
「痛いって、肩を叩くなアホ!この礼は高くつくで」
 聞こえてきた会話と共に開かれたドアの向こうには確かに有栖がいた。
 しかも、その肩には先日学食で見た男が手を乗せている。
「・・・・・・
「火村!?なんや君も探しもんか?」
 向けられた顔は何の変わりもないいつもの有栖の笑顔だった。だが・・。
「・・・ああ。・・・・・お前は?」
 チラリと肩に置かれた手を見ると有栖は慌ててその手を払った。
「いた・・」
「いつまでも乗せとるからや。重いっちゅうねん。えっとな、レポートの資料や。この前のゼミで聞いた本がみたいと思うて。それでこいつは便乗」
 こいつと指差された男は「ひでぇ」と言いながら笑って火村に頭を下げた。
「社会学部の火村やろ?噂はかねがね。今度飲み会とかもよかったら一緒に」
「お前にはその時間がないんやないのか?デートで忙しくて」
「それはそれ、これはこれ」
「そないな事言うてるとほんまにクリスマスの予定が埋まらなくなるで」
「・・・・・そうなったらどうせ侘しいだろうお前と一緒に過ごしてやるよ」
「!誰がや、アホ」
「・・声がでかいぜ?」
「!!」
「じゃあな」
「あ・・・うん・・」
 ボソボソとしたやりとりでも声は響く。火村の言葉に慌てて口を閉じた有栖に短くそう言って、火村は二人と入れ違うように書庫に入った。
 途端に静まり返った本で埋め尽くされた狭い空間。
 その先に見える細い階段。
「・・・・っ・」
 どうしてこんな所で他の男と二人で居るのだ。
 記憶があの日に遡った。
『冷たかったか?』
『・・・アホ・・も・・ぁ・』
『アリス・・』
 ついで、そんな事はないと否定した事までもが再び火村の胸に湧き上がる。
 不特定多数の人間と付き合うようなそんな器用さは有栖にはないと思っていたのは火村だけで、本当はここで会っていたあの男だけではなく、有栖は他の男とも関係があるのかもしれない。
 彼はそういう性癖の持ち主で、けれど自分とはあくまでも友人の付き合いで、自分は彼の趣味ではなく、だからその対象が火村に向けられる事はない。
「・・・・・チッ・」 
 先日までとは明らかに違う苛立ちに火村は小さく舌打ちをして階段を降りた。とにかくこんな所は早く出よう。どうやら自分にとってここは鬼門になりつつある場所のようだ。
 メモに書かれた数字を見ながら火村は書庫の奥へと足を進めた。
 その途端。
「火村・・?・・居るんやろ・・?」
「!!」
 聞こえてきたおずおずとしたような声。
「火村?・・どこや?」
「・・なんだよ」 
 答えるとどこかホッとしたような様子が伝わってきて、階段を降りてくる音の後、見知った顔を覗かせた。
「随分奥まったとこにおるんやなぁ。この辺が社会学部関係の本なんか?」
「何してんだよ。本は見つかったんだろう?講義はどうしたんだ?」
 自分の問いかけに答える事なく向けられた矢継ぎ早な質問に、有栖は気にする風もなく「休講」とだけ言って火村の隣に立った。
「なんや身体を壊したとかで、補講が怖いわ」
 言いながら小さく笑う顔。そして。
「何の本探しとるんや?」
「・・・安藤教授からの頼まれもの」
「ふーん・・」
 自分で尋ねたくせに気のない返事を返す。
 もっともにべもない火村の答えに有栖はその後をどう繋げていいのか判らなかったのだが、火村は火村でそんな有栖に次の言葉を見つけられないまま書棚に視線を移した。
 訪れた沈黙。
「・・・・・」
 お互いが言葉を見つけられずに居るとは思わずに有栖はつい先程の大谷の言葉を思い出していた。
『俺あいつに何かしたかなぁ・・』
『え・・?』
『あいつっていつもあんな感じなんか?』
『あんな感じって・・・』
『何て言うか・・・気のせいなんかなぁ・・。睨まれた気がするんやけど・・』
 確かに有栖自身、先刻の火村の様子が気になって戻ってきたのだ。ここ半月何となく火村の様子がおかしかいような気がして、それがこのところ元に戻ってきた気がしていたというのにまた逆戻りをしてしまった。
「・・・・・」
 うまく本が見つからないのだろうか、しゃがみ込んで下の段を探している友人の、滅多に見ることはないその旋毛を眺めて有栖はポツリと口を開いた。
「けどやっぱりここって落ちつくな」
「・・・そうか?」
「本に囲まれとるっていうのがええねん。それになんか密室みたいな感じやろ?」
「・・お前らしいよな」
 返ってきた言葉に有栖は少しだけ笑って火村の隣にしゃがみ込んだ。
「俺も探したる。タイトルは?」
 持っているメモを見せろというように手を差し出す有栖に火村はその眉を微かに寄せた。
「火村?」
「・・・・いいのか?」
「何言うてんねん。一緒に探したほうが早いに決まっとるやろ?」
 問いかけの意味の違いに有栖が気付く事はなかった。
 火村の言葉にはこんな所でこんな風にしていていいのかと、自分もまたお前を欲しがっている男なのだと、それなのにどうしてそんなにも無防備な笑顔を晒せるのだと、勿論有栖には伝わる筈のない言葉が込められていた。
「この前も来たんやって?」
「・・え?」
「山中さんがさっき言うてたんや。君がこの前も安藤教授の資料を借りに来たって」
「・・・・・ああ・・」
 その時にあの現場に遭遇した。
 有栖の指先が古い本の背表紙を辿っていく。
 男のものにしては細い指。
 あの指は・・・夢の中のように、火村ではない男の背中に縋りついただろうか。
「お前も・・だろう?」
 先程感じていたドロドロとした思いが再び湧いてくる気がして火村はこの半月近く口に出来なかった言葉を口にしていた。
「え・・?」
 向けられたきょとんとした眼差し。
「お前も来たんじゃないか?」
「俺・・?いや・・最近ここには来とらんけど?何で?」
「・・・いや」
 ではあれは有栖ではなかったのか。それとも自分にはやはり隠しておきたいと思っているのだろうか。
「あった!あったで、火村これやろ?」
 嬉しげに取り出された本を持つ手を、火村は無意識のうちに掴んでいた。
「火村?」
「・・・・・」
「・・違うたんか・・?」
 言いながらかしげた首とどこか不安そうな瞳。
「あの・・・」
「・・・・っ・」
有栖が悪いのだ。
( 違う・・・)
 胸の中で二つの声がした。
「火村・・手・・痛いんやけど・・」
こんな風に自分に好意を持つ男と無防備に二人っ
    きりになった有栖が悪い。
(それは詭弁だ)
誘っている、有栖が悪いのだ。
(あまりにも理不尽で自分勝手な論理だ!)
「・・どうして来たんだ?」
 それは火村に残されていた唯一の理性の欠片だった。
「え・・・?」
「何で、戻ってきたんだ?」
 けれど有栖にはそれが自分の事を否定されているように聞こえた。ヒクリと引き攣った顔。
「・・・それは・・せっかく会ったんだから一緒に居たいと・・火村!?」
 その途端掴まれた腕に力が込められて有栖は持っていた本をバサリと床の上に落とした。
「・・め・・迷惑やったんか?」
 思わずクシャリと泣き出しそうに顔を歪めると、火村はどこか苦しそうに眉を寄せた。
「・・・一緒に居たいなんてあの男にもそんな事を言ったのか?」
「・・・あの男・・って・・」
「他の奴にも・・さっきの奴にもそんな風に言ってやったのか・・」
「・・・何言うて・・俺は」
 何かが食い違っている。何かがおかしい。けれどそれが何かは判らない。
「アリス・・」
「!!」
 呼ばれた名前と同時に掴んでいた手を引き寄せられて有栖はその胸に抱き締められていた。と同時に頭の中が真っ白になり何も今まで以上に何もわからなくなってしまう。 一体自分に何が起こっているのか。 
 火村は何をしているのか。
 自分は火村を怒らせるような事をしてしまったのか。
 けれど火村は火村で、有栖が抵抗をしない事に対して彼がこの行為に慣れている、もしくはこんな事をされても平気なのだという気持ちにさせられて、苦い思いを噛み締めていた。
「・・・二度と他の奴になんか・・・」
「・・ひむ・・!!」
 湧き上がる気持ちは嫉妬と呼ばれるもの以外のなにものでもなかった。
 抱き締めた腕に力を込めて奪うように重ねた唇。
「!!!」
 信じられないというように見開かれた有栖の瞳を火村は知らない。
「・・・っ・・」
 離れて、すぐに塞がれて、そうしてガクリと力の抜けた身体に火村はそっとその唇を開放した。
「・・ひ・む・・」
「・・好きだ」
「・・・・え・・」
 それは有栖にとって耳を疑うような言葉だった。
「俺はお前を誰かに渡すつもりはない」
 けれどその次の言葉は全く判らないものだった。
 それは一体どういう意味の言葉なのか。
「・・・火村・・?」
「誰かと共有するつもりもない」
「・・・・・共・有・?」
 わけも判らず繰り返した言葉。
 そして次の瞬間、火村は腕の中の有栖に向かって宣戦布告をした。
「だから覚悟をしてくれ」
「か・・くご・・・?」
 今度こそ本当に、何を言われているのか判らない。一体火村は何をどう覚悟をしろと言うのだろう。
「アリス・・」
「・・・・・・」
 名前を呼ばれたが、それに答える術を有栖は持たなかった。
(覚悟・・覚悟って・・いや、そうやなくて・・。せやから好きって・・火村が・・けど俺男やし・・ってそういう問題やなくて!え・・と・・ええええ!!)
 明らかにパニックを起こしている有栖をひどく自嘲的な笑みを浮かべて見つめると、火村は抱き締めていた腕の中からゆっくりと開放した。
「とりあえずもうここにはくるなよ。俺とも、他の奴ともだ」
「!?」
 どうしてそんな事を言われなければならいのか。他の奴というのは何なのか。
 何かを言いたくて、けれど何を言っていいのか判らなくて有栖は口を開いて、閉じて・・もう一度開きかけた。
 その途端。
「火村君?見つからないの?」
 まるでタイミングを見計らっていたかのようにドアの開いた音がして、先刻受付で話をした山中の声がした。
「・・いえ、ありました。今出ます」
「そう?」
 再び締められたドアの音を聞きながら火村は先刻有栖が落とした本を床から拾い上げた。そして。
「行くぜ?」
「・・・・・」
「ずっとここに居て誰かを待つつもりなのか?」
「こんな所で誰を待つんや!さっきから何言うてんねん!」
 本当に何から何までも判らない事だらけだ。
 ついに怒り出してしまった有栖を見て、火村はもう一度苦い笑みを浮かべると「さぁな」と口にしてクルリと鉄製の細い階段を上り始めた。
「・・・・・」
 一瞬の間を置いて有栖もまたそれに続く。
 微かに軋む階段の音。
「・・じゃあ、またな」
 ドアを開いて振り返ったると火村はそう言った。
 その言葉に悔しげな、そしてどこか悲しげな表情を浮かべて有栖は何も言わずに逃げるように去っていく。
「・・・・・・・」
 やがて見えなくなる後姿。
 それを見つめながら火村は後悔はしないと思っていた。 勿論もっと他の方法はたくさんあった筈だ。今回の事は最悪な展開と言ってもいい。あんな風に無理矢理に、彼を貶めるような事をするつもりはなかったのだ。
 けれど抑えきれなかったというのもまた、火村にとって事実だった。多分、こう言ってしまうとそれこそ詭弁で、勝手な言いぐさだと判ってはいるのだが、この気持ちを気付いたのと同様に、遅かれ早かれ自分はこんな風に一度は有栖を傷つけてしまっただろう。
 だが、これが火村にとっての新たな始まりとなるのだ。
 気持ちを押し付けるだけでは恋愛にはならないけれど、気持ちを知らせなければはじまらないのも恋愛である。
 この勝負に負けるわけにはいかないのだ。
「・・・勝手だな・・」
 有栖が聞いたら「ほんまにな!」と怒り出す事間違いなしの台詞を口にして、火村は残りの本を探すべく書棚に向かった。


何て言うか・・・・・・火村って・・・・