岩の判別 v1.3
Institute of EarthMover


岩の分類には、一般的に知られた地質的な岩の成因による分類があります。
一方、土木工学的な分類では、トンネル、ダムなどの岩を取扱う対象物毎、或いは事業主体毎にさまざまな分類法が用いられています。 
大きく分けて、構造物基礎、地下空洞、法面等の力学的な安定を目的とした岩盤分類と掘削施工の難易による岩の分類法がありますが、いずれも統一した分類法は確立されていません。
一般に、土砂・軟岩・硬岩の呼称区分は、後者の掘削における難易による分類で、以下のような考え方で区分しています。

  土 砂 : ブルドーザの排土板で掘削可能な地盤
  軟 岩 : リッピングで掘削可能な岩盤
  硬 岩 : 発破による掘削が経済的である岩盤

更に、国土交通省等では施工効率によって、軟岩T・U、中硬岩、硬岩T・Uに細分類しています。
リッピングの能力(リッパビリティ)は、ブルドーザの大きさによって変わりますので、リッピングの可否を判断する機種は、汎用的な32t 級ブルドーザとしています。

  → 国土交通省の岩の分類と判定基準pdf136kB
  → 土砂・軟岩・硬岩判定試験

施工前に調べること

掘削性の判断
施工前に地盤の掘削性を判断するには、設計図書の地質調査資料を調べます。
硬さを判断できるデータとしては、ボーリングデータのN値(標準貫入試験)、換算N値、RQD、一軸圧縮強度、超音波速度と弾性波探査の弾性波速度があります。

 ボーリングデータ
  N値: 50以下の土砂の硬さを判断します
  換算N値: 50〜300の軟岩・風化岩の硬さを推定
  RQD: 岩(ボーリングコア)の亀裂の程度(頻度)が判断できます
  一軸圧縮強度: 岩片(ボーリングコア)そのものの硬さが判ります
  超音波速度: 岩片(ボーリングコアの)弾性波速度


参考のために、ボーリングデータから岩級区分図(JH)の作成例を示します。
ボーリング柱状図からは、地質区分図が描けます。(図-1)
更にボーリングデータから掘削生を判断します。 コアの観察、RQD、N値、一軸圧縮強度qu等から土軟硬を判定し、表にまとめます。(表-1)
その結果を岩級区分図として図示します。(図-2)

表-1 ボーリングデータによる土軟硬判定
表:ボーリングデータから土砂・軟岩・硬岩を判定

地質縦断図
図-1 地質区分図
岩級区分(土軟硬区分)図
図-2 岩級区分図


弾性波探査データ
 
弾性波速度: 岩片の硬さと岩盤亀裂との合成的硬さを判断できます

リッパビリティは、弾性波速度との相関が強いので、弾性波速度のデータがあれば掘削性の判断が容易です。
弾性波探査を実施していない場合は、ボーリングデータを参考にします。
ボーリングを実施している場合は、N値やRQDが容易に得られますが、一軸圧縮試験の実施頻度は低いものです。
また、ボーリング地点は、アバット等の構造物基礎の位置が多く、切土山を対象にしている例は少ないが、地層図からの推定の参考になります。


RQD

RQD(Rock Quality Designation)は、岩石の砕け易さと岩盤不連続面の頻度に関する情報が得られます。
これは、ボ−リング1m区間毎の10cm以上のコア長の総和を%で表します。

          RQD = Σ(10cm以上のコア長) %

RQDは、不連続面の多寡を定量的に表現することにより、よりよく岩質を表すことができる場合があります。
RQDの求め方の例示しますと、図-3のようなコアの場合、一片10cm以上のコアの総和が40cmあり、
          RQD = 40/100 ×100 = 40   となります。

ボーリングコアからRQDの求め方
図-3 RQDの求め方 

ボーリングにおいて、長いコアが得られない要因は、
天然の割目がコアを横切っている場合: コアはこの部分で2つに分断されます。
コアボーリングの際に受ける外力に耐えれる強度がない場合: この時、ボーリングに伴う新たな破断面が形成されてしまいます。
粘土や軟弱岩の場合: ボーリングの泥水に融けて、これらが流失するので、コアのない状態になります。

RQD値は、以上のような割目頻度と岩盤強度の情報を含んでいますので、岩種と併せてRQD値で岩盤の硬軟が推定できます。
図-4は、花崗岩における判別の例で、RQDの他に弾性波速度、シュミットハンマ反発度、土壌硬度指数が示されています。

岩盤分類:RQD、シュミットハンマ、弾性波速度、土壌硬度指数
図-4 花崗岩の岩盤分類


施工時の判定

設計時には、弾性波速度による掘削性(リッパビリティ)の判断が最も妥当な方法ですが、実際の施工時のリッパビリティと食い違うことは少なくありません。
従って、施工着手後の実際のリッパビリティの判断は、実機による判定試験が最も合理的で、JH等で実施されています。
しかし、判定試験が実施できない場合の裏付け資料や工法変更の資料として、弾性波測定、一軸圧縮試験の他、簡易的な方法として、シュミットハンマ、点載荷試験等が利用されます。


 岩盤の工学的分類の参考図書:
      「岩盤の工学的分類方法(JGS 3811-2004)」 地盤工学会
      「土質地質調査要領」JH 1993
      「日本の岩盤分類」 応用地質 特別号 応用地質学会 1992
      「岩盤分類とその適用」 土木工学社 1989
      「岩の工学的性質と設計・施工への応用」 土質工学会 1974


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