機械土工 と N 値 N-value |
N値は、地質調査においてボーリングが実施されていると大抵得られるデータです。 限られた地質調査データのなかで、数少ない硬軟を判定できる情報です。
機械土工においては、掘削性やトラフィカビリティを判断する貴重なデータとなります。
このN値は、土の相対的な硬軟や締まり具合を知る指標となる値で、標準貫入試験(JIS A 1219)により求められます。
標準貫入試験 SPT:Standard Penetration Test
標準貫入試験は、ボーリング孔を利用して、図-1に示すようにサンプラを付けたロッドに、63.5kgのハンマを76cmの高さから自由落下させて打撃し、地中に30cm貫入させるのに要した打撃回数(N値)を求める試験です。 同時にサンプラで試料を採取することもできます。
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図-1 標準貫入試験装置と器具 |
換算N値
標準貫入試験における打撃回数と累計貫入量の関係は、図-2のような曲線形状を示します。 N値は土砂地盤において30cmの累計貫入量を得るために必要な打撃回数を示しますが、換算N値とは、50回打撃時の累計貫入量が30cmに満たない場合における指標であり、D級程度の軟岩・風化岩領域での比較的柔らかい岩盤(換算N値が300以下)に適用され、次式で求めます。
換算N値 = 50(回) × 30cm/50回打撃時の貫入量(cm)
換算N値は図-2に示した貫入量曲線において、50回打撃時の割線勾配を用いて換算した30cm貫入相当の打撃数を示すものです。 図に示すように実際に30cmの貫入量を得るための打撃回数(真のN値)は換算N値とは異なる値を示します。 硬質地盤においても、土砂地盤と同様にこの真のN値を適用することが考えられますが、真のN値を測定するために膨大な回数の打撃を行わなくてはならず、既往の研究においても真のN値に比べて換算N値の方が物性値との相関性がよいことなどから、硬質地盤においては換算N値が指標値として用いられています。
→ 岩の判別
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図-2 標準貫入試験の打撃〜貫入量曲線 (JH) |
N値の現場判別法
現場で容易にN値を推定するための現場判別を表-1に示します。
表中のN値と砂の相対密度及び粘土のコンシステンシー、一軸圧縮強さquとの関係は、Terzaghi & Peckによるものです。
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表-1 N値の現場判別法
a) 砂の場合
N値 |
相対密度 |
現 場 判 別 法 |
0〜4 |
非常にゆるい |
φ13mm鉄筋が手で容易に貫入する |
4〜10 |
ゆ る い |
スコップで掘削可能 |
10〜30 |
中 位 |
φ13mm鉄筋を5ポンドハンマで容易に打込める |
30〜50 |
密 な |
同上で30cm位入る |
50〜 |
非常に密な |
同上で30cm位しか入らない
掘削にツルハシを要し、打込むと金属音を発する |
b )粘土の場合
N値 |
qu(kN/m2) |
コンシステンシー |
現 場 判 別 法 |
0〜2 |
0〜25 |
非常に柔らかい |
握り拳が10cm位容易に貫入する |
2〜4 |
25〜50 |
柔らかい |
親指が10cm位容易に貫入する |
4〜8 |
50〜100 |
中 位 |
中位の力で親指が10cm位貫入する |
8〜15 |
100〜200 |
硬い |
親指でへこみ、貫入に力がいる |
15〜30 |
200〜400 |
非常に硬い |
爪でしるしが付く
(スキで除去できる) |
30〜 |
400〜 |
固結した |
爪でしるしを付けがたい
(除去にツルハシを要する) |
一般に qu ≒ 12.5N (kN/m2)
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N値からトラフィカビリティを推定
N値からトラフィカビリティを推定するには、qcとN値の関係を知る必要があります。
この関係式は、Meyerhofの qc=4N がよく知られています。 この係数は細砂、シルト質砂に対する値で、その後の研究により、この係数nは粒径等で変化することが分かってきました。
図-3は、平均粒径とD50とn (= qc/N)の関係を示し、粒径が細かくなるほどnが小さくなることを示しています。
表-2に、土質別のN値とqcの関係式を示します。
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図-3 qc/Nと平均粒径D50との関係 (地盤工学会) |
表-2 土質別のN値とqcの関係式
土 質 |
関係式 |
シルト、砂質シルト、若干粘性を示すシルト〜砂の混合土 |
qc=2N |
細砂から中位の砂、ややシルト質の砂 |
qc=3〜4N |
粗砂、砂利の少ない砂 |
qc=5〜6N |
砂質砂利、砂利 |
qc=8〜10N |
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N値とVs(横波速度)の関係
N値と弾性波速度との関係として、一般にN値とVp(縦波速度)との相関は認め難いが、Vs(横波速度)については相関が認められます。 図-4は今井常雄氏の発表したものですが、研究者によって回帰式の相違は大きい。
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図-4 S波速度とN値の関係 |
参考文献:
「地盤工学への物理探査技術の適用と事例」地盤工学会 2001.10
「土質地質調査要領」JH 1993
「N値とS波速度の関係およびその利用例」今井、殿内 基礎工1982.6
「土質調査試験結果の解釈と適用例」土質工学会 1980.8
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/School/N値
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