トラフィカビリティ Traficability |
軟弱土を取扱うときはトラフィカビリティに注意する必要があり、高含水比粘性土では、こね返しにより土の強度が低下し、走行不能になることがあります。
トラフィカビリティとは、軟弱地等での建設車両の走破性のことで、一般にコーンペネトロメータで測定されたコーン指数qcで示されます。
建設機械が同一轍(わだち)を数回走行できるコーン指数の数値は、道路土工指針からの引用が一般的ですが、古いデータなので参考のため、他機関の発表したコーン指数との比較を表-1に示します。
表-2は、WESの方法で求めた推定コーン指数(モビリティ)です。
尚、火山灰質粘性土(ローム)は、こね返しにより骨格構造が破壊され強度が低下しますが、放置期間をおくと再び力学的・化学的:電気的な結合により強度が回復します。 これをシキソトロピー現象と云います。
|
表-1 コーン指数qc
|
表-2 推定コーン指数
|
|
コーンペネトロメータ |
コーンペネトロメーター(ポータブルコーン貫入試験機)は、下図のようにコーン、ロッド、荷重計、貫入用ハンドルから構成され、単管式と二重管式があり、コーンは先端角30°で、底面積は6.45cm2と3.24cm2があります。 この試験機は人力でコーンを貫入させるため硬質土や砂層への貫入は困難です。 また、単管式のロッド周辺摩擦力を無視できる深さは3m程度です。
この試験機の原型は米国陸軍技術本部水路局(WES)のTrafficability Tester(車両通過容量試験機)であり、軟弱地における軍用車両のトラフィカビリティーを判定するために開発されたものです。 わが国では1960年頃に国鉄鉄道技術研究所(鉄道総研の前身)が軟弱地盤の調査に用いたのが最初です。
ポータブルコーン貫入試験は、トラフィカビリティーの判定の他に、盛土の締固め管理(都市機構)や建設発生土の土質区分、戸建住宅等の軽量構造物の支持力の概略判定に用いられています。
尚、試験法の規定には以下のものがあります。
JIS A 1228-2000: 締固めた土のコーン指数試験法(底面積3.24cm2)
JGS 1431-2003: ポータブルコーン貫入試験法(底面積6.45cm2)
JGS T 716: 締固めた土のコーン指数試験方法(底面積3.24cm2)
JHS 113-2006: 現場コーン指数試験方法(底面積3.24cm2)
参考にqc と一軸圧縮強さqu との関係を示しますと、粘性土において次のように云われています。(JGS文献)
qc ≒ 5qu = 10Cu Cu:非排水剪断強さ(kN/m2)
→ N値からをqcを推定する方法
|
図-1 コーンペネトロメーター
|
他の方法:
粒度分布とトラフィカビリティ
簡易的にトラフィカビリティーを推定するには、土の粒度分布からの推定する方法があります。
図-2の粒径加積曲線において、@の範囲は粘土やシルト分の多い関東ロームのような土で、高含水比だと湿地ブルでないと施工できません。
Aの範囲では、細砂及びシルト分が多く、ブルドーザやキャリオールスクレーパの作業限界です。
Bの範囲は、モータスクレーパやトラックなどのホィール式機械の稼働が可能となります。
|
図-2 粒径加積曲線 |
|
コンシステンシーとトラフィカビリティ
トラフィカビリティーが問題となる火山灰質粘性土の分類は、通常コンシステンシ限界により行われます。
細粒土は、含水比が大きくなれば液状を示し、流動性を帯びていますが、含水比が減少するにつれ、土は粘性を増し塑性状になります。 さらに、この土を乾燥させてゆくと半固体状を経て固体状となります。 土が含水比の大小に伴って示すこれらの性状を土のコンシステンシーと云い、図-3に土の性状とコンシステンシー限界の関係を示します。
また、含水比の変化に伴って土の体積も変化し、含水比の減少により土が液状・塑性状・半固体状となるにつれ、体積も次第に減少します。 しかし、固体状になると、それ以上含水比が下がっても体積の収縮は進行しなくなります。
|
図-3 土の性状とコンシステンシ-限界
|
塑性指数 IP : IP = WL−WP
コンシステンシ−指数 Ic : Ic = WL−W / IP
液性指数 I L : I L = W−WP / IP
塑性指数 IP は、液性限界WL と塑性限界WP の差で、路盤材などの良否を判定する重要な要素となっています。 一般に塑性指数IP が高いほど吸水による強度低下が著しいとされています。
トラフィカビリティーは、自然含水比Wと液性限界WL の相対関係から推定できます。 自然含水比が液性限界より高いときは、施工中に泥状化しますので施工法に注意が必要です。
コンシステンシ−指数Ic は、粘土の相対的な硬さや安定度を示しています。
Ic ≒ 1 の場合は、自然含水比が塑性限界に近く、比較的安定な状態です。
Ic ≒ 0 の場合は、自然含水比が液性限界に近く、土を乱せば液状となります。
また、コンシステンシ指数Ic が0に近い土は、コーン指数も qc<=5 と考えられ湿地ブルドーザの作業となります。 Ic<= 0.3 の土質の盛土施工は苦労することになりそうです。
液性指数I L は相対含水比とも呼ばれ、与えられた含水比における土の相対的な硬軟を表す指数で、0に近いほど土は安定であり、大きくなるほど圧縮性は大きく、鋭敏なことを示します。
NEXCOでは、火山灰質粘性土でのトラフィカビリティーを液性指数(I L)とコーン指数の関係(図-4)で捉えています。 液性指数(I L)が0.4を上回る土質では、湿地ブルドーザのトラフィカビリティーに必要なコーン指数(qc = 300kN/m2)を確保できません。 特にI L が0.8を越えるとは著しく低下し、湿地ブルドーザの施工も困難となることが多くなります。
これらによりNEXCOでは、火山灰質粘性土を液性指数(I L)から表-3のように判別しています。
|
図-4 火山灰質粘性土の液性指数とこね返し後の強度
表-3 火山灰質粘性土の判別
I L< 0.5 |
良質ローム
(普通の設計・施工を行う限り問題はない) |
I L= 0.5〜0.8 |
普通ローム
(十分な注意をすればさほど困難ではない) |
I L> 0.8 |
軟弱ローム
(設計・施工上かなり困難が予想される) |
|
ころがり抵抗による方法:
トラフィカビリティーは、その他にころがり抵抗からも推定でき、米国ではころがり抵抗で走行性を評価する方法が一般的です。
|
|
/走行性
|