「おにたのぼうし」  あまん きみこ文  いわさき ちひろ絵  

この絵本は私が子供のころ出合った最初の絵本です。この絵本のやさしい鬼の顔、 冷たい静かな夜の空気がとても印象的で、今でも大切にしている一冊です。


(あらすじ)

おにたは、小さなくろ鬼のこども、人間に親切ないい鬼です。 いつもはまことくんの家の物置小屋に住んでいます。

節分の夜、家々では、戸口にひいらぎを飾り、豆のにおいがしていて入ることができません。 寒い雪の中いい家はないかとさがしていると、小さな橋をわたったところにトタン屋根の家を みつけました。

家には、病気のおかあさんとおんなのこが住んでいます。
 おんなのこはおかあさんの看病で節分のごちそうもまだ食べていません。 それでこの家からは豆のにおいがしなかったのです。おにたは、なぜかじっとしていられなくなり、 もう夢中で寒いそとへとびだしていきました。それからしばらくして……。

豆をまかれて、追い出されていく鬼のことを思いやるやさしさ、雪のふる夜の静けさが、 いわさきちひろさんの絵からあふれています。

昨秋、あまんきみこさんが新聞に、「わたしとおかあさん」というエッセイを載せていました。 お母様の思い出として、ひな人形を箱から出す時は、人形が眩しいからとカーテンを半分閉め、 箱に収める時は、暗い中で一年中話せるように向き合わせていたと書いていました。 この「おにたのぼうし」のなかにもそんなお母様からもらった思いが込められているような気がして、 もういちどこの絵本が好きになりました。

(ひ)

三月ひなのつき 石井 桃子 文  朝倉 摂 絵

このおはなしは、私が小学校の時、図書館で何回も読んだ本です。
1963年初版。もう古い本なので、手にすることはないだろうと思っていましたが、 図書館で少し色あせたこの本を見つけることができました。


(あらすじ)

よし子は十歳、おかあさんと二人で暮らしています。 おとうさんはおととしの三月三日になくなりました。

よし子の家には、おひなさまはありません。
毎年、春になると、おひなさまのことが問題になり、いつもおかあさんの気に入るおひなさまが 見つからないうちにお節句になってしまいます。
おかあさんは、自分が小さい時に持っていたおひなさまが、あんまりすてきだったので、 どんなおひなさまも気に入らなくなってしまったのです。 そのおひなさまも今はもうなくなってしまいました。

よし子は、おかあさんのおひなさまの話を聞いているばかりではなく、 自分のおひなさまが欲しくてしかたありません。でも、家のことを考えて我慢していました。
けれどとうとう今までいつも心のなかで考えていて言えなかったことを おかあさんにぶつけてしまいます。

そして、次の土曜日、よし子はおかあさんとふたりでおひなさまを見にゆくことになりました  ・・・・・・・・・・・・三月三日、よし子は、どんなおひなさまを飾ったのでしょうか。

この本の中でも、春のおとずれを感じさせる描写、おかあさんの持っていたおひなさまの回想する場面 の描写がとても美しくて私は好きです。
そして、朝倉 摂さんのきれいな挿絵が一段とこのおはなしをひきたててています。
表紙の桃の花が印象的です。

(ひ)