穴 HOLES ルイス・サッカー 作 幸田敦子 訳  

日本の昔話に「まのいいりょうし」という話がありますが、この話の主人公は全くその逆で「まずい時にまずい所に」いたためにやってもいないのにやったといわれて有罪となります。そして、百年以上も雨が降らない、少年更正施設グリーン・レイク・キャンプでくる日もくる日も穴掘りをするはめになります。

しかも、不運なのは主人公スタンリー・イェルナッツだけでなく、なんとひいひいじいさんが片足のジプシーのばあさんから豚を盗んで「子々孫々にいたるまでの呪い」をかけられてからというもの、イェルナッツ家代々ついていないというのだから根が深い。

ものがたりは、スタンリーのグリーン・レイク・キャンプでの生活を軸に、ひいひいじいさんの不思議な体験・今は水が一滴もないグリーン・レイクが湖だった頃の、せつない恋の物語・魔法のたまねぎ・ピーチジャム・・・スタンリーも知らない過去の不思議なつながりを織り交ぜながら進みます。残念なことに差別や復讐心といった人間の醜さもまた、時を越えて現代に受け継がれてしまっています。

ある日スタンリーは施設をとびだした友達、ゼロを追って「巨大な親指(ビッグ・サム)」をめざします。水を持たない二人は、はたして生きていけるのでしょうか?そして、スタンリーは五代にわたる不運を大逆転する事ができるのでしょうか?

「自分はついてない」と思っている子どもも大人も、「そんなバカな」「そりゃないでしょ」と突っ込みを入れながら読み進むうちに、元気になる本です。ルビはついていますが、アルファベットをならったあとの高学年以上の方が、より、楽しめるでしょう。

(い)

おばあちゃんがいるといいのにな 松田素子 作・石倉欣二 絵

私は子供の頃とってもおばあちゃん子でした。 すでに天国へ行ってますが、これを読むと祖母を想い出して泣けてきます。 大好きなおばあちゃんを思い出してしまって途中で読めなくなってしまう。 だからこれは、読み聞かせに向かない絵本。でも、読んであげたい絵本。でも私にはできない絵本です。

このお話に描かれてある、おばあちゃんは私の祖母そのものです。 まさに、「家に帰って来た時 顔を見るだけでほっとする人 さみしいとき やさしくつつんでくれる 人 悲しいとき なぐさめてくれる人」でした。

このお話は、おばあちゃんとのユーモア溢れる楽しい出来事がほのぼのと綴られています。 祖母との想い出が幾つか重なって、本当に心がほんわかあったかくなります。

でも・・病気で逝ったおばあちゃん。
「ぼくは わすれない おばあちゃんのおちち・・」
ここにくると、鼻の奥がツーンと痛くなって、声が出なくなります。 子供の頃、祖母のお乳のあたたかさを肌に感じて寝た事を思い出してしまって・・
祖母のおちちのあたたかさ、ぬくもりを今でも忘れません。

「カラン というおとが ぼくのむねにおちた」
1度だけ子供の前で読みましたが、もう読めないなと思いました。 ましてや、お年寄りの前でなんて絶対、読めません。 読めないけど、読んでほしい、読んであげたいお話しです。

(え)