Making Story
<動機>
08年11月にリーマンショックが、そして百年に一度という不況が襲ってきました。
多くの企業が不況に苦しんでいおり、前年対比2割というところまで落ち込んだ会社もあります。
あるべき姿が違う、企業の本質が違う、グローバルスタンダードという言葉のもとに、
経営の本質がズレてきているように思っていました。
08年12月末に、
この本質のブレに対して、今までの経営について自分なりの形でまとめることを通して、
何らかの警鐘を鳴らしたい。経営の指針にしていただきたい
というところが動機です。
普通のビジネス書の形でもまとめても面白くない・・・・
と思いながら過去に仕事で使ったノートを見たりしていました。
丁度年賀状の季節、さて今年の年賀状の文案は何にするかな・・・と考えながら、
昨年の年賀状を見ると「坂の上の雲」の一説を賀状の文面に入れていました。
(去年の年賀状)
また、私のバッグにはいつも「Precious Saying for myself」(自分のための名言集)
と名づけた文庫本の大きさのノートがあります。
本を読んだりして、素晴らしいフレーズに出会うと、このノートに書き込んできました。
そして、移動時間や、落ち込んだ時・・・自分自身を勇気付けたり、元気づけたりして
くれたノートです。
そのノートの中には、「坂の上の雲」からの書き抜きがたくさんあります。
これらが重なりあって、「坂の上の雲」と経営のノウハウを重ね合わせて書けたら面白い・・・
と着手したのです。
<本の読み直し・ノート化>
09年1月6日から「坂の上の雲」を読み始めました。
今まで何回か読んでいますが多分これが、5回目か6回目になると思います。
読みながら、あらすじ等をA5サイズのノートにまとめていきました。
下記がそのノートの写真です。終わったらほぼ一冊分の分量になっていました。
その一部を拡大したもの
「坂の上の雲」は全8巻、39章 2800ページにもわたる長編小説。
長丁場、全体の進捗管理を視覚化しました。
右下の棒グラフの図は、横軸に「巻」を現します。
そして縦軸は各巻ごとのページ数です。
ノート化が終わる都度、そのページ数分を赤鉛筆で塗りつぶしていきました。
この赤で塗りつぶしをするのが快感となっていきました。
概ね、一日100ページくらいのスピードで進んでいきました。
管理表の写真
<不安がよぎる>
1巻のノートを終了したくらいのところで、ある不安が頭をよぎりました。
というのは仮タイトルを「『坂の上の雲』から学ぶ中小企業の経営学」という
ことにしてすすめていました。
ちょっと待て・・・・「坂の上の雲」というのをタイトルに勝手に使っていいのか???
という疑問が湧いてきました。
この疑問が湧いて、ひょっとしたらNGにかるかも知れない・・・と思ったら
少しテンションが落ち、進み具合が鈍りました。
そこで、ネットで編集社を調べ、2社にこの旨の問い合わせのメールを打ちました。
一週間くらいたって、ある編集社から連絡がありました。
企図や、内容のイメージを話し、相談に乗っていただきました。
「問題ないようなので、頑張って最後まで書いてみてください。」
という内容で、不安を解消できました。
丁度4巻のノートが終わろうとしていたころです。
「よし、一所懸命書くだけ」
ということで、またノート作業に気合が入りました。それからのスピードは倍増した感じです。
このノート作業を通して、時々活用させていただいたのが、
近くにある広島市立大学の付属図書館。
素晴らしい環境でした。
広島市立大学の写真
ともあれ、2月9日にノートの完了しました。
<経営指南のポイントチェック>
経営指南をしている箇所をチェックにあたり、A5サイズのノートでは字が小さい過ぎるため、
B4サイズに拡大コピーして付箋をはり、簡単なメモを書き入れていきました。
コピー枚数としては64枚になりました。
そして、全241箇所の付箋が貼られることになりました。
付箋チェックするより、いきなり本文を書き始めたい・・・という気持ちを
「急がばまわれ・・、きちんと積み上げて・・・」と抑えながら、
大体丸3日間くら付箋張りの作業を行いました。
あとで、このプロセスが威力を発揮します(後述します)
<付箋箇所のPC入力>
241箇所の付箋。さてこれをどう料理しようか???
と思案の結果、まわり道だけど、
付箋を貼ったところを、一度全部コンピュータにインプットして、その後に並べ替えをして整理する
という作戦を立てました。
完全な力仕事・・・241項目もあるから時間がかかる、かかる・・・
丸々2日間入力に・・・
下の写真は入力が完了したアウトプットです。
<項目項目の並べ替え>
そして書き出したものを、ジャンル別に並べ替え・・・
下左は「作戦」でまとめたページの一部
下右は「リーダー」でまとめたページの一部
やり直し、やり直し・・・・の連続。パズルをやっているような感覚でした。
<項目立て>
並べ替えのパズルが終わり、やっとテーマが設定できました。
最終的には23項目になるのですが、当初は、26項目で始めました。
下記は、私の得意な「視覚化進捗管理表」の写真です。
テーマを書き終わるたびに、赤で塗りつぶしていきました。
よくテレビで、作家が万年筆で原稿用紙に書いている場面があります。
私の場合は、書きたいことが、なめらかな文書になかなかなりません。
テレビパターンでやったら、何度も原稿用紙が、削除や矢印や、挿入マーク
で、真っ黒状態になるために、パソコンに取りあえず、どんどん書いていきました。
「てにおは」や、変な言い回しは、とりあえず気にかけず、打ち込んでいいき、その後
文書の校正を行うという手法を使いました。
だいたい、一日1〜2テーマのペースで書いていきました。
自分の文書力の無さや、語彙力の貧弱さを痛感しました。
<大ニュース!!>
残り1/4くらいのとこで、大ニュースが入ってきました。
な、な、なんと、
「坂の上の雲」今年の秋から3年にわたってNHKで放映する。
俺のために、NHKが応援してくれる・・・(なんと幸せな発想でしょう)
俄然、気合が入りました。
<やっと要領がつかめる>
そして、あと数テーマを残すことになって初めて要領が分かりました。
それまでは、そのテーマについて、いきなり書くということをしていました。
書いた後に、継ぎ足したり、削除したり、順番を変更したり・・・修正が重なる、重なる・・・
手順を変更することにしました。
先ずは、いきなり書くのをやめて、そのテーマについて、書きたいことを図式化した後
に・・・という手順に変更しました。
下記が、図式化したものです。
<完成>
3月11日にやっと完了。項目の並び替えから、完成まで25日間かかりました。
当初、2月末には完成の予定でしたが、10日間ほどずれ込み、最後の2日は
徹夜を何年ぶりかでしました。
当初26項目(テーマ)でしたが書いてみると、
・二つのテーマを合体させた方がいい・・・
・これは分割した方がいい・・・
等で、最終的には23テーマになりました。
下記が完成した原稿です。出版社に送りました。
<入稿前チェック>
出版社との契約を行い、5月28日、編集の担当者と初めての打ち合わせを行いました。
6月8日までに、入稿前のチェック完了する旨の指示をいただきました。
3ヶ月前にオリジナル原稿は完成しました。
それ以降、見れば修正したくなる・・・きりがない・・・と思い、敢えて読み返すことをしていませんでした。
今回のチェックで読み返してみて、
「このセンテンス、何の意味があるの?」
「この部分は、説明が足らん」
「ここは、冗長・・」
出てくるわ、出てくるわ・・・
当初書いていたときには、必死で書いていて、自分の書いた文書を客観視できていなかったのでしょう。
この3ヶ月間という冷却期間を置いて、客観的に見ることができたのだと思います。
いつもは、綺麗に片付いている机の上(My Office)
それが・・・
こんな状態で進めていきました。
一項目終了する度に、管理表に塗りつぶすという視覚化進捗管理をしながら進めました。
下記が入稿前の原稿チェック進捗管理表
オリジナル原稿に対して大小含めて370箇所の修正を入れました。
全部で、143枚です。厚みにすると1.5センチ。
そして、「あとがき」を書いて完成しました。
出版社との打ち合わせ時に、「坂の上の雲」の引用部分は、
「、」の打ち方まで、一字一句同じでないといけない・・・
との指示がありました。
ここで役立ったのが、上記にご紹介した
「ノート → 付箋 → PC入力 → 項目の並べ替え」
というプロセスが大いに役立ちました。
引用部分の一字一句の確認をするためには、その引用場所を探さなくてはなりません。
ただでさえ、記憶力が悪い私が、全8巻、2800ページの中から引用場所を探すのは、大変なことです。
上記の作成してきた手順の逆にに遡って探すという、システマティックな方法で、
その引用の在りかを見つけることができました。
もし、手順がなくて、本を読んでいきなり書き始めていたら、1つの引用部分を探すだけ
下手をすると数時間かかっていたかも知れません。このお陰で、どの引用文も10分程度で
探すことができました。
「急がば回れ」でよかった、よかった。
<校正>
7月1日初校のための原稿が届く。
7月13日までに出版社に送るというスケジュール。
結果、大小合わせて約90ヶ所の修正を入れ、7月10日に出版社に送りました。
入稿前原稿のチェックで、文章の文脈がおかしいところは修正していましたので、
表現や、誤字・脱字のチェックがそのほとんどでした。
しかしながら、改めて読むと、その中1〜2項目・テーマ、
としてどうしてもしっくりこないところがありました。
数行の修正をいろいろと試みるのですが、なかなかすっきりしません。
結果、その項目・テーマをコピーして、切り貼りして、並べ替えを行い
抜本的に、文脈を大幅修正して、初めてすっきりしたところもありました。
下記が、そのどうもすっきりしない項目・テーマの箇所、
切り貼りをしました。
<本の表紙の決定>
本の表紙案と、最終校正のための原稿が7月28日に送られてきました。
表紙は、8月3日まで、そして最終校正は、8月7日までの納期でした。
まずは、表紙について、
出版社から表紙として2案提案いただきました。
私の案は、
@ 戦艦三笠の艦影を入れる
A 「Z旗」を入れる
B
「皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ」
(連合艦隊参謀・秋山真之の草案)の「皇国」を「会社」に変え
裏表紙に入れる
というものでした。私の要望に沿ってできた案ですが結論的には没にしました。
もう一つは、編集者がコンセプトを伝え、デザイナーのオリジナル案。
この案が採択しました。
「私の案の没」理由の詳細は、Diaryの7月30日をご覧ください。
<最終校正原稿は、「魂」を入れて>
そして、文書の自体は
誤字脱字、微修正等のレベルだったので、案外早く8月3日に終了しました。
全99ヶ所の修正がありました。
すぐに出版社に送ってもよかったのですが、
クライアントの経営者の方と四国訪問を8月4、5日に行く予定をしており、
最終校正の納期が8月7日で、またま重なりました。
ならば、最後の校正原稿には、
「坂の上の雲」ミュージアムのスタンプを入れ(魂を入れて)、
そして松山から東京の出版に原稿を送ることにしました。
下記が最終校正を反映した原稿
これで、私の「坂の上の雲」プロジェクトは終了。
後は、出版社にバトンタッチです。
ちなみに、私の「坂の上の雲」の文庫本は付箋がいっぱい付いてしまいました。
<完成>
09年8月29日完成した本が我が家に届きました。