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4月20日(木) The Day of Operation  Part2

手術室はがらんとした広さだった。
オペに向けて4〜5人の看護士さんだろうか、用意をしている。
先生は見当たらない。
手術台は思いのほか狭いように思った。この幅の上に乗かってたら、何かの拍子にごろんと落っこちるんじゃないかとさえ思えてしまう。きっと乗っかってから柵みたいなのを立てるんだろうな。
手術台の上にはテレビで見るようなまばゆく光りそうなライトがある。ピカピカにきれいにしてあって清潔感さえ感じる。今はまだスイッチははいってなく、来る瞬間を待っているようだ。がんばってくれよ。
壁にはレントゲン写真を貼るのだろう、例の後ろから蛍光灯が点く白いパネルが見える。他にもいろんな器具などが整然と用意してあるようだ。

ストレッチャーから手術台に移動するように指示があった。
ストレッチャーも手術台も狭いのでちょっと慎重に体をずらす。
手術台の上で猫背のように丸く、横になった格好だ。
この格好なら安定しているので、落っこちることもないだろう。

すぐに麻酔の準備が始まる。看護士さんが消毒をする間に麻酔の先生が説明を始める。
まず最初に麻酔をさすための部分麻酔をする。背骨の腰の辺りだ。
いつものように「ちょっと痛いですからね」と言って針を刺すが、ちっとも痛くなんかない。
ちょっと脅しすぎじゃないかなぁ。

少しすると部分麻酔が効いてきたようで、そのあたりの感覚がなくなった。それを確認して次は全身麻酔にかかる。骨髄(かな?)に太めの針を通すらしい。重要な神経が通っているはずだから、ここは本当に大事なところだ。
麻酔の先生は女医さんだった。
慎重に背骨を確認しながらポイントを探り、針を入れたようだ。どことなく、わずかな安堵の空気が漂い、背中にテープで針を固定し、針につながるチューブを背骨沿いに首までぴったりとテープで固定した。このチューブから数日間麻酔を一定量流し続けることで痛みをほとんど感じずに過ごすことができるわけだ。

準備は順調に進んだ。
事前の話の通り、「点滴に麻酔を流し始める」という言葉があると、10秒くらいだろうか、本当にわずかな間だけ意識があったが気を失ってしまった。

執刀してくれる主治医の先生の顔も声も聞かないまま、従って「お願いします」の一言も言わないまま、今までの時間が過ぎてしまった。
そういえば、今日先生に会ったのは、準備に入る前の病室で絵を書いていたときに先生がひょっこり顔を出して、「今日ですね」と一言声をかけてくれたときだけ、だったような記憶しかない。絵を覗き込んで何か言ってくれたっけな。

意識をしっかりしていれば麻酔が効くまで少しは時間があるかも、と思ったが、全くそんな考えはお構い無しだった。

手術の名前は直腸低位前方切除術ループイレオストミー

直腸低位前方切除術というのは、お腹側を縦に開いて、腹腔の中に詰まっている大腸・小腸を取り出して、奥のほうにある直腸を切り、肛門と大腸を吻合器というホッチキスをするような器具でつなぎあわせるということだ。


図をクリックすると実際の手術の写真があります。 気持ち悪い人は見ない事!

何メートルもある大腸・小腸が腹腔の中に詰まっているので、これを一旦取り出して、奥のほうにある直腸を操作してから、また腸をしまうことになる。想像するだけでも大変な操作だと思う。
直腸はその周辺部分に前立腺など重要な器官や神経があり、それらを傷つけてしまうと排尿や生殖機能などを阻害してしまう危険もあり、難しいようだ。


ループイレオストミーというのは「人工肛門の造設」のことで、小腸の終わりの部分を腹腔の外に出す、つまり、お腹の皮の外に引っ張り出して、小腸から食べ物のカス、つまりウンチを出すような構造にすることだ。
大腸と肛門がしっかりとつながったのを確認するまでの間は大腸にウンチを流さないようにする、というわけだ。ちゃんとつながっていない状態でウンチがお腹(腹腔)の中に漏れ出してしまうと非常に危険な腹膜炎を起こしてしまう可能性があるのだそうだ。


手術は9:00に始まり、途中休憩を挟んで15:30に終了。
お疲れ様でした。
※疲れたのは先生と看護士さんたち。浜ちゃんは麻酔でぐっすり眠ってました。

手術が終わって麻酔を解く薬を入れ、呼びかけられると気がついた。
よく覚えていないが確か手術室だったような気がする。
手術前に説明をされていた、「大きく息を吸ってぇ、ゆっくりと吐いてぇ」という問いかけに必死で応えようと、一生懸命呼吸をしていた。
麻酔が効いている間は自律呼吸も止まってしまって人工呼吸器で呼吸をしている。装置を取り外すためには麻酔から醒めて自律呼吸をしなければならない。浅い呼吸だと十分な酸素を取り込めなくて危険なため、深呼吸をするのだ。
意識が戻ったことが確認できると、隣の回復室に運ばれていった。
そしてまた眠ってしまった。

後から考えるとこの時既に病室で眠り続けられるような用意もされていたはずだ。62kgある男に対して、赤ちゃんの面倒を見るようなことをしないといけないわけだから大変だろう。
紙おむつをして、寝巻きにくるみ、点滴や麻酔・廃液チューブにつながったままの、意識がない体を手術台からベッド(ストレッチャーかも?)に移動する。いやぁ大変だ!
100kgもあるような巨体の場合はどうするんだろう? クレーンで吊り上げるのかな?

16:45 回復室から病室に移動。
浜ちゃんが回復室にいる間に、晴ちゃんと見舞いに来ていた兄が手術室の面談室に呼ばれ、手術の経過説明がされたのだそうだ。
経過は順調。
次のページの写真の「物体」が浜ちゃんから取り出した直腸だ、と説明されたそうだ。
がん細胞の残存をさせないよう、安全のためにリンパを取る範囲は、患部の状態を見て第3群までとしたとのことだった。
リンパ節拡大郭清(D3)

回復室から病室に運ばれる間、浜ちゃんは意識が戻っていて看護師さんにいろいろ話をしようとしていたそうだ。

深呼吸を随分長い間、一生懸命していた、ような記憶が残っている。