モータスクレーパ
土工教室
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 スクレーパ系建設機械 Scraper
スクレーパは、馬牽引のフレスノスクレーパが発展したものである。
スクレーパ系は、掘削・積込・運搬・敷均の一連の土工作業サイクルを1台でこなせる自己完結的な機械で、スクレープドーザ、キャリオールスクレーパ、モータスクレーパがある。
モータスクレーパには更に、シングルエンジン車、タンデムエンジン車、エレベーティングスクレーパに分かれる。
近年、スクレーパ系機械は需要が減退、国産メーカは生産調整を行っている。
  • スクレーパの基本装置と動作
    スクレーパの基本装置
    図 1-1 スクレーパの基本装置

    スクレーパの構造は、左図のように土を入れるボウル底部のカッティング・エッジで土を切削して、掘削土をボウル内に入れる。 砂の場合は入りが悪いので、積込み半ばからボウルを上下に動かすポンプローディングを行う。


    掘削の始めは、土砂の積込み状況が見えるようにエプロンを多めに開ける。 ボウル内の土砂が逆巻いてくるとエプロンを下げて荷をボウル内に留める。 砂の場合は逃げ易いので掘削時からエプロンを狭ばめ、運搬時は完全に閉じる。


    盛場に到着するとエプロンを開き、エジェクタを前に出して土砂を排出して薄く散土を行う。 粘性土の場合は、排出し難いのでエプロンを全開にして排土を行う。


    以上のように、砂質土と粘性土では切削法やエプロンの開閉操作が違ってくるので、土質に応じた操作を行う。

    図 1-2 ダウンヒルカット工法
    スクレーパによる掘削は、下り勾配を利用したダウンヒルカット工法が基本である。 急勾配の場合は逆落としと呼ばれ、プッシャが不要となる。

  • キャリオールスクレーパ(牽引式スクレーパ) Pull-Type Scraper
    牽引式スクレーパのことを、日本では一般的にキャリオールスクレーパと呼んでいるが、キャリオール"Carryall"は、ケーブル式スクレーパを考案したルターナ社の商品名である。
    戦後わが国にもその名で多数輸入された。
    因みに、ルターナ社は最初のモータスクレーパも考案し、そのタイヤ式スクレーパヘッドの商標がターナプル"Tournapull"であった。
    スクレーパの施工法は、ダウンヒルカットが基本で自力積込みも可能であるが、プッシャを付けて積込時間を短縮する方が経済的である。


    ワイヤ式トゥーイッドスクレーパ
    図 2-1 牽引式スクレーパの構成
    ワイヤ式は、CCU(ケーブルコントロールユニット)でボウル、エプロン、エジェクタを操作する。 昭和50年代に油圧式に移行した。
    経済的搬土距離は、60〜400m位である。
    油圧式キャリオールスクレーパー
    図 2-2 キャリオールスクレーパの構造
    油圧式キャリオールスクレーパは、軽量化に伴って普及が進んだ。
    現在、キャリオールスクレーパの国内メーカは国土工機だけであるが、近年殆ど生産されていない。
    その構造と部位名を図2-2に示す。
    また、我が国にはワイドタイヤを装着し、湿地トラクタで牽引する湿地スクレーパがある。

  • モータスクレーパ(自走式スクレーパ) Self-propelled Scraper
    シングルエンジン・モータースクレーパー
    シングルエンジン・モータスクレーパ
     Standard Wheel Tractor Scraper

    燃費がよく経済的なモータスクレーパ、積込みにはプッシャを必要とする。
    経済的搬土距離は、200〜2,500m位である。

    ツインエンジン・モータースクレーパー
    タンデムエンジン・モータスクレーパ
     Tandem Powered Scraper

    4輪駆動のモータスクレーパで、登坂やトラフィカビリティに優れている。 プッシュ・プル仕様車では、2台1組で積込が行え、プッシュドーザを必要としない。
    経済的搬土距離は、200〜1,500m位である。

    3軸6輪モータースクレーパー
    3軸6輪モータスクレーパ

    大型長距離用のモータスクレーパで、シングルエンジンとタンデムエンジンタイプがあったが、いずれも現在は生産されていない。


    エレベーティングモータスクレーパ
    エレヴェーティング・スクレーパ
     Elevating Scraper

    ハンコック式のセルフローディング(自力積込)ができるモータスクレーパで、比較的近距離運搬向きである。
    1台のワンマン運転で掘削・運搬・敷均ができるので、米国で大いに普及、農家の庭先に置いてある程である。 道路・宅造工事等では、整形仕上げの定番機械である。 我が国では土質の関係か普及せず。

    オーガスクレーパ オーガ・スクレーパ
     Auger Scraper

    オーガタイプのセルフローディングスクレーパも考案されたが、普及はしなかった。

     → 大型モータスクレーパ


  • モータスクレーパのパワートレイン

    図 4-1 トラクタ部のパワートレイン
    モータスクレーパのトラクタ部のパワートレイン(動力伝達機構)は、CATの場合、左図のようにエンジンからトランスファギア → ドライブシャフト → トルクコンバータ → トランスミッション → ディファレンシャル → ファイナルドライブを経てタイヤに伝わる。 バックと1・2速がトルコン、3〜8速はダイレクトドライブである。

    タンデムエンジン車のリアエンジンのパワートレインは、左図のようにエンジンからミッション → ドライブシャフト → デフへと繋がる。 デフはトルク・プロポーショニング・デフを採用して、常に両輪に適当なトルクを伝達して、牽引力を高めている。
    また、シンクロ(同期)が取り易いように全速度段がトルコン駆動である。
    図 4-2 スクレーパ部のパワートレイン

  • ローディング法

    プッシュローディングの方法
    モータスクレーパとプッシャ
    図 5-1 プッシュローディング

    スクレーパのローディング(積込)は、プッシュドーザを付け、積込時間短縮を図る。 プッシュローディングを行うときはトラクタ部とスクレーパを直線にして、ボウル操作は図4-2のように平坦に掘削を行う。 但し、砂質土はポンプローディングが必要となる。 また、モータスクレーパの岩盤での積込みは、タイヤカットを起こすので避ける。 どうしても行うときは、タイヤの駆動をやめ、プッシャのみでロードする。
    その他、プッシャのブレードをクッションドーザに替えると4.8km/hまでの速度差を吸収でき、プッシュローディングが少しスムースになる。 しかし、ブレード幅が狭いので、段取りや均し作業の際には不便である。


    スクレーパのローディング操作
    図 5-2 ローディング操作

    プッシュローディングの代表的な位置付け法を図5-3に示す。
    スクレーパは図のように、プッシャを左側に見て進入・旋回を行うと、プッシャとの間隔を掴み易い。 基本型は、掘削方向に対して45°の角度でプッシャが待機する。 スクレーパの進入範囲が広く、短時間でプッシュできる。
    下図のようにプッシャが連続して直進で押す場合、スクレーパは急旋回になり,進入の範囲が狭く、プッシュまでの時間が掛かる。
    プッシュローディングの連続的な手順には、図5-4のような方法がある。

    図 5-3 プッシャ位置と進入・旋回

    スクレーパーのプッシュローディング法
    図 5-4 プッシュローディングの種類

    プッシャを必要としないローディングには、以下のようなセルフ・ローディングとプッシュプル・ローディングとがある。

    セルフローディング
    セルフローディングは、上記のようにハンコック式のエレベーティングスクレーパとオーガスクレーパがあり、エレベーティングスクレーパのローディングは図5-4のような動作になる。

    ハンコック式 エレベーティングスクレーパの仕組み
    図 5-4 エレベーティングスクレーパのローディング

    プッシュプルローディング
    プッシュ・プル・ローディング
    図 5-5 プッシュプルローディング

    プッシュプルローディングは、タンデムエンジン・スクレーパに図5-6のようなベイルとフックを装備し、2台一組で積込みを行う。 2台のスクレーパが土取場に戻ってくると、ベイルとフックを連結し、図5-5のように前車から積込を始め、後車はプッシュして積込を助ける。 前車の積込みが完了すると、次に後車がボウルを下げて積込みを開始する。 このとき、前車は後車をプルして積込みを助ける。 後車の積込みが完了すると、連結を切離して盛場へ運搬する。
    プッシュプル装置
    図 5-6 プッシュプル装置

  • スクレーパの最適積込み時間の求め方
    図5-1は、スクレーパの積込み時間と積載量の関係をプロットしたもので、これを積込み曲線と称する。 図から分かるように、始めのうちは短時間に効率よく積込めるが、後半は荷の入りが悪く効率が下がる。 従って、ボウルが満杯になる最後までプッシュするのは、時間効率を下げ、サイクルタイムに悪影響を及ぼすことになる。
    では、どの時点で積込みを終了させるのが適当か?  その方法を図5-2に示す。

    スクレーパの積込み曲線
    図 5-1 スクレーパの積込み曲線

    最適プッシュ時間の求め方
    図 5-2 最適積込み時間

    図5-2は、スクレーパの最適積込み時間の求め方を示している。
    まず、X軸の右側に図5-1のような積込み曲線を描く。
    次に、X軸の左側に運搬のサイクルタイムから積込み時間を差引いた時間Aをプロットして、そこから積込曲線への接線を引く。 その接点SからX軸への垂線の交点が最適積込時間LTsである。
    同様にして、より近距離運搬のサイクルタイム-積込み時間Bの場合は、LTpが最適な積込み時間となる。
    このことから云えることは、近距離運搬では短時間で積込みを切り上げ、運搬距離が延びると積込み時間も延ばして積込量を増やすのが得策である。

    プッシュローディング時間短縮のために、米国ではタンデムプッシュやトリプルプッシュが行われている。 図5-3は、D9Gプッシャ1台の場合とタンデムプッシュとの積込み曲線の比較である。 図中のDD9GはD9をタンデム連結したワンマン操作のタンデムプッシュ専用機である。

    タンデムプッシュの積込曲線
    図 5-3 タンデムプッシュの積込み曲線


  • スクレーパの機種選定
    スクレーパの機種選定
    図 6-1 走行抵抗と搬土距離からみたスクレーパの適用区分

    スクレーパ工法の機種選定において、トラフィカビリティと搬土距離が選定の指標となる。 図6-1のRubber-Tired Scraper Regionがモータスクレーパの領域で、破線の下部はエレベーティングスクレーパの領域である。
    伊丹康夫博士は、図6-1の米国資料を基に、わが国で使われているスクレーパの適用範囲を図6-2のように細分化した。

    モータスクレーパとキャリオールスクレーパの適用範囲
    図 6-2 走行抵抗と搬土距離からみたスクレーパの適用範囲

    図6-2は、モータスクレーパの領域を細分化し、牽引式スクレーパもわが国特有の湿地スクレーパと区分している。
    また、牽引式スクレーパ領域とモータスクレーパ領域の間に国産ツインモータスクレーパTMS-8を挿入している。 このTMS-8は小型(山積8m3)の古い機種で現存していないので、現在は破線のやや上が牽引式とモータスクレーパの境界となる。
    「日本建設機械要覧」では、破線を消去してツインモータスクレーパの領域を実線領域で一本化しているが、上記の経緯からして適当ではない。
    図中のセルフローディングスクレーパは、エレベーティングスクレーパのことである。

    尚、ミーンズの重建設ハンドブックでは、同じく走行抵抗と運搬距離を指標として、機種の適用範囲を次のように示している。

    運搬工法の適用範囲
    図 6-3 搬土機械の適用範囲
    Y軸のRR+GRは、ころがり抵抗+勾配抵抗を%換算で示している。
     Dozer Only: ドージング領域、 Tractor-Pulled: 牽引式スクレーパ
     1e: シングルエンジン、 2e: タンデムエンジン
     Elev: エレベーティングスクレーパ、 Conv: モータスクレーパ
     Push-Pull: プッシュプルローディング仕様
     Truck & Shovel: ショベル&ダンプトラック工法


    他の機種の解説
    ブルドーザ スクレープドーザ スクレーパ ショベル系掘削機 ローダ ダンプトラック
    モータグレーダ 締固め機械 連続土工システム 穿孔機(削岩機) 作業船



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