東之浜に向かう。
途中、景色が良く悪石島・諏訪之瀬島・中之島・小臥蛇島・臥蛇島が見えた。
臥蛇島には昭和45年まで人が住んでいたが、
はしけ作業が出来なくなり集団離島をしたそうだ。

9月半ば近いのにここは残暑というよりまだまだ夏が続いている。
暑くてバテても日陰がないので麦わら帽子に隠れてコンクリートの道路に座る。

しばらく歩くとカラフルな谷が現れる。
それはすべてゴミだった。
生ゴミから車まであらゆるものが捨ててある。
上から谷を覗くとブーンと生ゴミの臭いが漂い、
野良猫が蠢きカラスが飛び交う。
(ゴミに関してはどの島も似たり寄ったりだった。)

トカラ列島 旅行記 野宿しながら約一ヶ月かけてトカラの島々を巡った旅の話です!   

分岐点へ
ゴミ捨て場になっている谷
吐喝喇列島旅行記の目次

( トカラ 列島 )

村営汽船「としま」と桜島 トカラ列島の旅が始まる

交通機関は村営汽船 「としま」 (1,090トン)が1隻で、
鹿児島港からトカラ列島へ月に約8往復している。
そのうち2,3回は奄美大島の名瀬折り返しで、そのほかは宝島折り返しだ。
十島村役場に九月の出航日を尋ねると(1、5,8,11,18,25日)の
6往復しかないようだ。
どうやら7つの島を回ろうとすると約1ヶ月ぐらいかかりそうだ。

9月1日の午前零時に車であわただしく出発。
それからなんやかんや寄り道して8日の夜にやっと鹿児島に到着。
鹿児島ラーメンが食べたくって港の近くの
「かごしまラーメン」と大きくカンバンに書いてあるラーメン屋に入る。
昼飯も我慢して走ってきたのに残念ながら美味しくなかった。
このラーメン屋のおばちゃんにトカラ行きの船が出る桟橋はどこか尋ねるがわからないと言う。
十島村とか島の名前を挙げてもぜんぜんわからない。
そんなにマイナーなのかな〜。
次の日にわかるんだけど、
このラーメン屋は村営汽船「としま」が出航する桟橋まで2百メートルも離れていない場所だった。

桟橋から歩ける距離に駐車場はけっこうあるが空きが無い。
ためしに時間決めの駐車場に1ヶ月いくらで借りれるか尋ねると
割引して25万円というふざけた答えが返ってきた。

やっと見つけた駐車場は桟橋から歩いて10分くらいの所にあり、
ビル建設予定地になっていて1ヶ月ちょっとならいいという条件で
1ヶ月2万円保証金1万円で契約する。なんだか高いような気もするけど。

         10 11

いよいよ吐喝喇列島へ

「トカラ」なんとも日本ぽくない響きだ。
「吐喝喇列島に行ってくる」と僕が言ってもそれがどこにあるのか
ピンとこない人が多かった。
しかもどこか外国にある島々だと思う人もいた。

簡単にトカラ列島のある場所を説明すると九州南方、
屋久島と奄美大島の間にあって鹿児島県に属し、
たとえるなら伊豆諸島みたいな感じで、十余の島々が東シナ海にぽつぽつと点在している。

その昔、諏訪之瀬島にバンヤンという名のヒッピーと言われた人達のコミューンがあり、
そこで生活をしていた人の話しを聞いて興味が湧いたのである。
 この島は活火山があり現在も噴火し続け噴煙を上げていて、
陸路で行くのは困難な温泉があったりするらしい。
そして諏訪之瀬島が属するのがトカラ列島なのである。

さて、トカラへはどうやって行くのだろうか?
いろんな時刻表を調べても載っていない。
それじゃあガイドブックで調べようとするがトカラ列島を載せた本が見つからない。
あちこちの本屋を回ってやっと見つけたのはガイドブックではないが、
吐喝喇 (トカラの遠い空から)」
瀬尾 央著 山と渓谷社出版の写真集だった。
この本によって大体の事は把握できた。

トカラ列島は鹿児島県十島村に属し現在、人が住んでいる島は七島ある。
北から口之島、中ノ島、平島、諏訪之瀬島、悪石島(あくせきじま)、
小宝島、宝島となっていて、その中で温泉が湧いていないのは平島と宝島だけだった。
温泉が多いというだけでさらに魅力がました。
おもな無人島は臥蛇島(がじゃじま)、横当島がある。
昔、人が住んでいたようだが、、。

鹿児島港に停泊中の「としま」

「としま」は翌日の早朝4時40分に口之島、6時ちょうどに中之島に着いた。
どの島にも20分から30分位停泊、すばやく荷物の積み降ろしをして出航する。
次はいよいよ平島だ。
今航海は名瀬便なので「としま」は奄美大島で1泊して戻ってくる。
最初に温泉の無い平島を1泊2日で回ることにする。
鹿児島港ー平島間の運賃は2等で5,430円だ。

午前7時50分、平島南之浜港に着く。
今日は風が少しあるが天気は良い。重いザックと手さげバックのためタラップを
フラフラしながら降りる。 平島には「としま」が停泊できる波止場と
漁船が数隻停泊する小さな港がある。 
波止場からは民家は1軒も見えず建物といえばセメント工場と集落に続く坂道の
途中にある待合所と製氷機があるバラックだけだ。

製氷機の横に重い荷物を置き必要なものだけDパックに詰めて道路わきにある、
平島の観光絵図を見ていると軽トラックが止まって集落まで乗せてくれるという。
僕を乗せた軽トラはズンズン坂道を登っていく。
さて、絵地図をしっかり見てこなかったのでどこに何があるのかよくわからない。
まあ周囲4,5キロしかないし道路もあまりないので片っ端から歩くことにする。

集落の奥まった所に大きなガジュマルの木がある。
いつ見ても不可思議な容姿をしている。ローソクの回りにいっぱい蝋を垂れ流し
固まっているようだ。 おどろおどろしいという言葉が当てはまるかな。

名前は平島だが決して平地は多くない。
海上から見ると台形的に見えて上部が平に見えるのでそれが名前の由来か?
それとも平家の落人伝説もあるのでこっちの方かもしれない。

山の方に歩いていくと蝉の声、おとなしい鳥の声、笹が風に揺れる音、
ときおり風が強く吹くと耳で風切る音がし、遠くで波の音がした。

道端に蠍が死んでいる。
あとで島の人に話すとそれは「蠍もどき」というらしい。
毒を持っているのか聞くのを忘れたが臭い匂いを出すそうだ。

平島の海岸

東之浜のほぼ真ん中にリーフを切り裂いて波止場が海に一本延びているが、
ここはもう使われていないようだ。
ここのすべての色合いは南の島そのものだ。

昼頃、潮が引いて岩のりが覆ったリーフが顔を出した。
その上を歩くと昔、西表島の鹿川湾へ行く途中歩いたリーフを思い出す。

潮溜まりには蜘蛛のようなヒトデ? イモガイなど多数、
僕の好きなタカラガイは1つしか見つけられなかった。

リーフから上がり大きな岩がゴロゴロする方へ行くと、
あたり一面を覆い尽くすほど舟虫だらけだ。
普通に歩くとさーっと引いてくれるが、
ちょっと速く歩くと舟虫はパニックになってどこに来るかわからない。
もしこの舟虫たちが逃げないで逆に襲ってきたらと考えると
恐ろしくなって全身鳥肌が立った。

誰かに見られてる?
視線感じてあたりを見渡すと先の方でトカラヤギがじっと僕を見ていた。
よく見るとたくさんいる。
近づいていくと逃げていくが大きな雄ヤギは僕の動きをじっと見ている。
トカラヤギは結構美味しいそうだ。
冬場になると島ではヤギを捕獲して食べるという。

東之浜を北に向かってどんづまりまで歩くと、
その周辺だけ溶岩帯になっていてパックリと大きな横穴が開いている。
ここは穴口と呼ばれているところだ。
開口部は2ヶ所あり穴の中は漂流物が散乱している。

涼しくて気持ちがいいので穴の中央部の岩に座り込んでぼーっとする。
しばらくして穴の外に出ると日陰のない夏の世界が待っていた。

すみません、どの島かわかりません!

もうすぐ日が暮れる。
僕の左斜め前には「としま」の大きな船首が高くそびえている。
東シナ海に出てしまえばちっぽけな存在となってしまうが
桟橋に停泊している「としま」はとても大きく感じる。
その後方には桜島が雄大な姿を見せて山頂の右端から噴煙を上げ、
あたかもその中から出てきたようにお月様が顔を出した。
中秋の名月に缶ビールの酔いが心地よい。

午後10時出航。
甲板に上がる
汽笛がボーっと吼え、蛍の光のメロディーに乗ってスクリューが思い切り
水を掻きあちこちに渦巻きが起こる。
深夜、船が港を出るとき何故かもの悲しい気持ちに襲われる。
僕を見送る人はいない。
桟橋で誰かを見送る人を数えたら26人だった。

「としま」は以外にも速くあっというまに桟橋を離れ、街の明かりが遠くなる。
風が冷たい。
一番船底に近い二等室に戻るとエンジンの音がうるさく振動も大きく
救命道具が入っている戸棚の扉がビリビリと喧しい。
船は上層に行けば行くほど上等な部屋が待っている。

ガジュマルの木
トカラ列島旅行記 1992

トカラへ

平島の波止場近くの待合所とテント
トカラ列島って
駐車場探し

村営汽船「としま」の航路

鹿児島港---口之島---中之島---平島---諏訪之瀬島---悪石島---小宝島---宝島---名瀬港

平島

島のゴミ捨て場

夕方、島の人に断わって波止場にある待合所の前にテントを張る。
少し斜めで眠りづらそうだが水もトイレもあるのでここが一番良さそうだ。

さっきまで子どもたちが漁船の溜まり場をプール代わりにして泳いでいたので、
僕も汗を流すために泳いでいると漁船が帰りはじめ轢かれそうだ。

暗くなると漁師さんも集落に帰ってしまい誰もいなくなった。
野宿の夜はいつも怖い。 お化けも怖いが一番怖いのは人間だ。
イージーライダーみたいに夜中に袋叩きにあったらどうしようなんていつも考える。

翌朝7時前にテントをたたみ海岸沿いに歩いて西之浜に向かう
途中、南之浜に砂浜があり牛を放牧している。 
砂浜といっても陸の部分だけで水際からリーフだ。
それからはずっと岩場で西之浜に「前之浜港」という現在使用していない波止場跡がある。
地図上ではこの波止場跡から集落まで歩いてもすぐの距離で便利そうだが、
実際に歩いてみると急な山道できつい登りが続く。
 車が通れる道を作るのも大変だし、きっと海が荒れ出したら
とてもじゃないが船が近づくことが出来ないので南之浜に作ったのだろう。
鵜崎まで足を延ばすがずーっと岩場だった。

沖では島の漁船が走りながらホロ引き漁をしている。
今の時期釣れるのはサワラとカツオだ。
「としま」の上り便が来るまでもうひと頑張り。
市場に出すのはほとんど「としま」に頼っているからだ。

村営汽船「としま」の切符は各島で買える。
中之島は十島村の支所にて、そのほかの島は村に駐在員が一人ずついて
その人の所で前日または当日に買うことが出来る。
また口之島・中之島・宝島以外は郵便局が無いので、
郵便業務・役場業務なども駐在員がこなす。



水洗いした衣類を日がよく当たるコンクリートの床に置いていたらすぐ乾いた。

あと1時間もすれば船が来る。

到着予定時間30分前ぐらいになると集落からぞくぞくと車が下りてくる。
僕も荷物を持って波止場に下りる。

午後2時45分、沖に「としま」が見える。
その時、波止場に水イカの群れがやってきた。

なぜかタイミングよく釣竿を持っている島の人が何人かいて、
すかさず疑似餌を使い水イカを引っかけだす。
それに驚いた水イカたちが吐き出すスミで海は真っ黒になった。

ほどなく「としま」が波止場に入ってきてイカ騒動は終わってしまった。

船に乗り込みデッキに出れば波止場に知ってる顔がちらほら。

あとから聞いた話しだが平島には昔からの祭事が多く残っているようだ。
その辺をメインに攻めたらきっと面白いでしょう。

午後3時20分、平島南之浜港を出航し中之島に寄港後口之島へ

         10 11

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