トカラ列島 旅行記 野宿しながら約一ヶ月かけて島々を巡った旅の話です!
酒の飲み過ぎと身体中が痒いのとでよく眠れなかった。
朝早く起きだし昨夜の宴の後片付けをする。
またテントに入ってごろごろしていると、
島に来て最初に話しをした少年、ケンゴがやって来たので朝食を作りいっしょに食べる。
しばらくすると港に住んでるタカちゃんもやって来た。
僕ら三人で集落へ上がる。
今日は敬老会の準備で大人も子供も忙しい。
僕は子供たちと一緒に集落の中を回っていたが
子供たちは演奏の練習のために行ってしまい独りきりになってしまった。
とりあえず集落の中心にある島民の憩いの水場のガジュマルの木陰に座る。
涼しくて気持ちがいい。
たまにやぶ蚊が僕の身体を刺すがブトに比べたら可愛いもんだ。
敬老会を行うコミュニティーセンターでは人々が
準備に忙しそうだ。
何か出来ることはないかと思い、のぞいてみるがとくにないようだ。
なんか寂しくなった。
始まるまでまだかなり時間があるので、めんどくさいけどテントに戻ることにする。
集落には僕のいる場所がないのだ。
「敬老会」 島全体が70歳以上の老人を祝う会で今年は33人いるそうだ。
島の長たちの長い祝辞が続き宴会に入る。
小さな子供たちの踊りと演奏で始まり小中学生の合同演奏と続く。
おせーじにも上手いとは言えないがなんかあったかくてジーンとくる。
それから婦人会の踊りがずーっと続き、
カラオケ自慢がどんどん出てきて終わりがないかにみえたが
なんとか司会者が締めて教師たちの遠山の金さんの芝居に入った。
これはけっこう面白かった。
そして午後5時半、やっと一次会が終わった。
なんと4時間半もぶっ通しだった。
ケツが痛いのなんのってありゃしない痺れている。
これから先二次会に入るそうだ。
ここで帰ろう。
みんなしこたま元気である。
僕は子供の頃から今日までこのような会に参加したことが無かった。
素直な気持ちになればいいものかもしれない。
島だと人も少ないし人の出入りも少ないし、運命共同体みたいなものだから必要だ。
とはいうものの、田舎って付き合いが大変そうだ。
なにかと行事が多くそれに駆り出されそう。
だけど条件が厳しい土地ではより一層のコミュニケーションが必要なのかもしれない。
生きていくために。
帰りはタカちゃんとツカサと僕の3人で汐見峠を通らず
東乃浜を見ながら回り道をして帰る。
東之浜はゆるやかな弓形をしていてとてもきれいな波が立っていた。
月が山の向こうから顔を出すまで空は暗く星がたくさん輝いている。
天の川が北から南へと流れその中に白鳥座がある。
東京の空ではこれが白鳥座かなという感じだが、
ここの空では確かに白鳥が飛んでいる。
もう真っ暗だというのにまだタカちゃんとツカサは僕と遊んでいる。
ツカサはまだ小学校3年生だ。
東京あたりだったら僕は子供の親にさんざん怒られているだろう。
さらにもう一人、父親と夜釣りに来ている
織田裕二にそっくりの顔を持つユウサクが加わり、
市来くん、落合くんの2人もやって来た。
かゆみ止めのキンカンを持って追いかけっこになり、
捕まると顔面や股間にたっぷりとキンカンを塗られる。
しまいに自転車に乗って逃げ出したユウサクが転んでしまい、
肘と膝から血を流してしまった。
大人連中(僕ら三人)は慌てふためく。
傷の手当てをしようとした時、ユウサクの父親が迎えにきた。
事情を話し三人は平謝りする。
傷の手当ては家に帰ってするという。
あ〜ヤバかった。
ここで子供たちと解散だ。
ウイスキーを飲みながら市来くんが身体中かゆいと言った。
そして、昨夜ここで刺されたようだとも言った。
僕は「ここにはブトはいないよ、セランマ温泉で刺されたのが痒いんじゃないの」
と答えたがなんとなく自分も刺された箇所が増えたような気がする。
午後4時過ぎ、総代の松本さんの所へセランマ温泉の鍵を返しに行く。
おばちゃんが今日捕ったばかりのサワラ、マグロ、カツヲをさばいていた。
明日の敬老会の準備をしているそうだ。
冷たいものと言ってポカリスエットとビールをご馳走になる。
さらにサワラの切り身もビニール袋にたっぷりといただく。
ついでにここの水が美味しそうなので持参したポリタンにたっぷり入れてもらった。
吐喝喇列島に来る前は水が心配だったが、ここ口之島の水はとても美味しい。
特に総代さんの家は一番高いところにあるので湧きたての水だ。
帰り際におばちゃんが明日の敬老会を観においでと言ってくれたので、
僕は喜んで行きますと言った。
テントに帰ると防波堤の上に温泉で会った青年たちが釣りをしているのが見えた。
一人が手招きをしているので防波堤に上がってみると
「ほらっ」
と防波堤の内側の海面を指さした。
そこには色とりどりの珊瑚礁が広がっていて、よく見るとゆったりと海亀が泳いでいた。
その泳ぎはお花畑を舞う蝶に似ていた。
僕は防波堤の端に座ってその泳ぐ姿に見とれていたが
漁船が入ってきて、エンジン音に驚いたのか凄い勢いで海中深く潜ってしまった。
それからしばらく釣りを見ていたが魚はたくさん泳いでいるのにぜんぜん釣れなかった。
薄暗くなった頃、彼らは夕食をとるため宿舎に戻るという。
あとで僕のテントの前で酒を飲む約束をする。
旅に出るとラジオはいつもNHKだ。
全国どこへ行ってもだいたい聴くことが出来るからだ。
しかしここは、昼間は感度がいいが夜になると途端に感度が落ちる。
夜はアジアの国々が強力な電波を飛ばし中波のあらゆる周波数を支配する。
僕が持ってきているトランジスターラジオは20年前くらいのやつで
アバウトなダイヤルをおそるおそる指で回すと
時おりゲリラ的に日本語が入ってくる。
だが決して長続きはしない。
ゆらゆらと懐中電灯らしき明かりがテントを照らした。
三人組が焼酎の一升瓶をぶらさげてやって来た。
酒の肴は夕方おばちゃんにもらったサワラの切り身とポップコーンだ。
三人組は年長の市来くんを代表に事業を起こすための資金作りにこの島へ来ている。
落合くん、元村くんそれぞれいろいろな問題を抱えながら夢を現実のものにするため頑張っている。
久しぶりに人と話しが弾む。
今夜は懐中電灯のあかりが必要ないくらいに月が明るい。
なんて素晴らしい夜なんだろう。
いつしか夜は更けて一升瓶が空になり彼らは帰っていった。
いつまでたっても痒みは治まらない
9月16日 水曜日
ふと気がつくとヘソの辺りがヒリヒリする。
どうやら夜中にキンカンを塗っているうちに眠ってしまい
蓋を開けたままお腹の上に置きっ放しにしたようだ。
ヘソの回りは焼けて水脹れになっていた。
あ〜なんてこった!
何気なくテントの天井を見ると、小さな虫がたくさんくっついている。
嫌な予感がして一匹潰してみると赤い血が出てきた。
なんじゃこりゃー!
凄いショックだったのはテントの出入り口に付いている網戸を潜りぬけて侵入していることだ。
網目の一マスはわずか1ミリちょっとしかないのに、、、、。
絶望的だ。
あとから聞いてわかるがこの虫はガジャブと呼ばれているらしい。
今日一日、今までブトとガジャブに刺されて痒くてたまらない
ところをいかに治すかというテーマでいく。
朝一番に集落へローソクとキンチョールを買いに行く。
ちなみに虫刺されの薬はキンカンしか置いてない。
昨夜、市来くんに教えてもらったのがローソクの蝋を刺された所に垂らす方法だ。
彼が言うには蝋の熱で毒を分解するそうだ。
ブトに刺された所にはまだ試していないが
蚊に刺されて痒い場所には効果てきめんらしい。
これはやってみるしかない!
だけど、島の人は刺されたらどうするんだろうか?
僕は虫刺されに効く野草があるんじゃないかと思い,
会う人会う人に尋ねるがそんなものはないという。
だいたい地元の人はブトにもガジャブにもへこたれないのだ。
身体には免疫が出来ていて刺されてもそんなに腫れないしいつまでも痒くないらしい。
蚊に刺されたのと同じようなものだから何もしないのだ。
あるおじさんは畑仕事の前に刺されないようにと
身体中にキンチョールを吹きかけると言っていたがそれはちょっと抵抗があるなあ。
肌を出さなければ刺されることも少なくなるだろう。
唯一長袖は防寒用の薄手のブルゾン。
これを着て、短パンをやめてジーンズを穿く。
そして、首にはタオルを巻く。
完璧だ。
けど、地獄のように暑い!
刺されて痒いところはかきむしる、爪で十文字にする、
海水をつける、珈琲を塗る、オシッコをかける、キンカンを塗る、
いろいろ試すがどれも長持ちしない。
最後の手段、熱そうだがローソク垂らしをするしかない。
ちなみに現在どれくらい刺されているか、
左足の刺された箇所を付け根から指先まで数えてみると
43ヶ所ほどありました。
それと同じように全身刺されてます。
外は風が強くローソクの火はすぐに消えてしまうので
テントの中でローソク垂らしをする。
昼間のテントの中は恐ろしく暑い。
パンツ1枚になり、じっとしていて痒いと感じた所から
ローソクを垂らすことにする。
まずは左腕から攻める。
最初の一滴は手首の内側のデカく腫れてる
飛びきり痒いやつに食らわす。
ポトッと落ちた瞬間、アチーッ! と叫ぶがすぐに快感へと変わる。
身体中に現れた赤いエイリアンたちに蝋の絨毯爆撃を浴びせる。
指先、指のまたはえらく熱く全身から脂汗が吹き出る。
そして、気が遠くなるような痛さで思わず息を止めた口から
「あ〜ん」
と声が漏れてしまう。
ローソクを垂らしたら絶対に痛いと思われるところを狙うときは
思い切りがなく、なかなか蝋が落ちない。
そして、さらに恐怖感が増して手元が狂って、平和な土地に蝋の爆弾を落としてしまう。
この光景を「SM入門 初めての蝋燭責め」
なんてビデオを作ったら売れたりして、、、。
全身から吹き出た汗とこびりついた蝋を流すために海でひと泳ぎする。
そのあと、いつも風呂代わりにしている小川で海水を洗い流す。
小川は浅くて浸かることが出来ないので
アルミの鍋ですくって頭から浴びる。
これだけ刺されていると新たに刺されているのかどうか判らないので、
赤いエイリアンたちにボールペンで丸印を付けていく。
だけど何も知らない人が見たら気持ち悪いだろうなあ〜。
夜はいつもの3人組が遊びに来て酒を飲む。
今夜に限ってなぜか怖い話特集になってしまい、
あまりの恐怖に「頼むから独りにしないでくれ〜!」
と哀願するが世の中そんなに甘くはないのだ。
9月17日 木曜日
SMローソク垂らしの効果のほどはというと
今までいろいろ試した中では一番良かった。
頑固な痒みのところでも数滴垂らせば痒みが止まって楽になった。
けど、完治はせず数時間後には再び痒みはやってくる。
そのたびに僕はポタポタと蝋をたらす。
今日は天気が良いのでセランマ温泉に行くことにする。
アルミ鍋で飯を炊き、半分ほどふりかけをかけて食べる。
残りは鍋ごとリュックに入れて、おかずにふりかけ2袋と魚の缶詰1缶を持っていく。
今回はブトとガジャブにやられないようにキンチョールもリュックに入れる。
総代さんにセランマ温泉の鍵を借りて、8時半集落を出発。
14日のように天気が悪くないので気分はハイ!
スキップランランランだ。
野生牛の世界の入口まで1時間40分で着く。
道には一昨々日歩いた時の僕の足跡が所々に残っていてなんだか嬉しくなる。
しかし随分と外股の足跡だぁ。
出来たてホカホカの糞が道端にたくさん落ちているのに
今日はなかなか野生牛に出会えない。
10時20分、セランマ温泉に到着。
結局ここまで来るまでに紅毛の子牛を遠くに見るだけだった。
タオルを口に当て、”シューッ!”とキンチョールを噴射しながら室内へ突入。
いったん外に出て、しばらくしてから中へ入るとブトもガジャブも一匹もいない。
死骸もない。
いったいどこへ行ったのだろう?
今日はゆっくりと温泉に入ってリラックス出来た。
午後1時15分、セランマ温泉出発。
来た道を戻らず、島をぐるりと回れる道を歩く。
途中、アオバトのつがいを見たがほかに珍しいものは見れなかった。
野生牛の世界の終わりを告げる柵を乗り越え、
前之浜側から集落に近づいていくと段々畑が広がっていた。
土地は肥えていてなんでも作れるが害虫が多く夏野菜は作らないそうだ。
郵便局に1万円を両替しにいくとケンゴのお母さんが働いていた。
島には食料、生活用品が置いてある
組合の店が1軒有り、朝夕に開くがそこにいるおじさんは愛想なく意地悪で
1万円札を出すと品物を売ってくれないのだ。
午後4時過ぎテントに到着。
身体中泥だらけになったケンゴがやって来た。
どうやらここへ来る途中、近道しようと思い山の中を下っていて転んだらしい。
そんなケンゴと夕食をする。
薄暗くなり星がちらほらし始めた頃、お母さんが迎えに来てケンゴは帰っていった。
今夜はいつもの3人組は来ないようだ。
そうだよな彼らは朝から晩まで力仕事をしているのに
毎日ここで遅くまで酒を飲んでいちゃ疲れるよなあ。
古道具 古賀
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