トカラ列島 旅行記 野宿しながら約一ヶ月かけて島々を巡った旅の話です!

この先は野生牛の世界

野生牛 登場!

セランマ温泉


イオウの匂いがした。
それから少し行くとガードレールに「お疲れ様セランマ温泉センター入口」と
赤ペンキで書かれていて右下に折れる道があった。

そこを下っていくとコンクリート平屋建ての建物があり、それがセランマ温泉だ。
午前9時40分到着。
少年に見送られたのが8時頃だから約1時間40分ほどかかった。

玄関を開けると正面に廊下があり右側手前から台所、
20畳の畳部屋、便所、女風呂、正面突き当たりに男風呂入口がある。

風呂場の雨戸が閉まっているのでその雨戸を開けて、空の浴槽に湯を溜める。
これがまた時間がかかる
浴槽は湯たんぽサイズの石を積み重ね、隙間にコンクリートを詰めて作ったものだ。
蛇口から流れ出る湯はとても熱くイオウ温泉のようだが
匂いはきつくなく色は透明であっさりしたいい湯だ。

セランマ温泉入口 と野生牛の糞!

セランマ温泉センター

岩風呂。湯を溜めるのに時間がかかる。 
ゆっくりするなら最高だ!

古道具 古賀
東京都小金井市関野町2−3−3
0120ー387−056
042−387−0567
 furudougukoga@yahoo.co.jp
東京都公安委員会 第308899403942

当店は桜の名所、小金井公園の近く、
五日市街道沿いで10数年、地道に商っています。
定休日・月曜日・不定休有

吐喝喇列島旅行記の目次

分かれ道がいくつかあり本当にこの道でいいのかなあ?
と思いながら歩いていると後ろから自動車がやって来た。
その車を停めて道を尋ねると大丈夫だと言った。
車に乗っている人たちはNTTの方々で途中にある無線所まで行くようで、
良かったらそこまで乗せてあげると言ってくれたので ありがたく甘える。

車を降ろしてもらった所からコンクリートの道は終わってジャリ道へと変わった。
なぜアスファルトの道ではなくコンクリートの道なのかというと、
吐喝喇列島の殆どの島にある大名竹がアスファルトを侵食して道を破壊してしまうからだ。

久しぶりに畳の上でゴロンと横になる。
やっぱ畳はいいなあ。
大の字になって天井をボーッと見ていると、
ショウジョウバエのような小さな虫が僕の回りに集まって飛び回っている。
” 汗くさいからなあ〜 ” ぐらいにしか気にもとめていなかったら、
その虫たちは僕の身体に着陸しはじめた。
なんかチクッとする。
嫌な予感がしてペタッとへばりついている虫を、
手でバシッと叩くと虫の体から赤い液体が流れた。
血だ。 僕の血だ。

こいつらブヨ(吐喝喇ではブトという)だったのか。
まさかこんな所にいるとは思わなかった。
畜生ー!
それから僕は湯が溜まるまで、Tシャツを亀の甲羅に見立て、
手足をスッポリTシャツの中に隠しうずくまった。


湯がいっぱいになり服を脱いでいると玄関の方で”ガタン”と音がした。
ビックリして見ると野生牛ではなく3人の青年が玄関に立っていた。

彼らは港の防波堤作りのために鹿児島市内から来ていて
今日は波が高いために作業が中止になり車で遊びに来たらしい。
みんなでいっしょに温泉へ入る。
そしてみんないっしょにブトに刺される。

湯気で見えにくいが風呂場にも沢山ブトが飛び回っている。
風呂場から上がってもブトがつきまとって落ちつかないのでそうそうに退散する。
帰りは彼らの車に乗せてもらいあっという間にテントに着いてしまった。


まだ昼前だ。
天気が良くなってきたのでテントの中の濡れた荷物を外に出して乾かす。
草むらの中に木のパレットが2枚放置してあった。
これを草むらから引っ張り出し2枚並べてその上にテントを乗せた。
こうすれば雨が降っても下から水がしみ込むこともないし、
テントの四方をビニールひもでパレットに固定すれば風で飛ばされることもない。
ただ難を言えば2枚のパレットの段差が5センチぐらいあるので眠りにくそうだ。

ジャリ道を30分ぐらい歩くと道を塞ぐゲートにあたった。
ゲートの向こうは野生牛の世界だ。
まるでライオンバスやサファリパークを車に乗らず歩いていくような気分だ。
雨が止んだのでポンチョを脱ぐ。
Tシャツは雨に当たったぐらい汗で濡れている。
あ〜気持ちが悪い。

はっきり言って天気が良ければ気持ちもプラス思考になるだろうが
こうも重苦しい鉛色の世界が続くと気持ちはマイナス思考に一直線だ。

ゲートを越えて歩き出してからは出会い頭に野生牛に遭わないために
歌ったり、叫んだり、口笛を吹いたり、手を叩いたり、時には踊ったりした。

道には野生牛の糞が散乱しているので踏まないように歩くのは大変だ。
ついさっき、牛の肛門から出てきたぞという感じの糞が落ちている。
そのような新しい糞には必ずギンバエが群がっていて、
僕が近づくたびにブオンと爆音を立てて辺りに飛び散る。
これは近くにいるぞと気持ちが昂ぶって恐怖感よりも
怖いもの見たさの方が勝りそれからは静かに歩く。

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カーブを曲がったところでついに野生牛登場!
4頭いる。
1頭は紅毛の子牛だ。 子連れの牛は気をつけた方がいいかもしれない。
野生牛たちは僕をじっと見ている。
僕は手に持っているポンチョを振り回して大声を上げるが野生牛は動かない。
口笛を吹くがフウフウいうだけで音が出ない。
これはいよいよヤバイかもしれないと思い逃げ場所を探すため辺りを見渡した。

ふと、大きく顔をそらして目線をはずしてやると野生牛たちは一斉に逃げ出した。
僕はそれを追うように大声を上げながら走った。
野生牛はしばらくのあいだ道の上を走ったが、いつのまにか森の中へ消えていった。

十島村のパンフレットによると、その数およそ100頭の純血種。
純粋和牛のルーツとして希少価値が高く完全な野生状態が見られるのは、
世界でもここ口之島だけだそうだ。

吐喝喇列島旅行記の続き

午後6時過ぎ口之島に到着。
波止場に降りたち、近くにいた島の老人に
「こんにちは! あのーどこかテントを張ってもいい場所はないでしょうか?」
と尋ねると、
「あんたの好きな場所に張ればいいじゃないか」
とつれなく言われてしまった。
早くしないと暗くなってしまうので今夜は波止場の根元にテントを張ることにする。
ここの波止場はかなり大きく自動車を何十台も駐車できるスペースがある。

テントを張っていると子どもたちが集まってきて仲良くなり島の事を教えてくれる。
この島にはセランマ温泉があるので子どもたちに尋ねると、
宿泊できる建物があり普段は鍵が掛かっているそうだ。
その建物の裏の川から温泉が湧いていて建物に引いているようだ。
露天風呂は無いらしい。

明日の朝、学校に行く時に温泉の鍵を管理している人の所へ
連れて行ってくれるという。

セランマ温泉まで歩いていくと約2時間ぐらいかかり、
途中から野生牛の棲息しているフィールドを歩かなくてはいけない。
その野生牛の中で紅い毛の牛がいてこれがヤバイらしい。
気が強くて人を襲うという。と子どもたちに脅かされる。





9月14日、月曜日

午前3時頃から風が強くなる。
テントをコンクリートの上にどこにも固定せずただ張っただけなので
グニョグニョと揺れ何度も倒れそうになる。
荷物を片方に寄せその反対に自分の身体を寄せて重石がわりにする。
悪いことに大粒の雨が降りだし下から水がしみ込んでテントの中はグチョグチョニなった。
それでもひらきなおって眠ろうとするが時々うとうとなるだけで朝になってしまった。

午前7時前にやっと雨も風も弱くなった。

こんな天気でも昨日約束した少年はやって来るだろうか?
少年は7時15分頃に迎えに来ると言っていたので、
いちおういつでも外に出れるように準備する。

また雨が強くなってきた。

約束の時間になったので、来ないかなあ?と思いつつ
Dバックを背負いその上にポンチョを着てテントの外に出た。

しばらくすると雨で霞むなか傘をさしながら自転車で
やってくる少年が見えた。
感動です。


口之島の港は結構大きく僕がテントを張っている波止場の奥に
漁船の港があり、そのそばに民宿2軒と数軒の家がある。
少年の家はその中にあって歩いていくともう一人の少年が待っていてくれた。
二人とも坊主頭の中学生でまだあどけなさがあり、
なんか懐かしさと、いいやつらだなあという気持ちで僕は朗らかになる。

この島には中学生3人・小学生15人の生徒がいて
港に住んでいるのは僕を迎えに来てくれた少年一人だけだった。
港から集落まで歩いて20分くらいかかる。

その途中に汐見という峠があり振り返れば海が良く見える。

ここで昔、一人の坊さん(ここでは、ぼんさんと呼ぶ)が
島民たちに間違って殺された。
それからというもの島では悪い事が次々と起こった。
これは坊さんの祟りにちがいないと思った島民は手厚く葬り祀った。
と少年の一人、物知りの生徒会長山口君が
汐見峠を通った時に話してくれた。

ついでに土葬の墓場もこの近くにあって
「でるよ!」と脅かしやがった。


少年が案内してくれた家は島の総代をしている松本さん方だった。
恥ずかしながら今まで総代という制度は知らなかったが
町会長のような役割をするようだ。

いつのまにかこれからセランマ温泉に行くことになってしまう。
入浴料200円を払い住所氏名をノートに記入して
温泉センターの鍵を借りる。

集落の外れで少年2人に見送られて心の準備が出来ないまま
セランマ温泉に向かった。
まあ首に巻いたタオルが1枚あるからいいかあ!

「野生牛とブトとガジャブの口之島」

口之島の案内図

こんな道を長く歩きます

野生牛が小さく写っている

ブ ト

パレットに乗せたテント。 段差を見てください! (笑)

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