5.計画目的の設定
建築は一般に物として考えられますが、実は生活や仕事等の日常行為
を営む舞台で、建築主の生き方,人柄や家族,団体の特性がそれなりに
表れますので、"家作りは人生を演じる舞台造り"といえます。最近は
思い付きの奇抜なアイデアや耳触りの良い洒落た言葉で建物の新しい
使い方等を提案する小利口な達人も多く、建築主や利用者に相応しく
なかったり苦痛や負担を伴う様な独りよがりの設計をよく見掛けます。
計画の目的や使い方が曖昧では"行先が船長任せの船旅"に似て、提案
の図面や模型に気を取られて建物に合わせた利用に陥り易いものです。
注文建築とは目的の利用に合わせた建物の事ですので、洋服に身体を
合わせる様な本末転倒になりかねません。後悔しない注文建築を作る
には人生設計を基に計画の目的や使い方等を明確にして、その目的に
最適な期間と専門家を決める事が最も重要です。どの様な建築にする
かは"どの様な人が、何の為にどう使うか?"が基本で、日常使いこな
せる事が大切です。要望は洋服の様に十人十色で、年齢,性別,立場で
異なります。"誰もが何にでも使える"とは"誰もが満足には使えない"
と同じですので、関係者間の意見を統一する為に充分話合って下さい。
■計画の動機
"なぜ建築をお考えなのですか?"動機は計画目的の重要な要素です。
【物理的限界】建物や設備の老朽化,故障,寿命,他
【機能的限界】時代遅れ,面積不足,非効率,危険,他
【収益事業】 資産有効利用,多角経営,転.廃業,他
【将来対策】 老後,同居,独立,後継者,相続,事業展開,他
【外的要因】 被災,公害,環境変化,立退き,他
一般に相続対策では大規模程有効と言われ、収益事業では用途税率
や市場性,収入安定性,専有率,附帯設備,維持費等の効率が重要です。
■現状の整理
計画は夢も大切ですが、まず現状を充分把握する事から始まります。
長年の生活スタイルや生活習慣等の急激な変化を避け、建物の環境
や使い勝手等の良い点は継承し、又不満な点は解消したいものです。
【家族や会社の特性】伝統,思い出,価値観,趣味,営業特性,他
【利用内容の現状】 生活様式,利用特性,動線,季節特性,他
【施設内容の現状】 部屋数,面積,天井高,性能,収納,設備,他
【外部交流の現状】 交友内容,地域行事,取引先,業界動向,他
尚残しておきたい思い出や記念の物は歴史の継続として意味があり
ますので、再利用の希望リストを作って専門家にご相談下さい。
■将来の予測
建築は日常生活や気候風土と伴に将来の変化に対応できてこそ満足
できるものです。建物の使い方は年月と共に変化しますので、それ
なりの準備が必要です。10年毎の修繕周期を目安に将来の利用者や
使い方と社会,環境等の変化や建物の維持や増改築等を予測下さい。
【家族や会社の変化】利用者の構成,利用内容,老後,同居,独立,他
【施設内容の変化】 用途変更,増築,改装,設備増設,屋上利用,他
【外部交流の変化】 交友内容,地域行事,業界動向,関連事業,他
【権利関係の変化】 所有,賃貸,売却,後継者,相続分割,資産価値,他
■建築デザインのイメージ
建築は洋服等と違って長年使用する耐久消費財ですので、思い付きや
憧れ等の表面的デザインではそのうち飽きがきますし、様々な好みを
無雑作に集めたデザインでは建物全体の調和が計れません。最近では
洋室に畳を敷いただけの部屋でも和室と呼ぶ例もある様ですが、表面
の形や材料等にとらわれずに、気候風土や周辺環境と用途や利用者に
相応しい日常生活の舞台背景でありたいものです。形や材料,色調等
は専門家を大いに活用して、まずは感覚的な言葉や参考資料等で結構
ですので、ご要望の利用や好みに応じた建築イメージをご検討下さい。
【和風デザイン】書院風,数奇屋風,町屋風,民家風,現代和風,他
【洋風デザイン】北欧風,南欧風,英米風,東南亜風,現代洋風,他
【重厚デザイン】優雅,豪華,力強い,温かい,閉鎖的,伝統的,他
【軽快デザイン】清楚,端正,柔かい,軽やか,開放的,現代的,他
尚どんなに素晴らしくても専門家の好みを押付けられては迷惑ですし、
又物真似では盗み同然の行為になり著作権を侵す事もあります。長く
愛着の持てる建物とするには普段着の自分らしさが大切と思います。
■品質,性能等のグレード
"安くて安全で快適な建築"と思われるのは同感ですが、建築の場合は
"あちらを立てれば、こちらが立たず"の長短を併せ持つのが普通です。
従って"いい所取りは矛盾するご要望"という場合が大変多いものです。
下記は建築の主な性能ですが、しばしば相互に対立するものですので、
一つの要素にとらわれずに総合的にバランスさせる事が大切です。
建築主の考え方を示す為に各要望の優先順位を考えてみましょう。
【安全性】荷重,防災,防犯,事故対応,耐久性,バリアフリー,健康,他
【快適性】眺望,日照,採光,通風,断熱,防音,清掃性,家相,エコ,他
【効率性】機能.利便性,自由度,多用途利用,一体利用,運営管理,他
【美観性】統一性,独自性,空間性,素材.色彩性,環境調和,防汚染,他
【経済性】建設予算,耐用年数,費用効果,省エネ,附帯設備,維持費,他
建物のグレードは用途,構造,性能等級,材料,設備等で随分違います。
グレードは一般に予算等から専門家が総合的に判断して設定しますが、
建築主の希望グレードと一致しないのが普通ですので、特にご要望の
機能や性能,材料,設備等と工事や保証等の条件は事前にお伝え下さい。
●参考HPリンクボタン↓
・建築百家>ライフスタイルにあわせて(インフォサービス轄成)
・住宅・すまいWeb(住宅生産団体連合会作成)
・住宅性能表示制度(住宅産業研修財団作成)
・税務上の耐用年数一覧表(一件楽着インターネットサービス轄成)
■建築の法令制限
利用者や近隣住民等の安全と健康及び環境等を守る為に、敷地条件と
前面道路の巾員や接道巾等により建物の用途や境界距離,高さ,階数,
面積,構造,材料,窓寸法,階段,防災設備他の様々な基準が法律で定め
られています。違反しますと改善命令や使用禁止等の行政処分を受け、
損害は建築主負担になります。尚欠陥建築の防止には役所と第三者の
検査が重要です。詳しくは自治体の建築課又は専門家にご相談下さい。
●参考HPリンクボタン↓
・建築法規と基準について解説(All About Japan 作成)
・用途地域内の建物用途制限表(潟Gクスナレッジ 作成)
<好きな言葉>