≪絵本のおはなし≫おはなし会の中から…

おはなし会で届けた絵本の内容をここにご紹介します。
子供たちの様子を思い浮かべながら一つ一つ書き留めてみました。
一覧はBooksでご覧下さい。題名をクリックすると画像を見ることができる絵本もあります。




 
 ハ 
ばあちゃんのなつやすみ   [梅田俊作・桂子 作] 岩崎書店

夏休み。田舎のばあちゃんは東京から娘と孫がやってくるというので、朝から落ち着きがありません。
あれこれと昔を回想しながら孫達が来たら、こんなことをしてやろう、遊ばせてやろうと思い巡らせています。
横では、じいちゃんも何かにつけて色々と話し掛けてきますが、ばあちゃんはもう、何もかも準備は済んでただただ、玄関前で孫達がやってくるのを待ち続けるだけです。孫達の喜ぶ顔が見たさに佇むばあちゃん。

そう言えば、祖母もそうだったなと思い出します。別れの時などは、いつまでも手を振って見えなくなるまで見送ってくれた祖母の姿が目に焼きついています。きっと、迎える時はこんな風に待ち遠しい気持ちでいてくれたのでしょう。
そして、とうとう、やってきて、飛びついてきた元気な孫達の顔を見て「おう、おう、ようきた ようきた。まってたぞ!」のあったかい言葉は胸にジ〜ンと来ますね。
夏休み前、あるいは夏休み後、敬老の日も近いおはなし会におすすめです。



はくちょう    [内田麟太郎・文/いせひでこ・絵] 講談社

『はくちょう』は内田麟太郎氏のシンプルな文を絵がどう答えたらいいかと、1年掛りで湖の取材を通した苦労話と絵本とスライドを使って説明が付け加えられる。詩人の内田氏は「雲のてんらんかい」の作品から伊勢さんに絵を託されたらしい。・・・・
飛び立つ白鳥の群れから傷ついた一羽の白鳥の池を描くのに北海道の湖を巡り、名も知れない神の子池、岩手の猪苗代湖をスケッチされ、動かない白鳥と動かない湖に「動」を表現するのに一匹のキツネを登場させたのには思いもよらない事で、湖の雫が白鳥に変わる様の想像を絶した表現、番となって飛び交う白鳥の絵に内田氏も感嘆されたらしい。究極の愛と命の尊さがテーマとされているらしいが、私は『白鳥は哀しからずや空の青、海のあをにも染まず漂ふ(若山牧水)』と詠んで重ね合わせてしまう。

(日記2004・伊勢英子さんの講演会録より)
きつねの存在が読んで見てあらためて納得しました。高学年以上向けで「究極の愛」をテーマにした1冊です。


はじめてのおつかい   [筒井頼子・文/林 明子・絵] 福音館書店

1970年代の家庭にはそう言えばあのようなポットがあったでしょうね。私は牛乳パックも1リットル入りがあったのには驚いています。みいちゃんの吊りスカートにも時代を感じさせます。筒井頼子・林明子コンビによるデビュー作。のちにこのタイトルと同じTV番組までできてしまったという程、<こどものとも>傑作集の代表作品といっても過言ではないと思います。

「おはなし広場」にも紹介してますが、みいちゃんという女の子のはじめてのおつかいを通して、それにかかわる人たちの様子や健気なみいちゃんの行って帰ってくるまでの道順を辿るようにページをめくり、子ども達も一緒になってハラハラ、ドキドキ感を共にしたのではないかと思います。

今尚、人気が衰えない理由に、隠し絵も取り入れ遊び心も忘れていないところにもあるのかもしれませんね。お母さんの心配しながらみいちゃんに頼まざるを得なかった様子や赤い顔して向かうみいちゃん、街並みの中にはみいちゃんを象徴するかのようなトラ縞模様の多いこと等。太ったおばさんの存在や黒眼鏡のおじさん、黒ねこの存在も見逃せません。帰宅すると待っていてくれたお母さんを見て、みいちゃんがどんな気持ちでいたかは子ども達の心にもしっかり届いていたようです。大型絵本もあります。(おはなし広場も併せてご覧下さいね) 



バスにのって   [荒井良二 作] 岩波書店

赤茶けた土の色、青く広がる空の色、乾いた空気の大陸的な感じが伝わってきます。中東の砂漠のようです。荒井さんのバス好きがこの絵本から伝わってきますね。

「トントンパットン トンパットン トントンパットン トンパットン まだまだ バスは きません」

このトントンパットン・・・という ラジオから聞こえる音の繰り返しの響きがそこはなとなくいい。読後も心に残ってリズムを奏でているような音楽を併せ持った絵本です。
そこは、砂漠の一本道。少年が一人大きな荷物とともにバス停のベンチに腰掛けています。バスに乗ってどこか遠くに行くところです。待っても待ってもバスは来ません。夜になっても、朝が来ても来ません。「あっ、やっと来た!」でも満員で乗れません。しかたがないので歩いて遠くへ行くことにしました。
どこか異国をのんびりと旅したいと感じながら、気を長くもって人生、焦らないで、無駄なことが実はとっても大切な事と教えられたような不思議な魅力の絵本です。この表現が面白く魅力的に感じている子ども達の笑顔も印象的でした。


はちうえはぼくにまかせて [ジーン・ジオン・文/マーガレット・ブロイ・グレアム・絵] ペンギン社

『どろんこハリー』と同じ作者のコンビによる絵本です。爽やかな黄色、青、緑そのコントラストが鮮やかに素敵な植物がいっぱいの絵本です。

夏休みを前にして、お父さんから何でも好きな事をやってもいいと言われたトミーは夏休みに近所の人から鉢植えを預かって世話をする事に決めました。長い夏休みの前は色々と考えるのですが・・・
いざ、始まってしまうと最初の計画はどこへやら。そればかりか休みも終わる頃に焦って、慌てて宿題に取り掛かるというのはよく聞く話です。でも、このトミーは自分の仕事として最後まで責任を持ってやり終えましたよ!やり遂げた時の喜びが本当に心地よく伝わってきます。
夏休み前のおはなし会にぜひ、届けたい1冊ですね。



はつてんじん   [川端 誠 作] 岩波書店

落語絵本シリーズの1冊です。豪快な父子のやりとりを ユーモラスに描いた作品です。その掛け合いが楽しく軽快なテンポなので、子どもたちも面白がっていました。

初天神とは菅原道真公を祭ってある天満宮に初めてお参りに行く日のことです。支度をしていた父親は 息子の金坊につかまって 一緒に 行くはめになりあれこれねだられてしまい、しぶしぶ凧をを買った父親でしたが、いざ凧を揚げてみますと・・・・。最後は「こんな父ちゃん連れてくるんじゃなかった」の金坊の一言で落ちとなりますから大笑いです。
とにかく、落語独特の語り口にどんどん引き込まれていきます。落語ブームでなくとも子ども独自の笑いのツボを持っているようですね。やはり、年頭のおはなし会でおすすめです。



はっぱじゃないよぼくがいる   [姉崎一馬・文/写真] アリス館

 『はるにれ』↓でお馴染みの写真作家・姉崎さん待望の最新写真絵本です。(2006.9 初版) 
佐々木マキさんの『まちにはいろんなかおがいて』も歩いていると、至る所の何気ない見慣れた建物などがよく見ると面白い顔に見えてくる。そんな写真絵本をも思わせてくれる。同様に、森林の中で自然の葉っぱがまるで何か言いた気な顔に見えて、一人称で表現しているところに姉崎さんの自然をいつも観察して優しい目で見られていることがこの一冊から伺えます。
ゆっくりと、じっくりと子ども達に見せてあげました。思わず身を乗り出して顔の表情を捉えていた子ども達もこの葉っぱさんたちと同じ顔をしてましたね♪
秋から冬にかけてのおはなし会導入の絵本としてお奨めです。


八方にらみねこ   [武田英子・文/清水耕蔵・絵] 講談社

昔、雪の降る小正月にあるおじいさんの家に一匹の三毛の子猫「みけ」が拾われました。
春がきて、おじいさんおとおばあさんは美しい絹糸を作るために蚕「おかいこ様」を飼い始めました。でも、それを狙って夜更けに現れたネズミたちに、おかいこ様は食い荒らされてしまいます。そこで、子猫のみけもお世話になったおじいさんおばあさんのためにねずみ退治をしようとしますがさんざんな目にあってあえなく失敗。
強くなるために「やまねこさま」のもとで「にらみの術」を会得するために、厳しい「にらみの 修行」に入りました。

修行の中で、「みけ」の顔つきがだんだんと引き締まっていく様子が、黒と赤を基調にして強烈に描きだされています。一年が経ち、山は春。花いっぱいの山道を、みけはかけ降りたその夜、やってきたねずみどもはびっくりぎょうてん!
迫力迫る画面におもわず子ども達もくぎづけです。1、2月のおはなし会におすすめです。



花さき山   [斎藤隆介・文/滝平二郎・絵] 岩崎書店

自分自身を見つめ直させててくれるような絵本でしょうか。国語の教科書にも載っただけあります。
優しい事を一つすると花さき山にその花がひとつ咲くというのです。自分の欲しかったのを我慢したり、辛い事を辛抱して自分より、ひとのことを思って涙した時にその優しさと健気さが花になって咲くというのです。

このお話から子ども達はどう感じるのでしょう。いっぱい、花を咲かせようという気持ちになるのかもしれませんね。一つ一つの花が本当に美しく描かれています。読み終わった後、子供の心にそっと一輪の花が咲きかけたかも?
特別な日、心に残るようなおはなし会に向いているのかも知れません。



はながさいたら   [菅原 久夫・文/石部 虎二・絵] 福音館書店

 表紙は春爛漫、桜の木が満開に描かれています。その桜の頃、読むに相応しいといえます。
桜の美しい時期に、桜の花はどうして咲くのでしょうか?又、きれいな花はなぜ咲くのでしょうか?そんな疑問に、優しく答えてくれる絵本です。

桜が散ってしまうとさくらんぼができます。そのさくらんぼの実の中には、種が・・・。桜の花に限らず、かぼちゃの黄色い花、まつの木、とうもろこしの花…花が咲いて雌しべと、雄しべから、実がなり、花が咲いたあとを見ると、どの花もその後に、実をつけていきます。そして、種が落ちるまでを詳細に、リアルに繊細な描写で植物の成長がわかります。

花は、○○のために咲いているのです。これは素晴らしい!新学期一番のおはなし会に最適です。新しいパワーが漲る良質のかがく絵本です。


はなをくんくん   [ルース・クラウス・文/マーク・サイモント・絵] 福音館書店

厳しい冬の冬眠から動物達が春の息吹を感じて雪の降る山中を一斉に一点をめざして駆けて行きます。「はなをくんくん」しながら・・・・。
そして一斉にぴたりと止まった所は・・・黄色の表紙に白黒の動物達が描かれています。
それは注目すべき大切なページとなる場面です。一輪の黄色い花を見つけて小躍りする動物達の何ともいえない至福の顔、顔、顔。そのページはまるで黄色い額縁に囲まれていて、動物達は白黒だからこそ強くたくましく生きる喜びの力が沸いているように見えます。
そして、真ん中に黄色い花を見つめる動物達の顔には明るい未来が感じられます。

これは真に生きるって素晴らしいとメッセージをおくっている良い絵本の典型のような気がします。こういう絵本は本当に淡々と読んであげたいです。そして、子ども達がいっぱいイメージを大きく膨らましてほしいと願わずにはいられません。もちろん、冬から春にかけておすすめです。



はははのはなし   [加古里子作 作] 福音館書店

表紙、そして1ページめくって大きな口を開けて笑っている顔、顔、笑い顔から、これはとっても笑える話なのかしら?と思いきや、いえ、泣いている子がいます。
「歯」が痛くて泣いているのですね。そう、この絵本は「歯」のかがく本です。歯の役目はごちそうを食べる事はわかります。「歯」がないと食べられなくなるだけでなく他にも深刻な問題があるのです。そのためにも「虫歯」 になると大変。では、何故、虫歯になるのでしょうか。
とてもわかりやすい言葉と絵で説明されています。予防のためには歯を磨けばいいにきまっていますが磨いていても「虫歯」になるのは何故?甘いものを食べないとかいつも磨いていればいいという事ではない・・・・!?

そうだったの!大人も教えられる1冊です。子供の歯、大人の歯は何本か知っていますか?絵本を見ながら子ども達と一緒になって数えました。「ははははははははは・・・・」それではみなさん さようなら はっはっはっ
6月4日の虫歯予防ディーの頃におすすめです。



ぱぴぷぺぽ   [元永定正 作] 光村教育図書

もこ もこもこ』でお馴染みの元永さんのこの絵本は壁にいっぱい絵の具を垂らして描かれていたのを以前、TVで見ましたがその時の絵が絵本になりました。
ことばの響きと絵がうまく溶け合っていてとても楽しくて美しいです。―いろいろながれてぱぴぷぺぽ―子ども達も真顔になって、かぶりつくように喜んで見つめていました。
1年生の朝読で届けた時、居合わせた先生が「ぱぴぷぺぽだけが上唇と下唇がくっつきあった仲良しさんの言葉よね。」と言われましたが本当にそうですね♪元永さんはそれをわかっての事かもしれませんね。


しっかりしたおはなしの合間や子ども達を集中させたいときにおすすめです。幼い子から大きい子まで楽しめる1冊です。


はらぺこあおむし   [エリック・カール 作] 偕成社

この絵本は鮮やかなペーパー切り絵を何枚も張り合わせて創られていますが、エリック・カールさんはそのコラージュの素材も自分で作られます。色つきの薄いティッシュペーパーに、線や点の好きな模様を描き込んで自分だけの紙をいっぱいストックして持っています。(その出来上がっていく過程をTVや展覧会で見る事ができましたが素晴らしく驚嘆しました)そんな風にしてできた色のコントラストがとても鮮やかで美しく、しかも、しかけ絵本になっています。ちょうど子ども達が指を入れる位の穴があいて楽しい1冊です。
私は、しかけ絵本は子供だましみたいなところが感じられてあまり好きではないのですが、エリックさんは別格です。
単に子供を楽しませるだけでなく、子供の目線で子供のもつ想像力や冒険心など豊かな心に結びつく工夫が無駄なく取り入れてあるようで好きです。
一週間や数なども遊び感覚でさり気なく取り入れられているところも心憎い演出でしょう。
青虫が最後に「あ、ちょうちょ」と羽を広げたページに子ども達はどよめきます。
大型絵本もありますので春のおはなし会には最適です。


同じく、『パパ、お月さまとって!』 も、これまでお月さまが画面いっぱい描かれた大きな部分のたたみ方が、難しく集団でのおはなし会には向かないと思い、避けてきました。それが改訂版では、上下簡単にたためる様にされていることから、使ってみました。さすがに幼い子は興味津々で、終わってから手にとってみたいと人気集中しました。
家庭でもじっくり楽しみたい絵本ですね。


はらぺこカズラー   [ハアコン・ビョルクリット 作] ほるぷ出版

「ついでにペロリ」「おなかのかわ」「どろにんぎょう」と同じようなストーリーではらぺこのガズラーという1ぴきのぶちねこが次々に飲み込んでいくというお話。
前の事がどんどん繋がっていく言葉遊び的なものは子どもに人気があります。お話だけでも充分楽しめますが、ダイナミックな絵が一層、このお話を盛り上げています。
気心の知れているクラスのおはなし会におすすめです。



はるにれ   [姉崎一馬・文/写真] 福音館書店

北海道の平原には巨木が多く、枝をいっぱいに広げる姿は構えが大きく堂々としています。
アイヌの神話に天上の神々が見とれるほど美しいハルニレという女神がいました。雷神が足をすべらせて姫の上に落ちてしまったために姫は身ごもりアイヌラックルという男の子が生まれます。アイヌ語でハルニレをチキサニ(我ら・こする・木)とも言われアイヌでは、この木をこすって火を得たそうです。それで、ハルニレは神様の位では最高の「火の神」として敬われたそうです。北のニレをハルニレ、南のものをアキニレといい、春に花が咲くのがハルニレなのだそうです。(事典より)

大平原に大きく枝をはり雄大に聳え立つ一本のハルニレの1年を描いた姉崎さんの写真絵本。
この神話を知ってからハルニレの雄大さ美しさが心に一層迫ってきました。文字はなくてもめくる毎にハルニレの息吹や「生」へのメッセージが伝わってくるようです。真っ白な雪の中に凛とした白い姿のハルニレ。青々とした草原、真っ青な空に枝を天上に広げた様。そして、朝日や夕日がその姿を応援するかのように映しだされている姿も何とも言えません。
「あ、ほら、あそこに太陽が!」と子ども達も目を輝かせながら見ていました。
しっかりとしたお話の合間の1冊としておすすめです。



はるのはやしでみつけたよ   [澤口たまみ・文/細川剛・写真] 福音館書店

写真科学絵本です。
冬も終わろうとする頃、作者が絵を描くために近くの林に入ると、そこにはいろんなものが落ちていて、こんな本ができたようです。春の林で見つけたものは?さあ、何が見つかったのでしょうね。
長い冬から春の息吹を感じるメッセージとして冬から春にかけて一度は届けたいそんな1冊です。



はるよこい   [わたりむつこ・文/ましませつこ・絵] 福音館書店

春も近いある日のことです。ももこは、まだ雪が残るおばあちゃんの家に遊びに来ていました。おばあちゃんの家には「くら」があります。気になるももこのためにおばあちゃんは鍵を開けて見せてくれました。昔のものがいっぱいある中から「おひなさま」を発見します。これはおばあちゃんがお嫁入りの時にもってきたおひなさまと聞いて、ももこは驚きますが・・・・。
その夜、ももこは不思議な音で目を覚ましました。庭一面の梅林の方でお囃子のような音が聞こえてきます。ももこは音のする方へ行ってみました。そこで、ももこの見たものは何だったでしょう!

雅なおひなさまの七段飾りの絵がとても素敵なこの絵本は1年生の女の子に人気です。読後は早速、この絵本を借りに来ていました。
もちろん、春3月、桃の節句の頃のおはなし会に最適です。



パンのかけらとちいさなあくま   [内田莉莎子・文/堀内誠一] 福音館書店

リトアニアの民話です。あるところに、貧乏なきこりがいました。森へ行くときも、パンのかけらしかお弁当に持っていけないほど貧乏でした。
ある日のこと、その貧しいきこりからパンのかけらを盗んだ小さな悪魔がすみかに帰りますと、大きな悪魔たちから、怒られてしまいます。(あれ?良くやったと褒めるのかなと思いますよね。)
パンを返して、なにかきこりの役に立つことをしてこい、それまで帰ってくるな、と命じます。でも、きこりは、パンを返してくれればそれでいいと言いますが、それでは小さな悪魔は帰れません。そこできこりは、どろどろ沼を麦畑に変えることを頼みますが・・・

悪魔というからには、普通は善良であってはおかしいですよね。でもここでは何故か地主である人間が悪となっています。ここに、この物語の面白さがあるのでしょうか。でも、いいお話です。絵も豊かな色彩で描かれています。堀内さんは本当にストーリーによって筆遣い、タッチが変わられる凄いお方です。
このお話は、ストーリーテリングでも届けてみました。子ども達は小さな悪魔の立場になって共感していたことでしょう。



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ひいおじいさんのたんじょうび   [渡辺茂男・文/太田大八・絵] 福音館書店

田舎に住むひいおじいちゃんの米寿のお祝いに、都会で暮らす子ども達も交えて親戚一同が揃いました。
ひいおじいさんが若かった頃のお話(家系)が庭先の梅、桃の木の成長振りとともに回想されていきます。
そして画面いっぱいに広がる田舎の風景、昔の様子は都会の真ん中で生活しているひいおじいちゃんの子どもの子どもの次郎が2人の子どものお父さんとして話しています。子ども達はひいおじいちゃんの家に向かうまでの間、到着してからどんなことを思い考えたのでしょう。一同が賑やかに揃って記念写真でめでたし、めでたし。

ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんも、おじいちゃん、おばあちゃんも健康で誰一人欠けることなく、みんなで一緒にお祝いできることが本当にめでたし、めでたしと結んでいるのですね。

春のお話として捉えるか、ひいおじいちゃんを思って敬老のお話として捉えるかですが、やはり春よりも9月の敬老の日直前のおはなし会で届けてみました。



ピーターのいす   [エズラ・ジャック・キーツ 作] 偕成社

色鮮やかな背景の中で、少年ピーターが生き生きと描かれているキーツのピーターシリーズはどれもおはなし会でおすすめです。
一人っ子で、これまで可愛がってもらっていたピーターに妹ができました。ピーターのベッドやいすたちがペンキで塗り替えられてしまいます。ピーターはたったひとつ、まだ塗り替えられていない「ピーターのいす」を持って自分の部屋に駆け出しました。新しい家族ができたことにより、親への愛情が感じられなくなる寂しさは長子という運命により、体験する事かもしれませんね。反抗してみたくもなる時期があってもいいでしょう。
でもね、ピーターはすっかりお兄ちゃんになることができました。子どもの心の動きを実によく捉えている素敵な絵本です。

幼い子向けの絵本ではありますがあえて、大きい子にも届けてみたくなります。懐古的にじっと見ていた子ども達の表情が印象的でした。



ピーターのくちぶえ   [エズラ・ジャック・キーツ 作] 偕成社

キーツの絵(貼り絵のコラージュ)は、背景の細部にまで気持ちが込められている絵だなと感じますが、個人的にはこの絵本が特に好きです。
ピーターは口笛が吹けないので、吹けたらいいなと思っていました。犬のウィリーに聞かせたいと思うのですがならないのです。ピーターの涙ぐましい口笛の練習が始まります。そして、ついにピーターは吹けるようになりました!ウィリーもすっとんできました。その後は自分の口笛が得意なピーターがなんともほほえましいですね。

このおはなしにふれると子ども達は口をとんがらせて吹くまねをします。「できるかな?」ちょっと不安げで・・
色鮮やかな背景の中でピーターが生き生きと描かれているキーツのピーターシリーズはどれもおはなし会でおすすめです。
ピーターのてがみ』はエイミーに誕生会の招待状を出すまでと、出してからの心の動きがよく描かれています。ちょっと、はにかんで異性に好意を抱く子供の心の動きや様子が初々しくて素直に表現できる事の素晴らしさがやさしく伝わってくるような1冊です。雨の季節、文の日の頃のおはなし会におすすめです。



ピーナッツ・なんきんまめ・らっかせい   [こうやすすむ・文/中島睦子] 福音館書店

「ピ−ナッツをしっている?・・・じゃあ、なんきんまめは?・・・それなら、らっかせいをみたことある?・・・」
さあ、子ども達はこれらの豆の違いを知っているでしょうか?
食べた事があったり、知っていても、土の中の様子は大人でも中々わからないでしょうか。そして、どんな葉ができるかも。ましてや、どんな花が咲くか知っている人は凄いですね。
そして、その花が垂れ下がっていくと・・・・へんな豆!ができるのですって!「らっかせい」を漢字で「落花生」と書く意味も理解できます。おいしそうな食べ方も含めて思わず「へぇ〜!」と歓声の声が子ども達から上がりました。でも、どんなにビールに美味しそうでもお父さんやお母さんだけね。子ども達はジュースで我慢しましょう。
秋の学年おはなし会で届けた1冊です。



ピカソの絵本   [結城昌子 作] 小学館

偉大な芸術家ピカソの絵に親しみながら、その画風に触れることのできる絵本です。斬新で破壊された画像の中に子ども達は見た事があるようで、案外知らない絵に釘付けです。
「あっちむいてホイッ!」と副題があるように色んな方向をむいている顔、顔、顔。右を向いているのか、左か、前かさえもわからない顔。その顔はピカソの四人の愛娘の姿であったり、恋人の姿だったり、失恋に苦しむ人の哀れな顔もあり、絵を見るだけでピカソの一面を知ったような思いになります。
ピカソがなぜそのような不思議な面白い顔を描いたのかも理解できるでしょう。この絵に添えられた言葉遊びのような感覚の文章もリズミカルです。芸術の秋におすすめの1冊です。
他にも、ゴッホ、ルソー、シャガール等、数々のアートブックがあります。


光の旅 かげの旅   [アン・ジョナス 作] 評論社

光と影をモノクロで表現しながら、夜明けから夜更けまでの一日の旅模様を映しだしている1冊です。本の終わりまでくると太陽が沈む丁度、一日の半分の場面で「本をさかさまにしてごらん!」あら、不思議!今まで太陽の光だった部分が夜の闇に光る照明となって夜の風景が後半のお話として進行していきますから、子ども達もじっとしていられなくなり「この絵本はどうなっているのか?」と不思議でたまらない様子。中には自分の体を逆さにして下から覗いて見ている子もいます。
例えば、前半で、高い所から見下ろす場面が後半の同ページでは地上から見上げる場面と全く正反対の絵になっていたり、映画館だったのがレストランになり、昼間の花畑は夜空に打ち上げられる花火になったり、こんなに光と影が美しく活かされ、しかけられた絵本も珍しく、1冊で2冊分の楽しみをもらった気分です。
おはなし会の導入として届けました。気持ちがぐっと集中できる絵本です。花火が出てくるので夏のおはなし会に最適でしょう。


ぴかくん めをまわす   [松居直・文/長新太] 福音館書店

ぴかくんとは、「信号機」のことです。ぴかくんの忙しい一日は夜明け前から始まります。町が目をさまし、おまわりさんがぴかくんを起こしに来ます。朝の出勤時間になると、さあ、ぴかくんは重要な働きをするのですね。

小学生が登校時「青」で横断歩道を渡ろうとしていますがでも、よく確認して手を上げて渡りましょう。そして、町はだんだん賑やかになっていきます。ぴかくんの青、黄、赤をきちんと守っていきましょう。
でも、あんまりいそがしくて、ぴかくんが目をまわして信号が一度についたり、消えたりしはじめました。あ、あぶない!道路の交差点で大混乱です。・・・・
そして、夜がきて、ぴかくん、おつかれさま、と思わず声かけしたくなりますね。
新学期の春、新1年生で届けました。ぴかくんのようにまんまるい目でじっくりと見つめてくれていた子ども達が印象的でした。(読み聞かせのポイント・実際例も参照して下さいね。



ひがんばな   [甲斐信枝 作] 福音館書店

彼岸花というだけあって、残暑が緩むお彼岸の頃、田圃のあぜ道や河原などに燃えるような真っ赤な花が咲きます。曼珠沙華ともいいますね。
ふつうの花は、切り花にしてしまうと枯れやすいのにひがんばなはまるで正反対?です。なぜでしょう。「ひがんばなは はなびらや しべや くきに のこった ようぶんを きゅうこんに すいもどしているのです。」
吸い戻す?咲き終わった後、花びらも散らないで雄しべ雌しべも残ったまま茎もしばらくは立ったままだそうです。そこにある養分を球根は吸収してそのあと、葉が伸びてきます。
写真・絵がとっても素敵で豊富なため大人もいっしょになって「へー、そうなんだ」と頷いてしまいます。

9月のお彼岸の頃のおはなし会におすすめです。真っ赤な花の中に書かれた文字を読むのが少々読み手は読みにくいかもしれませんが頑張って読んでみましょう。 



ひぐまのあき   [手島圭三郎 作] 福音館書店

北海道を舞台にした野生の動物達の色版画絵本を数多く描かれている手島さんですが、その中でもこの絵本は比較的、幼い子も喜んでくれます。
山ぶどうの実を食べるひぐまの親子の表紙からして、鮮やかな色彩の中にも、ほのぼとした温かさが伝わってきます。そして、ページをめくる毎に北海道の紅葉が美しくていつまでも見とれてしまうほどです。
実際、厳しい北海道の自然を謳った作品が多い中で、このお話には親子の平和な幸福感が漂ってきます。それは、手島さん自身が幼少の頃、お母さんと静かな家の中で絵を描いたり工作したり、優しいお母さんから本を読んでもらったりして楽しい時間を多く持たれていたことにあるようです。

こぐまも母ぐまの大きな愛情に包まれて、のびやかに自然の中で行動しています。これは私達人間の親子にも教えられるようで、安らかな穏やかな思いにもさせてくれます。
本当に、大人も子どもも共に楽しんだ1冊です。秋のおはなし会に最適です。



ピッツァぼうや   [ウィリアム・スタイグ 作] セーラー出版

雨の日が続き、ご機嫌ななめのピート。パパとママはピッツアにしてあげますと言って、それでは、「ピッツアごっこ」のはじまり、はじまり。
息子ピート君をピザの生地に見立ててこねたり、ひっぱたり、くすぐったりして坊やを笑わせるのです。お父さんはピートをテーブルに乗せ、こねたり引っ張ったり伸ばしたり。油に見立てた水や小麦粉に見立てたベビーパウダーをふりかけ、ボードゲームの駒のトマト、紙切れのチーズをトッピング……。生地にかかせない空中とばしなんて、大喜び!

父親ってこういう荒っぽい(?)遊びをしてくれるのがいいのですよね。我が家でも覚えがあります。放り上げられると「もっと、もっと」と言ってました。 

1年生の朝読、6月の公民館で届けましたが、みんな大喜び。家庭でも家族でぜひ、楽しんでくださいね♪


ひつじかいとうさぎ   [内田莉莎子・再話/スズキコージ・絵] 福音館書店

ラトビアの民話です。かこいから逃げ出したうさぎを追いかけて森へ探しに出かけた羊飼いの男の子が初めに出会ったのは一匹のおおかみでした。
男の子はおおかみにうさぎをつかまえてくれるよう頼みますが「自分でつかまえな」と行ってしまいました。次にはこんぼうに出会います。うさぎが逃げた事、おおかみがつかまえてくれなかった事を話し、こんぼうにおおかみをぶんなぐってくれと頼みます。でも、「自分でなぐったら・・」と行ってしまいました。こんな風にして火、川、牛と出会い、これまでのいきさつを説明して頼みますが断わられます。
そして、くまに出会い、頼みますとくまは「うおーっ」とうなりながら・・・・・・

物語の展開が言葉の積み重ねで、どんどん繋がっていきながら面白さがふくらんでいくお話です。そして又くまから、うさぎに戻っていきますから「あ〜楽しかった」と子ども達も満足する1冊です。 

それにしても、スズキコージさんは昔話の絵になるととっても迫力感があってナンセンスな創作とは一味異なった魅力ある絵になりますから不思議?いえ、さすがですね!


ひつじぐものむこうに   [あまんきみこ・文/長谷川知子・絵] 小峰書店

あまんさんの作品には優しさと切なさが溢れています。そして、代表作『車のうえは空のうえ』のように、空、雲が背景になった作品が目立ちます。これは「雲」をテーマにしたブックトークで届けた1冊です。

仲良しのたけしが、引っ越していったことを悲しんでいるときこひつじがきて、わたしを背中に乗せて、雲の上へつれていきます。すると、雲の上にたけしがいました。彼も、友だちとの別れを悲しんでいたので、雲の上に連れてきてもらったのです。
いろんな形の雲を見て、いろんな動物に見えたこと、誰もが経験することです。本当に雲の上にこひつじがいたらなあと、思っているかもしれませんね。長谷川知子さんの絵もお話を一層、ひきたてています。
窓わくのひつじぐも、女の子の泣く後ろ姿、真っ青の大空をひつじに乗る女の子と、町が小さく描かれた絵はスピード感があって楽しめます。おはなし会でも届けたい1冊です。



ひとくち童話   [東 君平 作] フレーベル館

詩でもなく、言葉あそびのようでもない、短い童話で、本当にひと口でパクリと食べてしまえるほどのお話集です。(@〜Eまであります)でも、このほんのひと口がじわぁっと広がって、心の中がぽかぽかとあったかくなります。「わははは」と大声で笑うようなお話ではありませんが「くすっ」と小さく笑みがこぼれるような温かい気持ちにさせくれる可愛らしい、愛らしい童話がいっぱい詰まっています。そして、このお話に全て、切り絵が施されているのがこれまた素敵です。動物、昆虫、などの生き物からこども、お父さんやお母さんなどの身近な人や物などからさり気ない日常のひとこまを、やさしい目でそれぞれの立場になって描かれています。たとえば、

あり ありが たかいきに のぼりました。えださきから したをみると 
 なかまのありが ありのように ちいさくみえました。」

『のはらうた』同様にとても子ども達から好評で、図書室での貸し出しも多いようですね。


ひとつ、アフリカにのぼるたいよう   [ニコラース・マリッツ 作] 文化出版局

これは、アフリカのかぞえうた絵本です。
「アフリカ」、広大な大陸に大自然の中で喰うか、喰われるかの自然の織り成す生死を賭けた絶え間ない循環を優しく謳いあげています。「ひとつ、アフリカにのぼるたいよう」にはじまり、ふたつ、みっつ、・・・・・
昼間活動する動物や昆虫が姿をみせ、空にうかぶのは、太陽から月へ交代し、とおで、あたりは夜に様変わりします。アフリカの夜の動物、昆虫が現れます。そして、又次の太陽がアフリカの大地にのぼっていくのです。
まさに、自然界の循環を歌とともに描いていて、リズムが心地よく響きます。
おはなし会の合間の1冊としておすすめです。 



ひとつひまわり   [小長谷清実・文/福知伸夫・絵] 福音館書店

色版画の数え唄絵本です。明るい色で彩られた夏の風物詩やみみずく、ヨーヨー、なまず等ユニークなものの絵にリズミカルな数え歌の語呂がとても調子いい 幼児絵本の小型版ですが、絵は大胆でこの中に溶け込んでいきそう。
おしまいのおまけ数え唄も楽しい演出を感じます。昔から伝承された数え唄もいいですが、幼い子向けの親しみのあるこんな数え歌はとても親切な感じがして、いいですね。
しっかりとしたお話の後の1冊やおまけとして、夏のおはなし会に最適です。


ひとのいいネコ   [南部和也・文/田島征三・絵] 福音館書店

表紙からいきなり笑いが飛び交います。こんなネコがいたら楽しいでしょうか?
私は少々、不気味にも感じますが、田島さんらしい強烈な絵がお話を超えて充分楽しませてくれます。でも、やはりお話も相当なものです。まさに絵と文が溶け合った絵本。
大量ノミの出現におはなしの最中に体を掻き毟っていた子もいるようです。自然を考え絵を描く田島さんと獣医さんとのコンビによるおはなしに頷くものがあります。確かにノミの大量繁殖は環境問題の一つとしてあげられますね。



 ひゃくにんのおとうさん    [譚小勇・天野祐吉・文/譚小勇・絵] 福音館書店

 中国の楽しい昔話です。働き者の夫婦が畑の土の中から見つけた大きなかめはとても不思議なかめでした。かさ一つが中に入ると沢山のかさが出てきたり、鉄のなべを入れればあっという間に百枚の鉄なべが出てきたりしました。
かめの中に何か一つ入ると百個も飛び出してくると言う事は・・・ひゃくにんのおとうさんはどんな風にして現われたのかしらと次のおはなしの展開にぐいぐいとひきこまれていきますね。
中国の作家であり、画家でもある譚小勇さんは、中国美術家協会会員で中国優秀美術図書賞特別金賞等、多数受賞されています。福音館こどものとも復刻版として、2005年9月にハードカバーとして限定販売された絵本です。(こどものとも世界昔ばなしの旅 全30冊の内28冊)
「父の日の頃のおはなし会」で、届けましたが、思わず笑ってしまいました。同じ顔のお父さんが百人も現われたらどうしましょう?
『ヤンメイズとりゅう』も中国の同作者の作品で、5年生で届けた一冊です。


100万回生きたねこ   [佐野洋子 作] 講談社

図書館での貸し出し絵本の冊数ナンバー1でロングセラーになっている人気の絵本。どちらかというと大人向きの絵本でしょうか。

いきなり、「100万年も死なないねこがいました。」から始まりますのでドキッとしましたが死んでも又、100万年生きたというから更にびっくりです。そして、100万人の人がそのねこをかわいがり、100万人の人がそのねこが死んだ時、泣いたというのにそのねこは1回も泣かなかったというから凄いふてぶてしい奴だと冒頭から思ってしまいす。
多くの飼い主に愛され死んで泣かれてきたねこですが、のらねこの時もありました。自分が大好きで廻りのどんなめすねこもお嫁さんになりたがりました。でも、たった1ぴきの白いねこだけは違っていました。ねこは白いねこといっしょにいつまでも生きたいと思いましたが・・・。
白いねこは1回だけしか生きることのできないねこだったのですから別れがきました。
ねこは、初めて泣いたのです。

「命」の尊さを感じる絵本なので8月のおはなし会で届けましたが、幼い子にはテーマが重い気もします。子供の心の成長をみて届けたいそんな1冊だと思います。



100まんびきのねこ   [ワンダ・ガアク 作] 福音館書店

長年読み継がれた古典絵本の傑作。白黒の絵本だからこそ、想像力をいっぱい膨らませることができるお話だと思います。おじいさんとねこたちの行列なども、横に細長い両開きいっぱいに広がった型の絵本だからこそ果てしない長さも実現できた事ですね。

おじいさんはおばあさんとの暮らしに幸せでしたが、ねこが一匹いたらどんなにかいいだろうと思い、丘を超え、山を越えてねこを探しに行きます。そして、数え切れないほどのねこを見つけて、みんな拾い上げて連れて帰ることにしました。でも、ねこたちは自分が一番きれいだとけんかを始めたのです。そして・・・・とうとう・・・・

優れた絵本ではありますが遠目が効かない、文と絵が合わないなどの問題があって、集団のおはなし会では使い難いかもしれませんが・・・。



ひやしんす   [平山和子 作] 福音館書店

ひやしんすの球根は秋に植えてやります。真っ暗な土の中での球根の育ってゆく様子を知ることができます。そして、冬に土の割れ目から芽を出します。寒い冬を乗り越えて、春になるときれいな花が咲くのです。

その花の中を見る事もできます。実の中の種は蒔いて育てると、6年以上もかかるのですって!
夏が近づいて葉が枯れ始めたら、球根を日陰で乾かします。そして、秋になったらまた、植えてくださいね。
こうして、無駄のない、ひやしんすのサイクルを平山さんの写生されたような素晴らしい絵で、ひやしんすの一生を知る事ができる科学絵本です。春の高学年おはなし会で届けました。



びゅんびゅんごまがまわったら   [宮川ひろ・文/林明子・絵] 童心社

新学期になるとどんな先生になるかしら?とドキドキします。ましてや、校長先生が変わろうものなら興味津々です。優しいかな?怖くないかな?等々。
このお話の校長先生も転任されたばかりでなにやら一癖も二癖もありそうです。
遊び場のかぎを早速閉めてしまわれた校長先生に開けてくれるように子ども達が頼みに行きますと、自分であまのじゃくだと言ってびゅんびゅんごまを廻しはじめたのです。そして、子ども達に廻し方の教示をします。これができるまではお願いを聞いてやらないと。

さあ、ここからこまの猛特訓になり、ユニークな校長先生と子ども達の間に交流が生まれていくのですね。
こんな校長先生だったら楽しい?そして、自然の中でたくましくのびのびと遊ぶことの楽しさも伝わってきて都会っ子には羨ましい学校生活ではないでしょうか。子どもはこんな風に自然と元気に遊べれる事が幸せですね。

校長先生の変わられた新学期の学校おはなし会で届けました。新校長先生も早速、読んでくださいました。



ひよこのかずはかぞえるな   [イングリ・ドーレア 作] 福音館書店

「ひよこのかずはかぞえるな」とは「捕らぬ狸の皮算用」と同じような意味をもつことわざを絵本にしたものです。同じくアンデルセン原作 ジャン・ウォール文で『おおきなおとしもの』という題の絵本もあります。(あ行で紹介)
でも「糠喜び」で終わったことを悲しむどころか楽天的にまだ自分には幸運があると思い込むことができる人は何て幸せなのでしょう!

たまごを一つ産んだニワトリの夫婦が朝の時を告げるところから始まります。このニワトリを飼っているおばさんがその声で目をさまし、たまごを見て大喜び、たまご棚には合わせて36ヶも・・さてこれを売って・・とおばさんの空想はどんどんふくらんでいきます。
画面いっぱいにふくよかで愛想のあるおばさんが、いろんな表情としぐさを見せてくれます。
ヨーロッパ生まれのドーレア夫妻特有の鮮やかでち密な色彩は美しく温かみがあります。(『トロルのばけものどり』でも紹介してます)
おばさんの夢は・・ 倍々ゲームで、増えていきます。生みたてほやほやの卵を市場に売りに行きながら、売ったお金で何を買おうかと夢が膨らみます。めんどりを増やし、羊とがちょう、豚や牛も飼い、召使いを雇い、ハムにベーコン、ミルクにクリーム。果ては、農場主の大きなお屋敷の奥方さまにおさまります。“これから起こり得る幸福”を思い描いて大きく膨らんだおばさんの夢の結末は・・・・?

どこか遊び心もあります。笑っているひまわり、黒白の猫、仰向けに寝転がる豚、卵の黄身に注目して下さいね。これはとびきり楽しめるのでおはなし会の中心となる1冊としておすすめです。



ビリーは12さい   [相馬公平・文/梶山俊夫・絵] 佼成出版社

一見、外国の創作絵本のような題名ですが、ビリーとは犬の名前で人間でいえば70歳位の老犬です。
昔の若かりし頃のビリーと比べて最近のビリーは変わったようです。「そりゃ、ビリーは12さいだもんね、としだもの」と決まり文句が出ます。でも、変わったのはビリーだけでしょうか。ビリーにも言い分があるようです。ビリーの飼い主家族との過ごしてきた時間と共にビリーは幸せの時を重ねています。ビリーからみた家族への思いを綴った絵本ですが動物と過ごせる家庭のありふれた日常の姿から、癒されるようなほのぼのとした気持ちになる1冊です。
愛犬を思い出している子もいたでしょう。でも、住宅事情等で動物を飼えない家庭にはちょっと羨ましく感じた風景かもしれませんね。


 フ
ブータン   [大田大八 作]  こぐま社

ベンさんが野菜大会に出品したかぼちゃ。これが野菜大賞になり賞品としてもらったのはかわいいこぶたです。ブータンと名付けられかわいがれて育てらるうちに、馬よりも牛よりもずんすん大きくなって、とうとうゾウのように大きくなって話題になり、TV局までとんできてしまいました。
ある日、その評判を聞いた遠い町の市長さんが博覧会の見せ物用に貸して欲しいとやってきます。そして、ブータンが出場した博覧会も大成功。ところが、そのお祝いのパーティでとんでもないことになります!

人間は豚を家畜として食べるだけの動物と決めていることへの風刺をちくりと感じさせられますがこぶたの成長と共に、生命力、愛情に満ち溢れたお話と温かみのある美しい絵に魅了させられます。子ども達も目を輝かせ、耳を傾けてくれていました。



ふきのとう  [甲斐信枝 作]  福音館書店

 リズミカルな呼びかけのようにページが始まります。寒い冬から春を呼ぶ声が聞こえてくるような1冊です。雪の中から顔を出したふきのとう。黄色と白色のふきのとうがあること。黄色の花だけが枯れていくのでは何故でしょう?おすふきとめすふきがあるということ。そして、それぞれの仕事があるのですね。ふきの葉からまた、ふきのとうが育つのですが・・・それはめすふきか?おすふきか?3月よりも、2月のおはなし会に最適でしょう。


ふきまんぶく   [田島征三 作]  偕成社

東京都西多摩郡日の出村では、ふきのとうのことを「ふきまんぶく」とよんでいる。「まんぶく」というのは、まんじゅうのことである。ふきのとうは、ふっくらとまるくて、まんじゅうみたいだからである。―(前文より)
この絵本を読むにあたって蕗のとうを実際に子ども達に見せてあげました。そして、りっぱな蕗になって、今でも学校の花壇で大きな葉を広げています。

土から生まれたようなおかっぱ頭のふきちゃん。どうも田島さんの娘さんがモデルになっているようです。
ふきちゃんは夏の寝苦しい夜、キラキラ光っているものを見て、山へ出かけます。 星のように光っていたのは、蕗の葉の上の夜露と知って、ふきちゃんは、がっかりします。そんなふきちゃんに蕗の葉はそっと話かけます。そして、蕗と遊んでいるうちに、土の中へ入って眠ってしまいます。朝になって、ふきちゃんはお父さんにおんぶされ帰ります。ほのぼのとした情景です。 

やがて冬が来て、枯れ野は広く、その中にふきちゃんの赤い服が目に飛び込んできます。みな春に備えじっと耐える土の広がりと、どこまでも続く凛とした静けさが感じられます。
昨年の夏、山の上での不思議な体験を思い出します。ふきちゃんは、いつか登った山へまた出かけて行きそこで出会ったたくさんのふきちゃんの仲間、「 ふきまんぶく 」を見ます。数えると十八人。おかっぱ頭は同じなのに、でも皆違った顔です。田島さんの描くふきちゃんの顔がなんとも面白いと思うのですが、不自然で変だという意見もあります。
春の息吹を感じさせられ、驚きと喜びが力強く伝わってくるような絵本だと思います。
夏よりも、冬から春を感じさせる頃のおはなし会におすすめです。



ふくろうのそめものや   [山口マオ・著] すずき出版

日本の民話です。昔、からすの体は真っ白でした。それが真っ黒になったのは・・・という、なぜなぜ話です。
そめものやをしているふくろうの所へ森中の鳥たちが好きな色に体を染めてもらいに来て繁盛しておりました。真っ白な体をもつからすはそれが自慢でしたが、他の鳥たちが次々にきれいな色に染まるのを見て負けちゃあならないと誰よりもきれいに染めてくれと注文します。果たして、どんな色がいいかと考えたあげく・・・・・。

まるで寄席のように皆で大笑いしました。
短い昔話を入れてみたいときにはおすすめです。絵本以外でも届けられそうです。おはなしとして届ける時には松谷みよ子著もおすすめします。



ふしぎなきかい   [安野光雅 作] 福音館書店

「ふしぎな世界」をテーマにブックトークした内の1冊です。
家庭で自由にお菓子がいっぱい飛び出してくるような「ふしぎなきかい」があったら便利で手軽でいいと思いませんか? 例えば、わずかなお菓子をその機械に入れ込むと大きくなって出てきたら嬉しいですね。コンピューターのようにプログラムをインプット。 「このふしぎなきかい」がそうです。小さなお菓子やおもちゃが大きくなって飛び出してきたりすることも一定のルールのプログラムを作れば可能になるのですね。逆にチャンネルを廻せば、その反対の事もあるのです。
法則を見つけると楽しい、ふしぎなものが次々登場します。クイズのように皆で楽しく科学に強くなりましょう。

この絵本は後に、はじめてであう数学の絵本セット 全3巻としてまとめられ、その中のひとつに集約されました。
「まほう」をテーマにまほうのくすりもここの中から、紹介しました。


ふしぎなたけのこ   [松野正子・文/瀬川康男・絵] 福音館書店   

瀬川さん独特の墨絵を基調にした線と水彩画の色使いがこの昔話の良さを盛り上げていて、おはなしの流れに併せてぐいぐいと惹きこまれていきます。
殊に、たろが何気なくたけのこの上に上着を置いた時、そのたけのこが伸びていく様は細長い型の絵本を縦に、また、倒れていく様は横長にと、<こどものとも傑作集>版だからこそできることでしょうか。それ位、このお話は横長、縦長を有効に使っています。そして、白黒だけのページと色刷りのページは場面によって効果的に描かれていますから想像力が一層、膨らみます。特に、白黒でたけのこの皮目は細い線で描かれているところなどは巨大でふしぎなたけのこの迫力が伝わってきます。
村の人とたろを結ぶ絆や温かさ、それにも増してこのふしぎなたけのこが運んでくれたものに幸福感が満ち溢れています。

大型絵本にでもなればもっと迫力があって大人数のおはなし会でもできると思いますがやや、遠目が効かないのがおしまれます。もちろん、たけのこの季節、5月のおはなし会に最適です。



ふしぎなナイフ   [中村牧江、林健造・文/福田隆義・絵] 福音館書店

表紙から、1本の金属ナイフが描かれています。ぺージをめくっていくと、ナイフがパリンとわれたり、くるくるほどけたり、ぴょーんとのびたり、ぶーっとふくらんだりするのです。
 1本のナイフが、いろいろな形に七変化していきます。現実には絶対にありえない事が起こります。不思議な絵本の世界。 そして、リアルに描かれた絵で説得力があります。その形状を変えていく様子だけが、ひたすら描かれています。
「スプーン曲げ?」なんてありましたが手品でも見るかのように解いてくれます。 
子ども達の目は、絵本にくぎづけで、一緒になって、言葉をくり返します。まさに、絵本とともに一喜一憂で楽しくなります。絵と言葉が一体となって、反復しながら一緒に共感できる絵本だと思います。
しっかりとしたおはなしの合間の絵本として、ほっとする1冊です。
 


ふしぎなはこ   [長谷川摂子・文/斎藤俊行・絵] 福音館書店

クリスマスになるとサンタクロースがやって来る、わくわくとした子どもの気持ちを描いた絵本です。
ある日、男の子がゴミ箱のそばに落ちている箱を拾います。その箱を開けて覗いてみたら、なんとサンタさんが眠っています!サンタの家の中が見えました。男の子はその箱を持って帰り、ベッドの下に隠します。男の子は箱が気になって仕方がありません。
時々、サンタさんの世界を覗いてみますと、クリスマスが近づくに連れ、箱の中のサンタさんも忙しくなっていきます。クリスマスの準備をしたり、そりにのって町の上を飛び回って大忙しです。そして、だんだんぼくの町にもサンタさんが近づいてきて・・・。

お母さんやお父さんの会話がどれも優しくて愛情いっぱいなんです。そして、男の子が「そろそろサンタさん、ぼくのうちにつくころかな?」と箱をちょこちょこチェックしにいくようすがほほえましい絵本です。
「のぞき箱」の中からリアルタイムのサンタさんを見ることができるとは子どもの夢そのままのせて届けてくれるような可愛らしい絵本です。<こどものとも>ペーパーバックなのでハードカバーになるといいと思っていましたところ、2008年に待望の刊行となりました♪
幼い子向けのクリスマス前のおはなし会におすすめです。



 ふしぎなやどや   [はせがわ せつこ・文/いのうえ ようすけ・絵] 福音館書店

 中国唐代の伝奇をもとにした再話で、できたら、ストーリーテリングで届けたいお話でもあります。ただ、墨使いの独特な描線と、動きのある力強い絵が、表情豊かでダイナッミクに物語の雰囲気がよく伝わってきますのでこのまま読んでも子ども達は(特に、高学年にお薦め)は喜びます。

旅商人の趙は、板橋(はんきょう)の町につくと、もてなしがよく親切だという評判の三娘子(さんじょうし)に宿泊しました。ところが、夜中になって、趙はもれてくる明りに気づき、隣の部屋をのぞいてみました。すると、おかみさんの三娘子が小箱から小さな人形と牛とすきを取り出して、水を吹きかけると、たちまち人形たちは動き出し、土間を耕し、ソバを作り、ソバもちをこしらえていました。翌朝、そのソバもちを食べた他の客たちは、とたんにロバに変ってしまいました。これを陰で見ていた趙は、密かにあることを決心しました・・・・。
ふしぎな雰囲気のお話に固唾を呑んでたっぷりとこの世界に引き込まれてしまいます。夜のおはなし会で届けました。怪しい雰囲気があって良かったのですが、この絵本、実は絶版状態で入手できないのです。復刻を望みます!


ぶたたぬききつねねこ   [馬場のぼる 作] こぐま社

これは「しりとり絵本」です。ピンクの正方形型の子供が手にもつには丁度いい大きさでしょうか。
「ぶたたぬききつねねこ」で「こ」から始まるのかと思いきや、お日様が昇ってきて一日の始まる「おひさま」からです。「まど」「どあ」さあ、「あ」のつくものは何かな?と 色んな答えが子ども達から飛び交います。案外、出てこないものです。そして、意外と難しいのであまり、幼い子には向いてないかも知れません。年長くらいから喜びます。
意表を付いた答えに大笑いするかも?・・・
そして最後の絵は夜空に星が光っておやすみなさいのメッセージが聞こえてきそうです。
この絵本は「クリスマスおはなし会」の導入として楽しむには最適です。何故かというと、それは中を開いてみれば分かりますよ♪
ぶたたぬききつねねこ 2』もあります。また、黄色い表紙の(たんぽぽ)『こぶたたんぽぽぽけっととんぼ
もありますがこれは、春のおはなし会で届けました。なぜこれだけ、「こぶた・・・」で始まるのでしょうね?


ぶたぶたくんのおかいもの     [土方久功 作] 福音館書店

 「きみたち、こぶたのぶたぶたくんしってる?・・・」ぶたぶた ぶたぶた という口癖のあるこのこぶたくん。おかあさんにおつかいを頼まれたぶたぶたくんの道中記です。出会う人達の親切でのどかな会話。ゆっくりと時間が流れている感じは、ちょっと、懐古的な匂いのする文体に包まれています。風情も感じます?でも、ぶたぶたくんの頭の中はそうでもなかったかしら?さあ、どこをどういってどんなおかいものをしてきたのでしょう。じっくりと、あとで辿ってみると楽しい絵本です。
ただ、読みには少々、努力を惜しまないように!?


ふたり   [瀬川康男 作] 冨山房

瀬川さん独特のリトグラフによる楽しい絵本です。そして、簡潔な言葉と共に生き生きと描かれていて子ども達も大喜びしました。
「ふたり」の如く全て三文字で「り」で結ばれていて、しかも、一匹の猫とねずみのの繰り返される様はまるで「トムとジェりー」。狙っても狙ってもねずみの方が一枚上手です。でも「ふたり」は本当は仲良しみたいですね。
そして、最後の言葉は・・・発行年が古い絵本には書かれてなかった言葉が後で付け足されて一層、面白みが増したようです。その言葉とは?
この言葉を聞いて更に子ども達は大笑い。しっかりとしたお話の合間にほっとする1冊です。



ふたりはともだち   [アーノルド・ローベル 作] 文化出版局

ふたりとは、かえるくんとがまくんのことで、ちょっととぼけたがまくんとやさしいかえるくんのお話です。
この中には5つのお話が収録されていて、国語の教科書でもそこから「おてがみ」が紹介されています。その他に、「なくしたぼたん」がありますが、これを拡大して紙芝居にして届けました。

上着のボタンを一つなくしたがまくんのために、これまで歩いてきた道を戻って捜してあげるかえるくんですが、どれもこれも違うボタンばかりです。がまくんは「ぼくのボタンはないんだよ!」と叫び、走って家に帰ってしまいました。すると、外で落としたと思っていたボタンが床に落ちていたのです。がまくんは、かえるくんに面倒をかけてしまったと思います。そこで、がまくんは・・・・。
楽しいお話ですがふたりのお互いを思う友情に温かい気持ちになるそんな1冊です。他に『ふたりはいっしょ』『ふたりはきょうも』『ふたりはいつも』もあります。
『ふたりはいつも』からは「アイスクリーム」を紙芝居風にして届けてみました。



ふたりはふたご  [田島征彦・田島征三 作] 文化出版局

この二人はふたごの絵本作家ですが、大人でも案外、知らない人がおられるるようです。それほど大人の今では似てない?それぞれの思想、主題の内容は異なっていても二人にも幼い時が確かにありました。そんな彼らのたくましく楽しい少年時代を描いた共同作品の珍しい絵本です。『絵の中のぼくの村』という本では征三さんがこの少年時代をさらに詳細に綴っていますので一読を!これは映画化にもなりましたね。
夏のお話しなので夏のおはなし会で楽しみました。


ぶぶんぶんぶん しんぶんし    [織田道代・文/古川タク・絵] 福音館書店

「ぶぶんぶんぶん・・・」と五、七、五調の軽妙な言葉と共に新聞紙の活字を背景に紹介した新聞のかがく絵本です。
毎日早朝から配達される新聞は読むだけで終わりでない日常の使途、リサイクルまで、新聞って案外便利と知ることができます。
言葉の調子の良さもあってか、子ども達は新聞の活字にまで目を凝らして見ていました。
毎年、10月15日から新聞週間です。この時期に届けて新聞を見直してみるのもいいですね。


ふゆのあらし   [野坂勇作 作] 福音館書店

♪海は荒海 むこうは佐渡よ〜・・・という歌を思わず、口ずさんでしまう、そんな絵本です。実際に、この絵本の舞台になったのは佐渡島の海です。日本海に浮かぶ佐渡島の漁村から見た、冬の荒々しい海の様子が大胆に力強く描かれています。「嵐の前の静けさ」の様子から、一転して変化する天気。
「・・・うさぎのなみが ぴょんぴょんダンスをはじめています。」「・・・・あとから あとから あらわれる へびのなみが はまべにおしよせてきます。」「・・・おおきく うねる りゅうのなみに へんしんします。」「さかまく なみは しろいうま。」
動物に変化してたとえられる言葉の面白さも見逃せません。そして、いくつかの擬態語も効果的にリズムを奏でています。
臨場感があって、本当に冬の海が目前に迫ってくるようで、凄い!特に、荒れた海がつくるという波の花が風に乗った様は必見です。目の前に飛び込んできそうです。
暗い感じもしますが、こういう絵本も一風変わっていて、おはなし会の気分転換のように、届けてみるのもいいと思います。大きい子向けの冬のおはなし会に。


ふゆのせいざオリオン   [八板康麿・文/杉浦範茂・絵] 福音館書店

『リボンのかたちのふゆのせいざオリオン』が正式題名です。えっ!オリオン座はリボンの形って、知っていました?三つ星はわかりますね。・・・オリオン大星雲の輝くガスの塊がくっきり写真として見る事が出来ます。
きっと、この絵本に出合った星好きの子どもならすぐに星空を指差して喜ぶ事間違いなしでしょうね。冬の夜空といつのまにかにらめっこして、どれどれと絵本と見比べてみたりしている顔が浮かんできます。
11月頃から冬のおはなし会に最適な1冊です。


ふゆののはらでかれくさつみ   [あきやまじゅんこ 作] 福音館書店

詩情溢れる冬の枯れ草たちの賛歌です。イノコズチ、セイタカアワダチソウ、・・・・トキリマメ等、数えたら50以上もある枯れ草が画面いっぱいに広がって、まるで「おいで、おいで」と呼んでいるように綿密な水彩画で描かれています。
枯れ草がこんなにも美しいなんてと思わず見とれてしまいます。さあ、束ねて花束にしましょうか?リースにしてクリスマスに飾ってみたくなります。じっと見ていた子ども達の顔も印象的でした。クリスマス前のおはなし会に最適でしょう。


ふゆめがっしょうだん   [長 新太・文/富成忠夫、茂木 透・写真] 福音館書店

こんなに素晴らしくて楽しい、しかも写真の絵本があったでしょうか。文の如く全て木の芽なのにみんな紳士や貴婦人の顔に見えるから凄いですね。
思わず「よくこれだけ探して撮ったものです」「なんとも木の芽たちが本当に合唱をしているようで楽しい♪」
そして、不思議な事に(?)いつもユニーク奇想天外な絵を描かれている長新太さんの文というから凄いですよね。
詩のようにはぎれ良くリズミカルで簡潔な言葉に木の芽たちの歌がきこえてきそうです。
冬から春の初めにしっかりとしたおはなしの合間等におすすめです。終わった後、子ども達はこの木の芽たちの顔をしげしげと眺めていましたよ。


ブレーメンのおんがくたい [ハンス・フィッシャー 絵] 福音館書店

ご存知、グリム童話をスイスの画家フィッシャーが自分の子どものために絵本にしたものです。
美しい線画と共に素直に動物達の喜怒哀楽を明るく描き出していて素敵です。そして、白い余白を存分に生かした、すっきりと洒落た絵本に仕上がっています。文も原作に忠実です。
年老いて働けなくなった動物達が音楽隊に入ろうと、ブレーメンの街をめざすという、よく知られたお話です。
ただ、集団のおはなし会には向かないので「かしこい動物達」のテーマでブックトークで届けました。



ぶんぶんぶるるん   [バイロン・バートン 作]  ほるぷ出版

音の響きから楽しそう、面白そうと感じますね。ミツバチがぶんぶんぶるるんと、飛んできておうしをチクリと刺したことから、それがめうしにいき、めうしから・・・・どんどん繋がっていく、繰り返しと鮮やかな色彩、単調な絵が子どもの心を掴んではなさない絵本ではないでしょうか。
何度も何度も読み返すことができます。ただ、左のページの続きがすぐに右のページでわかってしまうことと繰り返しをもっと楽しんでもらいたいと思い紙芝居にして届けました。色も色鉛筆で絵本より淡い色彩にして届けてみました。
春の頃のおはなし会に思いっきり楽しんだ1冊です。



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ベーコンわすれちゃだめよ!   [パット=ハッチンス 作]  偕成社

 お母さんから頼まれた少年のおつかい絵本です。お母さんから言い渡されたお使いの品々の最後「ベーコンわすれちゃだめよ」を「・・・ベーコンわすれない」と、心に刻んでしっかりと反芻しながら道のりを歩いていきます。でも、行く道々、太い足6本に出会えば、「うみたてたまご6個」が「太い大根6本」になってしまい(あれれ!?)ケープを翻した少年に出会うと、「お茶にいただくケーキ」が「ぼくにいただくケ−プ」に摩り替わってしまいました。さて、さて、こんな調子で果たして無事におつかいを果たすことができるのかしら?情景文は一切なくセリフの吹きだしのみで、黄色を基調とした絵でコマが運ばれていきます。また、「はじめてのおつかい」を思い出させるようでありながらも、全て、ユーモラスに仕上げているところはやはり、「ロージーのおさんぽ」のように決して不安感を感じさせない、ハッチンスの描く独特の世界が子ども達の心にストンと染み込んでいくように思われます。
しっかりとしたおはなしの後に、ほっと一息したい時のプログラムの構成として間にお薦めです。幼い子も大きい子にも喜ばれました。


へそもち   [渡辺茂男・文/赤羽末吉・絵] 福音館書店

ちょっと縦長変形の絵本です。空高く上下に常に広がっているお話だからでしょうか。面白い工夫だと思います。
雷の何でもへそを取っていってしまういたずらに困り果てた和尚さんのとった手段に雷はへそがなければ雨を降らす事が出来ないと嘆きます。そこで和尚さんは名案を思いつきます。さてそれは・・・・。
読む時、変形の縦長などでやや持ちにくいですが、このお話にはやはりこの形でなければと思いました。
梅雨の頃のおはなし会におすすめです。



へびのクリクター   [トミー・ウンゲラー 作]  文化出版局

フランスのお話です。(エッ!インドかな?と初めは思いましたね)ボドさんの息子さんはブラジルで爬虫類を研究していました。なんと、ボドさんのお誕生日にへびの入った箱が誕生祝いとして息子さんからおくられてきたのでボドさんはびっくりです!それでも、「クリクター」という名前をつけて可愛がりました。
ボドさんは学校の先生でしたのでクリクターを学校へ連れて行きました。すると、クリクターは自分の体でアルファベッドを作ったり、こどもたちと仲良く遊ぶのでした。
ある日、家にどろぼうがおしいってきました!さあ、クリクターはこの後、大活躍をします。

痛快なお話に大喜びの子ども達です。殊に、へびの体でアルファベットをつくるところは見ものですね。へび嫌いなんてこのお話にかかればいなくなってしまいそうです。(?)ボドさんのようにね♪



へらない稲束   [李錦玉・文/朴 民宜・絵] 岩崎書店

ある山のふもとの農家に仲の良い兄弟、チョルとトルがいました。兄は結婚し、子どもも産まれた頃、父親は病に倒れてしまいます。「兄弟仲良く」との遺言を残し、父親は他界してしまいました。遺産を分配し、その年には天候にも恵まれ、二人の村では米が豊作でした。刈り取った稲を積み上げながら、兄は弟の身の上を案じ、彼は稲束を背負子に積んで密かに弟の家に運び込みました。
弟も兄は家族が多いから米がたくさん要るだろうと、密かに稲束を背負って兄の家に運び込みます。 翌朝、それぞれの家に稲束が減っていないことを不審に思う兄弟たち。
次の夜も同じ事を繰り返し、翌朝もさっぱり減っていません。とうとう、兄弟はぱったり出会ってしまいます。兄弟は抱き合って笑いあいます。 ところが・・・、父親の遺言に違反して兄弟は生まれて初めていがみ合います。

「兄弟が互いに思いやり、仲良く助け合っていくことのすばらしさ」が主題になっているようですが、自分のことよりも、相手に何かしてあげたいという気持ちが心に沁みこんでくるお話です。そして、なめらかで美しい言葉が繰り返しのリズムと共に心地よく感じられます。小学校のおはなし会でじっくり届けたいお話です。



ペレのあたらしいふく   [エルサ・ベスコフ 作] 福音館書店

古典中の古典絵本。「ピーターラビットのおはなし」のポターと並ぶ程と言われてますベスコフの名作です。
それだけに少々、時代を感じさせます。殊に、労働と引き換えに何かを得るという体験は現代の子どもには稀でしょうね。
欲しいものでも子供として当たり前のようなおもちゃとかではなく洋服などは親が用意してやるのが当然と思えるからです。でも、それだけにペレのように自分で羊の毛を刈り、梳いてもらう代わりに牛の番をしたり、小さな子がこんな労働をしてまで新しい服を手に入れるというこのお話と牧歌風に描かれている美しい大型の絵本から子供たちの心を育てるような感動が伝わってくるから不思議です。
本当に違和感なく小さい子が喜んで聞いてくれました。



 ヘンなえほん   [井上洋介 ]ほるぷ出版

 題名どおり、本当にヘンな絵本です。井上洋介さん独特の世界が満載。お笑い芸人のネタにもなりうるようなそんなナンセンス劇場でしょう。最初から最後まで、「・・・・なんかヘンだ。」で終わっています。その様子がありえないのですが、全くありえない話でもなさそうな、何だかこんな人って、こんなことって、もしかしたらいそう(ありそう)という可能性も含んでいるから可笑しいのでしょう。おまけの一冊、ちょっとした、おはなし会の合間、気持ちをリラックスさせる絵本として、プログラム的に考えて組み込んでみるのもいいと思います。


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ぼく、お月さまとはなしたよ   [フランク・アッシュ 作] 評論社

クマくんがお月様に誕生日の贈り物をあげたいと考えました。あれ?お月様に誕生日ってあるの?それでお月様に話しかけようとして、木に登って声をかけたのですが返事がありません。聞こえないかと思い、山の頂上から叫んだクマくんにお月様は答えてくれましたが・・・・。
それから、クマくんはお月様のために素敵な贈り物を買って届けようとしました・・・・。

愛らしい、抱きしめたくなるようなクマくん。子どもの心と同化されたお話は本当に温かい気持ちに包まれます。
裏表紙の絵にもどうぞ注目してください。最後まできちんとおはなしが繰り返され繋がっている子どものための絵本だと思います。月のきれいな秋のおはなし会で楽しんだ1冊です。



 ぼくたちこいぬ   [かけい しんじ・文/おがわ まさひこ・写真] 福音館書店

 可愛い、真っ白な子犬の兄弟5ひきの愛くるしい写真です。じゃれあったり、走ったり、散歩したり、そして、○○○したりと無邪気です。お母さん犬に甘えておっぱい飲んでお腹いっぱいになったらお昼ね。そして、また・・・・子犬の一日が過ぎてゆきます。何度もページをめくって、子犬好きな子にはたまらない見てて飽きない1冊でしょう。


 ほくとしちせい   [藤枝澪・文/辻村益郎・絵] 福音館書店

 夜空に輝く美しい星の中で、最も、わかりやすいよく知られている星と言えば「北斗七星」でしょう。四季によって変わる中で北斗七星は1年中、見ることが出来ます。北極星の捉え方やおおぐま座の一部であることなど画面いっぱいに広がる星の絵がとてもリアルで美しいです。「ひしゃく星」とも言われるひしゃく形の星であることも子ども達は意外に良く知っています。夏休みに夜空を見る機会が多いことを想定して、夏休み前に届けてみました。星の大好きな子は釘付けでしたね。


ぼくのいもうと   [浜田桂子 作] 福音館書店

おにいちゃん』の妹版?と思ってしまいました。そして、『あやちゃんのうまれたひ』のあやちゃん?
でも、『あやちゃんのうまれたひ』のあやちゃんにはおにいちゃんがいませんよね。するとやはり『おにいちゃん』に出てくる女の子「わたし」のことでしょうか?
浜田さんの作品には時々、あらっ?と気づくようなさり気ない、かくし絵や繋がりを発見する事があります。
そんな時はドキドキとワクワクが交叉しますね。
このあやちゃんはいたって元気娘の何者でもありません。『おにいちゃん』は妹から見ているのに対して、この絵本はおにいちゃんの目からみたあやちゃんが、元気に綴られていて、本当に楽しくて優しいお兄ちゃんの目も垣間見ることができます。
大きい子も小さい子も一緒になって楽しんだ絵本です。 



ぼくのおじいちゃんのかお   [天野祐吉・文/沼田早苗・写真] 福音館書店

老人の役として名優だった故加藤 嘉さん。深い皺の中にこれまでの人生の喜びや悲しみがうかがえるような味わい深い顔写真の連鎖です。その表情は素晴らしい。奥深くて笑い泣きを覚えます。

子ども達は素直に、普通のおじいちゃんとして、でも夢中になって見つめていました。 ボケかけているようで、頑固そうで、さみしそうで、楽しそう。おじいちゃんの顔は見ていてあきない。
「ぼくのおじいちゃんのかおは おもしろい 。」
敬老の日の頃におすすめです。



ぼくのじまんのトラおじさん   [ジャームズ・リオーダン・文/アレックス・アイリフ・絵] 評論社

貼り絵を施した明るい色彩の絵本です。
ネコいっぱいの家のあどけないネコ達に起こるユーモラスな冒険物語です。ネコがトラに憧れるという設定もありそうな話と思いますが、ネコたちが初めてトラに出会うために訪れた動物園。そこで、これまた初めて出会う他の動物たちへの反応や本物のトラを知ったネコたちは!?・・・・最後のページに思わずほお擦りしてみたくなります。
幼い子向けのおはなし会におすすめの1冊です。


ぼくのぱん わたしのぱん   [神沢利子・文/林 明子・絵] 福音館書店

 パン作りの絵本です。準備の段階から、材料、パンをふくらませるための秘密も楽しく、まるでレシピのように見ながら作ってみたくなる楽しいかがく絵本。パンは材料やこね方等、大切な要素がありますがそれらと共に、時間が大切。ちゃんと方隅に、工程に合わせて時計で時間の配分をもわかります。
色々出来上がった動物などの形の楽しい、おいしそうなパンの出来上がりに、うん、読んでもらったら「今度はパンを作ってみよう!」と思いたくなりますね。林さん独特の黄色を基調とした色使いがこのパンにぴったりマッチして本当においしそうです。


ぼくのへやにうみがある   [マーガレット・ワイルド・文/ジェーン・タナー・絵] ほるぷ出版

海が苦手なデビッドは貝を集めるのが好きでした。そんなビッドが巻貝に耳をあてて海の音を聞いたとたん、海に親しみを感じたのです。海を怖いと思わなくなりました。その貝を自分の部屋にもっていった時、デビッドは部屋の中でベッドの海の中で思いっきり遊んだのです。それはデビッドの空想にしか過ぎなかったでしょうか?
画面いっぱいに広げられる鮮明でリアル大胆に描かれた絵が何ともいえません。
海が嫌いな子も好きになるかもしれませんね? もちろん、夏のおはなし会向きです。


 ぼくはいろいろしってるよ   [アン&ポール・ランド 作] 福音館書店

ランド夫妻コンビによる合作絵本の内の1冊です。"ぼく”を見つめること、周りのもの達への観察。視点を変えて見ると不思議な発見や見えてくるものがある、というようなちょっと、これは哲学的な絵本でしょうか。”もののしくみ”を考えると実に面白いことも・・・・「世界は広い」そうですね。「お月様は夜のランプで、お日様はとってもまぶしい丸いパン」なんて、これは素晴らしい感性です。こんなことを考える、言える子どもが近くにいたら思わず、ほおずりしたくなります。
いえ、口にださなくても、本来子どもはみんなこんなことを考えるものなんでしょう。
「うん、ぼくはこんなにいろいろしってるんだ でもおおきくなると もっともっといろいろしってるんだよね」の文字と絵の配置に注目!大人の方が思わず唸ってしまいます。
小学校おはなし会のおまけとして考えていましたが、中心となる1冊でも、いけそうです。その他に『ことば』もあります。


ポケットのないカンガルー   [エミイ ペイン・文/H.A.レイ・絵] 偕成社

カンガルーのお母さんケイティーにはおなかのポケットがありません。カンガルーにポケットがなかったら、どうやって子どもを運ぶのでしょう?ケイティーは、悲しくてしかたがありません。坊やのフレディをどこへも連れて行けず泣いて困っていました。そこで、物知りフクロウに町へ行けばいいといわれ町へポケットを探しにに出かけます。
でも、カンガルーのポケットを手に入れるなんてことができるのでしょうか?
ところが、ちゃんと世界一素敵なポケットを手に入れることができましたよ♪さあ、どんなのでしょうか?!
子どものフレディーだけではなく、お友達ちまで入れる大きなポケットにお母さんケイティーは大満足です。

明るく力強く描かれているのは、H.A.レイさんらしいですね。そして、起承転結がはっきりしていて最後は幸せになるという感動的な展開ですから、子ども達が安心して楽しめます。
広範囲なおはなし会に向くと思います。 


ほたる   [神沢利子・文/栗林慧・写真] 福音館書店

神沢利子さんの自然なやさしい文章と、ホタルの写真を撮り続けている昆虫写真家の栗林慧さんとの合作です。
卵から成虫までのほたるの一年を、レンズで追ったホタルの美しい世界に感動します。
ここからホタルの生態を知ることもできます。
幼虫や成虫のたくましさ、小さな命を引き継いでいるホタルを子ども達に届けたい1冊です。
もちろん、夏、ホタルの飛び交う時季のおはなし会向きです。
同じくかがく本で、暑い夏、木の葉に、蛍がライトアップしてる『ホタル がひかってる』奥本大三郎・文/石部虎二・絵 も併せて紹介して届けました。



ぼちぼちいこか   [マイク・セイラー・文/ロバート・グロスマン・絵] 偕成社

カバくんが「ぼく、しょうぼうしになれるやろか」「なれへんかったわ」と自分の夢を語りますが結局どれもこれも失敗だらけです。・・・「ま、ぼちぼちいこか」という慌てない、騒がない、人生のんびりいこうよ、ちょっとひとやすみ・・・という大らかなカバ君です。

「この絵本の原作者は日本人ではありません。」と子ども達に紹介しますと皆「え〜っ!」と驚きます。誰もが大阪の人と思ってしまいますよね。確かに、関西弁に訳されたのは今江祥智さんです。原作者のセイラーさんによれば「NO」という簡単な英語になっていますが、あまりにも平凡で、カバくんの何ともいえない味のある風貌や顔つきが大阪人に見えたと言われるから面白いですね。
なるほど、そういわれてみればカバ君が大阪のカバに見えてしまいます!?可笑しいながらも、どこかで人生訓を感じさせられます。おはなしは、小さい子から大きい子までとても喜んでくれました。あえて、6年生のお別れおはなし会で読みました。長いお話やしっかりした絵本の合間にほっとする1冊です。

そして、原作の「ぼちぼちいこか」も手にとる事が出来たら見てくださいね。九州弁で訳してみる?と言った子もいたようです。各地域方言満載の「ぼちぼちいこか」を味わってみたい気もしますね♪
(あ、そうなると題名も変わってきますね。面白い訳ができましたら教えてください ^^;) 



ホッホッーくんのおるすばん   [ゾンマー・ボーデンブルク・文/コールト・サンダー・絵]偕成社

 ふくろう親子の末っ子ふくろうホッホーくんの物語です。兄さん、姉さんも成長して家から出て行ったのですが、ホッホーくんだけは甘えん坊で飛ぶことをしようとしません。どんなにお母さんが飛ぶ稽古をしようと促してみても「いやだよ。いやだ。きょうはいや。あしたになったら・・・」と、いつも逃げ回っていました。
秋になり、冷たい風の吹く晩、おるすばんをするホッホーくんの前に、黒くて大きい影、怪しい緑色の目の主が現われます。それは・・・・・一大事です!
このことがあって、ホッホーくんは飛ぶ稽古を「いやだよ。いやだ。・・・」?
秋を思わせる茶色と黄色、そしてふくろうの色、これらの色彩に重厚感があり、飛んでいくふくろうの姿がバックの黄色と茶の斑点に遠近感も感じられます。おはなしは温かいだけに絵とのバランスが映えます。
図書室で5年生の男子に読んであげたら大変喜んでくれました。秋に幅広い年齢の集団おはなし会にもおすすめです。


 ぽとんぽとんはなんのおと   [神沢利子・文/平山英三・絵] 福音館書店

 『はなをくんくん』と、雰囲気がどこか似ているような気がします。寒い冬から春がそこまで来ている冬の山。ふゆごもりのくまの親子が穴から聞こえる春を感じる音が詩情溢れる響きとなって静かに伝わってきます。
平山さんのたっぷりとした周りの余白が白い雪を豊かに感じさせて、言葉とうっすらとした色彩とが重なり合って寒い冬から暖かい春を感じるイメージが拡がってゆきます。言葉も絵も温かみのある一冊です。
ただ、遠目が効かないので、少数のおはなし会向けでしょう。


ほね   [堀内誠一 作] 福音館書店

骨のある食べ物といえば「さかな」でも、「たこ」には骨がありません。もし、人間の体にも骨がなかったら、そう、ぐにゃぐにゃで立ってなんかいられません。骨の仕組みから役割、間接の動き、そして筋肉の働きまでとてもわかりやすく著されています。単に体の動きだけでなく脳や内臓までをも守っていること。昔の動物も骨から大昔の様子を知ることができるのですって!
科学絵本としては字数も多くなく端的で楽しめる絵本といえます。小学校の学年おはなし会におすすめです。運動会の頃にも届けてみました。

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