≪絵本のおはなし≫おはなし会の中から…

おはなし会で届けた絵本の内容をここにご紹介します。
子供たちの様子を思い浮かべながら一つ一つ書き留めてみました。
一覧はBooksでご覧下さい。題名をクリックすると画像を見ることができる絵本もあります。





 ラ 
らいおんはしった     [工藤直子・文/中谷千代子・絵] 福音館書店

ライオンは動物界の王者として恐れられています。ライオンが近づくと、他の動物は一目散に逃げ出してしまいます。でも、孤独なライオンは友だちがほしくてたまらないのです。そんな王者の気持ちは伝わらず、外見だけで決められる孤独との戦いを強いられ生きているのです。

ここのところで同じ中谷さんの描かれる『ジオジオのかんむり』を思います。やはり、ジオジオもライオンの王者として生きてきたものの年老いて受け入られます。弱さを見せ、やさしさが受け入られて幸せを手に入れます。
レッテルをもったまま受け入られることはできないのでしょうか?ひとりぼっちのライオンは、ひとりぼっちのしまうまに会いました。

しまうまとライオンの仲良く並んで歩いている姿はとても美しい絵です。おだやかなやさしい表情をしながら、同じ方向に進んでいます。見ている先も同じでしょうね。やっと、出会えた心の通え合える友だちに感動します。
この素敵な絵本が復刊される事を願います。
小学校で読んだ時には、子ども達よりも先生が泣かれていましたね。感動が子ども達にも伝わることと思います。
友だちとの別れ、出会いを感じる春の頃のおはなし会におすすめです。



ラチとらいおん   [マレーク・ベロニカ 作] 福音館書店

好きな絵本の1つで、赤・緑・黄・黒の基本色のみで描かれたシンプルな古典的小型絵本です。
飛行士になるのが夢の弱虫なラチという男の子の前にある日、小さな赤いライオンが現れます。小さくても強いライオンによって、ラチはどんどん見違えるほど変わっていきます。そして、もう弱虫でなくなったとき、ライオンはラチの前から消えていました。
子ども達に生きる喜び、勇気を与えてくれる感動的なこのお話に、何度も何度も繰り返し読みました。
家庭では、じっくり届けてあげたい良書だと思います。カバンに入れて持ち運ぶのにもいい手軽な大きさです。
それだけに、大人数のおはなし会には小さくて届けにくいのが惜しまれます。
同作者のデビュー作『ボリボン』は2002年9月に出版されています。


ラルーシとひつじのぼうや   [サゾン・スラザーコフ 作/ベーラ・フレーブニコワ・絵] 福音館書店

色鉛筆の細い線とクレパスで塗られた、柔らかいタッチの温もり感のある絵が、ひつじのぼうやのあどけなさ、可愛さがにじみ出ていて、ほっとするような安心感を与えてくれるそんな絵本です。
見開きいっぱいに描かれたロシアの山並みにうっすらと雪がかかっています。おばあちゃんが牛のお乳を搾りに出かけていきます。しばらくして、羊のあかんぼうを抱いて家に帰ってきました。ラルーシは生まれたての羊のあかんぼうの面倒をみることになりました。この時から、ラルーシとひつじのぼうやの毎日が始まります。いたずらぶりも見せています。
そして、いつしかひつじの群れに連れられ大人の仲間入りになっていくぼうや。ラルーシもまた以前のひつじのいない生活に戻ります。
文章は淡々と綴られていて、ひつじのぼうやはももちろんのことラルーシやおばあちゃんの心の内側、思いについては一切触れていません。それだけに読み終わった後、それぞれの胸にすっと入りこんでくるものがあるような気がします。

おはなし会のプログラムとしては、初めの方で届けると次へのおはなしに入りやすい1冊だと思いました。
子ども達はおはなしにすっと溶け込んで、余韻に浸りながら、次のおはなしを待ちます。


 リ
りんごがひとつ   [ふくだすぐる 作] 岩崎書店

落ちていたりんごをめぐって、先に拾ったおさると他の動物達の追いかけっことそのやりとりが楽しい絵本です。
かけひきもとてもユーモアがあるのですが最後は、ホロリとなり温かい気持ちにもさせてくれます。
幼い子向けの可愛い絵本ですが、低学年のおはなし会や1年生の朝読におまけの1冊としておすすめです。


りんごのき  [エドアルド・ペチシカ・文/ヘレナ・ズマトリーコバー・絵] 福音館書店

マルチン少年のりんごの木を思う心がほのぼとして伝わってくる絵本です。又、マルチンから見たりんごの木への疑問を通して、移り行く季節の中でりんごの木の成長を見守りながら、時には虫や動物、天災などの天敵から守るための方策、飼育の仕方を創作絵本でありながら科学の目で楽しむ事も出来る1冊です。
厳しい自然を乗り越えて時が熟し、真っ赤なりんごがなった時、マルチン少年もりんごを手にしています。
この絵本は絵がとても可愛らしくて、小型版の手のひらサイズのため、親子で楽しめるとは思いますが集団では困難です。でも、おはなし会に来てくれている子からのリクエストで大きくして紙芝居で届けてみました。
秋から冬の季節に、りんごが美味しい季節にたっぷりと味わいたいお話です。


 ル
ルラルさんのにわ   [いとうひろし 作] ポプラ社

こちら(おはなし広場)をご覧下さい。


 ロ
六にんの男たち   [ディビッド・マッキー 作] 偕成社

「なぜ、戦争をするのか?」という戦争、平和を考える絵本です。
働いて、平和に暮らす事のできる土地を求めていた、六人の男たちでしたが、金持ちになった途端、戦争を起こしてそのためにこれまで培ってきた全てのものを失ってしまいます。そして、また初めから、新たな土地を求め続けなければならなくなりました。
悲惨な戦争が今もこの世界で起こっています。人間の欲からはじまることの多い戦いを子どもにも話さなければならない時期があります。そんな時の1冊としておすすめの絵本です。
8月の終戦記念日頃に届けました。その後、家庭でも親子で話し合う時が大切だと感じます。


ろくべえ まってろよ    [灰谷健次郎・作/長 新太・絵] 文研出版

深い穴に落ちてしまった犬のろくべえ。それを見つけた子ども達の救出作戦が描かれていますが、灰谷さん独特の人間味溢れる優しさが子ども達の気持ちを通して伝わってきます。おかあさん達は口では言うものの帰ってしまい、通りがかりの暇そうなおじさんも人間でなくてよかったと行ってしまいます。大人はあてにできない。自分達の知恵と力を出し合って考えて行動します。それがとても子どもらしくちょっぴり笑ってしまうようなほほえましさもあり、でも本人達はいたって真剣に挑みます。さて、ろくべえは果たして助かるのでしょうか?
子どもの目線で描かれている作品はいつの時代の子ども達にも共感を呼ぶものだと実感しました。
小学校のおはなし会におすすめです。


 ロージーのおさんぽ   [パット=ハッチンス 作] 偕成社

読んでもらう絵本の字を追うのは大人だけといいます。絵本を楽しんで、「見る」習慣のある親子ならたちまち絵本の魅力にとりつかれてしまうのがこの絵本です。でも、絵本の楽しみ方がよくわからないで文字ばかり読む癖のある親子だとこの絵本のせっかくのもっている魅力を見過ごしてしまうと言われています。
字だけ追っていると、めんどりのことしか書いてありません。何も知らないロージーをねらってきつねが後を追っています。ロージーは夕食前のお散歩を楽しんでいるだけなのに、きつねはひどいめにあい、しっぽをまいて逃げ出すというユーモラスな出来事を絵が見事に語っています。色も、黄色を基調にしてじっくり絵を見ながら楽しませようとする作者の意図がわかります。そして、文字を読みながら、自然に絵の展開を見せられてしまう、絵と言葉が完全に溶け合った良い絵本の1冊です。 
おはなし会では、しっかりとしたおはなしの後、合間の1冊として適当でしょう。



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