≪絵本のおはなし≫おはなし会の中から… おはなし会で届けた絵本の内容をここにご紹介します。
子供たちの様子を思い浮かべながら一つ一つ書き留めてみました。
一覧はBooksでご覧下さい。題名をクリックすると画像を見ることができる絵本もあります。
あ │ か │ さ │ た │ な │ は │ ま │ や │ ら │ わ
マ
まあちゃんのながいかみ [たかどのほうこ 作] 福音館書店
女の子というのは長い髪の毛に憧れをもち、殊におさげを結うことを夢見てひたすらのばしていたという少女の時期を私も思い出します。
おかっぱ頭のまあちゃんは友達のはあちゃんとみいちゃんが長い髪を持っていることに羨ましくて自分もう〜んと長くするのと言います。もうそれは並外れた長さだというのです。「橋の上からおさげを垂らして、魚が捕れる位」「牧場でロープを飛ばして牛の角にひっかけてつかまえる位」「木におさげを結んで洗濯物を干せる位」
はあちゃんたちも負けていません。そんなに長かったら洗髪が大変でしょ?と突っ込みを入れます。でも、まあちゃんは空かさず「へっちゃらよ」とやり返します。雲まで届く大きなソフトクリーム、川のこんぶになったり!?
挙句の果ては、妹が10人生まれていて髪をとかしてくれるんですって!
もう、ここまでで充分、すっかり大笑いです。でも、まだまだ、夢の自慢が続きます。はあちゃんたちも真剣になって聞いています。そして、最後はまあちゃんの髪に、はあちゃんたちはついにうっとりとしてしまいます。
「それって、とってもいい・・・。」「まあちゃのかみ、はやくのびるといいね。」
なんとも楽しい夢話とわかっていてもそうなったら本当にいいね。誰もがきっとそう思ってしまうような、女の子の気持ちを捉えたお話です。「私だったら、おさげで縄跳びするな」と言った女の子がいました。少女の夢をのせてまあちゃんのおさげはどこまで果てしなく伸びるのでしょうね。
この絵は夢を語るまあちゃんたちの現実の場面はゼピア色になって長く伸びた髪をもつ夢の世界はカラーになっています。現実はいつか、過去となって夢が現実になる日はそう、遠くないのでしょう。
夏向きのおはなし会におすすめです。『まあちゃんのまほう』 も低学年各クラスで届けました。『まあちゃんのすてきなエプロン』もありますが、どれも子ども達に人気があります。
まがればまがりみち [井上洋介 作] 福音館書店
七・五・七・五調の韻を踏んだ言葉が子どもの心にストンと落ちます。「・・・・何が出るのか 曲がり道」
そして、井上洋介さんの墨色を基調としたちょっとスリリングな怪しい雰囲気のある、でもクスッと笑みがこぼれてしまう絵が言葉とマッチしてます。大きながまさん、やもり、まよい電車、大きな毛虫・・・と次々・・「何が出るのか 曲がり道」
中盤以降になると、いっしょになって声に出して大いに盛り上がっていました。
夏から秋にかけてのおはなし会におすすめです。
まちにはいろんなかおがいて [佐々木マキ文・写真] 福音館書店
町の中を歩いていると、普段は気にも留めないような何でもない壁やマンホールといったものがよく見てみると顔に見えますよ。 「よう げんきかい」といっているかのように・・・・。その顔も 機嫌よかったり、渋い顔だったり様々です。
その顔が呟いていますよ。何が聞こえるでしょうか。公園の遊び場にも顔があります。お話が聞こえますね。
さあ、そんな顔たちとじっくり付き合ってみるのも楽しいものですね。帰り道にも目をとめましょう。リズミカルに歌が聞こえてきそうです。「ただいまー」と帰った家を見やればそこにも顔がありました。
大きい子も小さい子も、目をまん丸にして面白がって見入っていました。きっと、帰り道に顔探しをしていくのでしょうね。とても盛り上がった1冊です。しっかりとしたお話の後などにほっとする写真絵本です。これがナンセンス絵本を手掛ける佐々木マキさんの作品と言うのも少々、驚きでしょうか。
まっくろネリノ [ヘルガ・ガルガー 作] 偕成社
不思議な謎の生物?まっくろネリノの家族は両親と兄さんが四人います。兄さんたちはきれいな色の体なのにネリノだけがまっくろです。ちょっと孤独でさみしいネリノです。そこで、花たちにどうすればそんな色になれるのか聞いてみましたが、生まれつきだから知らないと言われてネリノのまっくろも生まれつきなんだと思います。
ある日、 兄さんたちが行方不明になってしまいました。探しに探して見つけた所は鳥かごでした。兄さんたちがあんまりきれいなんでつかまえられちゃっていました!そこで、ネリノは・・・
作者ガルガーさんはオーストラリアのとても美しい女性デザイナーです。この絵本はデビュー作でオーストラリアの子供の本の優秀賞に選ばれています。
一見、人種差別が根底にあるかのように感じられますが繊細な美しさをもつガルガーさんの感性が作品となったようです。ネリノは最後に、コンプレックスのまっくろをプラスに生かしました。どんな人でも何か長所があります。いっしょに遊んだり、教え合うことから色んな体験ができてそれが楽しくもなるのでしょう。
低学年おはなし会で届けましたが、子ども達はネリノのいじらしさと勇気に共感して見入っていたと思います。
(読み聞かせのポイント・実際例も参照して下さいね。)
まつげの海のひこうせん [山下明生・文/杉浦範茂・絵] 講談社
標題紙をめくると最初のページにいきなり「ああ、くやしい。」という一文と同時に絵はものすごいアップの泣き顔に、何の絵か気付くのに時間がかかるかも知れません。かなりインパクトがあります。
けんかに負けた少年の悔しさ、腹立たしさ、悲しさが迫力のある絵と言葉が一体になって伝わってきます。感情が爆発して抑え切れなくなったら誰が何と言っても聞く耳がもてない、この時期よくあることのように思えます。
運動場にひっくりかえって動かない僕にとうとう、先生は気がすむまでそこで死んでなさい、と言って去っていってしまいました。
涙が頬を伝わって流れてきます。うっすらと目をあけてみるとまつげの向こうの青空は海のよう・・・。魚が泳いでいるように見えたかと思うといつのまにか虹色のさかなの飛行船が僕をのせて空高く上がりました。学校の上にくるとあいつの声が聞こえて憎らしくなります。すると、さかなの飛行船が「ちょっと、重いなあ。心の荷物をおろしてくれよ。」と言います。心の荷物を軽くするには楽しい事を考える事。今の僕にとって楽しい事はあいつをやっつけてしまう事です。
この後の僕のあいつ退治の空想話は大笑いです。子ども達も大爆笑しました♪
これでもかと吐き出してしまったら今度はそんな自分が嫌になってきてまた重くなってきました。そして、ついに飛行船は重くなりすぎて海に向かって小さくなって吸い込まれていきます・・・・。
子供は、けんかをする事も成長するための大切な体験でしょう。その弱さを心の豊かさ、たくましさに代えていくことができるのもその子自身の力です。このお話の僕も、悔しさに翼をつけて空想の世界を飛んでいるうちに強い心を自分の中に見つけます。涙が乾いたらユーモアとなってひとつ大きくなった僕がそこにいました。
特に男の子がきっと思い当たるふしがあるのでしょうか、うんうんと頷いて喜んでくれたお話です。
2学期の最初の学校おはなし会でおすすめです。
マーティンより大きく [スティーブン・ケロッグ 作] ほるぷ出版
兄弟の中で下の子は上の子に対して羨望や負けず嫌いであったりすることがあります。この男の子もそうでした。いつも兄ちゃんのマーティンより大きくなれたらなぁと思っている男の子のお話です。
ぼくが大男になったら兄ちゃんの骨を粉々にしてパンにしちゃえと、リンゴをいっぱい食べて大きくなろうと思ったのですがそんなことでは大きくなれるはずがありませんね。パパがどうして大きくなりたいの?と聞くと「みんなといかだに行ける」「ケーキは大きいのをもらって、兄ちゃんにはくずしかやらない」「バスケットもぽんぽん入れて笑われない」と答えます。でも、ママが巨人になったらこの家からはみ出してしまうよ。それに、マーティンだって小さい頃はと、ある秘密を教えてくれます・・・。
絵の運びが集団で届けるにはどうかな?と感じる部分がありましたので「大きい・小さい」のテーマでブックトークした1冊です。
まどからおくりもの [五味太郎 作] 偕成社
ご存知、五味さんのクリスマス絵本です。はっきりとした絵と太い筆のタッチとちょっとした仕掛けもあって、サンタさんを楽しみにしている子ども達の心に素敵なプレゼントを残してくれます。短く簡潔な言葉の中にも温かく伝わってくるものがあります。
家庭で楽しんでいた絵本でしたが最近、大型絵本になりましたので早速、クリスマスおはなし会で届けてみました。
子ども達は大喜びです♪
マドレーヌのクリスマス [ ルドウイッヒ・ベーメルマンス/俵万智・訳] 佑学社
パリの寄宿学校で生活するマドレーヌは、12人の女の子たちの中で、一番小さいけれど、一番元気です。
寒いクリスマスイブの夜、寄宿舎のみんなは風邪をひいてしまい、マドレーヌは甲斐甲斐しくみんなの看病や家事に大忙しです。そこへ絨毯売りの男がやってきて、マドレーヌはみんなのために絨毯を買いますがこの人は魔法使いだったのです!?―マドレーヌの元気さバイタリティが楽しいマドレーヌシリーズのクリスマス版です。クリスマスらしい明るくきれいな絵本となったこのマドレーヌに子ども達の反応は?
1972年から瀬田さんの訳でマドレーヌシリーズはロングセラー絵本になっています。でも、この絵本によって生まれ変わったかのようです。訳者が変わってこれまでのイメージも異なりました。
1989年に佑学社から俵万智さんの訳、最新版は2000年に、BL出版から江國香織さんの訳で復刊されました。
歌人の俵万智さんも、江国さんも美しい言葉をとても大切にされる現代に生きる女性作家です。殊に、江国さんの絵本は最近よくお目にかかります。故瀬田さんは、これまでいくつかの古典絵本、児童文学を訳されています。
これまでの「マドレーヌシリーズ」はどこか古めかしい雰囲気のあるこのお話に瀬田さんの古風な言葉とが一体となっていて、私は大好きでした。今回読んだのは佑学社から出版された俵万智さんの訳です。
2冊を見比べてずい分、悩んでこちらに決めましたが皆さんはどう感じられるのでしょう?
ただ、作者は同じベーメルマンスなのに、別人のようにこれまでの画風が変わっているのが気になります。
全体に明るくなって、美しい色使いはこれまでの厳かな雰囲気からおしゃれで洗練された雰囲気になっているような気がします。そういう意味ではこの訳は合っているのでしょうか。比べてみますと、面白いことに気付きます。例えば、ミス・クラベル先生は厳しい中にも優しさが漂っていましたが一皮むけて優しさが増したように思うのですが・・・?もちろん、12月のおはなし会向きの1冊です。
まほうつかいのでし [上田真而子・文/斎藤隆夫・絵] 福音館書店
「こどものとも」復刻版で、ゲーテの作品が元になっているらしく、心地良い響きを感じる絵本です。
ある魔法使いの弟子が先生の外出中に魔法を試してみたくて「鬼のいぬまに・・」とあって箒に呪文をかけました。まぁ、その呪文の面白いこと!呪文も効いたようで箒に手足が生えてきて走り出しましたが・・・
その後、大変な事になりました!この弟子は、どうやら魔法をかけることができても解きかたの呪文は忘れてしまったようです。仕方がないので、別の方法を試みてみる事にしました。おので箒を真っ二つにしてしまい、これで箒は動かない・・・と思いきや、あれれ?いつの間にかその箒は2本になって走り出しましたからたまりません。ついに、弟子はお手上げ「先生、助けて!」そして、さすが先生。先生のおかげで収まりましたがこの先生の顔が真っ黒で見えないのがちょっと気になりませんか?
皆で楽しんだ1冊です。お試しあれ!「ホークス、ホークス カッパノオサラ ミズミズミーズ・・・!」
ママ、ママ、おなかがいたいよ [レミー・チャーリップ 作] 福音館書店
お母さんはテーブルの下に潜り込み帽子を探しています。膨れたお腹を抱えた女の子が「ママ、おなかがいたいよ・・・」と泣き叫んでいます。お医者さんは女の子のお腹を診ると、驚いた事に中から次々ととんでもないものが取り出されます・・・・
かげ絵しばいの絵本とあって どんなしかけを考えた紙芝居にするか、それともパネルシアターにするかと色々考えたのですが、やはりこのまま絵本をしっかり見せて読むだけでも充分です。下手に影絵工作をわざわざしなくても本当に子ども達は見入って喜びます。そう、不思議なものがよくも次々と・・・・子ども達の目はまん丸見開いて釘付けになっていましたね。
まめのかぞえうた [西内ミナミ・文/和歌山静子・絵] 鈴木出版
「ひとーつ、、まめひとつあったとさ はたけにうめてつちのなか ふたーつ、ふたごのはっぱのあかちゃん・・・」
ご存知、日本の子ども達が喜ぶかぞえうたを、リズミカルに五七調にのせて和歌山さんの可愛いまめっころの絵と共にコロコロ、コロコロと繋がっていきます。そして、なるほど、節分にはそれで豆をまいて食べるのねと納得してまう小型絵本です。
最後のページには「あなたは、いま いくつ?」で、終わっていますが不特定多数のおはなし会では静かに聞いていた子ども達でしたが1年生の朝読では、声をそろえて「ななつ〜!」と、答えてくれました♪
豆の健康も見なおしてみんな「まめでいましょう」と、西内さんも、《豆の力》を力説されています。
もちろん、節分の頃にお奨めです。
まゆとおに [富安陽子・文/振り矢なな・絵] 福音館書店
―やまんばのむすめ まゆのおはなし―ある日、まゆは雑木林の奥で大きな赤鬼に出会います。まゆは鬼を知りません。赤鬼はお腹が空いていたのでまゆを連れ出して大鍋で煮て食べてしまおうと考えます。無邪気なまゆは疑いもせずついて行きました。そして、火を付けるための薪を持ってくるように鬼に言われてまゆはなんと、太い松ノ木を一本根っこから引っこ抜いてしまいました。驚いたのは鬼のほうです。その後のまゆの行動に鬼はいつのまにかたじたじです。
この後の展開はなんともはや笑い話です。まゆの思わぬ力ととぼけた(本人はいたって真剣だからなおのこと可笑しみがあります)飄々とした一つ一つの行動、奇想天外なまゆと鬼のなんともいえぬ絶妙なコンビに子ども達は笑い転げていましたね。絵も迫力と可愛さが同居しておはなしの楽しさを盛り上げています。
冬の低学年おはなし会で楽しみました。
続編に『まゆとブカブカブー』『まゆとりゅう』もあります。どれもペーパーバックですが、『まゆとおに』は2004年3月にハードカバーとして復刊されています。又、このお話は同作者による読み物『やまんば山のモッコたち』からのまゆが飛び出して絵本になっています。こちらもぜひ、併せて読んでみてください。
まりーちゃんとひつじ [フランソワーズ 作] 岩波書店
まりーちゃんは木の下に座ってぱたぽんに言いました。―何度となく「ぱたぽん」とまず呼びかけて、最後に又「ぱたぽん」としめる、まりーちゃんのこの言葉が読み終わった後も、ずっと耳に残って離れないのは、心地よいリズムを感じるからでしょうか。とてものどかで、のんびりとした暖かい風が流れていて陽だまりのような世界をここに感じます。
いつか、ぱたぽんにもし子供が生まれたら、その毛を売って好きなものが買えるとまりーちゃんは楽しみにしています。でもその都度、好きなものを買うより、お日様とひなぎくの花がきれいに咲いている緑の原っぱに親子で住むのがいいとぱたぽんは答えます。一匹から始まって、二匹生まれたら・・・三匹生まれたら・・・八匹、九匹、十匹、・・・どんどん数が増えていって、まりーちゃんの胸算用は留まりません。でもその都度根気よく(?)答えるぱたぽんのなんといじらしいこと。子供はたちまち、「ぱたぽんが大好き!」になりました。
さあ、結局、ぱたぽんは何匹の子供を生んだのでしょうか?
一見、まりーちゃんて計算高いなと思っていた子も最後のまりーちゃんの思いを知ってほっとしたようです。
瞳を輝かせて見入っている子ども達の顔が印象的でした。
この本の中には「まりーちゃんのはる」というお話も収録されています。他に『まりーちゃんのくりすます』もあります。
まんまるおつきさまをおいかけて [ケビン・ケンクス 作] 福音館書店
2005年のコールデコット受賞作品。それでも、近日中に絶版予定という訳で、慌てて購入しました。
白黒の太い筆使いでありながら、しっかりそれを感じさせない、こねこの愛らしさと、光り輝く まんまるおつきさまの描写が何ともいえません。決して、珍しくない単色使いの絵本なのにまさに、色を感じる絵本だと思います。
こねこが見たもの。それがおつきさまだと知らずに、ミルクのお皿と勘違い。遠くにあるものが近くにあるように感じて手を伸ばしてみたくなる。一見、幼い頃の経験に良くある話のようですが、それでも、・・・こねこのこの好奇心はどこまでいくのでしょう。
大人数のおはなし会で、月夜のきれいな頃に届けたい1冊だと思います。
ミ みかん [中島睦子 作] 福音館書店
「ふゆのひの おたのしみは こたつにはいって みかんをたべること。」(そうそう、うふふふ・・)身近なところからの導入が流石という気がします。中をわってみるとどうなるか、こんなところはよくある型なんですが、案外知っていたつもりでも、やはり、「へぇー」って唸ってしまいます。ページを捲っているうちに、未知のみかんの実体が明らかにされていきます。みかんの生い立ちも知ったら、さあ、家庭でこんなことをやってみましょうよと、楽しい遊び方・・・
驚いた事は、「みかんのろうそくと花火!」子どもよりも私が釘漬けになってしまい、早速試してみたのです。
さて、おはなしのろうそく 為らず 「みかんのろうそく」で、おはなし会♪ 子ども達の反応は?
お試しあれ!冬のおはなし会にて。
みず [長谷川摂子・文/英伸三・写真] 福音館書店
子ども達は水遊びが大好きですね。これは、水とたわむれる子ども達を生き生きととらえた、水の写真でいっぱいの絵本です。身近な、ホースからほとばしる水やクモの巣の水玉など大自然の水まで・・・、見るからに涼しくて楽しそう!たちまち水の魅力の虜になってしまう事でしょう。 そして、季節感いっぱいの水。冬の水も楽しめますからこれまた素敵です。
長谷川摂子さんの素敵な言葉と共に、四季折々の水をたくさん浴びた後、子ども達は早速、水遊びに興じる事でしょう?
水が最も、恋しくなる夏のおはなし会で楽しんだ1冊です。
みずまき [木葉井悦子 作] 講談社
真夏の太陽が照りつける昼下がりに、庭中いっぱい水まきをしたこどもの頃を思い出しながらこの絵本に触れました。(こんなりっぱなお庭がある家に羨望の気持ちも、抱きながら・・)
それにしてもこの絵は衝撃的というのでしょうか。斬新で体の中を電気が走るようとはこのことをいうのかも知れません。ページいっぱい使って大胆に力強く描かれて、空白(絵のない部分)が殆どありません。
女の子がホースをにぎって、そこからほとばしる水とともに「にわのみなさん おきてください。 あめだぞ あめだぞ」
これが左のページに毎回でてきます。それをうけてリズミカルに「たぴ たぴ たぴ たぴ。なめくじが・・・」「きゅる きゅる きゅる きゅる ぼうふらが・・・」「しゃく しゃく しゃ くしゃく あおむしが・・・」というように次々と水しぶきを受けて庭の生き物たちが踊りだすかのように現れ・・・・「と おもったら○○でした。」と、ずっこける部分にあれれ?
う〜ん、この絵本は言葉遊びもモチーフになっているのでしょうか?
面白くてエネルギッシュなこの絵本に子ども達も溶け込んで楽しみました。もちろん、夏のおはなし会におすすめです。
最後のページは縁側に女の子が浴衣を着て座っています。うちわであおぎながらすっかり涼しくなった庭を満足げに見ています。その横には猫がいて、庭には、ぶたの蚊取り線香のけむりがちょっとけむたそうに犬がちょこんと座っています。この続きがあるとするなら、その晩は花火大会で打ち上げられる大きな花火を仰ぎ見ながら「たまや〜!」(この女の子なら言いそうです)と言っている絵を想像してしまいます。そう、線香花火よりも打ち上げ花火が似合いますね♪
春を感じる絵本として 『やまのかぜ』もあります。こちらもダイナッミクな絵に圧倒されます。
みどりのみ あかいみ [ごんもり なつこ 作] 福音館書店
食べられる緑の実にはどんなものがあるでしょう。一見、緑の実から赤い実に変わる実もあります。見た目は緑でも実を切ってみれば中は黄色だったり、赤かったり。おいしそうで瑞々しい実が大きく描かれています。
リアルに細部にまで描かれた本物に近い絵が素敵で、幼児向けのおはなしはもちろんのこと、おはなし会の導入や合い間に届けてみることおすすめです。その実の中は何色か子ども達は声にだして言います。そして、裏表紙の野菜が何であるか文字がありませんが、子どもはちゃんと知ってて驚きです。「どうして、これは何なのか書いてないのかな?」と考えている子がいましたよ。特に、夏のおはなし会が最適でしょう。
ミラクルバナナ [ジョルジュ・キャストラ、ロドニィ・サン・エロワ・作/ルイジアーナ・サンフルラン・絵/加古里子・文] 学習研究社
この絵本が実は、バナナペーパーでできているとは、題名どおり「ミラクルバナナ」ですね。バナナの木の茎の繊維から作られているのです。ちょっぴりバナナの香りもするでしょうか?カリブ海に浮かぶ小さな島国ハイチの詩人と画家によって描かれた物語や絵も、何とも言えない美しさなのです。独特の風合いがあって、原色を使 った絵が生き生きと描かれていて素敵です。
この国では、バナナの木がたくさん捨てられています。何かに使え ないでしょうか?という、メールがきっかけで作られました。これが捨てるものからできるなんて凄い事です。少し、紙が波打っていますが、光沢、透明感があり、とても自然な感じが好きです。
環境博士の加古里子さんがなぞなぞ形式で、楽しくてわかりやすい文を書かれているのもさすがです。
バナナの木は、実った後、根元から切ってもまた芽が出てバナナをつける事。バナナの木は成長が早く、一年に3回ぐらい収穫し、そのたびに木を切って捨てる木と葉っぱを使って紙を作るという事など地球環境について語りかけています。日本の和紙の紙漉きの技術も利用するそうです。再利用の時代に、その第一歩となった絵本でしょうか。
「おお、すごい」と感嘆して目を輝かせていた子の顔が印象的です。夏のおはなし会で届けました。
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むかし、ねずみが、、、 [マーシャ・ブラウン 作] 童話館
インドの昔話です。あるインドの偉い人が「大きいということ、小さいということ」について、考えにふけっていました。するとネズミがすり抜けていき、その身をカラスから救ってやったり、猫から守るためにネズミを強そうな猫に変えてったり、犬から身を守るために大きな犬、トラから身を守るために大トラに変えてやりました。ところが大トラになった途端に、この人からの恩を忘れて飛びかかろうとしたために、偉い人は・・・・!?
強くなったり、偉くなったりすると、つい、いい気になってしまうものでしょうか。人間の価値はそんな事で測れるものでなく、どんな時も謙虚な心を失わないでいることの大切さがしみじみと伝わってくる1冊です。
読むだけでは難しいお話かな?と思い、ブックトークした後、届けました。
マーシャ・ブラウンの色版画が素敵な絵本ですが『あるひ、ねずみが・・・』として冨山房からも、出版されていました。訳文の違いを見比べてみてください。
むぎわらぼうし [竹下文子・文/いせひでこ・絵] 講談社
楽しかった夏休みも終わったばかりの9月初旬というのは相変わらず暑さが続きます。でも、風、空気、何気ない庭の表情まで、夏休みの頃とは違っている気がします。楽しくて大好きだった夏が移ろいでゆくことへの切なさ、大切な思い出もどこか遠くへ去ってしまうのを認めたくないと思う気持ちが、お日様の匂いをたくさん吸い込んだむぎわらぼうしに手がいってしまいます。―「るるこ」はそんな女の子。
おばさんの家に遊びに行くのにもいつもかぶっていたむぎわらぼうしを手放すことができません。そんなるるこにお姉さんは反対します。過ぎ去った夏を認めたくない気持ちがむぎわらぼうしをかぶり、ぐいぐいとつばを引っ張って・・・、いつのまにかるるこはすっぽりと、むぎわらぼうしの幻想の世界に入り込んでしまいます。
青い空と海、波の音、さんさんと輝く太陽の下でお姉さんが笑って手を振りながら呼んでいます。いとこたちもいっしょです。
詩を読んでいるような感覚で淡い美しい絵とが溶け合って、過ぎ去る夏の想い出もまた蘇らせてくれる絵本です。まだ半袖で登校している子ども達を見ながら、いつのまにか私も遠い少女の頃を思い描いていたような気がします。9月初めの高学年向きおはなし会で届けた1冊です。
メ
めだか [吉崎正巳 作] 福音館書店
以前は小川に行けば見かけることができたのに、最近では絶滅の危機にある「めだか」です。このかかぐ絵本が出版されたのも1978年ですから、まだまだめだかなんて当たり前の時でした。こんな現代を憂いながらも、5年生の教室へ行けば水槽に「めだか」が飼育されているのに感動を覚えたものです。「このめだかはどんな風に、つかまえて育てているの?」と子ども達に思わず聞いてしまいました。
春の小川、大小様々なめだかが群れをなして流れを登っていきます。えさを求めている様子を知ることができます。水槽で飼育をしながら、めだかの観察日記のように、その生育もこの1冊でわかるのが嬉しい。たまごを生んで孵るまでの様子まで知ることができます。さらに、この飼育はここで終わりでなく秋にはまた元の小川に戻してあげて、冬を小川の水底で過ごさせることに感動を覚えました。さて、めだかたちとは、次の春にまた会えるのでしょうか?
そんなわけで、5年生の学年おはなし会で届けた1冊です。
めっきらもっきらどおんどん [長谷川摂子・文/降矢なな・絵] 福音館書店
真夏の昼下がりに、かんたという男の子が体験した不思議な冒険のお話です。
かんたは遊び友達を捜して、お宮の 境内に行きましたが、誰も見つからないので、腹立ちまぎれに「ちんぷくまんぷく・・・・・めっきらもっきらどおんどん」とでたらめな歌を唱えます。
すると、大木のうろから奇妙な声が聞こえるのに気がつき、あなにもぐりこんでのぞいてみたとたん、かんたは地底へ吸い込まれていきました。この場面はアリスのうさぎあなを思い浮かべてしまいます。
遊び好きの三人の おばけが現れ、かんたは不思議な世界に入り込んで、異次元空間での不思議な体験をします。このおばけたち、得体の知れない一見怖いおばけのようですが、とっても個性的で愛らしいキャラクターです。
不思議の世界を満喫して、お母さんのことを思い出したところで現実の世界に戻ってくる所は子ども達もほっと安心します。フアンタジーらしいと言えますね。
真夏の日ならではの夢の世界に、大人も子どもの頃を懐古しているうちに引き込まれていくようなそんな1冊です。
長谷川さん、降矢さんのコンビによる絵本はどれも楽しくて大好きです。おもしろい言葉のリズム、スピード感のある展開も魅力的で、ちょっと不思議な色遣いと大胆で伸びやかな絵も素敵です!
絵本の向きをくるりと変えたりしながら読む場面など工夫がなされているところも面白いですね。
どんなおはなし会でも子ども達の虜です。終わった後もこの歌のセリフを覚えていましたよ♪
もちろん、夏のおはなし会向きです。
モ
もこ もこもこ [谷川俊太郎・文/元永定正・絵] 文研出版
不思議な意味のあるようで、ないような物体と面白い擬態語が上手くミックスされて子ども達を楽しい空想の世界へ連れて行ってくれます。
しーんと静寂された空間に突然、突起物が現れ、それがだんだん大きくなって、さらにもうひとつの突起物も現れますがお団子のような形になります。それをまるで、怪獣のように口を開けて「ぱく」と食べたと思ったら、ボールになってころがっていって、膨らんで、はぜてしまい・・・・
『カニ ツンツン』や『もけら もけら』と同じように、得体の知れない物体を元永さんの人並み外れた天才画家に、これまた素敵な詩人の谷川さんの強烈なコンビによって、楽しくて美しい絵本が出来上がっています。
この絵本は嬉しい事に、大きめなのでどんな大人数のおはなし会にも使えます。幼い子はもちろんのこと、小学生のおはなし会でも、しっかりとしたおはなしの後や合間の1冊として最適です。
子ども達は共に合わせて声に出して、楽しんでくれました。文句なしに大喜びする絵本です♪
モチモチの木 [斎藤隆介・文/滝平二郎・絵] 岩崎書店
斎藤・滝平コンビによる、切り絵を駆使した骨太の昔話風創作絵本は数多く出版されていますが、『花さき山』と並んで代表的な1冊です。「勇気、愛、優しさ」をテーマにしたおはなしを子ども達の心に染み入るように、描かれているのが特徴です。
豆太はじさまとふたり暮らしで、ひとりでは便所にもいけない臆病な子どもでした。小屋の前には「モチモチの木」が立っていて昼夜いろんな姿を見せてくれます。どんなに美しいモチモチの木も豆太にとっては、夜は「おばけの木」のようでした。
ある真夜中、じさまが病で苦しんでいる姿に、豆太は医者さまを呼ばねばと走りに走って・・・・。
「本当の強さ」とは、あらためて感じさせられました。じさまの最後の言葉が物語っています。
「人間、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは きっとやるもんだ」と―
見開きいっぱい,、「モチモチの木」に火がついているページは素敵です!いつまでもじっくり眺めていたいところです。
冬のおはなし会向きです。
もりのともだち [マーシャ・ブラウン 作] 富山房
マーシャは、お話の筋によって1冊、1冊づつ絵が異なっています。さすがコールデコット賞を3度も受賞されただけあると頷けます。この絵本も黒、赤、緑を基調とした水彩画でありながら、大胆で深みのある楽しい1冊になっています。
ある寒い冬の日、きつねとのうさぎは家を隣り合わせに建て、仲良く暮らしていました。でも、氷でできたきつねの家は春になると溶けてしまいました。すると、きつねはのうさぎの家に入り込みます。きつねに家をとられてしまったのうさぎは泣きながら、森へ入っていきました。
そこで、おおかみがきつねを追い出し、のうさぎを助けようとしますが、きつねの一言で反対にしっぽをまいて逃げていってしまいます。次に、ひぐまが同じように助けようとしますが、やはり、敢え無く失敗。今度は、おんどりが挑みます!
絵も然ることながら、筋運びは、3度の繰り返しとリズミカルな言葉が生き生きとして満足感が得られるだけに、ぜひ、子ども達に出合わせてあげたいですね。もちろん、冬のおはなし会でおすすめです。
もりのかくれんぼう [末吉暁子・文/林 明子・絵] 偕成社
林 明子さんの絵本は、じっくり見るにはいいのですが、中々おはなし会で難しいものもあり、特にこの絵本はその代表的選手といっていいでしょう。色も黄色を基調として、何かが隠れているのを探すのが楽しみでもあるわけ。
「あ、あそこに!」「そこに」と子ども達はつい夢中になる。そう、大型絵本ならでそれがじっくり楽しめるもの。図書館で見つけて嬉々として届けました。秋の紅葉の美しい時季に楽しみたいですね。
もりのなか [マリー・ホール・エッツ 作] 福音館書店
これは、白黒絵本で、40年以上も読み継がれてきた古典絵本です。子どもの想像の世界を、不思議な「森の中」という冒険フアンタジーの世界で遊んだ男の子のお話です。―《霧ヶ丘おはなしの森》もこの絵本がヒントになって名前が付いたのですか?と聞かれたことがあります。夢のあるフアンタジー絵本の原型のような気がします。
紙の帽子と新しいラッパをもって森へ散歩にでかけた男の子。もう、この姿だけでも「さあ、いくぞ!」と旅への意気込みが漲っているかのようです。ライオン、ぞう、くま、カンガルー、こうのとり、さる、うさぎとたくさんの動物たちが男の子のラッパのあとについてきました。森の中で、いろんな遊びが始まります。遊びに遊んで「もういいかい」で、目を開けたとたん、現実の世界に戻ります。しかも、迎えに来てくれたていたのは、お母さんではなく、お父さんというのがいいな♪と思いますね。お父さんの肩車に乗って、帰ってゆく男の子はとっても晴々として、幸福感に満たされています。
こんな事を言われた方があります。「私は、子どもの頃、この絵本が大好きでしたが大人になって、この絵本が白黒だった事に気付きました。きっと、子どもの時は想像の色をつけていたのですね」と―子どもの想像の世界は素敵ですね!
このお話にはまだ続きがあります。「またくる」事を誓って去っていった男の子です。ですから、「また森へ」ゆくことを約束したように、『またもりへ』となって続刊されました。
今日のおはなし会は『もりのなか』、この次は『またもりへ』と2回に分けて届けました。大人になっても、心にに残る1冊です。
もりのひなまつり [こいで やすこ 作] 福音館書店
表紙を1枚めくると、早速、きれいな桃色の見返しに「桃の節句のお話」のメッセージが 感じられます。
春も近いある日、森の近くに住んでいるねずみばあさんの元へ、のねずみ子ども会から手紙が届きました。
それは、森のひなまつりをしたいので、おひなさまを連れてきて下さいというものでした。さあ、ねずみばあさんとおひなさまたちは「まいりましょう」と、勇んで揃って森をめざして歩いていきました。ねずみばあさんは心配でなりませんでしたが・・・・。
ねずみばあさんの心配をよそに楽しい森のひな祭りはかくも盛大に楽しく行われましたが、夕方、帰る頃になり、雪が降りはじめ、ねずみばあさんの心配は的中してしまい、大変です!おひなさまは無事、帰ることができるでしょうか!?
絵もお話も可愛くて、楽しい絵本です。ひなまつりが近づくと、手にとりたくなりますが、のねずみ子ども会からの手紙を読むのに笑ってしまいがちで、苦労しました。さぞ、子ども達もと思いきや、子どもは大真面目に聞いてくれますからこれまたさすがですね。子どもの頃の純粋さをいつまでも持ち続けていたいものです。
もちろん、3月、ひなまつり頃のおすすめです。
森はオペラ [姉崎 一馬 作] クレヨンハウス
自然の風景写真を撮り続けて、それを素晴らしい絵本にしてしまう姉崎さん。この方の特に一本、一本の木に対する思い入れは並大抵のものではないと感じます。
「森をあるくと 遠くで 近くで えだの先から 足もとから うたが きこえる きこえる ひくい こえ 高いこえ ひびくこえ かすれたこえ 耳をすますと ・・・」木漏れ日の光、キラキラ輝く葉っぱたち、さわさわと風にそよぎながら奏でる森の中の音楽。それは「オペラ」のようだと揶揄され、「天までとどけ森のオペラ」 この詩が胸に響き、そして観る事によって森を散策して澄んだ空気を胸いっぱい頂ける。森林浴の気分をこの一冊の中に感じるのではないでしょうか。
おはなし会の導入に最適です。
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